2 第 章【これまでの災害における小規模自治体の事例】
2.2 阪神・淡路大震災における淡路市
【阪神・淡路大震災】
1995 年 1 月 17 日に発生した阪神・淡路大震災については、序章で述べているため、こ こでは淡路市での被害について解説をする。淡路市は、阪神・淡路大震災のあと 2005 年 4 月 1 日に津名町、淡路町、北淡町、一宮町、東浦町が合併してできた自治体である。淡路 島における震災の被害は淡路市に集中しており、淡路島内の死者 64 人のうち 58 人が淡路 市、全壊の建物 3,460 棟のうち 3,076 棟が淡路市である。その被害の多くは、旧北淡町に 集中していた。
【淡路市とは】
淡路市は、淡路島の北部に位置し、明石海峡大橋で神戸市とつながっている。2005 年に 5 町が合併してできた市で面積は約 184.35 ㎢、宮城県内の市町村で比較をすると、南三陸 町よりも 20 ㎢ほど広い程度である。淡路市の産業については、産業人口から確認すると、
第三次産業の割合が約 60%、第一次産業と第二次産業がそれぞれ 20%程度である。第三次産 業の内訳は、卸小売業と医療福祉業が各 23%、宿泊・飲食サービス業が 12%、公務が 6%程 度である。第一次産業は、農業がやや多く 64%、漁業は 36%である。明石海峡大橋の開通に より、関西方面からの移動が非常に便利となり、高速バスを利用すると大阪から淡路市ま で 2 時間程度で到着できる。
【淡路市の震災復興計画と観光】
阪神・淡路大震災から 10 年が経過しての合併であり、淡路市としての震災復興計画につ いては資料がない。被害の大きかった旧・北淡町が 1997 年に発行した「阪神・淡路大震災 北淡町の記録」49によると、旧・北淡町では 173 億円の災害復旧事業を最優先したことで、
震災発生年の 1995 年度末には復旧事業が 74.9%完了し、1996 年度中にはほぼ完了したとし ている。これにより、1997 年度は「復旧」から「復興・再建」に移る時期とされた。この 記録の中では、阪神・淡路大震災で地表に現れた野島断層についての保存活用計画が記載 されている。断層の保存と地震や断層を学ぶ場としての役割とともに、物産館・レストラ ンを併設することによって町の活性化につながるようにしたいと計画された。
【観光客入込数】
淡路市の観光客の入込数を確認してみると、阪神・淡路大震災で減少したものの、大き
49 阪神・淡路大震災北淡町の記録:1997年に北淡町役場が発行したもの、神戸大学図書 館がデジタルで公開している資料
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/directory/eqb/book/4-449/index.html
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く回復していることがわかる(図表 66)。1995 年の宿泊者数については、被害の大きかっ た北淡町では前年比 42%、一宮町では 24%にとどまった。しかし、2000 年には、淡路花博 が開催されたこともあり、入込数を大きくあげている。
図表 66 淡路市の観光客入込数の推移
出典:兵庫県観光客動態調査より
淡路島は、気候と立地から、遊園地、釣り・潮干狩り、海水浴など、様々なレジャーで 訪れている人が多い。図表 67 は、合併前の 5 町の観光客入込数の目的別内訳である。阪神・
淡路大震災の被災の中心といわれる旧・北淡町は、観光資源としては様々な分野のものを 備えているが、突出して入込数が多いものはない。全体的には、旧・津名町の公園・遊園 地の区分の入込数が多く、これは「淡路ワールドパーク onokoro50」が入込数を稼いでいた と考えられる。
50 淡路ワールドパークonokoro:様々な遊具(アトラクション)、体験施設、物産販売、レ ストラン等の各種施設をそなえた遊園地。淡路島という離島にあるが、明石海峡大橋や鳴 門橋で本州とも四国とも接続があり、両方からの誘客が可能。http://www.onokoro.jp/
単位:千人
年度 1990年 1995年 2000年 2005年 2010年 2015年
(発災) 5年後 10年後 15年後 20年後
観光客入込数 3,193 2,222 12,471 5,650 5,982 9,482
観光客宿泊者数 337 235 412 301 221 214
※2005年の合併前は、5町の入込数の合計を掲載
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図表 67 淡路市合併前5町の区分別観光客入込数(1990年)
出典:兵庫県観光客動態調査より
阪神・淡路大震災が発生した 1995 年の入込数は、1990 年と比較すると 30%程度減少し ている(図表 68)。特に、釣りや潮干狩り、海水浴などの海に関係した目的が減少している。
しかし、寺社参拝、温泉、ゴルフなどは、数字に変動はあるものの、公園・遊園地、釣り・
潮干狩りと比較をすると、大幅に減少はしていない。
単位:千人
1990年 津名町 淡路町 北淡町 一宮町 東浦町 合計
自然鑑賞 0 43 30 5 4 82
寺社参拝 309 9 31 332 10 691
まつり 32 3 16 21 20 92
遺跡鑑賞 0 1 1 2 0 4
温泉 0 63 68 0 75 206
公園・遊園地 692 66 57 36 0 851
施設見学 0 0 4 6 58 68
登山・ハイキング・キャンプ 0 4 11 7 4 26
スキー・スケート 0 0 0 0 0 0
海水浴・ヨット 4 120 67 50 81 322
ゴルフ・テニス 17 2 51 8 24 102
釣り・潮干狩り 21 171 17 7 301 517
観光農園 1 3 27 1 3 35
その他 0 0 0 0 197 197
1,076 485 380 475 777 3,193
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図表 68 淡路市合併前5町の区分別観光客入込数(1995年阪神淡路大震災発生年)
出典:兵庫県観光客動態調査より
2010 年からは、図表 69 にある通り、区分別集計ではなく目的別集計と変更になってお り、2010 年以降では、他の項目よりも「スポーツ・レクリェーション」が入込数を上げて いる。兵庫県観光動態調査報告書によると、2015 年に「淡路花博 2015 花とみどりのフェ ア」が 3 月 21 日から 5 月 31 日まで開催され、「あわじ花さじき」に 766 千人、「淡路ファ ームパークイングランドの丘」に 542 千人が訪れ、このほかの周辺施設の入込数を押し上 げたという。また、パワースポットブームで「伊弉諾神宮51」がメディアで多く取り上げ られて入込数を上げたことや、淡路ハイウェイオアシスや道の駅うずしおなど、明石海峡 大橋や本四連絡道路との兼ね合いで入込数を上げた地点もある。
51伊弉諾神宮:古事記・日本書紀にも記される。伊弉諾大神が国生みの偉業を成して統治を 天照大御神に委譲し、余生を過ごしたといわれている。旧・一宮町
単位:千人
1995年 津名町 淡路町 北淡町 一宮町 東浦町 合計
自然鑑賞 0 31 2 1 2 36
寺社参拝 197 6 8 346 8 565
まつり 70 2 23 35 3 133
遺跡鑑賞 0 0 1 0 0 1
温泉 0 51 23 128 55 257
公園・遊園地 370 66 31 33 27 527
施設見学 0 0 1 1 21 23
登山・ハイキング・キャンプ 0 3 2 3 2 10
スキー・スケート 0 0 0 0 0 0
海水浴・ヨット 4 57 18 14 25 118
ゴルフ・テニス 40 1 35 2 71 149
釣り・潮干狩り 18 102 7 4 67 198
観光農園 2 2 9 0 0 13
その他 0 15 0 103 74 192
701 336 160 670 355 2,222
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図表 69 淡路市における観光客入込数の推移(目的別)
出典:兵庫県観光客動態調査より
【観光消費額】
兵庫県の観光統計52によると、2016 年の兵庫県における観光客入込数は約 1 億 3,904 万 人で、観光消費額(名目)は、1 兆 2,149 億円、観光客数と平均消費額を掛け合わせて算 出している。単純に計算すると、1 人あたりの消費額は平均 8,520 円となる。淡路市だけ の統計ではないため誤差は生じるものの、淡路市の 2015 年の観光客入込数が約 948 万人と して考えると、全体の割合から約 800 億円の消費額となる。
【観光につながる事例】
淡路市については、震災から 20 年が経過した 2015 年の段階では、観光地点を訪れる人 の数も多く、観光が震災復興に役立っていると考えられる。合併前の北淡町だけでは観光 客の入込数をここまで上げることは難しいが、観光地点を多くもつ町と合併したことによ り、淡路市として入込数を上げることができている。淡路島という島ではあるが、明石海 峡大橋で移動が可能なことや、神戸、大阪という都市圏を近くにもつということが強みで あろう。
【伊弉諾神宮】
日本第一番の神社、パワースポットとしても有名で、年間 170 万人前後の観光客が訪れ る。古事記・日本書紀にも記される、伊弉諾大神が余生を過ごしたといわれている。自家 用車を利用すると津名一宮のインターシェンジから 5 分程度であり、神戸方面からは約 45
52 兵庫県観光統計:2017年度兵庫県観光客動態調査結果(速報値)
https://web.pref.hyogo.lg.jp/sr16/documents/h29hyogodoutai.pdf
単位:千人
2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年
自然 21 28 27 26 19 18
歴史・文化 2,104 1,942 2,192 2,101 2,394 2,630
温泉・健康 212 180 191 188 224 232
スポーツ・レクリェーション 2,633 2,583 2,806 2,826 3,464 3,987
都市型観光~買い物・食など 890 677 715 697 834 811
その他 24 0 0 0 1,798 1,691
行祭事、イベント 98 96 69 74 88 113
5,982 5,506 6,000 5,912 8,821 9,482
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分で到着できる。徳島方面からでも約 55 分で到着でき、アクセスのよいスポットである。
【淡路ワールドパークonokoro】
様々な遊具(アトラクション)を備えた遊園地。ジップラインなどのアクティビティ体 験や、施設内で行うキャンドル作りや陶器絵付け体験、絞り染め体験、どろ団子体験など もでき、幅広い子どもの年齢に対応した体験メニューがある。その他、物産販売、レスト ラン、ミニチュアワールド等の施設がある。
【あわじ花さじき】
花の島にふさわしい場所をつくろうと1998年に開園した、公園。春は菜の花やポピー、
夏はひまわりやバーベナ、秋はサルビアやコスモス、冬はストック等、四季を通じて、何 らかの花の風景が見られる。自家用車の場合、神戸方面からは明石海峡大橋を過ぎて最初 の淡路インターチェンジをおりて約15分。大阪、神戸方面からは非常にアクセスがよい。
【ニジゲンノモリ】
アニメやゲームの世界感を五感をつかって楽しむ、テーマパーク。県立淡路島公園の中 にあり、自然風景とテクノロジーを活かした体験ができる。昼と夜でターゲットを変えた 体験メニューを提供し、宿泊施設もそなえた。
【道の駅、直売所など】
淡路市には、「道の駅あわじ」と「道の駅東浦ターミナルパーク・浦海浜公園」の 2 箇所 の道の駅がある。「道の駅あわじ」は、明石海峡大橋を眺めながら食事ができるレストラン があり人気である。また、神戸淡路鳴門自動車道の淡路サービスエリアに直結した淡路ハ イウェイオアシスは普通車 560 台駐車可能と規模が大きく、食とともに公園も充実し、年 間 170 万人前後の入込数をあげている。
【野島断層保存館】
1998 年に被災の様子を保存するとして野島断層保存北淡震災記念公園ができ、レストラ ンや物産館とともにできた見学施設。開業 1 年で入場者が 300 万人を突破したが、2 年目 には 100 万人程度となり、震災から 12 年を経過した 2007 年には 29 万人と 30 万人を切る こととなった。以降、入場者は減少し続けており、2016 年には 14.6 万人となった。
淡路市は、市町村合併もあり非常に多くの観光資源が存在している。伊弉諾神宮のよう に歴史を感じさせるものから、淡路ワールドパーク onokoro やハイウェイオアシスのよう