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◉エビデンス

1.脳内出血に対する外科治療の適応

脳出血急性期の早期手術の有用性を検討した初めての 大規模、国際多施設randomized controlled trial(RCT)

(Early Surgery versus Initial Conservative Treatment in Patients with Spontaneous Supratentorial Lobar Intracerebral Haematomas:STICH)1)では、テント上脳内 出血(最小径≧ 2 cmかつGlasgow Coma Scale(GCS)≧ 5 ) に対する早期手術治療と初期保存的治療では、その結果 に差は認められなかった(レベル2)。2010年のAmerican Heart Association(AHA)/American Stroke Association

(ASA)のガイドライン2)では、推奨文として「脳内出血に 対する手術の有用性は不明確である」と記載された。例 外として小脳出血(神経学的増悪、脳幹を圧迫、水頭症の 合併)、脳葉血腫(≧30mL、脳表から≦ 1 cm)があげられ た。しかしながら、テント上脳内出血に関するコクラン レビュー第 2 版3)は、外科治療は死亡あるいは介助が必 要な状態を有意に減少させると報告した(レベル1) 2010年までに14のRCTが報告されているが、Gregsonら はこのうち8 trial1、4-10)からの個別データを用いたメタア ナリシスを行った11)。発症から 8 時間以内の早期手術施 行、血腫量20〜49mL、GCS≧ 9 、年齢が50〜69歳の患者

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慶応脳血管障害共同研究グループ(外科治療141例中96例 が開頭血腫除去術)23)(レベル4)の報告があり、血腫が大 きく(>31mL)、圧迫症状がみられる患者では手術の効果 を示唆するものもある。

視床出血について慶応脳血管障害共同研究グループに よる556例についての大規模な検討では、手術治療は重 症例における救命効果しかなく機能転帰を改善しなかっ た。また、外科治療を行った29例のうち開頭血腫除去術 は 1 例のみであった24)(レベル4)。この報告では脳室内 に穿破した症例に対する脳室ドレナージの有効性につい ても検討されているが、脳室ドレナージは重症例の生命 に関する転帰を改善したが機能転帰は改善しなかった。

小脳出血についてはvan Loonら25)(レベル4)、Da Pian 26)(レベル4)、Koziarskiら27)(レベル4)、Mathewら28)(レ ベル4)、横手ら29)(レベル4)、慶応脳血管障害共同研究 グループ30)(レベル4)、Moriokaら31)(レベル4)、Kirollos 32)(レベル4)などの報告があり、血腫の大きいもの(最 大径 3 cm以上)で進行性のもの、脳幹を圧迫し水頭症を きたしているものは、手術適応があるとする点で一致し ていた。前述のAHA/ASAのガイドライン2)では、神経学 的増悪、あるいは水頭症の有無にかかわらず脳幹の圧迫 がある場合は、可及的早期に手術による血腫除去を勧め ている。

脳幹出血においては、手術治療の無効性が確認されて いる26、33)(レベル4)

3.神経内視鏡手術、他の低侵襲手術

今後の可能性が期待される低侵襲手術(minimally invasive surgery:MIS)であるが、これらには、定位的血 腫除去18)(レベル2)、内視鏡下血腫除去術4)(レベル2)34、35)

(レベル4)、MRI-guided Stereotactic Aspiration36)(レベ ル4)、超音波誘導定位脳手術37、38)(レベル5)、頭蓋内圧 モニタリングの併用39)(レベル5)、ナビゲーションの使 40、41)(レベル4)がある。

Auerらは皮質下出血、被殻出血、視床出血について内 視鏡的な血腫除去術と内科的治療をRCT比較し、皮質下 出血についてのみ手術治療による転帰の改善を認めてい 4)(レベル2)。その後も神経内視鏡手術に関しては、基 底核出血42)(レベル4)、脳室内出血における脳室ドレナー ジに対する優位性43-45)(レベル4)が示された。日本にお いても、被殻出血35、46)(レベル4)、小脳出血35、47)(レベル 4)、皮質下出血35)(レベル4)、脳室内出血48)(レベル4) おける内視鏡手術の有効性が報告された。

10mL以上のテント上脳出血に対して、72時間以内の 定位的脳内血腫除去と術後血腫腔内ウロキナーゼ投与を 組み合わせた手術治療の有用性を評価した Stereotactic-treatment of ICH by Means of a Plasminogen Activator グループでは、外科治療の効果に有意差を認めた(レベ

ル2)。STICHにおいて良好な転帰をとる傾向にあった 患者群[血腫が脳表から 1 cm以内、血腫量10〜100cc、

発症48時間以内、GCS(best motor score≧5 or 6、best eye score≧ 2 )]を対象に行った、RCT(STICH Ⅱ)12) おいては、早期手術群と初期保存的治療群の結果に差を 認めなかった(レベル2)。STICHにおいては、初期保存 的治療に振り分けられた530例中140例(26%)に対して、

神経症候増悪や再出血などの理由で手術が行われてお り、STICH Ⅱでは初期保存的加療群に振り分けられた 291例中62例(21%)に対して外科治療(21%)が行われ た。いずれの試験においてもintention to treat(ITT)解析 であることを考慮して解析結果を理解する必要がある。

Prasadらはコクランレビューにおいて、「適応のある全 ての患者に早期手術を行うという方針」と「神経学的に 増悪した場合にのみ手術を行うという方針」には統計学 的有意差がないということが、STICHに関する合理的な 解釈であろうと述べている3)。STICH Ⅱとそれまでに報 告された14RCT1、4-10、13-18)によるメタアナリシス12)では外 科治療の有効性を認めたが、異なる患者グループや手術 方法のための不均一性は否定できなかった。すでに報告 された患者個別データを用いたメタアナリシス11) STICH Ⅱのデータを加えたサブ解析14)では、脳室内出血 を合併しない脳葉出血における手術の有効性を認めな かった。これらのメタアナリシスの解釈として、脳内出 血に対して外科治療の果たす役割はあるが、どの患者グ ループに有効であるかという点が不明確であるといえ 12)

2.開頭手術

前述のSTICHにおける早期手術群の外科治療は75%

が開頭手術であった。また、初期保存的治療群に対して 行われた外科治療のうち85%が開頭手術であった1)。同 様にSTICHⅡにおける外科的治療は早期手術群の99%、

初期保存的加療群の95%が開頭手術であった12) 被殻出血について、Pantazisら13)は、血腫量30mL以上 の皮質下出血および被殻出血に対する発症 8 時間以内の 急性期開頭血腫除手術の有用性について、内科的治療群 とのRCTを行い、手術群において 1 年後の機能転帰の有 意な改善を示した(レベル2)。Batjerら15)(レベル2)は被 殻出血についてのみRCTを施行したが、手術による転帰 の改善は認めなかった。本邦では、1990年に金谷を中心 に全国的に施行された合計7,010例の集計19)(レベル4) あり、発症 3 か月後の死亡率、機能転帰が比較された。

被殻出血の手術療法は、重症例の救命を目的とする時に のみ有用であることが示された。他にもWagaら20)(レベ ル4)、Fujitsuら21)(レベル4)、Niizumaら22)(レベル4)

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脳卒中治療ガイドライン 2015[追補 2017]

脳出血

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を示していることを記載している。その後Zhouらは、テント 上脳出血におけるMISが、内科治療や開頭術に対してより 有効であることを検証するために、12RCT4、7、9、10、17、18、66-65) 1,995例を対象にメタアナリシスを行った66)。MISはフォ ローアップ終了時点の死亡あるいは要介護を減少させた

(レベル1)。MISの有効性が示唆されたが、20〜80歳、

GCS 9、血腫量25〜40m、発症から72時間以内の治療開 始といった患者グループが最も良い適応であった。神経 内視鏡と定位的血腫吸引術の比較はされていない。

[引用文献]

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12)Mendelow AD, Gregson BA, Rowan EN, Murray GD, Gholkar A, Mitchell PM. Early surgery versus initial conservative

(SICHPA)9)では、手術による有意な血腫量の減少が得 られたものの、180日後の死亡率およびmodified Rankin Scaleのいずれも二群で差を認めなかった(レベル2) SICHPA試験を含む5RCT、740例を対象とするメタアナ リシスにおいて、定位的血腫除去術は内科治療と比較し て、死亡率および機能予後のいずれも有意差を認めな かった追1)(レベル1)。サブグループ解析において、定位 的血腫除去術と術後血栓溶解療法は、血腫体積が50mL 未満の患者転帰を改善させた。日本においてはHattoriら が、意識レベルが軽度から中等度に障害された被殻出血 242人を、定位脳手術による血腫除去群と内科的治療群 に無作為に割り当て、1 年後の死亡率、機能改善度(自立 度)を検討したところ、入院時のJCS20〜30に相当する 中等度意識障害患者において、手術群で有意に機能転帰 の改善を認めた18)(レベル2)。成人の脳室内出血は大部 分が高血圧性脳内出血、脳動脈瘤、脳動静脈奇形からの 続発性脳室内出血であるが、まれながら出血源の不明な 原発性脳室内出血がある49、50)(レベル5)。脳室内出血で 急性水頭症が疑われる症例には脳室ドレナージを考慮す 51)(レベル4)52)(レベル5)。2002年のコクランレビュー では、脳室内への線溶薬の投与に関して、その有効性と 安全性を評価し得るだけの研究はないとされた53)。その 後、Mouldらは、Minimally Invasive Surgery Plus rt-PA for Intracerebral Hemorrhage Evacuation(MISTIE)phase

Ⅱのサブ解析で、外科治療が血腫周囲の浮腫を減少させ ることおよび組織プラスミノゲン・アクティベータ(t-PA)併用の安全性を示した54)(レベル3)。他にもCTガイ ド血腫吸引およびウロキナーゼを用いた治療の、開頭術 に対する有位性55)(レベル3)、脳室内出血を伴う基底核 出血に対するt-PA併用脳室ドレナージの有効性56)(レベ ル4)、脳室内血腫除去率に対するt-PAの用量効果と安全 57)(レベル4)などが示された。Gaberelらは、メタアナ リシスにおいて脳室内血栓溶解療法(t-PAあるいはウロ キナーゼ)の有効性を示した58)(レベル2)。脳室内出血に 対するt-PAによる血栓溶解療法の有効性を示すことを 目的とする、CLEARⅢ試験59)のパイロット試験として の位置付けである、CLEAR-ⅣHの予備段階の結果では、

低 容 量t-PAの 有 効 性 を 示 し た60)( レ ベ ル3)。現 在、

CLEARⅢ試験、MISTIE試験54)が進行中である。

2010年時点でのMISに対するAHA/ASAガイドライン の見解は、「脳内出血の外科治療の適応が不明確な現状 では、その方法に関してはより確固たるものはない」で あった。しかしながら、皮質下血腫に対する、血栓溶解 を加えた血腫吸引法や7、10)(レベル2)、神経内視鏡を用い た血腫吸引法4、61)(レベル2)35)(レベル4)の報告があり、

早期手術例においては血腫除去率の増加や死亡率の低下