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開発援助へのインプリケーション

第5章 結論

5.3 開発援助へのインプリケーション

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するファシリテーターが開発援助に適応化させることで、大分県政が行った支援をも担お うとしたのである。

ここで、企業が持つ専門知識や技術と住民を結ぶもの全てが一村一品運動のファシリテ ーターとなるのかという疑問が生じる。大分県の支援で見られた一村一品株式会社の活動 と東亜国内航空や東急ストアが提携したフライト輸送は、どちらも生産者と市場を結び、生 産者が苦手としていた流通や販路開拓に効果的であった。しかし、後者が流通・販路の拡大 だけを目的としたビジネスマッチングにすぎなかったのに対し、前者は、販売を通してビジ ネスのノウハウを伝え、生産者の能力を高める支援であった。運動のファシリテーターとし て求められるのは、ビジネスマッチングを招くだけではなく、一村一品株式会社のような生 産者の力を引き出し、引き出した力を発揮できる場を提供しながら活動を発展させる機能 である。キルギスにおいても、販路拡大や技術支援のために、日本のデパートや企業との連 携を模索していたが、多くは、途上国側に完成した商品を求めるビジネスマッチングであり、

ノウハウを提供しながら連携していくMUJIとのような関係にはなかなか成り得なかった。

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るのではなく、運動のファシリテーターがまず行うべきなのは、コミュニケーションが取り やすい雰囲気を醸成し、そのなかで課題に取り組んでいくための能力が採用者自身に備わ っていることを自覚させることも大切である。

本稿で対象とした事例では、一村一品運動のファシリテーターの機能を持つ人材や組織 は、地域における協働が三原則のサイクルを回しながら、そのなかで、人々が成長できるよ うにビジネスと連携しながら、専門知識や技術、情報、ネットワーク等を取り入れた。協働 の概念が普及していなかった地域では、ゲートキーパーとなる地域のイノベータを探し出 すことから始めた。そして、コミュニケーションを通して、運動の採用者を自立させ、そし て、それによって外部者であるファシリテーターの仕事がなくてすむことを目指した。

キルギスにおいて、試行錯誤の後にでき上った経営管理組織であるOVOP+1という結果 だけを開発援助の視点で見ると、技術援助の域を超えた「企業支援」のように見える。しか し、OVOP+1 は、ビジネス取引は行っているが、単なる地元の一企業ではなく、引き出さ れた力を発揮する場としての役割が大きいのである。一般の企業と異なる点は、地域の誰で もが、OVOP+1 に製品を持ち込むことができ、研修を受けたり、専門家の指導を受けたレ シピ、いわゆる企業のコアとなる技術や知識を地域で共有できることである。

国内外の大きな市場と地域の小規模・零細生産者をつなぐことができるように人材を育 成することで、OVOP+1 は、産業基盤の乏しいキルギスにおけるゲートキーパーの役目も 果たす200。収入に直結するビジネスのノウハウや技術を企業から引き出し、住民の力を発揮 する場を創造したキルギスOVOPの事例は、力を引き出すことを最終目標にするのではな く、引き出した力をどのように活用するかまで追求した新しい支援の形だと考える。

以下では、途上国の開発援助への応用可能性を持つ一村一品運動のファシリテーターの 機能をまとめる。

200 日本の企業がキルギスの天然資源を用いた商品を取り入れようとビジネスの取引を行うな ら、日本への恩恵も期待できる。

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(ア) 人と人の橋渡し:一村一品運動のファシリテーターは、運動の普及開始時に、オピニ オンリーダーになりうる地域のイノベータの見極めを行うことで運動の採用者と情報交換 関係の確立を目指し、人々の変化の欲求を高める。

(イ) 人と情報の橋渡し:一村一品運動のファシリテーターは、運動採用者の問題を診断し、

その問題を解決する可能性を秘めている資源を見極め、技術と資金を集中投資することに より市場で競争力を持つ製品を運動の採用者が生み出すことができるように環境を整える。

そのため、企業などの専門家が持つ知識やノウハウから採用者に必要なものを引き出し、受 け入れやすいように変化させながら彼らの知恵や経験に引き出したものを積み重ねる。

(ウ) 人と市場の橋渡し:一村一品運動のファシリテーターは、(イ)で作られた製品を確実

に売るための販路や流通を確立し、収入につなげることで運動の採用者の態度変容を招く。

技術を習得し、努力を重ねても、商品として消費者に届かないのであれば、運動の採用者は 収入を得ることができず、いつしか活動から離れていってしまうからである。

(エ) 地域内部での橋渡し:一村一品運動のファシリテーターは、運動の採用者を地域外の

人や情報とだけつなぐのではなく、地域内部で持つながりを形成することで、協働が成り立 つ環境を整える。その協働により採用行動を定着させ、採用の中止を防ぎ、集中型の普及シ ステムに近い混合型であった情報の流れを、分散型の普及システムにより近づけ、外部者の ファシリテーターを必要としない運動の採用者との最終関係を作り上げる。

これら4つの機能を持っていたからこそ、一村一品運動のファシリテーターは、運動の採 用者と専門知識を持つ人々や機関、市場などをつなぐことができ、その知識や技術を採用者 が受け入れることができるよう変化させて、地域に一村一品運動を普及させることが可能

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であったと考える。一村一品運動のファシリテーターは指導者ではないため、採用者が話し かけやすい、また、話を聞いて欲しいと思えるような態度で臨むことで効果的なコミュニケ ーションが成立する。一方的な指示となっている場合は、ファシリテーターが気づいていな くても、ファシリテーター役の援助側と裨益者の間に上下関係が強まり、水平の広がりを妨 げる要因となる。一村一品運動のファシリテーターが目指すべきなのは、支配型の普及シス テムの確立ではなく、地域の人々が自由に情報を交換することができる分散型の普及シス テムに近づけることであり、そのことにより、一村一品運動が普及し、人と人、情報、そし て市場、地域内をつなぐ仕組みが採用者によって受け継がれる。