• 検索結果がありません。

第5章 結論

5.5 結語

開発援助におけるビジネス連携には、採用者にとって新しいと知覚されるアイデアが多 く含まれるがゆえに、かなりの不確実性が含まれる。さらに、時代、流行、運などの予測不 能な要素も多く含まれるため活動計画が立てづらい。ビジネスの現場では、優秀な人材や多 額の費用を投入し、時間をかけてマーケティングや技術開発を行っても、必ずしも期待した 結果が得られるとは限らない201。そのため、限られた期間と資金での開発援助プロジェクト とビジネスの連携には困難がつきまとうと予想される。また、開発援助、ビジネス、それぞ れのプロフェッショナルであっても、両方の視点を持っている人材は多くない。それゆえに、

双方をつなぎ、効果的に運動採用者の力を引き出し、発揮させることができる橋渡し役が持 つ機能が重要であると考える。また、一村一品運動は、ビジネスにおける責任とリスクが生 じるアプローチであるため、採用者にとってその概念がよいものであるという前提が重要 となる。援助側がいくら公的資金を投入して研修を繰り返しても、住民が「よいもの」と感

201 地域産業の復興やビジネスが拡大した理由を尋ねたところ、「偶然によるもの」と回答した 経営者が複数いた(筆者インタビュー・一村一品運実施者、2012年~2014年)

148

じず、いくら研修を受けても、住民がその能力を発揮し、努力の結果としての恩恵を受ける ことができる場がないのであれば、資金や援助の終了と共に採用者の気持ちは離れる。研修 の実施回数を評価基準にしても見える成果につながらなければ、プロジェクト自体の評価 がどんなに上がっても、住民にとって魅力のあるものとはならず、援助終了後に人々は活動 を停止してしまう。

大分県の一村一品運動とキルギスOVOPにおいて外部者である運動のファシリテーター が存在した事例で共通して見られたのは、オピニオンリーダーの役目を果たす住民に焦点 をあて、採用者の知覚属性に沿った活動が生み出され、その過程で彼らが作り上げた、もし くは育ててきた「ローカルにしてグローバル」を確実に売り、住民の努力と収入を結びつけ た明確な成果であった。つまり、一村一品運動の採用者にとって、運動のファシリテーター は指導を仰ぐ者ではなく、力を引き出し、活用できる方法を示してくれるパートナーであっ た。これは決して新しい概念ではないが、様々な一村一品プロジェクトを視察したり文献を 調査したりして見えてきたことは、援助側が住民の力を引き出そうと行っていることと、援 助裨益者が実感していることの乖離であった。本稿で事例とした国内外の一村一品運動に は、運動のファシリテーターが目指したことと、運動の採用者が実感できたことの差が少な かったのではないだろうか。そのため、実感できる成果を求めて採用者が増え、彼らの力を 集めることで、地域に影響を与えることで、運動が普及していった。

ビジネスとの連携による効果には、①活動目的の明確化、②活動の具体化(基準や対象製 品など)、③収入を生み出す販路、が挙げられる(原口2012)。しかし、ビジネスマッチン グと一村一品運動の区別なく、企業との連携とが雇用や収入を生み出すと安易に考えて導 入しても、どのようなノウハウがその地域にとって有効なのかを見極め、ビジネスのノウハ ウを採用者が理解できる方法で伝え、引き出された住民の力を発揮できる場を創造する橋 渡し役がいなければ、成果は見込めない。

自立しようとしている人々が求めているのは、自分の生活がよくなったと実感できる成

149

果であり、自分たちが使いこなせる仕組みなのである。同時に、一村一品運動を継続させる ためには、主体は責任とリスクを負うことを意識しなければならず、マネジメントできる知 識と経験値を持つ人材や組織が自ら能力を高めていこうとする姿勢が必要なのである。ビ ジネスとの連携は、課題をたちどころに解決する魔法の杖ではない。採用者が自らの能力を 高めるための責任とリスクを負う覚悟があるのなら、適切な運動のファシリテーターを得 て、その継続可能性が高められると考える。

150 謝辞

本論文の作成にあたっては、多くの方にご指導、ご協力、およびご助言をいただいた。こ の場を借りて感謝の意を表す。

法政大学大学院修士課程入学以降、6年半にわたり指導教官を引き受けて下さった藤倉 良教授には、常に的確なアドバイスをいただき、懇切丁寧にご指導をいただいた。テーマを 決めるきっかけや、分析する手法をはじめ、論文を詳細に渡り修正していただいた。海外の ジャーナルに投稿するという道をつくってくださり、採用された際には共に喜んでくださ り、また、論文執筆の壁にぶつかっている際には励まし、時には盾となってくださった。国 内外の出張中、ご多忙ななかにあっても、メールにてのご指導等ご配慮くださり、未熟な筆 者の考えを学術論文にまとめあげることができたのも、ひとえに藤倉教授のご指導による ものであり、感謝の念に堪えない。厚くお礼を申し上げたい。

ご多忙の中、論文の審査を快くお引き受けいただいた先生方にも厚く御礼を申し上げた い。法政大学大学院 サステイナビリティ学専攻の金籐正直准教授には、論文の細部にわた って、常に的確なアドバイスをいただいた。経営の授業を通しての議論は本稿のテーマを深 く考える機会となり、未熟な分野における知見を深めることができた。分析軸がなかなか定 まらなかった時には、本稿で示した学習ファシリテーターのように分かりやすい表現で、論 文の質を上げるためのヒントを提示していただいた。また、アジア経済研究所 新領域研究 センター上席主任調査研究員の佐藤寛氏には、大変お忙しいなか、時間をさいてくださり、

また大学に足を運んで下さり、今後の研究課題となるような大きな示唆をいただくと同時 に、学問の難しさを改めて教えていただいた。主査・副査の先生方から、多くの貴重なコメ ントをいただいたからこそ筆者が論文で示したいことが明らかになり、まだまだ課題を抱 えていることを深く認識した上での完成に至った。重ねてお礼を申し上げたい。法政大学大 学院公共政策研究科の吉田秀美客員教授も数々の現地調査において貴重なアドバイスをい ただいた。お礼を申し上げたい。

151

独立行政法人国際協力機構キルギス共和国事務所の菊池和彦事務所長、大山高行前所長 をはじめ、関係者のみなさまには、度重なる調査やシニア海外ボランティアとしての訪問に、

おおいなるサポートをいただいた。心より感謝の意を表したい。特に、プロジェクトの原口 明久チーフアドバイザーには、詳細な資料やコメントを頂いただけでなく、調査の機会下さ り、お忙しいなか、筆者が帰国後も質問に応じていただいた。また、シニアボランティアと してプロジェクトの内側から見る機会への参加も提案してくださった。同様にプロジェク トに関わっていた、吉澤由美子JICA専門家、及川美穂JICA専門家、および青年海外協力隊 員(当時)の河田優紀JICA専門家、北島すみれJICA専門家のみなさんからも多くのご助言 をいただいた。キルギス滞在には生活を含め、常にお世話になったMs. Nargiza Erkinbaeva、

Mrs. Bermet Asakeeva、 Ms. Nazgul Omuraleiva には、再度キルギスを訪問した際にも 大変お世話になった。心より感謝の意を表したい。

マラウイ共和国に関しては、JICA短期ホランティア(当時)の澤英絵氏、青年海外協力 隊員(当時)の砂田遼平氏、石井里佳氏からも、貴重な情報をいただいた。心より感謝を表 したい。

一村一品運動の提唱者であり前大分県知事の故平松守彦氏にも2011 年8 月にもお話を うかがうことができ、激励いただいた。大分県にある国際一村一品交流協会の理事長 内田 正氏には、2011 年以降、度重なる大分現地視察の際に、多大なるご協力を賜った。一村一 品運動に関わっている企業や協同組合に自ら引率してご案内いただいた。一村一品運動の 旗振り役として長年にわたりご活躍されている内田氏にご協力いただけたことには感謝の 念に堪えない。同協会の佐藤みどり氏はじめ、一村一品運動に携わってこられたみなさまに も研修で大変お世話になった。一村一品運動に関する貴重な資料もご共有くださり、研究を 進める上でとても参考になった。大分県日田市大山町ひびきの郷の三笘善八郎氏、緒方英雄 氏、大分県由布市亀の井別荘の中谷健太郎氏、後藤佐代子氏、豊の国づくり塾卒塾生のみな さまには詳細なお話を聞かせていただき、ご協力を賜った。心より感謝を表したい。