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イシククリ州コミュニティ活性化プロジェクト(J-CEP)

第4章 キルギスにおける一村一品プロジェクト

4.3 地域開発の背景と目的

4.3.2 イシククリ州コミュニティ活性化プロジェクト(J-CEP)

J-CEP フェーズIの実施にあたり、日本人専門家が派遣されている(累計12名)。業務

155 Kumtorは、カナダに本社を置く金採掘会社で、イシククリ州の南部バルスコーン渓谷の先

標高4,000mの地点に金採掘拠点がある。金採掘権を獲得する代わりに、特に地元イシククリ州

南部への利益還元を目的として、多くの資金を拠出してきていた。しかし、キルギスの習慣によ る影響や金採掘による汚染問題などにより、地域への貢献に関する理解は進んでおらず、批判が 飛び交っていた。同社は状況を改善するため、村人へのインタビュー調査からキルギス OVOP との連携について打診してきた(筆者インタビュー、原口明久氏、(2012年6月28日)。

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委託形式による実施体制が採用され、専門家はキルギスに常駐せず、一定期間の滞在を繰り 返しながら技術協力を行う体制を取った(JICA 2011: 7)。専門家は、一村一品産地形成、

モニタリングなどの業務調整、地域開発アドバイス、人材育成・組織強化など、幅広い分野 を担当した。また、業務に必要な一般事務機器、ハーブ乾燥機、PHメーター等が機材供与 された。イシククリ州第一副知事をはじめとする13 名が、大分県での運動の取り組みやト レーニングセンター見学などの本邦研修や、コミュニティ・エンパワメントに係るレクチャ ーを受講した(JICA 2011: 8)。カラコル市(図4.3)をプロジェクトの拠点とし、キルギス 側は事務所(当時)を州政府の建物内に設置した。さらに、同プロジェクトの効率的な実施 のために、州政府のみならず、Rayon およびAOからCBO に対する施設の無償提供や許 認可に係る経費の免除もしくは減免措置が取られた(JICA 2011:9)156。しかし、本邦研修 を受けたキルギス側の行政官が、その知見を活かして、活動を牽引することはなかった。

【写真 1】 市場 【写真 2】イシククリ州庁舎 【写真 3】 中心地 図 4.3 カラコル市内の様子

出典:筆者撮影(2015 年)

(3) J-CEPの評価

J-CEPでは、OVOP 製品の開発と同時に、コミュニティの活性化が目指された。しかし、

156 Karakol Srudent Research Shop (KSRS) の無償提供、コミュニティビジネス起業に係る許 認可経費の割引・免除で約 1,820USDに 相当する(JICA2011: 9)。

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プロジェクトの終了時評価時点で参加していたCBOは6つであり、その規模も3名から10 名程度と小さかったことから、州全体へ普及は期待できなかった。一部のCBOについては、

ある程度の品質を持つ産品の生産が可能であったが、限られたCBOに対する支援にとどま り、マーケティングに関する取り組みがあまりなされなかった点等が反省点としてあげら れている(JICA 2011)。ヌルマンベトヴァ(2015)は、J-CEPで支援された6つのグル ープを中心としたアンケート調査、およびインタビューを行い157 、J-CEPが農村部の住民 に対してどのような影響を及ぼしているのかを分析して、以下の点3を明らかにしている

(同書:223-224)。

①各メンバーの個人レベルではプロジェクトを通して、個人の生産技術向上のために各 種のトレーニング、セミナーに参加しているが、雇用機会の獲得、現金収入増加、経済主体 への移行の面では、OVOPの効果があまり現れていない。

②生産者グループレベルに関しては、非参加の生産者と比べて、生産技術向上、商品の品 質向上においてプロジェクトの影響が見られているのは主にフェルト商品生産者である。

③地域コミュニティレベルにおいて、地域の活性化といった経済的な側面よりは、コミュ ニティ間の交流の増加、女性のエンパワーメントといった社会的な側面において、OVOPの 影響が現れている。

さらにヌルマンベトヴァは、一村一品運動の第二原則である「自主自立・創意工夫」につ いて考察し、J-CEP における住民と JICA との関係を、単に「援助を受ける」ことを目的 に加入しているグループが多く、「住民は受動的な立場にあり、上から下へといった一方通 行的な関係になっていることが分かる」と指摘している(ヌルマンベトヴァ2015: 224)。

157 調査はイシククル州5区10村で実施された(2011年7月19日‐29日)。アンケートは48 グループ65人から回収し、インタビューは14グループ24人を対象としていた。14グループ が生産していたのは、フェルト商品(6種)、手作りハーブ石鹸、ジュース、ジャム(2種)、チ ーズとドライフルーツである。フェルト商品以外の生産活動は季節限定であった(ヌルマンベト

ヴァ2015: 215)。調査は、J-CEPの延長フェーズの時期に実施されているが、調査対象者が

J-CEPからのグループが中心であるため、本稿では、J-CEPの結果を示す根拠とした。

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プロジェクトを推進するために州政府内に設置した OVOP の推進母体(Project Implementation Unit :PIU)は機能せず(JICA2011: 98)、2010 年4 月には、キルギス 政府への国民の不満から政変が発生し、大統領と政権が交代し、これに伴い各州知事など も交代して、不安定な政治状況が続いた。こうした状況の変化もあって、キルギスの行政 に大分県と同様の役割を期待することが困難となった158。J-CEP では、州行政府の行政 機関としての限界も、プロジェクトの持続性確保の面での大きな障害となったが、フェー ズIの評価結果により明らかになった課題の多くも、フェーズIIにおいて克服されなか った(JICA 2011:93)。そのため、CBO を主体とするキルギスの一村一品運動は、OVOP 組合の支援にシフトされ、J-CEP の延長フェーズにおいてビジネスに特化した新しい支 援の形が開始された。