第 9 章 相対論的な光錐弦
14.8 閉じた超弦
閉弦の理論において振動子α,α¯はそれぞれe−in(τ+σ), e−in(τ−σ)の展開係数である(式(13.24)).そこで生 成演算子α,α¯の作る状態をそれぞれ左進セクター,右進セクターと呼ぶ*9.左進セクターと右進セクターの 各々は開弦の状態に当たり,それぞれNSセクターとRセクターを持つ.
*8「時空の」という但し書きは,世界面におけるボゾン・フェルミオンとの区別を強調するために用いられている.
*9左進および右進という呼び方は,教科書では既に13.1節において導入されている(p.280).
超対称性を備えた閉弦理論を得るために,状態を 左進セクター:
{NS+
R− }
, 右進セクター:
{NS+
R+
}
と縮小する理論をIIA型と呼ぶ.IIA型の理論における無質量状態は
(NS+,NS+) : ¯bI−1/2|NS⟩L ⊗ bJ−1/2|NS⟩R ⊗ |p+, ⃗pT⟩ 8×8個のボゾン状態,
(NS+,R+) : ¯bI−1/2|NS⟩L ⊗ |R¯b⟩R ⊗ |p+, ⃗pT⟩ 8×8個のフェルミオン状態,
(R−,NS+) : |Ra⟩L ⊗ bI−1/2|NS⟩R ⊗ |p+, ⃗pT⟩ 8×8個のフェルミオン状態,
(R−,R+) : |Ra⟩L ⊗ |R¯b⟩R ⊗ |p+, ⃗pT⟩ 8×8個のボゾン状態
で与えられる.無質量の(NS+,NS+)ボゾンは2つのLorentz添字を持ち,重力子とKalb-Ramond場と,
ディラトンの1粒子状態に同定される.
状態を
左進セクター:
{NS+
R− }
, 右進セクター:
{NS+
R− }
と縮小する理論をIIB型と呼ぶ.
• II型(閉弦のみ)
開いた超弦の複製を左進部分と右進部分に充てて組み合わせる – IIA型
– IIB型
• ヘテロ型(閉弦のみ)
開いたボゾン的な弦を左進部分,開いた超弦を右進部分として組み合わせる.
– E8×E8ヘテロ型 – SO(32)ヘテロ型
• I型(閉弦と開弦)
無向の(12.6節参照)閉弦と開弦による超対称な理論
以上の5種類の超弦理論とM理論(膜を含んでいるが弦理論ではない)は,唯一の理論の異なる極限と見な される.ボゾン的な弦の理論も単一の理論に含まれるかはまだ不明である.
14.8 について
■「閉弦の理論が,……乗法的に組み合わせることによって得られる」(14.8節,l.1,2)について これは左進 演算子αと右進演算子α¯ を乗法的に組み合わせて基底状態に作用させると,閉弦の状態が得られること(式 (13.60))を意味していると考えられる.ここから(R,R)セクターが「 2重に フェルミオン的」(14.8節,
l.11,12)であることが理解される.
■閉じた超弦のセクター(14.75)について 例えば左進セクターにNSセクターとRセクターの両方を用いる ような状態は考えられない.これはNeveu-Schwarz境界条件とRamond境界条件が両立しないため,NSセ クターとRセクターが排他的であることを考えれば当然である.
■IIA型の超弦のセクター(14.77)について 14.7節においてR−を(−1)F =−1のフェルミオン的な状態,
R+を(−1)F = +1のボゾン的な状態と定めた.しかしIIA型の超弦のセクター(14.77):
(NS+,NS+), (NS+,R+), (R−,NS+), (R−,R+)
に対して「時空のボゾンは……(R,R)セクターからも生じ」(14.8節,l.10,11),「時空のフェルミオンは(NS,R) セクターと(R,NS)セクターから生じる」(14.8節,l.12)ためには,右進セクターのR+をフェルミオン的な 状態と見なければならないと考えられる.
■質量の自乗の式(14.78)について ボゾン的な弦理論においては 閉弦理論における質量の自乗(13.48) : α′
2M2=N⊥+ ¯N⊥−2 =α′MR2+α′ML2, 閉弦理論における質量の自乗(12.163) : α′MR2=N⊥−1, α′ML2= ¯N⊥−1 である.そこで超弦に対しても質量の自乗を式(14.78):
α′
2M2=α′MR2+α′ML2
と書いたものと考えられる.ただしMR2とML2は,左進セクターと右進セクターのそれぞれでNSセク ターを考えているかRセクターを考えているかに応じて式(14.37)または式(14.53)を用いなければならな い.質量の自乗を式(14.78)は4つのセクター(14.75)の縮小の仕方に依らない.
ボゾン的な弦理論において,状態間のレベル整合条件α−0 = ¯α−0 は式(13.45):N⊥ = ¯N⊥に書き換えられ るので,これはα′MR2 =α′ML2(p.316,下から 4行目)を意味している.超弦に対しても式(14.37),式 (14.53)より,例えばIIA型理論の無質量状態(14.79–82)が
α′MR2=α′ML2= 0 を満たしているのを見て取ることはできる.
■「a = 1,· · · ,8 および¯b = ¯1,· · ·,¯8 により」(p.317,l.13)について 状態(14.80)は¯b = ¯1,· · · ,¯8 と I= 2,· · ·,9により,状態(14.81)はa= 1,· · ·,8とI= 2,· · ·,9により8×8 = 64種類ある.Ramond基 底状態の添字a,¯bのとり得る値の個数はLorentz添字Iのそれと一致している.
■「NS−セクターを用いることになり,タキオンを含むスペクトルが生じてしまう」(p.318,l.14,15)につい て NS±セクター,R±セクターのうちタキオンを含むのはNS−セクターのみである.
計算練習14.7
式(14.79)の線形結合 ∑
I,J
RIJ×(14.79)
を作ったとき,式(13.64)に対応する重力子の1粒子状態の数は式(10.108):
n(D) = 1
2D(D−3) = 35 (∵D= 10) である.式(13.70)に対応するKalb-Ramond状態の数は反対称なAIJの数
1 +· · ·+ 7 = 1
2 ·7·8 = 28
だけある.式(13.71)に対応するディラトン状態は1つだけなので,以上の状態数の総和は 35 + 28 + 1 = 64
になる.
計算練習14.8
左進セクターのR±からR−を選んでも一般性を失わない(p.317).NS−セクター,R±セクターの 状態は整数値のα′M2 を持ち,NS+セクターの状態は半整数値のα′M2 を持つ.よって条件α′MR2 = α′ML2(p.316,下から4行目)を満たすためには,右進セクターのNS±からNS+を選ぶことはできない.
そこで
左進セクター:
{NS− R−
}
, 右進セクター:
{NS− R±
}
とすれば良いと考えられる.