第 9 章 相対論的な光錐弦
9.5 運動方程式の光錐解
パラメーター付けの定義式(9.27):
n·X(τ, σ) =βα′(n·p)τ, n·p=2π β n· Pτ はnµ =
(−√12,√1
2,0,· · ·,0 )
と選ぶと
X+(τ, σ) =βα′p+τ, p+= 2π
β Pτ+ (24)
となる(光錐ゲージ).このとき制約条件(9.34):( ˙X±X′)2= 0は X˙−±X−′= 1
βα′ 1
2p+( ˙XI ±XI′)2, (25)
XI ≡(X2, X3,· · ·, Xd) :横方向座標
となる(p+̸= 0,したがってp+>0を仮定した(一般にp+≥0である,2.5節)).ただし繰り返された添字 Iについて和をとる(以下同じ).
すると弦の時間発展は
XI(τ, σ), p+, x−0(X−の積分定数)
によって決定される.実際,Xµ(τ, σ)のうちXI(τ, σ)が与えられているとき,X±(τ, σ)を求めれば完全な解 が得られる.そして自由端点を持つ開弦を考えると
• X+(τ, σ)は与えられたp+を用いて式(24):
X+(τ, σ) = 2α′p+τ (開弦に対してβ= 2) と定まる.
• X−= (X0−X1)/√
2はXµと同じ波動方程式と境界条件を満たすため X−(τ, σ) =x−0 +√
2α′α−0τ+i√ 2α′∑
n̸=0
1
nα−ne−inτcosnσ と展開される.
今XI が,したがってその展開係数αInが与えられており,
式(25)よりこれを用いてX−の展開係数α−n は
√2α′α−n = 1
p+L⊥n, L⊥n ≡ 1 2
∑
p∈Z
αIn−pαIp:横方向のVirasoroモード と表される.よって積分定数x−0 が与えられればX−が定まる.
弦の質量M は
M2=−p2= 2p+p−−pIpI
から求められる.α−n が横方向のVirasoroモードで与えられることを用いると M2= 1
α′
∑∞ n=1
naIn∗aIn
が得られる.M2≥0となっているので,古典的な弦の質量M は実数であることが保証される.
弦を量子化すると
• M2は量子化される.
– 自然界において,連続した質量の値をとる粒子状態は観測されない.
• 無質量状態は,Maxwell理論や重力とは全く異なったものになる.
• M2の式に付加定数が現れる → ゲージ場と重量を記述可能.
9.5 について
■相対論的スカラー積(9.64) 相対論的スカラー積(2.59):
a·b=−a−b+−a+b−+a2b2+a3b3 を空間がd次元の場合に一般化しa=bとおくと
a2=−2a+a−+aIaI
となる(Iについて和をとることを忘れないように,(aI)2とせずにaIaI と書いている).ここでa= ˙X±X′ とおいたものが式(9.64)の左辺である.
■「p+がゼロになる……質量のない粒子が正確にx1の負の向きに運動する場合に限られている」(p.185,l.16
〜18)について
p+≡p0+p1
√2 = 0, ∴p1=−p0=−√
m2+p⃗2 となるとき,p1≤0であり,また|p1|=√
m2+⃗p2が必要である.ところで√
m2+⃗p2≥ |⃗p| ≥ |p1|であり,
等号が成り立つのはm= 0, pI = 0のときである.
■「M2= 0となり,……弦は長さのない点になってしまう」(p.188,l.1,12)について これは弦が長さを持 つとき,弦の張力に逆らってその長さまで引き伸ばす仕事に相当するエネルギーを弦は蓄えるために,弦が質 量を持つということと整合している.
計算練習9.4
X−のFourier展開(9.72)における展開係数α−n が式(9.77)で与えられるため,式(9.80)を得る.
計算練習9.5
すべてのaInをゼロにすると,式(9.52),式(9.53)で定義されるαInのうちn̸= 0のものがゼロとなる.こ のとき横方向のVirasoroモード(9.77)で与えられるα−n もまたn̸= 0のものがゼロとなる.よってX−の
式(9.72)はXI(τ, σ) =xI0+√
2α′αI0τと類似の式
X−(τ, σ) =x−0 +√ 2α′α−0τ になり,σ依存性が消失する.
問題9.2(p.189) (a)
式(9.65): ˙X−±X−′=βα1′2p1+( ˙XI ±XI′)2より X˙I = 1
βα′ 1
2p+{( ˙XI)2+ (XI′)2}, X−′= 1 βα′
1 2p+
X˙I·XI′ を得る.よってXI が波動方程式を満たすならば
∂σ(∂τX−)−∂τ(∂σX−)
= 1 βα′
1
2p+[∂σ{( ˙XI)2+ (XI′)2−2∂τ( ˙XI·XI′)]
= 1 βα′
1
p+{X˙I·(∂σ∂τXI) +XI′·XI′′−X¨I·XI′−X˙I·(∂τ∂σXI)}
= 1 βα′
1
p+XI′·(XI′′−X¨I)
=0
となる.これはベクトル場(∂τX−, ∂σX−)が渦なしであることを意味するから,式(9.66)によりその線積分 として得られるX−の値は選んだ積分路に依存しない.
(b)
各座標Xµは波動方程式(9.39)を満たすので,X−= (X0−X1)/√
2もまた波動方程式を満たすと考えら れる.
小問(a)より
X¨−−X−′′
= 1 βα′
1
p+{X˙I·X¨I +XI′·(∂τ∂σXI)−(∂σ∂τXI)·XI′− {X˙I·XI′′}
= 1 βα′
1
p+XI′·( ¨XI−XI′′)
となるので,横方向座標XI が波動方程式を満たすならば,X−もまた波動方程式を満たす.
(c)
Dirichlet境界条件(6.55) : ˙XI = 0, Neumann境界条件(6.41) :XI′= 0 のいずれに対しても端点で
X−′= 1 βα′
1 p+
X˙I·XI′ = 0 となるためX−はNeumann境界条件を満たす.
問題9.5(p.190) (a)
式(9.65): ˙X−±X−′=βα1′2p1+( ˙XI ±XI′)2より X−′= 1
2p+{−4a2cos2(τ−σ)−4b2sin2(τ−σ) + 4¯a2cos2(τ+σ) + 4¯b2sin2(τ+σ)}+ (クロス・ターム) を得る.よって制約条件(9.67):
0 =
∫ 2π 0
dσ∂X−
∂σ = 2π
p+(−a2−b2+ ¯a2+ ¯b2) はa2+b2−¯a2−¯b2= 0を与える.
(b)
a=b= ¯a= ¯b=rは小問(a)で得た制約条件を満たしている.このとき X˙(2)±X(2)′
=2r√
2α′{cos(τ±σ)−sin(τ±σ)},
∴X˙−=8r2
p+{1−cos(τ+σ) sin(τ+σ)−cos(τ−σ) sin(τ−σ)}, X−′=8r2
p+{cos(τ+σ)−sin(τ+σ)}{cos(τ−σ)−sin(τ−σ)}
=8r2
p+[{cos(τ+σ) cos(τ−σ) + sin(τ+σ) sin(τ−σ)} − {sin(τ+σ) cos(τ−σ) + cos(τ+σ) sin(τ−σ)}]
=8r2
p+{cos(2σ)−sin(2τ)} となるので
X−(τ, σ) =X−(0,0) +
∫ τ 0
X˙−(0, τ)dτ+
∫ σ 0
X−′(τ, σ)dσ
=8r2 p+
(1
2cos(2τ) +1
2sin(2σ) +τ−σsin(2τ) )
+ const.
また
pµ=
∫ 2π 0
Pτ µdσ= 1 2πα′
∫ 2π 0
X˙µdσ を用いて運動量を計算すると
p−= 1 α′
8r2
p+, pI = 0 となるので,弦の質量M は
M2=−p2= 2p+p−−pIpI = 16r2
α′ , ∴M = 4r
√α′ と求まる.
光錐ゲージまとめ
第9章におけるパラメーターの制約条件とその帰結は図23のように整理される.
図23 光錐ゲージまとめ
第 10 章 各種の光錐場とボゾン 10.1 序論
光錐ゲージは
• τが光錐時間X+に関係づけられ
• σがp+の密度を一定にするように選ばれている
パラメーター付けであり,これを採用すると弦の運動方程式は波動方程式に簡略化される(9.5節).
• スカラー場
– ゲージ不変性を持たない
– 基本的なスカラー粒子は発見されていない – 最も単純な場の理論
– 弦理論においてスカラー粒子が現れる(例:タキオン,ディラトン)
• 電磁場
– ゲージ不変性を持つ
– 電磁場の量子論に関係づけられる粒子は光子
• 重力場
– ゲージ不変性を持つ