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タキオンと D- ブレイン崩壊

第 9 章 相対論的な光錐弦

12.8 タキオンと D- ブレイン崩壊

一様な自由スカラー場ϕ(t)に対して L= 1

2

ϕ˙2−V(ϕ), V(ϕ) =1

2M2ϕ2,ϕ¨+M2ϕ= 0 である.

M2>0のとき

V(ϕ)はϕ= 0において極小値をとるため,ϕ= 0の状態は安定である.実際このとき ϕ(t) =Acos(M t) +Bsin(M t)

となり,場の値はϕ= 0の付近を振動する.

M2<0のとき

V(ϕ)はϕ= 0において極大値をとるため,ϕ= 0の状態は不安定である.

実際このときβ=

−M2とおくと

ϕ(t) =Acosh(βt) +Bsinh(βt) となり,自明な解ϕ= 0を除けば|ϕ(∞)|=となる.

開弦におけるタキオン状態はM2=1/α<0を持つので不安定性が示唆される.フェルミオンを含む超弦 理論においてもタキオンが現れ得るため,その不安定性について理解しなければならない.

開弦はD25-ブレインに接続している.そこでD25-ブレインのエネルギー密度T25をタキオンのポテンシャ ルに組み込み,さらに場の相互作用を表す3次以上の項を加えて

V(ϕ) =T25 1

ϕ2+βϕ3+· · ·

とする.ϕ= 0の近くではV(ϕ)≃T251ϕ2なので,ϕ= 0の状態は不安定である.不安定性により場の値 がϕ >0の方へ変化する場合を考える.このときポテンシャルの値はV(0) =T25から減少する.これはタキ オンがD25-ブレインのエネルギーを低下させるものと解釈される.場の値がV) = 0となるϕ=ϕに達 するとD25-ブレインは消失し,これに端点を接続されていなければならない開弦もともに消失する.ϕ=ϕ の状態は安定であることが証明されている(図24参照).

計算練習12.8

Euler-Lagrange方程式

0 =µ ∂L

∂(∂µϕ)−∂L

∂ϕ =−∂µµϕ+V(ϕ) は場の運動方程式(12.197)を与える.

図24 D25-ブレインを基礎に置く開弦理論のタキオンポテンシャル(教科書の図12.3(p.268)を改変)

第 13 章 相対論的な量子閉弦 13.1 モード展開と交換関係

弦理論は当初,ハドロンの理論であると考えられた.しかし閉弦から現れるスピン2を持つ無質量状態に対 応するハドロンは知られていなかった.その後,この無質量状態のひとつを重力子に同定し得ることが判明 した.

ゲージ条件

n·X =α(n·p)τ, n·p= 2πn· Pτ の下では,開弦と閉弦のいずれに対しても

制約条件 ( ˙X±X)2= 0, 運動方程式 X¨µ−Xµ′′= 0, Pσ,Pτの式 Pσµ= 1

2παXµ′, Pτ µ= 1 2πα

X˙µ

が成り立つ(9.3節).閉弦を考えよう.このときσの値が2πの整数倍だけ異なる点は同じ点を表す.よって 周期性条件

Xµ(τ, σ) =Xµ(τ, σ+ 2π)

が課せられることに注意して,制約条件( ˙X±X)2= 0の下で波動方程式を解くと Xµ(τ, σ) =xµ0+

αµ0τ+i

α 2

n̸=0

einτ

nµneinσ+ ¯αµneinσ) となる.開弦に対する式(9.52):αµ0 =

pµと同様に,αµ0 は弦の運動量に比例する:

pµ =

0

Pτ µ(τ, σ)dσ= 1 2πα

0

X˙µ(τ, σ)dσ=

√2

ααµ0,αµ0 =

α 2pµ. 量子論に移り正準交換関係

[XI(τ, σ),Pτ J(τ, σ)] =iδ(σ−σIJ, [x0, p+] =−i, etc.

を課すと,2組の振動子α, α¯ に対する交換関係

[ ¯αIm¯Jn] =m+n,0ηIJ,Im, αJn] =m+n,0ηIJ,Im¯Jn] = 0 を得る.ただしα¯µ0 ≡α0µである.n≥1に対して

αIn=aIn

n, αIn=aIn n,

¯

αInaIn

n, α¯In= ¯aIn n によってaIn, aIn,a¯In,¯aInを導入すると,これらは

aIm,¯aJn] =δm,nηIJ, [aIm, aJn] =δm,nηIJ, etc.

を満たすため生成・消滅演算子となる.xI0αJn(n̸= 0),αJ0 =√

α/2pJの交換関係 [xI0, αJn] =[xI0¯Jn] = 0 for = 0,

[xI0, pJ] =iηIJ も見出される.閉弦に対してハミルトニアンは

H =αp+p である.

13.1 について

■式(13.13)について 式(13.13)の左辺XLµ(u+ 2π)−XLµ(u)がゼロでない値を持つことは,XLµ(u)が

「周期条件から外れる」(p.277,l.17)ことを意味する.式(13.13)の右辺の値はuに依らないから,左辺 XLµ(u+ 2π)−XLµ(u)の値もまたuに依らない.よって

d

du{XLµ(u+ 2π)−XLµ(u)}= 0, ∴XLµ(u+ 2π) =XLµ(u) である.これはXLµ(u)が「周期2πを持つ周期関数」(p.277,l.20)となることを意味する.

問題13.1 (a)

正準交換関係(13.27)から振動子の交換関係(13.29),(13.30)が得られることを確かめよう.X˙µ±Xµ′の モード展開(13.26)より交換関係(13.28)は

m,n

eim(τ+σ)ein(τ+σ)[ ¯αIm¯Jn] =2πiηIJ d

δ(σ−σ),

m,n

eimσ)einσ)Im, αJn] =2πiηIJ d

δ(σ−σ)

と書ける.第2式は−σ→σ,−σ →σの置き換えにより,振動子の種類α, α¯ の違いを除いて第1式に一 致する.そして第1式の式(12.40)との類似性に注意すると,2式は式(12.45)と類似の振動子の交換関係 (12.39):

[ ¯αIm¯Jn] =m+n,0ηIJ,Im, αJn] =m+n,0ηIJ を与えることが分かる.X˙µ±Xµのモード展開(13.26)より交換関係(13.31)は

m,n

[ ¯αIm, αJn]ei(m+neimσeinσ = 0 を与える.ここから同様に式(13.30):

[ ¯αIm, αJn] = 0 を得る.

(b)

問題10.2(a)と同様の計算を繰り返せば良い.

(c)

振動子の交換関係(13.29),(13.30)および式(13.33):[xI0, pJ] =IJから正準交換関係(13.27)が得られる ことを確かめよう.X のモード展開(13.24)および

X˙J(τ, σ) =αpJ+

α 2

m̸=0

eimτJmeimσ+ ¯αJmeimσ) より

[XI(τ, σ),X˙J(τ, σ)] =α[xI0, pJ] + 2

n̸=0

m̸=0

ei(n+m)τ n

{

In, αJm]ei(nσ+mσ)+ [ ¯αIn¯Jm]ei(nσ+mσ) }

IJ+ 2 ηIJ

n̸=0

{ein(σσ)+ein(σσ)} (m=−nの項のみ寄与を持つから)

IJ

nZ

ein(σσ)

=2παIJδ(σ−σ),

∴[XI(τ, σ),Pτ J(τ, σ)] = 1

2πα[XI(τ, σ),X˙J(τ, σ)]

=iηIJδ(σ−σ) : (13.27) を得る.

(d)

正準交換関係(13..27)から振動子の交換関係(13.29),(13.30)が得られたものとして,さらに交換関係 (13.33):[xI0, pJ] =IJを導くことを考えよう.正準交換関係

[XI(τ, σ),X˙J(τ, σ)] = 2παIJδ(σ−σ)

の両辺を0≤σ≤2πにわたって積分すると,右辺は2παIJ になる.一方,左辺において小問(c)で計算 したように

i

α 2

n̸=0

einτ

nIneinσ+ ¯αIneinσ),X˙J(τ, σ)

=

i

α 2

n̸=0

einτ

nIneinσ+ ¯αIneinσ),

α 2

m̸=0

eimτJmeimσ+ ¯αJmeimσ)

=iα

2ηIJ

n̸=0

{ein(σσ)+ein(σσ)}

なので,これを0≤σ≤2πにわたって積分するとゼロになる.よって

0

dσ[XI(τ, σ),X˙J(τ, σ)] =

0

dσ[xI0+

αI0τ,X˙J(τ, σ)] = 2π[xI0+

αI0τ,X˙J(τ, σ)]

だから

[xI0+

αI0τ,X˙J(τ, σ)] =ηIJ を得る.ここでX˙J(τ, σ)をモード展開すると

[xI0, αJ0] +

α 2

m̸=0

eimτ {

[xI0, αJm]eimσ + [xI0¯Jm]eimσ }

=ηIJ (34) となる.= 0として両辺に∫

0einσ を作用させると

α 2

{[xI0, αJn]einτ+ [xI0¯Jn]einτ}

= 0 となる.これが任意のτに対して成り立つためには

[xI0, αJn] = 0, [xI0¯Jn] = 0 for = 0 でなければならない.さらにこれを式(34)にもどすと

[xI0, αJ0] =ηIJ, ∴[xI0, αJ0] =i

α

2ηIJ : (13.30) を得る.