第 9 章 相対論的な光錐弦
10.6 重力場と重力子状態
注意 3.6節の箇所で述べたように,線形化されたEinstein方程式(3.82)には付加的な項が現れると考えら れる.しかしここではひとまず式(3.82)が正しいと仮定して,教科書の通りにまとめる.次いで続く
「10.6について」にて,Einstein方程式を訂正しても主要な結論に影響はないことを確かめる.
線形化されたEinstein方程式(8.32) : ∂2hµν−∂α(∂µhνα+∂νhµα) +∂µ∂νh= 0, ゲージ変換(3.84) : δhµν=δ0hµν ≡∂µεν+∂νεµ
は,hµν(x)とεµ(x)のFourier変換hµν(p), εµ(p)に対する式
Sµν(p)≡p2hµν−pα(pµhνα+pνhµα) +pµpνh= 0, δ0hµν(p) =ipµεν(p) +ipνεµ(p)
になる.
ゲージパラメーターεµを適当に選んでゲージ変換を行えば,光錐ゲージ条件 h+µ= 0, µ= +,−, I
を満たすようなhµνをとれる.光錐ゲージにおいてp+= 0が仮定される.このとき運動方程式は 0 =S++(p) = (p+)2h, ∴0 =h=ηµνhµν =hII
となる.このh= 0をS+ν(p) = 0に代入すると
pαhνα = 0 が得られ,さらにこれをSµν(p) = 0にもどすと
p2hµν = 0
を得る.よってp2 ̸= 0のときhµν = 0である.p2= 0のとき,対角和がゼロになる条件hII = 0と対称性 hIJ=hJ Iの下でhIJ は
n(D) = 1
2D(D−3)
個の独立な成分を持つ.そしてpαhνα= 0によれば,横方向成分hIJを決めると hI−= 1
p+pJhIJ によってhI−が決まり,
h−−= 1 p+pIh−I
によってh−−が決まる.以上で光錐ゲージ条件h+µ= 0において残された自由度を担う量(hIJ, hI−, h−−) の全てが決まる.古典的な重力波は質量殻p2= 0上の各点あたりにn(D)個の自由度を持つ.
10.6 について
■Einstein方程式(3.82) の訂正に伴う変更 3.6節の箇所で述べたように,線形化されたEinstein方程式
(3.82):
∂2hµν−∂α(∂µhνα+∂νhµα) +∂µ∂νh= 0
の左辺には付加的な項ηµν(∂α∂βhαβ−∂2h) を補う必要があると考えられる.このとき場のFourier成分 hµν(p)についての対応する式(10.89)は
{p2hµν−pα(pµhνα+pνhµα) +pµpνh}+ηµν(pαpβhαβ−p2h) = 0 に修正される.しかしこのときにも光錐ゲージ条件(10.98)の下で,やはり
h= 0 : (10.100), hII = 0 : (10.101) が成立する.また式(10.102)は
{p2hµν−pµ(pαhνα)−pν(pαhµα)}+ηµνpαpβhαβ= 0 (26) に置き換わるけれど,ここでµ= +またはν= +と置いて得られる2式
p+pαhνα+η+νpαpβhαβ= 0, −p+pαhµα+ηµ+pαpβhαβ= 0
を辺々引くと再び式(10.103):pαhνα= 0を得る.さらにこれを上式(26)に戻せば,光錐ゲージの下での運動 方程式として式(10.104):
p2hµν = 0 が導かれる.よって以降の教科書の議論はそのまま成り立つ.
■n(D)の式(10.108)について 行列(hIJ)の上三角要素と対角要素の合計数は 1 + 2 +· · ·+ (D−2) = 1
2(D−1)(D−2)
である(行列(hIJ)のk(= 1,2,· · · , D−2)行目に考えている要素はD−k+ 1個含まれる).対角和がゼロ となる条件から,独立な要素の個数が1だけ減少する.
問題10.3
この問題は11.5節で言及される.
(a)
Aµ=Bµ
⇒ A±=A0±A1
√2 = B0±B1
√2 =B±, AI =BI.
(b)
Lorentz添字µ, ν = 0,1,2,3を持つテンソルRµν =AµBν に対して,Rµν =AµBν がµ, νを光錐成分
±, Iにとっても成り立つことを要求すると R±± =A±B±= A0±A1
√2
B0±B1
√2 =1
2{A0B0±A0B1±A1B0+ (±1)(±1)A1B1}
=1
2{R00±R01±R10+ (±1)(±1)R11} より
R++=1
2(R00+R01+R10+R11), R+−=1
2(R00−R01+R10−R11), R−+=1
2(R00+R01−R10−R11), R−−=1
2(R00−R01−R10+R11) を得る.同様に
R±I = 1
√2(R0I±R1I), RI± = 1
√2(RI0±RI1) を得る.以上よりLorentzテンソルの等式関係Rµν =Sµνは光錐成分の等式関係
R++= 1
2(R00+R01+R10+R11) = 1
2(S00+S01+S10+S11) =S++, etc.
を含意している.
なお,光錐座標への変換
xµ→x′µ, x′+ =x0+x1
√2 , x′−= x0−x1
√2 に対して
(aµν)≡ (∂x′µ
∂xν )
=
1/√
2 1/√ 2 0 1/√
2 −1/√ 2 0
0 0 1
であり(ただし例えば右下の1は(D−2)×(D−2)の単位行列を表す),上で得た光錐成分の表式はテンソル の変換則
R′µν =aµρaνσRρσ に他ならない.
(c)
小問(b)の関係は計量テンソルの正しい光錐成分 η±±=1
2(η00+η11) =1
2{(−1) + 1}= 0, η±∓=1
2(η00−η11) =1
2{(−1) + (−1)}=−1, η±I =ηI±= 0
を与える.
(d)
F±±=0,
F±∓=∓F01=∓Ex,
F±I = 1
√2(F0I±F1I) =
√1
2(Ey±Bz) (I= 2)
√1
2(Ez±(−By)) (I= 3) ,
FI±= 1
√2(FI0±FI1) =−F±I.
以上のように,Fµν は添字を光錐成分に選んだ場合にも反対称となる.
第 11 章 点粒子の光錐量子化 11.1 光錐粒子
相対論的な点粒子に対して
S=
∫
Ldτ, L=−m√
−x˙2,
∴pµ≡∂L
∂x˙µ = mx˙µ
√−x˙2, dpµ dτ = 0
である.ただしτは無単位のパラメーターとし,τによる微分をドットで表す.運動量pµは運動の定数であ り,p2+m2= 0を満たしている.
弦に対する光錐ゲージ条件X+(τ, σ) =βα′p+τと類似の条件 x+= 1
m2p+τ を粒子に対して課すと,運動量の表式と運動方程式はそれぞれ
pµ=m2x˙µ, x¨µ= 0
と簡単になる.(τを無単位に選んだので,第1式の両辺の単位(次元)はこれで合っている.)p+とpIを指 定すると,条件p2+m2= 0から
p−= 1
2p+(pIpI+m2) と定まり,これを用い点粒子の運動は
pµ=m2x˙µ ⇒ x−(τ) =x−0 + p−
m2τ, xI(τ) =xI0+ pI m2τ
と表される(x+は光錐ゲージ条件x+=m12p+τによって与えられる).以上より独立な力学変数を (xI, x−0, pI, p+)
に選ぶことができる.xI0の代わりにxIを選んだのは,座標と運動量の対称な取扱いのためである.
11.1 について
■点粒子の光錐ゲージ条件(11.7)について これはスカラー場のFourier展開の式(10.31)において導入した 変数τの定義式
x+= 1 m2p+τ と同じ形をしている.
■式(11.8) 第2の等号では光錐ゲージ条件(11.7)によりx˙+=p+/m2となることを用いる.