第 9 章 相対論的な光錐弦
11.6 光錐 Lorentz 生成子
相対論的な点粒子について,Lorentz変換δxµ=εµνxνに関する対称性からチャージ Mµν=xµpν−xνpµ
の保存が結論される.そしてLorentz共変な交換関係
[xµ(τ), pν(τ)] =iηµν, [xµ(τ), xν(τ)] = 0, [pµ(τ), pν(τ)] = 0 を課すと,チャージMµν は座標のLorentz変換を生成すること
δxρ= [
−i
2εµνMµν, xρ ]
=ερνxν
が導かれる.
Lorentz共変な交換関係の下では
[Mµν, Mρσ] =iηµρMνσ−iηνρMµσ+iηµσMρν−iηνσMρµ
が導かれる.これは添字を光錐成分に選んでも成立し,
[M+−, M+I] =iM+I, [M−I, M−J] = 0, etc.
を与える.
次に光錐ゲージを採用した場合を考える.
1. チャージの定義
M+−=x+p−−x−p+= p+τ m2p−−
(
x−0 + p− m2τ
)
p+=−x−0p+, M−I =x−pI−xIp−=
(
x−0 + p− m2τ
) pI−
(
xI0+pIτ m2
)
p−=x−0pI−xI0p−, etc.
と考えると,これらはHermiteではない.そこでチャージをHermite演算子 M+−≡ −1
2(x−0p++p+x−0), M−I ≡x−0pI−1
2(xI0p−+p−xI0), etc.
として定義する.
2. チャージの生成する変換
ここで定義した光錐ゲージにおけるチャージは
座標と運動量のLorentz変換を生成する,光錐ゲージLorentz生成子となる.
ある場合には,これらの変換に世界線へのパラメーターの付け替えが伴う(問題11.7). 3. チャージの交換関係
ここで定義した光錐ゲージにおけるチャージは,
光錐座標における共変な演算子が満たすのと同じ交換関係
[M+−, M+I] =iM+I, [M−I, M−J] = 0, etc.
を満たす.このため光錐ゲージにおける量子論のLorentz不変性が保証される.
11.6 について
■(Mµν)†の式(11.77)
(Mµν)†= (pν)†(xµ)†−(pµ)(xν)† =pνxµ−pµxν であり,
pνxµ =xµpν+ [pν, xµ] =xµpν−iηµν, pµxν =xνpµ+ [pµ, xν] =xνpµ−iηµν を辺々引いて
pνxµ−pµxν =xµpν−xνpµ を得る.
■交換関係(11.81)の光錐成分 問題10.3より交換子[Mµν, Mρσ]の式(11.81)は添字を光錐成分にとって も成り立つ.このことを式(11.83),式(11.84)の導出に用いる.
■交換関係(11.83)
[M+−, M+I] =iη++M−I−iη−+M+I+iη+IM+−−iη−IM++
における4つのηは
η++= 0, η+I = 0, η−+=−1, η−I = 0
だから,「ηがゼロにならない唯一の添字の組合せは,第1の生成子から−を選び,第2の生成子から+を選 ぶ場合に限られる」(p.227,l.18,19).η−+を持つ項は−iη−+M+I =iM+I なので
[M+−, M+I] =iM+I : (11.83) を得る.
■交換関係(11.84) 交換子[M−I, M−J]の計算に現れる4つのηは
η−−= 0, η−J= 0, ηI−= 0, ηIJ =δIJ
なので「ここではηに添字IとJ を使わねばならない」(p.227,l.24).ηIJを持つ項は−iηIJM−−であり,
反対称性M−−= 0によりこれはゼロになる.ここでLorentzテンソルMµν の反対称性は光錐成分にも受け 継がれることを用いた(問題10.3参照).
■光 錐 ゲ ー ジ に お け る M−I の Hermite 性 式 (11.87) の M−I は Hermite で は な い .実 際 ,式 (11.69):[xI0, p−] =ipp−+ より
M−I−(M−I)†= [x−0, pI]−[xI0, p−] =−ip− p+ ̸= 0 である.一方,式(11.88):
M−I ≡x−0pI−1
2(xI0p−+p−xI0) はそのHermite性が明白である.
■Lorentz不変性の条件 交換関係(11.81)が「量子論のLorentz不変性を保証するために必要なものである」
(p.229,l.2,3)ことについて,交換関係(11.81)が満たされれば,これは両辺が2階反変テンソルから成るの でLorentz変換に対して共変的となる(十分条件).
計算練習11.6
[Mµν, xρ] = [xµpν−xνpµ, xρ] =xµ[pν, xρ]−xν[pµ, xρ] =xµ(−iηνρ)−xν(−iηµρ) =iηµρxν−iηνρxµ : (11.78).
計算練習11.7
式(11.81)の右辺においてµとν を入れ替えると
(第1項)→ −(第2項), (第2項)→ −(第1項), (第3項)→ −(第4項), (第4項)→ −(第3項) となることに注意すれば良い.
計算練習11.8
問題10.3の結果R+−= 12(R00−R01+R10−R11)よりM+−=M10を得る.
問題11.5 (a)
[Mµν, pρ] = [xµpν−xνpµ, pρ] = [xµ, pρ]pν−[xν, pρ]pµ =iηµρpν−iηνρpµ.
(b)
[Mµν, xρ]の式(11.78)と小問(a)の結果を用いると [Mµν, Mρσ] =[Mµν, xρpσ−xσpρ]
=xρ[Mµν, pσ] + [Mµν, xρ]pσ−xσ[Mµν, pρ]−[Mµν, xσ]pρ
=xρ(iηµσpν−iηνσpµ) + (iηµρxν−iηνρxµ)pσ−xσ(iηµρpν−iηνρpµ)−(iηµσxν−iηνσxµ)pρ
=iηµρMνσ−iηνρMµσ+iηµσMρν−iηνσMρµ : (11.81) を得る.
(c)
式(11.81)より
[M±I, MJ K] =−iηIJM±K−iηIKMJ±
=−iδIJM±K−iδIKMJ±, [M±I, M∓J] =iη±∓MIJ−iηIJM∓±
=−iMIJ−iδIJM∓±, [M+−, M±I] =iη+±M−I−iη−±M+I
=±iM±I, (これは式(11.83)を含んでいる) [M±I, M±J] =−iηIJM±±
=0 (これは式(11.84)を含んでいる) を得る(複号同順).
LorentzテンソルMµνの反対称性は光錐成分にも受け継がれることに注意すると(問題10.3参照),ゼロで ない独立な光錐成分としてM±I, M+−, MIJ をとれる.これらの間の自明でない交換関係には,上で計算し たものの他に
[M+−, M−+] =iη+−M−+−iη−+M−+= 0, [M+−, MIJ] =0,
[MIJ, MKL] =iδIKMJ L−iδJ KMIL+iδILMKJ−iδJ LMKI, [M+−, MIJ] =0
がある.
問題11.6 (a)
M−I ≡x−0pI −1
2(xI0p−+p−xI0) : (11.88)
=(x−0pI−xI0p−) +1 2[xI0, p−] において
[xI0, p−] = [
xI− pI m2τ, 1
2p+(pJpJ+m2) ]
= 1
2p+[xI, pJpJ] =ipI p+ なので
M−I = (x−0pI −xI0p−) + i 2
pI p+ と書ける.
これを用いると
[M−I, M−J] = [x−0pI−xI0p−, x−0pJ−xJ0p−]+i 2
[
x−0pI−xI0p−,pJ p+ ]
+i 2
[pI
p+, x−0pJ−xJ0p− ]
−1 4
[pI p+, pJ
p+ ]
となる.「後ろの項」−14[
pI p+,ppJ+
]
はゼロである.次に [
x−0pI−xI0p−,pJ p+ ]
= [
x−0,pJ p+ ]
pI− [
xI0,pJ p+ ]
p−
において, [
x−0,pJ p+ ]
pI = [
x−0, 1 p+
]
pJpI =ipIpJ
(p+)2 (∵式(11.68)) および
[xI0, pJ] = [
xI− pI m2τ, pJ
]
=iηIJ, [
xI0, 1 p+
]
= [
xI− pI m2τ, 1
p+ ]
= 0
∴ [
xI0,pJ p+ ]
p− = [xI0, pJ]p−
p+ =iηIJp− p+
を用いると [
x−0pI−xI0p−,pJ p+ ]
=ipIpJ
(p+)2−iηIJp− p+ となる.よって「混合項」は
i 2
[
x−0pI −xI0p−,pJ p+ ]
+ i 2
[pI
p+, x−0pJ−xJ0p− ]
= 0 である.
(b)
「前の項」
[x−0pI−xI0p−, x−0pJ−xJ0p−] = [x−0pI, x−0pJ]−[x−0pI, xJ0p−]−[xI0p−, x−0pJ] + [xI0p−, xJ0p−] を考える.再び
[x−0, pI] = 0, [x−0, p−] =ip−
p+ : (11.69), [xI0, pJ] =iηIJ, [xI0, p−] =ipI p+ を思い出すと
[x−0pI, x−0pJ] =x−0[x−0, pJ]pI+x−0[pI, x−0]pJ= 0, [x−0pI, xJ0p−] =xJ0[x−0, p−]pI+x−0[pI, xJ0]p−=ixJ0p−
p+pI−iηIJx−0p−, [xI0p−, x−0pJ] =x−0[xI0, pJ]p−+xI0[p−, x−0]pJ=iηIJx−0p−−ixI0p−
p+pJ, [xI0p−, xJ0p−] =xJ0[xI0, p−]p−+xI0[p−, xJ0]p−=ixJ0 pI
p+p−−ixI0pJ p+p− となるので
[x−0pI−xI0p−, x−0pJ−xJ0p−]
=0− (
ixJ0p−
p+pI−iηIJx−0p− )
− (
iηIJx−0p−−ixI0p− p+pJ
) +
( ixJ0pI
p+p−−ixI0pJ p+p−
)
=0
を得る.以上より[M−I, M−J] = 0が示された.
問題11.7 (a)
M+−=−1
2(x−0p++p+x−0) : (11.86), x+= p+
m2τ, x−=x−0 +p− m2τ に対して
[M+−, x+] =−1 2
τ
m2{[x−0, p+]p++p+[x−0, p+]}
=i τ m2p+, [M+−, x−] =−1
2[x−0p++p+x−0, x−0]−1 2
τ
m2[x−0p++p+x−0, p−]
=−1
2x−0[p+, x−0]−1
2[p+, x−0]x−0 −1 2
τ
m2[x−0, p−]p+−1 2
τ
m2p+[x−0, p−]
=−ix−0 −i τ
m2p−, (∵式(11.69) : [x−0, p−] =ip−/p+) [M+−, xI] =0.
光錐ゲージにおいてもMµν は反対称に定義されるものとする.このとき反対称な変換のパラメーターεµν
をε+−=−ε−+≡εとし,それ以外のεµν をゼロと置くと,
−i
2εµνMµν =−iεM+− となる.これは予想される座標のLorentz変換を生成する:
δxµ=[−iεM+−, xµ]
=
ε
( τ m2p+
)
=εx+=ε+−x− (µ= +)
−ε (
x−0 + τ m2p−
)
=−εx− =ε−+x+ (µ=−) 0 (µ=I)
最後の等号では
ε+−=η+µη−νεµν = (−1)2ε−+=−ε+−=−ε, ε−+=ε を用いた.
第 12 章 相対論的な量子開弦 12.1 光錐ハミルトニアンと交換子
第12章では
• 開弦の量子化を行う.
• 全空間を満たしたD-ブレインの存在を仮定する(↔自由端点の境界条件). 光錐ゲージにおいて
Pσµ=− 1
2πα′Xµ′, Pτ µ= 1 2πα′
X˙µ, X˙−= 1 2α′
1
2p+( ˙XIX˙I+XI′XI′) (27)
⇒ Pτ−= π 2p+
(
Pτ IPτ I+XI′XI′ (2πα′)2
)
(28) と書けることに注意する.
点粒子に関する基本となるSchr¨odinger演算子の組(xI, x−0, pI, p+)からの類推により弦に関する基本とな るSchr¨odinger演算子の組を
(XI(σ), x−0,Pτ I(σ), p+) とし,これらの間に交換関係
[XI(σ),Pτ J(σ′)] =iηIJδ(σ−σ′), [x−0, p+] =−i
を課す(その他の交換子はゼロ).対応するHeisenberg演算子(XI(τ, σ), x−0(τ),Pτ I(τ, σ), p+(τ))も同じ同 時刻交換関係を満たす.
点粒子のハミルトニアン(11.3節)からの類推により弦のハミルトニアンを H =2α′p+p−= 2α′p+
∫ π 0
dσPτ−
=πα′
∫ π 0
dσ (
Pτ I(τ, σ)Pτ I(τ, σ) +XI′(τ, σ)XI′(τ, σ) (2πα′)2
)
(∵式(28))
と仮定する.実際,上で設定した交換関係を用いると,このハミルトニアンに対しHeisenberg方程式は,例 えばXI(τ, σ)の運動方程式
X˙I(τ, σ) = 2πα′Pτ I(τ, σ)
を与えることが確かめられる.これは古典的な運動方程式(27)と整合しているから,上のハミルトニアンは適 正である.なお古典的な境界条件は量子論において,変数を演算子に置き換えた式になる.例えばNeumann 境界条件は演算子∂σXI(τ, σ)に対する条件式
∂σXI(τ, σ) = 0, σ= 0, π になる.
最後にX˙I±XI′を考える.ここで得た運動方程式X˙I(τ, σ) = 2πα′Pτ I(τ, σ)および再び上で設定した交 換関係を用いると,
[
( ˙XI±XI′)(τ, σ),( ˙XJ±XJ′)(τ, σ′) ]
=±4πα′iηIJ d
dσδ(σ−σ′), (29) [
( ˙XI±XI′)(τ, σ),( ˙XJ∓XJ′)(τ, σ′) ]
=0 (30)
が示される(複号同順,0≤σ, σ′≤π). 問題12.1
iP˙τ I(τ, σ) = [Pτ I(τ, σ), H(τ)] = πα′ (2πα′)2
∫
dσ′[Pτ I(τ, σ), XJ′(τ, σ′)XJ′(τ, σ′)]
において
[Pτ I(τ, σ), XJ′(τ, σ′)] =− d
dσ′[XJ(τ, σ′),Pτ I(τ, σ)] =−iηIJ d
dσ′δ(σ−σ′) なので
iP˙τ I(τ, σ) = 1
4πα′(−2iηIJ)
∫
dσ′XJ′(τ, σ′) d
dσ′δ(σ−σ′)
= i 2πα′
∫
dσ′XI′′(τ, σ′)δ(σ−σ′)
= i
2πα′XI′′(τ, σ),
∴P˙τ I =XI′′
を得る.これとX˙I = 2πα′Pτ I:(12.21)を合わせると,演算子もまた波動方程式を満たすこと X¨I = 2πα′P˙τ I =XI′′, ∴X¨I−XI′′= 0
が導かれる.