第 9 章 相対論的な光錐弦
10.4 スカラー場の量子化と粒子状態
古典場の平面波解を,時間依存性e∓iEptを一般化して ϕp(t, ⃗x) = 1
√V
√1
2Ep(a(t)ei⃗p·⃗x+a∗(t)e−i⃗p·⃗x)
と書く.ただし空間を各辺の長さがL1, L2,· · · , Ld の箱と想定しており,V =L1L2· · ·Ld はその体積であ る.箱に周期境界条件を課し,その下で許される⃗pのみを考える.さて,このϕpについて
作用 S=
∫ dt
∫ ddx
{1
2(∂0ϕp)2−1
2(∇⃗ϕp)2−1 2m2ϕp2
} , エネルギー H =
∫ ddx
{1
2πp2+1
2(∇⃗ϕp)2+1 2m2ϕp2
}
を評価すると
S=
∫ dt
{ 1 2Ep
˙
a∗(t) ˙a(t)−1
2Epa∗(t)a(t) }
, H = 1
2Ep
˙
a∗(t) ˙a(t) +1
2Epa∗(t)a(t) となる.この作用に従うa(t)の時間発展は
¨
a(t) =−Ep2a(t), ∴a(t) =ape−iEpt+a∗−peiEpt となることが確かめられ,このとき
H =Ep(a∗pap+a∗−pa−p) となる.これは時間に依らない(エネルギー保存).
実数座標qiとそれに共役な運動量piを
a(t) =q1(t) +iq2(t), pi(t) = ∂L
∂q˙i = q˙i(t) Ep
によって導入すると,量子論における自然な交換関係
[q1(t), p1(t)] = [q2(t), p2(t)] =i は,a∗p, apをそれぞれ生成・消滅演算子a†p, apと見なして
[ap, a†k] =δp,k, [ap, ak] = 0, [a†p, a†k] = 0 とすると満たされる.これにより場とハミルトニアンは演算子
ϕp(t, ⃗x) = 1
√V
√1 2Ep
(ape−iEpt+i⃗p·⃗x+a†peiEpt−i⃗p·⃗x) + 1
√V
√1 2Ep
(a−pe−iEpt−i⃗p·⃗x+a†−peiEpt+i⃗p·⃗x)
→ 1
√V
∑
⃗ p
√1
2Ep(ape−iEpt+i⃗p·⃗x+a†peiEpt−i⃗p·⃗x), H=Ep(a†pap+a†−pa−p)→∑
⃗ p
Epa†pap.
になる.さらにここでは運動量の表式を天下りに与えておく:
P⃗ =∑
⃗ p
⃗ pa†pap.
状態を指定するのに⃗pの代わりにp+と⃗pT を用いる(いずれもd個の量): ap→ap+,⃗pT, a†p→a†p+,⃗p
T. このとき光錐エネルギーは式(10.61):
p−= 1
2p+(pIpI+m2) のように定まることに注意して,光錐座標における記述を
ˆ
p+= ∑
p+,⃗pT
p+a†p+,⃗p
Tap+,⃗pT, ˆ
pI = ∑
p+,⃗pT
pIa†p+,⃗p
Tap+,⃗pT, ˆ
p−= ∑
p+,⃗pT
1
2p+(pIpI +m2)a†p+,⃗p
Tap+,⃗pT
とする.
計算練習10.3,10.4 式(10.33)のϕpに対して
∂0ϕp= 1
√2EpV( ˙aei⃗p·⃗x+ ˙a∗e−i⃗p·⃗x), ∇⃗ϕp= i⃗p
√2EpV(aei⃗p·⃗x−a∗e−i⃗p·⃗x) である.
■計算練習10.3 式(10.33)のϕpに対して L=1
2(∂0ϕp)2−1
2(∇⃗ϕp)2−1 2m2ϕp2
=1 2
1
2EpV[{a˙2−(i⃗p)2a2−m2a2}e2i⃗p·⃗x+{a˙∗2−(−i⃗p)2a∗2−m2a∗2}e−2i⃗p·⃗x +{2 ˙a∗a˙−2(i⃗p)·(−i⃗p)−2m2a∗a}],
∴S=
∫ dt 1
2Ep{a˙∗a˙−(⃗p2+m2)a∗a}=
∫ dt
( 1
2Epa˙∗a˙ −1 2Epa∗a
)
: (10.37) となる.
■計算練習10.4 式(10.33)のϕpに対して H=1
2πp2+1
2(∇⃗ϕp)2+1 2m2ϕp2
=1 2
1
2EpV[{a˙2+ (i⃗p)2a2+m2a2}e2i⃗p·⃗x+{a˙∗2+ (−i⃗p)2a∗2+m2a∗2}e−2i⃗p·⃗x +{2 ˙a∗a˙+ 2(i⃗p)·(−i⃗p) + 2m2a∗a}],
∴H = 1
2Ep{a˙∗a˙+ (⃗p2+m2)a∗a}= 1 2Ep
˙ a∗a˙+1
2Epa∗a: (10.38) となる.
計算練習10.5
[q2(t), p2(t)] =− 1
4Ep{−[a(t),a˙†(t)]−[a†(t),a(t)]˙ }=i, [q1(t), p2(t)] = 1
4iEp{−[a(t),a˙†(t)] + [a†(t),a(t)]˙ }= 0, [q2(t), p1(t)] = 1
4iEp{[a(t),a˙†(t)]−[a†(t),a(t)]˙ }= 0.
計算練習10.6,10.7
Pi(a†p1· · ·a†pk|Ω⟩) =∑
⃗ q
qia†qaq(a†p1· · ·a†pk)|Ω⟩ の右辺において,n= 1,· · · , kに対して
aqa†pn=a†pnaq+ [aq, a†pn] =a†pnaq+δqpn
を繰り返し用いてaqを|Ω⟩の左隣に移動すると
(上式) =∑
⃗ q
qia†q(a†p1· · ·a†pk)aq|Ω⟩+
∑k n=1
∑
⃗ q
qiδqpna†q(a†p1· · ·dapn· · ·a†pk)|Ω⟩
= ( k
∑
n=1
pni )
(a†p1· · ·a†pk|Ω⟩)
を得る(adpnはapn を除外することを意味する).よってk個の粒子を含む状態a†p
1· · ·a†p
k|Ω⟩におけるP⃗ の 固有値は
∑k n=1
⃗
pnである.
Hの固有値が
∑k n=1
Epnとなること
H(a†p1· · ·a†pk|Ω⟩) = ( k
∑
n=1
Epn
)
(a†p1· · ·a†pk|Ω⟩) およびNの固有値は粒子数kとなること
N(a†p
1· · ·a†p
k|Ω⟩) =k(a†p
1· · ·a†p
k|Ω⟩) も同様に示される.
10.4 について
■添字をp→ ⃗pと改めること Ep ≡ √
⃗
p2+m2:(10.17)は,したがって式(10.33)で定義されるϕp や式 (10.44)で導入されるap, a∗pは⃗pのみによって指定されるから,それぞれ
E⃗p, ϕp⃗, a⃗p, a∗⃗p と書いて良い.このことから
•「式(10.57)の2行目は,1行目に対して⃗p→ −⃗pという置き換えを施すことによって得られ」
(p.200下から4,3行)ること
•「各振動子を⃗pによって識別」(p.202,l.15,16)していること が分かる.
■Hの式(10.45) a(t) =˙ −iEp(ape−iEpt−a∗−peiEpt)より
˙
a∗(t) ˙a(t) =Ep2{(a∗pap+a∗−pa−p)−(apa−pe−2iEpt+a∗−pa∗pe2iEpt)}, a∗(t)a(t) =(a∗pap+a∗−pa−p) + (apa−pe−2iEpt+a∗−pa∗pe2iEpt) となる.これをH の式(10.38)に代入すれば良い.
■運動量(10.46) 問題8.1(pp.171–172)におけるエネルギー・運動量テンソル
Tαβ= ∂L
∂(∂αϕa)∂βϕa−gαβL
に対する保存則∂αTαβ= 0の導出は文献[5, pp.39–42]に与えられている.チャージ Pα=
∫
ddxT0α=
∫
ddx(πa∂αϕa−g0αL)
はα= 0とするとハミルトニアンを与え,αを空間成分にとるとスカラー場に対して運動量(10.46)を与える.
■「エネルギーは保存する」(p.199,l.16)について ハミルトニアン(10.45)におけるa∗±p, a±pが生成・消 滅演算子に置き換えられると,これらは状態に作用して系のエネルギーを変化させ得るけれど,ハミルトニア ンは時間に依らないため,その固有値である各状態でのエネルギーは保存している.
■交換関係(10.50) 6つの交換子
[a, a†], [a,a],˙ [a,a˙†], [a†,a],˙ [a†,a˙†], [ ˙a,a˙†] の値を調べれば十分である.例えば
[a(t),a˙†(t)] =iEp([ap, a†p]−[a†−p, a−p]) = 2iEp
である.
■qiとpj の交換関係(10.51)の意味 式(10.39),式(10.41)によって導入した座標qiと運動量piに対する 交換関係(10.51):
[q1(t), p1(t)] =i, etc.
は,振動子の演算子に対する交換関係(10.59)を通して正準交換関係 [ϕ(t, ⃗x),Π(t, ⃗x′)] =iδd(⃗x−⃗x′) と等価であることが示される(問題10.2(p.209)参照).
■座標と運動量の式(10.53),(10.54) 実変数qi(t), pi(t)はHermite演算子になると考えて a=q1+iq2 ⇒ a†=q1−iq2,
1 Ep
˙
a=p1+ip2 ⇒ 1 Ep
˙
a† =p1−ip2
とする.あるいはa, a∗を演算子a, a†に置き換える前に式(10.39)と式(10.41)をqi(t), pi(t)について解いて おけば良い.
■負エネルギーについて 「量子場の演算子は正エネルギー成分と負エネルギー成分を両方とも含んでいるが,
粒子を表す状態は正のエネルギーを持つ」(p.201下から6,5行)に注目.
問題10.1
P⃗ =−
∫
ddx(∂0ϕ)∇⃗ϕ: (10.46)
=− 1 2Ep
1 V
∫
ddx( ˙aei⃗p·⃗x+ ˙a∗e−i⃗p·⃗x)(i⃗p)(aei⃗p·⃗x−a∗e−i⃗p·⃗x)
=− i⃗p 2Ep
( ˙a∗a−a∗a)˙ において
˙
a∗a=iEp(a∗peiEpt−a−pe−iEpt)(ape−iEpt+a∗−peiEpt)
=iEp(a∗pap−a∗−pa−p+a∗pa∗−pe2iEpt−apa−pe−2iEpt), a∗a˙ =−iEp(a∗peiEpt+a−pe−iEpt)(ape−iEpt−a∗−peiEpt)
=−iEp(a∗pap−a∗−pa−p−a∗pa∗−pe2iEpt+apa−pe−2iEpt)
なので
P⃗ =− i⃗p
2Ep ×2iEp(a∗pap−a∗−pa−p) =⃗p(a∗pap−a∗−pa−p) : (10.47) を得る.
問題10.2 (a)
1 V
∫
ddx′f(⃗x′)e−i⃗p·⃗x′ =∑
⃗k
f(⃗k)1 V
∫
ddx′e−i(⃗p−⃗k)·⃗x′ =∑
⃗k
f(⃗k)δ⃗p,⃗k=f(⃗p) : (2).
これを式(1):f(⃗x) =∑
⃗
pf(⃗p)ei⃗p·⃗xに代入して f(⃗x) =
∫ ddx′
1 V
∑
⃗ p
ei⃗p·(⃗x−⃗x′)
f(⃗x′), ∴δd(⃗x−⃗x′) = 1 V
∑
⃗ p
ei⃗p·(⃗x−⃗x′) を得る.あるいは式(1),式(2)でf(⃗x) =δd(⃗x)とおけば,再びδd(⃗x) =V1 ∑
⃗
pei⃗p·⃗xを得る.
(b)
スカラー場ϕのFourier展開(10.58)より Π(t, ⃗x) = 1
√V
∑
⃗ p
iEp
√2Ep(−ape−iEpt+i⃗p·⃗x+a†peiEpt−i⃗p·⃗x)
なので
[ϕ(t, ⃗x),Π(t, ⃗x′)] = i 2V
∑
⃗ p,⃗k
√ Ek
Ep
[
ape−iEpt+i⃗p·⃗x+a†peiEpt−i⃗p·⃗x,−ake−iEkt+i⃗k·⃗x′+a†keiEkt−i⃗k·⃗x′ ]
=i1 V
∑
⃗ p
{
ei⃗p·(⃗x−⃗x′)+e−i⃗p·(⃗x−⃗x′) }
(∵交換関係(10.59))
=iδd(⃗x−⃗x′).