第 9 章 相対論的な光錐弦
12.4 横方向の Virasoro 演算子
X−(τ, σ)のモード展開における展開係数α−n は,横方向のVirasoroモード L⊥n ≡1
2
∑
p∈Z
αIn−pαpI を用いて√
2α′α−n = p1+L⊥n と与えられた(9.5節).量子論に移行するとL⊥n はVirasoro 演算子 となる.
ここでn= 0に対してはαIn−pとαIpは非可換だから,その順序が問題となる.
Virasoro演算子L⊥0 を正規順序,すなわち消滅演算子αIpが生成演算子αI−pの右側に配置されている順序 で定義する.[本稿では正規順序化された演算子をN[· · ·]と表すことにすると]L⊥0 は
N[L⊥0] = 1
2αI0αI0+
∑∞ p=1
αI−pαIp=α′pIpI+
∑∞ p=1
paIp†aIp として再定義される.これはHermiteである.この措置は正規順序化定数
a= 1
2(D−2)
∑∞ p=1
p のシフト
L⊥0 = N[L⊥0] +a
をもたらす.ところでp−は以下のようにL⊥0 と関係付けられているから,p−にも,したがって質量の自乗 の演算子にも定数シフトが導入される:
2α′p−=√
2α′α−0 : (9.52)
= 1 p+L⊥0
= 1
p+(N[L⊥0] +a),
M2=−p2= 2p+p−−pIpI = 1 α′
( a+
∑∞ n=1
naIn†aIn )
. 付加定数a= 12(D−2)∑∞
p=1pは無限大であるように見えるけれど,数学公式
∑∞ p=1
p= 1 + 2 + 3 + 4 +· · ·=−1 12 によりこれは有限値
a=−1
24(D−2) をとる.
L⊥n =√
2α′p+α−n は(αJn)†=αJ−nと類似の関係
(L⊥n)† =L⊥−n
を満たすことがn̸= 0に対して確かめられる.n= 0に対して,これはN[L⊥0]のHermite性として満たされ ている.
αInの基本的交換関係(31):
[αIm, αJn] =mηIJδm+n,0
および式(12.52):[xI0, αnJ] = 0(n̸= 0),式(12.53):[xI0, αJ0] =√
2α′iηIJを用いると [L⊥m, αJn] =−nαJm+n, [L⊥m, xI0] =−i√
2α′αIm
が得られ(これらはL⊥0 をN[L⊥0]に置き換えても正しい),さらにVirasoro演算子の非可換性 N[N[L⊥m],N[L⊥n]] = (m−n)N[L⊥m+n] +D−2
12 (m3−m)δm+n,0
が導かれる.
Virasoro演算子が弦の座標に及ぼす作用は
δXI =ε[L⊥m, XI] =ε(ξmτX˙I+ξσmXI′), ξmτ(τ, σ)≡ −ieimτcosmσ,
ξmσ(τ, σ)≡eimτsinmσ
と評価される(εは無限小のパラメーター)[ξτm, ξmσ の上付きの添字τ, σは関数の名称であり,そのパラメー タτ, σ依存性を表すものではない].これはVirasoro演算子がパラメーターの付け替え
τ→τ+εξmτ(τ, σ), σ→σ+εξmσ(τ, σ) を生成しているものと理解できる.
• 特にL⊥0 は時間推進を生成する:
[L⊥0, XI] =−i∂τXI. これはL⊥0 が付加定数の違いを除き,弦のハミルトニアンであること
H = 2α′p+p−=L⊥0 (12.1節)から期待される結果である.
• 端点でのパラメーターσの値の変化は
εξσm(τ, σ= 0, π) = 0 となり,端点の値はσ= 0, πのままであることが保証される.
• L⊥mが生成する弦の座標の変化δXI は実数ではない.反Hermite結合 L⊥m−L⊥−m, i(L⊥m+L⊥−m) は弦の座標XIに実数の変化をもたらす.
12.4 について
■M2の式(12.108)について 正規順序化の操作をN[· · ·]という記法によって明記する.
M2= 2p+p−−pIpI = 1
α′L⊥0 −pIpI = 1
α′L⊥0 − 1
2α′αI0αI0= 1 2α′
∑
p̸=0
αI−pαIp
を正規順序化すると
N[M2] = 1
α′N[L⊥0]−pIpI = N
1 2α′
∑
p̸=0
αI−pαIp
= 1 α′
∑∞ n=1
naIn†aIn であり,式(12.108)は
α′M2=α′N[M2] +a と書ける.
■Virasoro演算子の交換関係(12.133)の導出について 正規順序化の操作をN[· · ·]という記法によって明記 する.
• 式(12.121),式(12.122),式(12.123),式(12.124)の左辺は[N[L⊥m],N[L⊥n]]である.
– 式(12.123),式(12.124)の左辺はN[N[L⊥m],N[L⊥n]]に等しい.
– 式(12.124)の右辺におけるL⊥m+nはN[L⊥m+n]に等しい.
• 式(12.125),式(12.126)の左辺は[N[L⊥m],N[L⊥−m]]である.
• 式(12.127),式(12.131),式(12.132)の左辺はN[N[L⊥m],N[L⊥−m]]である.
• 式(12.133)の左辺はN[N[L⊥m],N[L⊥n]],右辺におけるL⊥m+nはN[L⊥m+n]である.
■式(12.127),式(12.128)における「交換関係の評価」(p.251,l.17)
1 2
∑m k=0
(m−k)[αIk, αI−k] = 1 2
∑m k=0
(m−k)kηIIδk−k,0= (D−2)1 2
∑m k=0
k(m−k)≡(D−2)A(m).
■式(12.141)の反Hermite性 式(12.112):(L⊥m)†=L⊥−mより反Hermite性
(L⊥m−L⊥−m)†=−(L⊥m−L⊥−m), {i(L⊥m+L⊥−m)}† =−i(L⊥m+L⊥−m) を確かめられる.
計算練習12.3
交換関係(12.118)はL⊥n の定義式(12.100)を用いて導かれた.このためL⊥0 の代わりにN[L⊥0]を用いても これが満たされるかは改めて確認する必要がある.正規順序化定数aに対してL⊥0 = N[L⊥0] +aなので
[N[L⊥0], αnJ] = [L⊥0, αJn] =−nαJn が期待される.実際N[L⊥0]の式(12.105)より
[N[L⊥0], αJn] =
∑∞ p=1
[αI−pαIp, αJn] (∵[αI0, αJ0] = 0)
=
∑∞ p=1
p(δp+n,0αJ−p−δ−p+n,0αJp)
=
∑∞ p=1
pδp+n,0α−Jp=−nαJn (n≤1) 0 (n= 0)
−∑∞
p=1
pδ−p+n,0αJp =−nαJn (n≥1)
=−nαJn を得る.
計算練習12.4
[L⊥m, xI0] = 1 2
∑
p∈Z
[αJm−pαJp, xI0] = 1 2
∑
p∈Z
(αJm−p[αJp, xI0] + [αJm−p, xI0]αJp).
ここで式(12.52):[xI0, αJn] = 0(n ̸= 0),式(12.53):[xI0, αJ0] = √
2α′iηIJ より最右辺の和において第1項は p= 0の項が,第2項はp=mの項が残る.よって
[L⊥m, xI0] =−1 2{αJm(√
2α′iηIJ) + (√
2α′iηIJ)αJm}
=−i√
2α′αIm: (12.119) を得る.
計算練習12.5
ここでは数学的帰納法によらず,∑ k3,∑
k4,· · · の計算にも応用の利く証明を与える.
(k+ 1)3−k3= 3k2+ 3k+ 1 において,k= 1,· · · , nについて両辺の和をとると
(n+ 1)3−1 = 3
∑n k=1
k2+3
2n(n+ 1) +n となる.よって
∑n k=1
k2=1 3
{
(n+ 1)3−1−3
2n(n+ 1)−n }
= 1
6(2n3+ 3n2+n) =1
6n(n+ 1)(2n+ 1) : (12.129) を得る.
計算練習12.6
δXI =ε[i(L⊥m+L⊥−m), XI] =ε{i(ξmτ +ξ−τm) ˙XI +i(ξmσ +ξ−σm)XI′} はパラメーターの付け替え
τ→τ+εξτ, σ→σ+εξσ,
ξτ=i(ξτm+ξτ−m) = (eimτ +e−imτ) cosmσ= 2 cosmτcosmσ, ξσ=i(ξσm+ξσ−m) =i(eimτ −e−imτ) sinmσ=−2 sinmτsinmσ によるものである.