環境活動報告
▶ 環境経営の戦略と取り組み
日立グループは、「持続可能な社会」を環境経営のめざ すべき姿とする環境ビジョンを掲げています。2011 年に世界の人口は70億人に達し、2050年には90億 人を超える*1と見込まれています。また、世界全体の GDP成長率は、2009年の景気後退を除くと、年平均 3%以上の成長が20年以上続いています*2。こうした 経済・社会活動の発展に伴ってエネルギーや水、鉱物な どの各種資源の需要が増加し、資源の枯渇、気候変動な
どの環境問題が深刻化していることは、世界共通の課題 です。これを解決するためには、環境への負荷を限りな く低減し、持続可能な社会を実現していくことが求めら れています。日立の環境ビジョンは、「地球温暖化の防 止」「資源の循環的な利用」「生態系の保全」を最も重要な 活動と位置づけ、事業を通じて環境問題の解決に貢献し ていく姿勢を示しています。日立は、この環境ビジョン を実現するためのマイルストーンとして、2025年度に 向けた長期計画「環境ビジョン2025」を策定していま す。
気候変動の原因や影響について評価や助言を行う 国 際 機 関IPCC*1は、2007年 の 第4次 評 価 報 告 書 に おいて、温室効果ガスの最も低い安定化濃度のシナリ オ(450ppm安 定 化 シ ナ リ オ )で は、CO2排 出 量 の 増 大 を2015年までにピークアウトさせ、2050年までに 2000年に比べて50〜85%削減することが必要であ
環境経営の戦略と取り組み
日立グループは、2012年度に向けた「2012中期 経営計画」において、「環境」を経営のフォーカスの ひとつに位置づけています (P.015‑016参照)。 製品・サービスの提供、および事業活動の推進にお いて、「環境への負荷低減」を追求していくことは、
中期経営計画の柱である「社会イノベーション事業 による成長」と「安定的経営基盤の確立」に必要不 可欠であると考えています。この経営方針に基づ き、日立グループの環境経営は持続可能な社会をめ ざす環境ビジョンのもと、長期計画「環境ビジョン 2025」および環境行動計画の目標達成に向けて取 り組みを進めています。
るとしています。
国際エネルギー機関は、この450ppm安定化シナリ オを実現するためにCO2排出量の削減が期待される分 野と削減量を配分したCO2排出抑制シナリオを提示し ています。このシナリオでCO2排出量削減が期待され る発電、運輸、産業の各分野で日立グループは幅広く事 業を展開しています。
これに基づき、日立グループの長期計画「環境ビジョ ン2025」では、世界の重要課題である地球温暖化の防 止にフォーカスして「2025年度までに製品を通じて年 間1億トンのCO2排出抑制に貢献する」ことを目標とし ています。
この目標は、効率向上などにより各製品のCO2排出量 を抑制し、2025年度には基準年(2005年度)の製品に 比べ、製品使用時のCO2排出抑制貢献量を年間1億トン にすることを意味します。
1億トンという目標値は、各事業分野の成長戦略に基 づいて算出しており、発電分野で7,000万トン、産業分 野で2,000万トン、交通・生活分野で1,000万トンの 抑制を計画しています。
そのために、2025年度までにあらゆる製品を環境へ の負荷を低減した環境適合製品(P.061参照)にすること を先行指標とし、グローバル市場においてパートナーと 連携して事業機会を拡大するとともに、環境に配慮した 製品の開発や新規事業を創出していきます。
なお、CO2排出抑制貢献量は経営における重要指標で
あり、適切な進捗評価と情報開示が必要であるため、算 定方法と算定値について第三者機関によるレビューを受 けて信頼性の確保に努めています。
2010年度の結果と今後の取り組み
2010 年 度 の CO2排 出 抑 制 貢 献 量 の 実 績 は 推 定 1,551万トンで、目標(1,400万トン)を達成しました。
高効率のガスタービンやインバーター、省電力化した 情報システムやハードディスクドライブ、省エネ製品に 使用される部品や材料など、幅広い製品とサービスが排 出抑制に貢献しました。また、2010年度は水力発電、
ハードディスクドライブ、モノレール、変圧器、ドリル穴明 機、金属材料のアモルファスリボン、コードレスインパクト ドライバーなど17製品について、CO2排出抑制貢献量の 算定方法と結果について第三者機関によるレビューを受け ました(P.087参照)。2011年度以降もレビュー対象製 品を拡大して信頼性の向上を図っていきます。
[各分野における目標達成に向けた取り組み]
発電分野※
• 原子力発電所の建設
• 高効率石炭火力発電プラントやガスタービン の納入
• 再生可能エネルギー関連機器の提供
産業分野
• 高効率のインバーターや変圧器の提供
• 高効率の情報機器やデータセンター等の省電 力化ソリューションの提供
交通・生活分野 • 産業・自動車用リチウムイオン電池の提供
• 家電製品の省エネルギー化
※東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故により、原子力発電 や火力発電の新設・稼働計画などを含めたエネルギー政策に関して、グ ローバルな見直し・変更が生じると予測されます。これにより日立グルー プの発電分野の事業計画に大幅な変更が生じた場合は、長期計画「環境 ビジョン2025」の達成に及ぼす影響を評価して達成戦略の見直し、もし くは目標値の修正を行います。
*1 IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change の 略称。気候変動に関する政府間パネル
WEB 製品によるCO2排出抑制貢献量の算定方法詳細
http://www.hitachi.co.jp/environment/activities/third/
method.html
2025
(年度)
[CO2排出抑制貢献量の推移と計画](2005年度基準)
(万t/年)
0 10,000
8,000
6,000
4,000
2,000 1,177
3,500 6,300
1億t /年
1,551
※CO2排出係数は国際エネルギー機関「CO2 Emissions f ro m Fu e l C o m b u s t i o n Highlights( 2010 Edition)」の2008年の数値を利用
主 要 指 標
C
O排出抑制貢献量2
2009 2010
(実推)
2015 2020
発電分野 70%
産業分野 20%
交通・生活分野 10%
環境活動報告
▶ 環境経営の戦略と取り組み
2010年度にCO2排出抑制に貢献した主な製品
34.8%と同じクラスのガスタービンの中では最高レベルです。
また、軽油、天然ガス、LPGなどの複数の燃料に対応できるほ か、湿式・乾式の低NOX燃焼器の適用による環境対策も可能 です。2010年12月には中国のコークス生産プラントのコー ジェネレーション発電設備※2のガスタービンとしてH-25が稼働 を開始しました。コークス生産に伴って発生するガスをH-25 の燃料とする自家発電設備として電力を供給すると同時に、
H-25の排熱を排熱回収ボイラーで蒸気生成に利用することに より、同設備全体の熱効率は80%以上に達し、エネルギーの 有効利用に貢献しています。 また、従来機種で培った技術を 基に、出力を80MW級、熱効率を38%まで高めた、ヘビー デューティー型の2軸ガスタービンとしては世界最大容量※3のガ スタービンH-80を開発し、九州電力の発電所で初号機が稼働 しています。
2010年度に運転を開始したガスタービンは30MW級の H-25と80MW級のH-80合わせて30台、これに継続運転中 の89台を加えて2010年度のCO2排出抑制貢献量は155万 トンに相当します。
日立製作所のガスタービンは信頼性と高効率性が評価され、
発電用や、一般産業用、石油・ガス分野などのガスタービンと して、世界各国で稼働しています。30MW級のガスタービン H-25は、ヘビーデューティー型※1(重構造型)で耐久性に優れ ているため信頼性が高く、高性能のタービン冷却技術と高性能 圧縮機技術の適用により、天然ガスを使用した場合の熱効率は ガスタービン
日立製作所 電力システム社
ガスタービンH-25を採用した中国の清徐県景源熱電(Jingyuang Redian)
有限公司のコージェネレーション発電設備
近年の急激な情報量の増 大に伴うIT機器の電力使用 量の増 加を抑 制するため、
日立製作所のサーバは最新 のプロセッサーや大容量メモ リーをサポートするとともに 多彩な省電力技術を採用し ています。たとえばブレード サーバ「BS2000」やPCサーバ「HA8000/RS220」では 80PLUS®GOLD(変換効率92%※以上)の認証を取得した高 効率電源の採用や、サーバ内の温度に応じて適切な回転数で 動作するファン制御などにより装置全体の消費電力を削減し ています。また、サーバリソースを無駄なく利用する仮想化技 術や、設定した消費電力の上限を超えないようにプロセッサー のパフォーマンスを制御するパワーキャッピング機能により、
余分な電力や電源設備コストを低減することが可能です。これ らの情報処理能力の向上と省電力化を実現したサーバの稼働 による2010年度のCO2排出抑制貢献量は42万トンに相当 します。
サーバ
日立製作所 情報・通信システム社
ブレードサーバBS2000
電力の需給においてCO2排 出を抑制するには、発電時の 高効率化や自然エネルギーの 活用に加え、送配電時のエネ ルギー損失の低減も重要な課 題です。
日立産機システムは、配電 用変圧器のエネルギー損失を 低減させる効率向上に取り組み、2006年度から常に業界 トップレベルのエネルギー消費効率を実現した変圧器を製造・
出荷してきました。なかでも、変圧器の鉄心部分にアモルファ ス合金を用いたアモルファス変圧器は、業界トップレベルの エネルギー効率を40%以上も上回る高効率化を実現した製 品として、CO2排出抑制に大きく寄与しています。これらの 高効率変圧器の2010年度の出荷台数は約2万3,000台、
2006年度からの累計で約12万4,000台となりました。こ れらの変圧器の稼働による2010年度のCO2排出抑制貢献 量は28万トンに相当します。
配電用変圧器
(株)日立産機システム
アモルファス変圧器
※1 ヘビーデューティー型:重構造型とも呼ばれる、信頼性が高く保守頻 度が低いという特徴をもつガスタービン
※2 コージェネレーション発電設備:電力と熱を同時に供給する設備
※3 2010年2月22日現在(日立製作所調べ)