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第 4 章 動学的拡張 WIO モデルの応用

4.2 長寿命化を想定したシナリオ分析

本節では建築物の長寿命化について分析を行う。短期間での建築物の廃棄は建築廃棄物の大量 発生につながり、その資源消費、環境負荷も大きいと考えられる。そのため建築物の長寿命化は 建築解体廃棄物の発生抑制に対して有意義な対策であると考えられている。今後、長寿命建築が 普及するケースを想定し、建築物の長寿命化が経済、環境負荷に及ぼす影響について考える。

4.2.1 長寿命化に関わるシナリオ設定

ここではTable.4.13で示す5つのシナリオについて分析を行った。シナリオ1は前節同様に分別に

Table. 4.13: 長寿命化に関わるシナリオ設定

シナリオ1 シナリオ1’ シナリオ2’ シナリオ3’ シナリオ4’

寿命 従来型 長寿命化

分別 不完全 不完全 不完全 完全 完全

再資源化 一回きり 一回きり 持続的 一回きり 持続的

ついては不完全を仮定し、再資源化については一回きりの再資源化を想定している。ただしシナリ オ1で想定する建設・土木構造物の寿命は従来型の寿命である。シナリオ1’は建設・土木構造物の 寿命について長寿命化を想定したものである。シナリオ2’は完全分別で再資源化については持続的 なものを想定し、シナリオ3’、4’については分別については完全分別、シナリオ3’については一回 きり、シナリオ4’については持続的な場合を考え、それぞれ寿命については長寿命化を想定する。

長寿命建築物の寿命は従来型の2倍を想定し、Fig.4.6のような形状を想定している。

Fig. 4.6: 従来型建築物と長寿命建築物の寿命設定

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また長寿命建築物は従来型と比べてスケルトンの量が1割多いことから、廃棄時のコンクリート 排出量を従来型の1.1倍に設定する(中山ら(2001))。またこのことは結果として残渣発生率を増大 させ、埋め立て処分される廃棄物のかさ密度が減少する。また製品の長寿命化は、寿命延長分の 需要を減少させるということを考慮するために、各期の最終需要は前期の最終需要より延長寿命 分の需要を差し引いたものと仮定する。ここでは建築物の長寿命化はスケルトンの重量増で対応 できるものと想定しており、さらに建築物の長寿命化は使用中の環境負荷に影響を及ぼさないも のとする。

4.2.2 長寿命化の効果

シナリオ1を基準シナリオとして、主な計算結果を基準値に対する変化率として1年目、10年目、

20年目、30年目の各年における生産部門の活動と二酸化炭素排出及び最終処分場消費量について 表したのが、Table. 4.14-4.15である。

ここでは長寿命化は、寿命延長分の需要を減少させるということを考慮するために、延長寿命 分の需要を差し引いたものと仮定しているため、「モノが壊れない分作らない」という効果が生産 額の全体的な減少をもたらしている。Fig.4.7は二酸化炭素排出についてシナリオ1をベースシナリ オとして、シナリオ間格差を示したものであるが、生産額の縮小に伴い全体的に減少している。1 年目についてだけは長寿命化は骨格を強化するためにセメント投入を増加させているため、従来 型寿命を仮定したシナリオ1と比較してセメント産業の生産が増大する。またこれに伴い二酸化炭 素排出を増大したことが示されてる。

またFig.4.8は長寿命化に伴う最終処分場消費量への影響を示したものである。

図より長寿命化はどのシナリオについても最終処分場消費量削減に効果があることが示されて いる。ただしこの場合、長寿命化によって縮小している最終需要の影響も大きい。

4.3 まとめ

本章では生産から廃棄まで時間差をともなうような耐久財の廃棄物発生を記述するために廃棄 物産業連関表の動学的な拡張を試み、建築物について長寿命化と廃棄の際の分別の効果について の試算を行った。

第1節では、建設産業における再資源化原材料の受け入れが、現在だけでなく、将来に渡っても 最終処分場削減の効果をもたらすかを評価、検討を行った。建築廃棄物の原材料として用いられ た再資源化原材料の受け入れにより将来の再資源化が困難になる場合(一回きりの再資源化)、最 終処分場消費量削減効果が持続可能な再資源化を行った場合と比較して小さいことが示された。

第2節では長寿命化による将来にわたった最終需要消費量削減について検討を行った。長寿命化 は分別に関するルールや再資源化原材料の性質に関わらず、最終処分場消費量削減においても二

Table. 4.14: 長寿命化による効果:その1

長寿命

1年 10年

(%) 1 3 4 6 1 3 4 6

5 窯業原料鉱物 0.737 0.737 0.736 0.736 -1.202 -1.207 -1.214 -1.215 6 砂利・採石 0.007 0.007 0.006 0.006 -2.041 -2.045 -2.051 -2.052 7 その他鉱業 0.149 0.149 0.149 0.149 -1.423 -1.423 -1.422 -1.422

10 繊維工業 0.003 0.003 0.003 0.003 -1.523 -1.520 -1.517 -1.516

14 パルプ 0.009 0.009 0.009 0.009 -1.501 -1.501 -1.500 -1.500

21 石炭製品 0.686 0.686 0.686 0.686 -1.018 -1.020 -1.021 -1.023

22 舗装材料 -0.004 -0.004 -0.005 -0.005 -2.121 -2.126 -2.133 -2.134 24 ゴム製品製造業 0.016 0.016 0.018 0.018 -1.687 -1.674 -1.654 -1.652

27 セメント 1.611 1.611 1.610 1.610 -0.381 -0.383 -0.388 -0.388

28 その他の窯業・土石製品 0.026 0.026 0.026 0.026 -1.923 -1.926 -1.930 -1.930

38 0.005 0.005 0.005 0.005 -1.883 -1.884 -1.885 -1.885

42 電線・ケーブル 0.000 0.000 -0.000 -0.000 -1.924 -1.926 -1.928 -1.929 43 光ファイバケーブル -0.003 -0.003 -0.004 -0.004 -2.065 -2.069 -2.075 -2.075 49 建設用金属製品 -0.002 -0.002 -0.002 -0.002 -2.035 -2.038 -2.042 -2.043 50 建築用金属製品 0.002 0.002 0.002 0.002 -1.925 -1.926 -1.928 -1.928 52 一般機械器具製造業 0.003 0.003 0.004 0.004 -1.761 -1.754 -1.741 -1.742

60 建設業 0.002 0.002 0.001 0.001 -1.937 -1.938 -1.939 -1.939

61 土木 -0.005 -0.005 -0.005 -0.005 -2.123 -2.128 -2.135 -2.136

62 電気業 0.052 0.052 0.050 0.050 -1.453 -1.460 -1.464 -1.467

65 水道業 0.018 0.018 0.018 0.018 -1.427 -1.423 -1.416 -1.415

二酸化炭素 0.289 0.289 0.290 0.290 -1.482 -1.473 -1.455 -1.455

最終処分場 -0.013 -0.013 -0.028 -0.028 -11.242 -11.364 -11.524 -11.546

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Table. 4.15: 長寿命化による効果:その2

長寿命

20年 30年

(%) 1 3 4 6 1 3 4 6

5 窯業原料鉱物 -12.687 -12.708 -12.738 -12.740 -26.096 -26.137 -26.195 -26.200 6 砂利・採石 -13.580 -13.596 -13.619 -13.621 -26.834 -26.866 -26.913 -26.916 7 その他鉱業 -12.452 -12.453 -12.447 -12.449 -26.038 -26.040 -26.028 -26.032 10 繊維工業 -12.490 -12.479 -12.464 -12.462 -26.079 -26.057 -26.028 -26.024 14 パルプ -12.449 -12.447 -12.444 -12.444 -26.055 -26.052 -26.046 -26.046 21 石炭製品 -12.251 -12.262 -12.264 -12.270 -25.845 -25.867 -25.870 -25.881 22 舗装材料 -13.732 -13.752 -13.781 -13.783 -26.937 -26.977 -27.036 -27.039 24 ゴム製品製造業 -12.844 -12.787 -12.707 -12.698 -26.275 -26.163 -26.009 -25.992 27 セメント -12.008 -12.020 -12.036 -12.037 -25.541 -25.564 -25.595 -25.598 28 その他の窯業・土石製品 -13.359 -13.369 -13.384 -13.385 -26.684 -26.704 -26.734 -26.736 38 -13.267 -13.271 -13.276 -13.277 -26.649 -26.657 -26.666 -26.668 42 電線・ケーブル -13.344 -13.352 -13.361 -13.362 -26.697 -26.711 -26.730 -26.732 43 光ファイバケーブル -13.617 -13.634 -13.658 -13.660 -26.862 -26.895 -26.943 -26.946 49 建設用金属製品 -13.558 -13.571 -13.590 -13.591 -26.829 -26.854 -26.891 -26.893 50 建築用金属製品 -13.338 -13.342 -13.348 -13.349 -26.688 -26.697 -26.708 -26.709 52 一般機械器具製造業 -13.016 -12.987 -12.934 -12.937 -26.494 -26.437 -26.333 -26.339 60 建設業 -13.363 -13.367 -13.372 -13.372 -26.708 -26.715 -26.725 -26.726 61 土木 -13.735 -13.756 -13.786 -13.787 -26.939 -26.980 -27.039 -27.043 62 電気業 -12.397 -12.428 -12.443 -12.455 -26.013 -26.074 -26.103 -26.126 65 水道業 -12.297 -12.277 -12.251 -12.247 -25.942 -25.903 -25.852 -25.845

二酸化炭素 -12.719 -12.677 -12.600 -12.602 -26.082 -26.001 -25.851 -25.855

最終処分場 -27.739 -28.186 -28.698 -28.778 -30.676 -31.497 -32.426 -32.572

Fig. 4.7: 長寿命化による二酸化炭素排出への影響

酸化炭素排出量に関しても効果があることが示された。ただし長寿命化による最終需要縮小をこ こでは仮定しており、その分の生産縮小とそれに伴う雇用削減の問題は、処分場の延命とは別で 議論を行うべき問題である。

静学モデルでは一回きりのリサイクルはその時点において環境負荷削減に効果があると結論づ け、その将来にわたった効果を論ずることが難しい。しかし本論で提案する動学的拡張により、持 続可能なリサイクルでないと将来にわたった効果がないことを論ずることができる。この点は動 学的拡張WIOモデルの利点である。一方で、動学的拡張を行ったことにより分析精度に対して問 題が発生する。本節では分析の都合上、技術に関する係数、資本ストック係数、投入係数につい て時間に対して一定としている。この点は将来にわたった影響を分析する上で、分析結果に対し て強い制約である。しかしこれはシナリオ分析であるため、例えば途中で新技術の導入等により 投入係数が変化したり、これまで再資源化できなかった廃棄物を再資源化できるようになる場合 も、本論で提案しているモデル中で扱うことは容易である。ただしモデルとしての扱いが容易で ある点と、現実を反映した技術係数やシナリオを支えるデータを整備することの容易さは一致せ ず、しばしば後者が分析の足かせになる。

さらに予測モデルという観点から見ると、本節では耐久財寿命を決定論的に与えているため、寿 命について統計データを用いて推定を行うなどの精度向上が必要であると思われる。

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Fig. 4.8: 長寿命化に伴う最終処分場消費量への影響

また経済的要因が建築物の寿命に及ぼす影響を分析するためには、さまざまにある経済的、社 会的要因を特定する必要があり、人口分布、家族構成、都市の立地特性等建築物を取り巻く多くの 要因を考慮しなくてはならない。他の経済的要因の及ぼす影響の程度についても今後評価し、建 築物の寿命特性についての詳細な分析を行うことにより、将来的な建築物起因の廃棄物発生およ び、それに伴う環境負荷の大きさの予測を精緻なものにすることが必要であると考えられる。

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5 章 最終処分場からの資源回収と廃棄物産業連