第 6 章 本研究のまとめと今後の課題
6.3 更なる課題的研究
最後に重要ではあるがこれまで触れてこなかった問題のうち再資源化原材料の質と動学的資源 循環の問題および、廃棄物管理と持続可能成長の2点について、更なる課題的研究として述べる。
6.3.1 再資源化原材料の質と動学的資源循環
循環型社会の構築において、材料のリサイクル推進はすでに大きな関心を集めている。しかし、
製品の高機能化に伴う材料の複合化や異種材料の組み合わせはリサイクルの段階で大きな問題と
なりうる。トランプエレメントと呼ばれる難除去性金属不純物の存在は水平リサイクルを阻害し、
資源循環を考える上で重要な問題である。たとえば自動車起源の鉄スクラップ中に混入する銅は 最終鋼材の品質に悪影響を及ぼす。そのため鉄スクラップの資源循環を考える上で、銅の除去は 大きな問題となっている。 図.6.1で示すように再資源化によって生産工程に戻ってきた原材料は、
Fig. 6.1: 再資源化原材料の循環と質
バージン材から生産された材料に比べ不純物の含有の意味で品位が落ちる。不純物含有率の高い 再資源化原材料の大きな受け入れ先として建築・土木産業が挙げられる。建材や路盤材利用等の カスケードリサイクルは枯渇が危惧される希少資源の節約の観点から、持続可能な資源循環策と は言えず、水平リサイクルが望ましいものと思われる。
不純物含有スクラップを受け入れて資源の水平循環を目指す場合、将来発生する廃棄物の質と 量の予測と、どの産業部門でどのような品質の再資源化原材料の引き受けが行われるのかについ て経済システム全体で把握をする必要がある。また水平循環を阻害する要因を取り除くとするな らば、どのような環境負荷が発生し、費用効果が経済全体にどの程度波及するのか雇用や付加価 値に焦点をあてて考える必要がある。
鉄スクラップに関して将来発生する種別廃棄物発生量を予測したものとして、ポピュレーショ ンバランスモデルとピンチ解析を用いた手法が挙げられる(醍醐ら(2005))。醍醐らのモデルは将来
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Fig. 6.2: 質を考慮した資源循環モデルの構築
発生するスクラップの質と量を把握する上で有用な手法であるが、資源循環を行ううえで経済シ ステム全体への波及効果を分析することが困難であるという短所をもつ。資源循環や環境負荷発 生の最小化は特定産業のみの活動で制御されうるものではなく、国全体、経済システム全体で最 適化を図る必要がある。
このような課題に応える研究として、WIOの動学モデルを基礎とした質を考慮した資源循環モ デルの構築が必要であると考える。循環する廃棄物の質によって、主にトランプエレメントの混 入の観点から高品位、中品位、低品位の3段階に分類し(Ad表、Bd表、Cd表)、その品位に応じた 受け入れ先と再資源化工程、循環ルートを考慮する方法が考えられる1)。
トランプエレメント混入による資源循環の阻害を考慮し、経済波及効果を推定しつつわが国に おける産業全体を包括した環境影響評価を行った研究はまだあまり例がない。生産から廃棄まで 時間差を伴って発生するスクラップの質と量を把握し、その動的資源循環と経済効果を考えるこ とは、持続可能な社会構築のために必要性が高いと考えられる。
1)このテーマは社団法人日本鉄鋼協会第14回鉄鋼研究振興助成課題として提出。石原・浅田研究助成の受給が確定 し、2005年度開始予定である。
6.3.2 最終処分場制約と持続可能性
もう一つの課題として、最終処分場制約の下での持続可能成長を論ずることが挙げられる。
本稿においては最終処分場消費量は生産や消費に伴い発生し、蓄積される重要な環境負荷因子 としてシナリオ分析を進めたが、持続可能な最終処分場の管理や、処分場制約の下での持続可能 な生産経路に関する議論を行わなかった。Kurz and Salvadori (1997)が指摘するように、多くの 典型的な経済分析において‘free gifts of nature’と‘free disposal of wastes’を仮定している。しか しこの2つの仮定は本稿で着目してきた廃棄物の発生やその処理、再資源化に伴い発生する環境負 荷、消費や生産に伴い必ず発生する環境負荷因子としての最終処分場消費の問題を無視するもの である。
経済分析モデルにおいて枯渇性資源や最終処分場の制約を考慮した分析としてCigno (1981)や Kurz and Salvadori (1997)、Highfill and McAsey (1995)等が挙げられる。
Kurz and Salvadori (1997)では、動学産業連関モデルを用いて枯渇性資源の問題を考慮にいれ
た議論を試みている。Kurz and Salvadori (1997)は価格・生産量に関する持続可能性を論じるう えで重要な技術として‘backstop technology’を仮定している。Kurz and Salvadori (1997)におい て仮定される‘backstop technology’は枯渇性資源の投入がゼロの生産手段と定義されており、さら に「典型的な経済分析で仮定される」2つ目の仮定‘free disposal of wastes’は保持したまま議論を すすめられている。廃棄物はKurz and Salvadori (1997)で想定されるような石炭・石油・金属鉱 物等の枯渇性資源の投入がゼロであったとしても発生するものであり、発生した廃棄物を処理し た後の最終処分廃棄物は安定化の後環境中に放出され、多くの場合、埋立処分される。例えばエ ネルギー源としてよく管理された森林から伐採された木材を利用したとしても残渣は生ずる。ま た生産過程において歩留まりがある以上、投入された資源のすべてが生産物に移行することはあ りえない。また埋立の際に必要となる土地はKurz and Salvadori (1997)において投入される資源 とはみなされないものであるが、平成13年度実績で市町村・事務組合における最終処分場の設置 数は2,059箇所、埋立面積は49,096千m2であり、これはわが国の国土面積の0.1割を占めており、利 用可能な国土面積が小さいわが国のような空間事情の下で、土地は重要な‘exhaustible resources’
の一つであると言える。
Highfill and McAsey (1995)は最終処分場面積を‘exhaustible resources’の一つとみなし、労働と 処分場面積の制約の下で、埋立処分とリサイクルの最適な組み合わせを生産者理論に基づき論じ
ている。Highfill and McAsey (1995)において「リサイクルは汚染物質のストックを減少させ、消
費者効用を増大させる」(pp.120,l.1)ものと仮定されており、処分場制約を明示的にモデルにあら わしつつ、将来にわたった生産者の利潤最大化のための一次条件を導いているかに見える。しか しここで想定されるリサイクルは埋立よりも労働投入が多く必要、埋立面積を必要としない技術 である。
上記に挙げた2点については、本論において扱っていないが重要な問題であり、今後の更なる課
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題としたい。