第 5 章 最終処分場からの資源回収と廃棄物産業連 関モデル関モデル
5.4 モデルの応用:シナリオ分析
5.4.1 シナリオ設定
掘り起こしごみのガス化溶融処理に関する設定
前節で示した掘り起こし資源回収WIOモデルを用い、Fig.5.4で示すように4つのシナリオを考 慮した場合の将来にわたった影響について考える。
わが国において平成7年には38,084千tの焼却処理と13,602千tの直接埋立があった。ここでは各 自治体の実績に基づき、年間埋立量の10%である1,360千tを掘り起こすと仮定する。この処理量は わが国のガス化溶融炉の受け入れ可能廃棄物量の約4割に相当するものである。ここでは掘り起こ しごみはすべて流動床式あるいはシャフト式ガス化溶融炉で受け入れ処理されているものと仮定 する。
ガス化溶融炉は焼却炉と比較して建設コストが非常に高いという難点がある。ガス化溶融炉の 新設は各自治体にとって大きな出費を伴うため、設備の投資と維持にかける予算を考慮に入れる ことが必要である。その一方で、最終処分場の容量不足の解決も重要な問題であることを考える と、第一に再処理活動に最低限必要な処理能力を持ったガス化溶融炉を建設するという方針が立 つ。この方針を以降では「単独処理」と呼ぶ。単独処理においては掘り起こしごみのカロリー不足 や廃棄物性状のコントロールをはじめとして問題点が多く、実際に自治体で行われている再処理 活動においては、一般廃棄物90wt%6)に掘り起こしごみを10wt%混合したごみを再処理する方法
6)wt%は重量パーセントを意味する。
Table. 5.1: 掘り起こしに関わる配分行列 廃棄物 溶融処理 埋立 43 回収:鉄屑 1.0000 44 回収:アルミ屑 1.0000 45 回収:溶融メタル 1.0000 46 回収:溶融スラグ 1.0000 47 掘り起こしごみ 1.0000
48 流動砂 1.0000
49 再処理対象物 1.0000
50 瓦礫 1.0000
が一般的である(日本環境衛生センター(Japan Environmental Sanitation Center: JESC)(2005))。 すなわち、ガス化溶融炉を従来の焼却炉の代替施設と考え、掘り起こしごみを混合した廃棄物の 処理を行わせているのである。この処理方法を以降では「混合処理」と呼ぶ。これらの処理方法 で受け入れられる廃棄物をTable.5.2で整理する。
Table. 5.2: 単独処理と混合処理シナリオにおける受け入れ廃棄物
専用処理での廃棄物受け入れ 混合処理での廃棄物受け入れ
焼却 ガス化溶融 焼却 ガス化溶融
それ以外の 焼却適合物
掘り起こしゴミのうち再処理 対象物
それ以外の 焼却適合物
掘り起こしゴミのうち再処理 対象物+それ以外の焼却受け 入れ廃棄物から重量比10%分 受け入れ
またそれぞれのガス化溶融処理について、掘り起こしゴミを全量ガス化溶融処理する場合と、一 般廃棄物と混合してガス化溶融処理する場合を考える。
ガス化溶融炉では掘り起こしごみのみを処理する単独処理、かつそれを流動床式ガス化溶融炉 で行う場合をシナリオ1、シャフト炉式ガス化溶融炉で行う場合をシナリオ2とする。掘り起こし ごみを一般廃棄物と混合し、流動床式ガス化溶融処理を行う場合をシナリオ3、シャフト式ガス化 溶融処理を行う場合をシナリオ4とする。現状シナリオは掘り起こし処理を行わないものとする。
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Fig. 5.4: 掘り起こし資源回収シナリオ ガス化溶融処理に関する資源・エネルギー投入および資源回収設定
ガス化溶融炉を用いた掘り起こしごみの溶融試験が行われた例は少なく、JESCによる、ある特 定の廃棄物組成による調査データしか得られなかった。そのためここでは単独処理の場合と混合 処理の両方において、Fig.5.5・Fig.5.6のマテリアルフローに記載されている値を元に分析を行う。
Fig.5.5は流動床式ガス化溶融炉を用いて54百万tの廃棄物を処理した場合のマテリアルフローを
表す。重油・活性炭・水・石灰石・キレート・セメントを投入し、鉄分・アルミ分・スラグ、溶融 飛灰を排出、余熱で発電をおこなうものとする。流動床炉の特徴として、低酸素分圧環境の熱分 解炉から酸化の進んでいない鉄屑とアルミ分屑を回収できることが挙げられる。
対してFig.5.6はシャフト式ガス化溶融炉を用いて54百万tの廃棄物を処理した場合のマテリアル
フローを表す。コークス・石灰石・水・LPG・キレートをそれぞれ投入し、溶融メタル・溶融ス ラグ・溶融飛灰を排出し、余熱で発電を行う。外部からコークスを投入するために、処理対象廃棄
Fig. 5.5: 流動床式ガス化溶融に関するフロー 物の自己燃焼に必要な熱量の不足を回避しやすいという特徴をもつ7)。
ガス化溶融炉からの発電量は電気業の生産活動を抑制させるものとし、流動床炉から回収した 鉄分は全量粗鋼(電気炉)産業で受け入れるものとし、流動床炉からのアルミ分とシャフト炉からの 溶融メタルは非鉄金属業、溶融炉から出てくるスラグはアスファルトに混入して土木産業で受け 入れるものとする。また掘り起こしの際に出る土と流動床炉から排出される流動砂は溶融飛灰を 再埋め立てする際の覆土として利用するものとする。
なお、廃棄物1tあたりの発電量は、平成13年度の環境省廃棄物処理技術情報より日本に存在す るガス化溶融炉の総発電能力を総廃棄物処理能力で除したものである。流動床炉では流動床炉の 専用再処理においては掘り起こしごみの熱量不足の問題を回避するために、熱量不足分を重油の 助燃で補うとした。JESCの調査データによると、掘り起こしごみの持つ熱量は1,325kcal/tであっ た。本研究では流動床炉の稼動に必要な廃棄物の熱量は2,000kcal/tと設定し、不足分の熱量を重 油換算し、投入をおこなうものと仮定する。
7)流動床式における重油は自己熱溶融にいたるまでの補助燃料として投入され、キレート剤・セメントは灰の安定化 のために投入される。シャフト式はコークスを主要な熱源として高温の溶融・ガス化を行い、キレート剤は灰の安 定化のために投入される。そのプロセスについての詳細は付録D.3にまとめる。
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Fig. 5.6: シャフト式ガス化溶融に関するフロー 掘り起こし廃棄物に関わる設定
掘り起こしごみの組成は東京都中防の埋め立てごみの組成を参考とする。JESCの先行研究など に従い、直接埋立量の10wt%にあたる1,360千tの再処理活動を行うことを仮定する。掘り起こしゴ ミの性状はJESCの調査データにより2分の1が土、4分の1が瓦礫などの処理不適物、4分の1 が再処理対象物とした。
掘り起こし活動に関わる設定
掘り起こし活動に関わる詳細なエネルギー投入や廃棄物排出などのデータは存在しなかった。
よって、使用する機械やエネルギー、作業の類似性などの観点から「掘り起こし」は「埋立」と 同様の廃棄物処理活動であると仮定し、廃棄物の処理量で比例配分した値を用いた。
化学工業」部門からの投入は処理薬剤によるものとし、助燃材は石油製品」部門からの投入とし、
廃棄物処理量によって比例配分した。「衣類」「ゴム製品」「一般機械」「自動車整備業」からの投 入は、焼却処理と類似の活動に依拠するものであると仮定し労働者数によって比例配分を行った。
また処理プロセスにおける工業用水の使用については総務省発行の「地方公営企業年鑑」を参 考にした。ヒアリングの結果、廃棄物1tに対して600リットルの水を使用するとする。水の使用 量は、おおよそ6,000万円分となる。
Fig. 5.7: 掘り起こし廃棄物に対応した元素別組成
Table. 5.3: 産業部門「掘り起こし」への投入
(百万円) 掘り起こし
衣服 3,896
化学工業 5,160
石油製品 1,188
ゴム製品 3,586
一般機械 2,284
輸送用機械 3,448
建設 11,297
土木 50,980
電気 4,192
自動車整備 6,648
石巻広域クリーンセンターのヒアリング調査により、ごみtあたりの作業人員は0.137人とする。
労働賃金は先行研究に従い、一人当たり700万円とする。
輸送に関する設定
再処理活動が行われるためにはガス化溶融炉の建設と掘り起こしごみの輸送が必要であり、こ れらは我々消費者の廃棄物処理に対する需要と考えられる。よって、各シナリオにおいて、ガス 化溶融炉の建設費と掘り起こしごみの輸送にかかる燃料費を推計した。
輸送に使用する軽油の金額を求めるに際して、掘り起こしごみの輸送形態を以下のように仮定 した。輸送車は燃費4km/hの4t車を往復24kmで使用するものとし、新たに発生する掘り起こしご みの輸送に必要な軽油の量として2,040klを得た。この仮定は中村らによるWIOの先行研究に基づ
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いている。なお、各シナリオにおいて掘り起こしごみの輸送量は変わらないので、ここで求めた 軽油代は各シナリオで共通のものである。
Table. 5.4: 収集・輸送に関する設定
部門名 片道距離 1日あたり作業 平均輸送速度 輸送車両容積
(km) 時間(時間) (km/時) (立米)
堆肥化 12 6 40 8(4トン車)
焼却 12 5 30 8(4トン車)
埋立 12 5 40 16(8トン車)
破砕 12 6 30 8(4トン車)
近藤・中村(2002)(中村編(2002)所収) P.195参照。
輸送トラックの燃費は4km/lとする。(処理量/4)×輸送距離×燃費によって軽油使用量を算出、
おおよそ8000万リットルと推定された。掘り起こし活動において需要される輸送活動に関しては、
埋立活動で需要される「その他輸送用〜」の値を、ゴミの埋立量と掘り起こし量で比例配分した。
再資源化・埋め立ての設定
ガス化溶融炉から排出された再資源化廃棄物および埋立廃棄物の受入先を以下のように仮定し た。発電される電気についてはストーン方式に基づき、電気業へのマイナス投入とした。このマイ ナス投入はガス化溶融炉を用いた廃棄物発電が既存の電気業の総生産を抑制させるという意味を 持つ。流動床炉から排出される「回収:鉄くず」は粗鋼(電炉)に全量投入し、流動床炉からの「回 収:アルミ屑」とシャフト炉からの「回収:溶融メタル」は非鉄金属業が全量回収するとした。スラ グはアスファルトに混入して道路整備に用いられるとした。廃棄物排出に関しては、掘り起こし の際に発生する土・流動砂・瓦礫・溶融飛灰は全量埋め立てるとした8)。
かさ密度に関しては北海道大学の田中らが開発した都市ごみ総合管理評価計算システム(北大モ デル)の値を使用している。各廃棄物種のかさ密度の設定において、新たに設定した埋立処理され る廃棄物はその性状等を考慮し、類似した既存の廃棄物のかさ密度を北大モデルより代用してい
る。Table.5.5には新たに設定した廃棄物とそのかさ密度を掲載した。
二酸化炭素排出についての設定
新たに設定した「ガス化溶融処理」と「掘り起こし」において、廃棄物処理量あたりの二酸化 炭素排出量を以下の方法により求めた。掘り起こしに関しては埋立と同様の活動であるとの仮定
8)JESCの調査では掘り起こしの際に発生する土・流動砂は再埋め立ての際に覆土として利用できると報告している。