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現代企業の経営多角化傾向は,世界的にみられる一般的経済現象であるが,就 中,その現象が顕著で、ある米国においては,それが複合的・多角的合併による外 部発展という形態をとって展開されたところに,その特徴がみられる このよ
うにして,急激に生成・発展した複合企業ないし多角経営企業は,その企業数の 増大と経営規模の拡大とによって,経済社会の全般に多大の影響を及ぼし始め,
従って,企業会計tにも種々の問題を提起するに至った。
その主要問題の一つは,多角経営企業が,連結財務情報のほかに,部門別財務 情報をも併せて公開すべきであるという企業内容の適正開示問題である。それは,
主として今日の伝統的な外部報告会計の理論が 単一製品部門の企業を時代的背 景として展開されたために,多数市場施行的企業の多角的事業活動を報告するた めには,もはや妥当しなくなったことによるものである九
そこで,本稿では,かかる観点から.多角経営企業の財務報告について,まず,
水平的多角化時代にどのような情報が新たに必要とされていたのかの検討を通じ て,今日の部門別外部報告会計の歴史的発展を考察し,次に,現在公表されてい る部門別財務報告の実態を概観して,目下,部門別外部報告会計にとっては最重 要問題である報告部門の設定に関連して そこで採用されている報告部門設定に 関する分類基準について検討を加え,併せて若干の問題点を明らかにしたいと考 えているO
1) David F. Hawkins, Finαncial Reporting Prαctices 01 Corporαtions, 1972. p.398.
2) Ronald Copeland, D. Larry Crumbley and Joseph F. Wojdak, Advanced Accounting, 1971. p. 280.
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前述のような複合的経営多角化現象の出現し始める前に,既に1945年頃には,
水平的合併による経営多角化企業が数多く生成・発展しており,今日と同様,か かる複数市場指向的企業の多角的事業活動を報告するためには,従来の単一製品 部門の企業を背景として展開された伝統的な外部報告会計の理論が,もはや妥当 しなくなり始めていた。つまり,
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株式公開会社の全ての投資家は,当該会社の 営んでいる事業の種類 (thekind of business)を知る権利をもっている。…・種々の活動を単一の会社または企業集団に広範な統合を行った結果,広範囲にわ たる全社的な多角化 (wideintracorporate diversification)によって,要求さ れている完全な報告(fullreporting)が見逃がされるようになった。殆んど例 外なく,年次報告書は,誉をもって当該会社の事業活動の多様性とその製品の多 種性を報告している。しかしながら,経営多角化に関する情報は,相も変らず,
丈章による定性的な (texturaland qualitative)ものであって,多種事業の相 対的重要性を知るためには,定量的な報告 (quantitativereporting)が要求さ れるのである3)。とムーア (WilliamH. Moore)によって既に指摘されている からである。
さらに,当時,一般に公表財務諸表として利用されていた連結財務諸表は,勿 論,必要不可欠なものではあったが,次第に水平的統合化によって経営の多角化 を図りつつあった会社については,企業内容の詳細性を不明瞭化する傾向にあっ た。つまり,連結財務諸表必要性の主な理由の一つは,好ましからざる関係会社 (unfavorable affiliations)または欠損従属会社 (losingsu bsidiaries )に関す る情報が,かかる会社の除外によって,報告から隠されるという可能性にある九 ところが,ムーアによれば,収益性のよくない関係会社を除外または無視すると 3) William H. Moore,Accounting for Sources of Income", The Journαl
of Accountαncy, Apri11945. p. 285.
なお,本稿における引用文中の傍点は,すべて引用者が施したものであることに留 意されたい。
4) Ibid., p. 289
し、う選択的報告の危険 (thedanger of selecti ve reporting)を克服せんとして,
他の乱用への途が聞かれてしまったという九つまり,収益性のよくない事業は,
他の事業と連結されることによって,連結財務諸表上,潜入してしまって,不明 瞭となるからである。そこで,会社問項目の連結および消去という問題は,垂直 的に統合された会社 (companiesvertically integrated)において,基本的な重 要性があるものなのであるへというのは,かかる会社にあっては,会社聞の売 上やその他諸取引は,製品がある完成の段階から次の製造段階あるいは販売会社 または販売部門へと通過するにすぎないことに関連して生ずるものであるから,
連結財務諸表上は重要な意味をもつことになるのである九ところが,
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今,ここで問題にしているのは,最高経営者の段階における経費,利子,税金等を除 けば,殆んど企業集団内の取引がない(littleintra‑family dealing)ような水 平的多角化 (horizontaldeversifica tion)の適正な報告に関する問題である吋
と明確に問題点を指摘しているのである。
当時,多角経営企業として名高かったものに, the Procter & Gamble Compa‑
ny, Pittsburgh Plate Glass, the National Dairy Products Corporation, General American Transportation Corporation, American Smelting and Refining Company等があるが,かかる企業の株主も殆んどは,その母体事業以外の関連 事業を営んでいることには,注目していたが,利益に対する事業活動別の相対的 貢献度は誰も知らなかったのである針。しかし,
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この補足的事業の拡大,その 収益性および投資収益率は まさに株主が知らされねばならない関心事であ る10)o J
鉄道会社では,当時,統一的会計の規制下にあって,企業利益の性格に 関する多くの情報が,投資家あるいは利害関係集団に既に利用されていた。つま り,収益は,貨物運賃と旅客運賃に区別され,前者は,更に農業,鉱業,山林業 および製造業と取扱商品の種類別に分類され,それぞれ総収益に対する割合も算 定できるように報告されていたのであるヘ5)‑8) Ibid., p. 289. 9) Ibid., p. 285‑6目 10) Ibid., p. 286. 11) Ibid., p. 287.
そこで,かかる影響もあってか, Pullman Incorporatedは, 1943年度の年次 報告書から,輸送業と製造業とに区分して,連結貸借対照表および連結損益計算 書を作成・公表しており 1
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R.H. Macyも営業所別に売上と利益を報告し始 め13),the Consolida ted Edisonも,利益貢献度は公開しなかったものの,工業・住宅とガス・蒸気・その他に区分して,売上の割合をも公表していたのであるi
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ムーアによれば,
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経営管理上は,製品,工場および事業別の売上および原価 に関する親密で,最新の,そして詳細な知識が要求されている。ところが,株主 は,多角経営企業からは,その営んでいる事業の性格に関する情報さえも殆んど 提供されておらず,また,それで、満足せねばならない理由が明らかではない1510J
つまり,理論的には,雇用経営者が,当該会社の経営成績とその見通しについて,
その所有者に報告するような情報を,年次報告書は,株主に提供せねばならない のであって,その必要事項の一つが,主要な事業活動別の相対的重要性と収益性 である。そして,
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株主にとってのかかる知識の重要性は,彼等やその他の資本 の所有者(経営者ではない)が最終的な投資決定一投資を行うか否かーを行な うという事実にある16)o J
と説き,r
……進歩的な経営者は,会社の主要な活動 のそれぞれについて,垂直的に欄を設けて,要約的な損益計算書を含めることに よっ、て,株主の信頼を上手に得ることになろう。かかる欄の水平的合計は,当該 年度の全般的な損益計算書と一致することになろうへ」と新しく部門別外部報 告の提案を行なっている。しかし,かかる完全な公開のできない場合には,製品 または事業別の営業利益を公開すれば,少くとも最終結果に対する各事業活動の 相対的重要性は知らせうるが,さもなければ,最低限度として,製品別売上の公 開は必要であろうと主張している18)。ところが,当時,同業者であれば,売上高 から売上原価を算定し,当該事業部門の収益性をも見積ることができるので,売 上数値のみでは,むしろ競争会社にとって価値ある情報となり,株主には利益の 最終的源泉が殆んど知らされないことになるので,売上または売上原価を公開せ12) Ibid., p. 286. 13) ‑16) Ibid., p. 287. 17) Ibid., p. 288‑9. 18) Ibid., p. 289.
ずに,主要な事業別利益しか公表せねば,競争会社にとっては殆んど価値はない が,株主には会社の経済的な問題や将来を予測する上に,非常に役立つであろう
と考えられた1
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ところで,利益に対する相対的貢献度の公開に反対する主たる論拠は,伝統的 な企業全体的な損益計算書と各製品,工程,部門および事業に関する利益の詳細 を報告する管理的な報告書との聞に,論理上の区別がなくなることにある。しか し,凡ゆる場合に,詳細性に関する常識的な限界 (common‑senselimi t)とい うものがあって,大抵の場合,全社的な売上高に関する論理的な内訳(logical breakdown)があり,それは,製品または事業の性質上の明確な差異によって,
区分されるべきであるという田)。更に,得意先の性質または種類による顧客別分 類は,当該会社の傾向や将来に関する理解または予測にとって,非常に重要なも のであると考えられ2へまた,売上および利益を囲内市場と国外市場とに区分表 示することも,賢明な投資家の評価には必要でAあろう。そこで.Corn Products Refining Companyは.1943年の年次報告書において,圏内と国外の顧客別に総 売上高を区分するのみならず,輸出に関しては,本年度と前年度との金額をも括 弧に入れて連結利益に追加表示した22)。しかし,驚くべきことは,一般に株主が 輸出事業に関する会計的情報を要求していなかったことである田)。
ところが,企業の経営多角化傾向は,やがて,垂直的合併から水平的合併をも 乗越えて,次第に複合的合併を中心として達成され始め,その結果,今日一般に いわれる多角経営企業(複合企業)が出現したのである。かかる複合企業の急激 な生成・発展の過程は,連邦取引委員会 (FederalTrade Commission)の分類 による複合的合併形態の増加傾向をみれば,つぶさに理解できるであろうが制,
これが,前述の水平的統合化によって惹起せしめられた部門別財務情報公開の必 19),20) Ibid., p. 289.
21) Ibid., p. 289‑90 22),23) Ibid., p. 290.
24) 拙稿「部門別財務情報の公開とその有用性について 米国における多角経営企業 の部門別外部報告会計を中心としてー」彦根論叢 第169・70号(昭和49年11月) 169頁参照。