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連結財務諸表分析上の問題点

ドキュメント内 連結会計論 (ページ 102-121)

一 わ が 国 の 連 結 決 算 制 度 を 中 心 と し て 一

I 序

周 知 の よ う に , 米 国 , 英 国 , 西 独 な ど の 先 進 主 要 因 に お い て は , 既 に 連 結 財 務 諸 表 は 制 度 化 さ れ て お り , 特 に , 米 国 に お い て は , こ れ が 公 表 財 務 報 告 書 の 大 部 分 を 占 め る 現 状 と な っ て い る11。 わ が 国 に お い て も , 本 年4月1日 以 降 に 開 始 す る 事 業 年 度 か ら , 証 券 取 引 法 の 適 用 会 社 は , 有 価 証 券 届 出 書 お よ び 同 報 告 書 の 添 付書類として,

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連 結 会 計 年 度 の 連 結 財 務 諸 表 を 作 成 し て , 大 蔵 大 臣 等 へ の 提 出 が 義 務 づ け ら れ た21。 し た が っ て , 連 結 財 務 諸 表 の 作 成 基 準 な ど も 定 め ら れ31

公 認 会 計 士 ま た は 監 査 法 人 の 監 査 証 明 を も 受 け な け れ ば な ら な く な っ た の で あ る41 有 価 証 券 届 出 書 な い し 同 報 告 書 提 出 会 社 は , 昨 年 末 現 在 で2774社であるが,

1 )  Price Waterhause International, Survey of Accounting Principles  and  Reporting Practices in 38 CountrisSept. 1973.  なお,これに基づいて作成

した財務報告制度と持分法の適用状況等については,拙稿「連結会計基準の国際的 統一化」彦根諭叢第173 (54年6月)74頁を参照されたい。

2)  ["有価証券の募集又は売出しの届出等に関する省令の一部を改正する省令J(昭和 51年10月30日,大蔵省令第30号)なお,届出省令10 17条および証取法4 24  条を参照されたい。

3)  ["連結財務諸表の用語,様式及び作成方法に関する規則J(昭和51年1030日,大 蔵省令第28号)および同「取扱要領J(昭和52年311日,大蔵省通達「蔵証第 325J)なお,この規定は,昭和50年624日,大蔵省企業会計審議会公表の「連 結財務諸表原則」および同「注解」に基づいたものである。以下では,前者を連結 規則および同取扱要領,後者を連結原則および同注解と略称する。

4)  ["財務諸表等の監査証明に関する省令J(昭和51年1031日改正,大蔵省令第加号) 1条。なお,この監査証明省令および同「取扱通達J(昭和52年311, ["蔵証 323号J)は,ともにー部修正され,連結財務諸表に対する監査報告書・監査概要書の記 載事項カ功日えられた。この規定は,大蔵省企業会計審議会カf昭和51年713日に改訂した

「監査報告準則」に基づいたものである。また同審議会では,連結財務諸表に対する監査 の実施準則も改訂し, ["監査実施準則」に含めている。

そのうち初年度から実際に連結財務諸表を提出する会社は,約600社と推定され ている51。これに対して,連結財務諸表を既に作成して,証券取引所に提出・縦 覧されている会社は,本年3月末現在で, (1)新規上場,市場第 1部指定,合併 等によるもの53社, (2)ADR等の発行による海外提出によるもの32社, (3)上場 会社で自主的に提出しているもの

2

社,の合計

8 7

杜にすきない6)

したがって,大多数の会社にとっては,連結財務諸表の作成・公表は,今回の 制度化によるもので、あって,各社各様の作成基準を選択適用した連結財務諸表の 公開が予想され得るのである。かかる場合,連結財務諸表を比較分析するにあたっ て,われわれは,一体どのような点に留意する必要があり,またどのようなとこ ろに問題点があるのかを,充分に理解しておかなければならない。

そこで,かかる観点から,本稿では,まず連結財務諸表それ自体のもっている 限界ないしはそれに内在する問題点を考察し つぎにわが国の連結決算制度その ものに内在している問題点を検討した上で,連結制度の運用面から生ずるわが国 特有の問題点をも明らかにしたい。

H 連 結 財 務 諸 表 そ れ 自 体 に 内 在 す る 問 題 点

連結財務諸表制度の最も進んだ米国においては,一般に連結財務諸表は,まず 親会社の株主と債権者のために,企業集団を単一の会社 (singlecompany)と

して.その経営成績と財政状態を表示するものと考えられ,また,それは,個別 財務諸表よりも有意義であって,支配的な財務持分 (controllingfinancial  interest)をもっている場合には適正な表示(fairpresentation)のために通常 必要で、あると推定されているのである71

そこで,本来ならば,まず叙上の仮定から吟味・検討を加えた上で,連結財務 5 ) 井上伸夫稿「投資家からみた連結財務諸表制度及び運用上の問題点」ジュリスト

639号(52515日)51

6 )  野尻孝夫稿「証券取引所の上場管理からみた連結財務諸表の制度化」前掲誌 59 7)  AICP A, ARB No. 51, Consolidαted Finαncial Stαtements, August 1959. 

par. l.  Paul Grady, 1nventory 0/ Generαlly Accepted Accountig Principles  /or Brsiness Enterprises, 1965. p.  318. 

諸表それ自体のもっている限界なり問題点を考察すべきなのであるが,紙幅の関 係上,この点は別の機会に譲ることにした。したがって,以下では,米国の連結 財務諸表について指摘されている限界ないし問題点を中心に考察していくことに

したい。

1.  経営比較分析上の問題点 (1)  長所と短所の相殺・平均化

連結財務諸表は,統計的分析上,誤った解答を導くような多数の複雑な問題を 惹 起 せ し め る 。 例 え ば , 連 結 会 計 数 値 か ら 作 成 さ れ た 諸 比 率 は , 加 重 平 均 (weighted averages)されたものであるから,その信頼度は,連結各社における 勘定残高のバラツキ度に依存することになるへまた,ある会社の短所が要約さ れる過程で,他の連結会社の特別な長所と相殺され,平均化されてしまって,結 局は,不適切な結果をもたらす指標となってしまう91。さらに,連結会社関取引 の消去によっても,比率は大きく影響されるO かりに費用が売上高との一定割合 で維持されねばならないとすれば かかる場合には 内部取引を消去する前の総 売上高に対する総費用の割合で計算しなければならないであろう1jo

以上のようなことが,限界として最も多く指摘されるのであるが,これに対し て,連結財務諸表だけの分析からでは,財務比率や関連性がそこなわれるという のは,誇張であると反論する見解もある。例えば,最高経営者が,連結集団にお ける1社から他社へ諸資源を移しうる権限をもっている場合,連結財務諸表上の 財務比率や関連性は,個別財務諸表上から決定された同じものよりも,その状況 での経済的事実を正確に反映できているであろう。つまり,後者の数値は,連結 会社の1社の財政状態をすみやかに変更できる最高経営者の能力を考えれば,

8)  Charles H. Griffin, Thomas H. Williams & Kermit D. Larson, Adlnced Accounting, Re. Ed., 1971. p. 212. 

9)  Ibid., p. 213. Norton M. Bedford, Kenneth W. Perry & Arthur R. Wyatt,  Advαnced Accounting, An Organizαtional Approαch, 3rd Ed., 1973. p. 298  9.  Ronald Copeland, D. Larry Crumbley & Joseph F.  Wojdak, Advanced  Accounting, 1971. p.  161. H. A. Finney & Herbert E.  Miller, Principles 0/  Accounting, Advαnced, 5th Ed., 1967. p. 468 

10)  H. A. Finny& H. E. Miller, op. ci, .tp. 469‑70 

適切なものではないのである1九 (2)  連結会社の全体的首尾一貫性

連結集団内における勘定の分類や評価基準の相違は,連結財務諸表の意味を歪 曲する。一般に,連結会社の独特な会計システムは,容易に変更できないので,

連結各社の分類・評価基準は,全く従来どおりのものとなろう則。したがって,

評価基準,棚却計算法,償却率等が異なることもあろうが,かかる連結合計は,

単に非類似項目の増加を表わすにすぎないものとなる13)。また,不動産会社の土 地,製パン会社のパン,化学会社の製品などを連結貸借対照表上,全てを流動資産 として計上することもあるが,その集計勘定残高は殆んど意味のないものとなる凶。

さらに,連結財務諸表上 全ての会社の完成品を製品として表示するが,連結 集団内で1杜の製品が他社の原材料になっている場合には,かかる棚却資産の分 類手続は,誤解を招くものとなる。つまり,個別会社上では製品として適正に分 類された重要な棚卸資産であっても,連結上からは,実際に原材料ないし仕掛品に なる場合には,棚却資産の流動性に関する偽った印象をあたえることになろう凶。

(3)  在外子会社の諸資産

連結貸借対照表に,異常に変動する為替相場や為替制限を伴うような外貨,特 別回収の困難な外貨建受取勘定,あるいは外国向け販売用に製造され包装された商 品などが含まれている場合には.これから非常に誤った結論を下すことになろう刷。

(4)  事業別財務報告

近年,最も多い批判は,財務分析からくるもので,高度に多角化された企業集 団 (highlydiversified corporate group)の連結財務諸表が,単一の事業ないし

11)  N. M. Bedford, K. W. Perry & A. R. Wyatt, op. cit., p. 299.  12)  C. H. Griffin, T. H. Williams & K. D. Larson, op. ci, t.p. 213.  13)  R. Copeland, D. L. Crumbley & J.  F. Wojdak, op. ci, t.p. 161.  14)  N. M. Bedford, K. W. Perry & A. R. Wyatt, op. ci .,tp. 299. 

C. H. Griffin, T. H. Williams & K. D. Larson, op. ci, t.p. 213.  15)  H. A. Finney & H. E. Miller, op. ci t.,p. 468. 

16)  Ibid., p.  468. C.  H. Griffin, T. H. Williams & K. D. Larson, op.  ci .,t p.213. 

製品に分類できないということである。したがって,財務分析者は,複合企業 (conglomerate)の連結財務諸表が企業比較分析に利用できないと主張してい るm

2.  株主,債権者等からの問題点

( 1 )  

子会社利益余剰金の配当可能性

債権者,株主の両者に配分されている貨幣的持分 (monetaryequi ties)は, 連結財務諸表の評価にあたって,誤って解釈されがちである。子会社の利益は,

子会社が正式に配当宣言するまでは 親会社の利益として実際には役立たないの である18)。つまり,連結後に累積された子会社の利益余剰金は,親会社の利益余 剰金の一部を構成するものではない。したがって 個別会社の配当支払能力は,連 結財務諸表からは確定できないし潜在的配当を確定することも困難なのである則。

また,社債権者,優先株主は,それぞれ社債利息,優先配当の要件と個別会社 の利益との関係に関心をもっし,普通株主は当然,普通株式に対する残余利益に 関心をもつので,かかる要請に連結財務諸表では応じられない。全ての会社の社 債利息,優先配当などが集計されてしまうため,どの会社についてもそれらが何 回支払われたかが分からない。さらに,優先株式,普通株式に対する配当金の前 に,全ての社債利息を控除して報告する習慣があるが,このために全ての社債利 息が他の配当金の支払よりも前の順位にあるという誤った印象をもたらす傾向が ある。しかし,実際には,子会社の利益が親会社の社債利息の支払に当てられる 以前に,子会社の社債利息と優先株式,普通株式に対する配当は,支払われなけ ればならないのである劃。

17)  Walter B. Meigs, A. N. Mosich & E.  John Larsen, Modern Aduαnced  Accounting, 1975. p. 187.  なお,この点の詳細については,拙稿「連結報告会計

と部門別報告会計j彦根論叢 1623 (488月)117‑33頁,拙稿「部門別 財務情報の公開とその有用性についてj彦根論叢 169.70 (4911月)168‑

86頁,等を参照されたい。

18)  C. H. Griffin, T. H. Williams 

K. D. Larson, op. ci .,tp. 213  19)  R. Copeland, D. L. Crumbley & J. F. Wojsak, op. ci .,tp. 162  20)  H. A. Finney & H. E. Miller, op. ci ,t.p. 468‑9 

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