一 一 一 未 実 現 内 部 利 益 の 消 去 を 中 心 と し て 一 一 一
I 序
周知のように,一昨年6月24日,企業会計審議会より「連結財務諸表の制度化 に関する意見書」が公表されて以来,問答申の趣旨にそって,証券取引上の連結 財務諸表制度を実施すべく,各般の準備が鋭意進められている。ところで,同答 申の内容は,去る昭和42年5月29日公表の「連結財務諸表に関する意見書」を始 め,昭和45年12月14日付,証券取引審議会の「企業内容開示制度の整備改善につ いて
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という要望書,また昭和46年2月16日の衆議院大蔵委員会の連結財務諸表 採用の検討に関する付帯決議,さらには昭和49年12月11日公表の国際会計基準委 員会公開草案第3号「連結財務諸表と持分法j等を基準にして,企業会計審議会 が長年慎重に審議したものである1)。したがって,今回の「連結財務諸表原則」は,前回の「連結財務諸表に関する 意見書」が啓蒙的意図をもって公表されたのに対して この旧意見書で示された 基準を基礎として制度化という観点から再検討されるとともに,最近の国際的連 結会計基準の動向をも島酌して作成されているところに,その特徴がみられる2)。
特に,同原則の中に持分法の考え方が採り入れられたことは,当面,その適用 が強制実施ではなかったとはいえ,今回の答申の一つの重要な柱となっている。
持分法は,比較的新しい会計方法であるから,わが国ではもちろん,米国を除く 他の諸外国においても,今後, )i斬次実施されていくものと思われる3)
1) 黒沢清稿「連結財務諸表の制度化に関する意見書の公表にあたって」企業会計,
第27巻第10号 2← 4頁。
2 ) 武田隆二稿「持分法の適用」前掲誌, 18頁。
3 ) 自由世界38カ国における連結財務諸表と個別財務諸表との関係や持分法の適用状 況などについては,拙稿「連結会計基準の国際的統一化一国際会計基準公開草案第 3号の特徴と問題点一」彦根論叢,第173号, 74頁を参照されたい。
米国では.1959年8月. AICPA (米国公認会計士協会)公表のARB(会 計調査公報)第51号に,初めて持分法が選択適用という形で連結会計基準に導入 されたが.1971年3月公表のAPB(会計原則審議会)意見書第18号に従って,
1972年. SEC財務諸表規則 (RegulationS‑X)の中で,初めて持分法が制度 化されたのである。
そこで,米国における持分法の制度化という観点から,この持分法が連結会計 基準に導入されたことによって,連結財務諸表上に報告される利益に,一体どの ような問題を惹起せしめたかについて考察してみたい。かかる観点から,連結報 告利益に直接的な影響を与えると思われる会社関の未実現利益の消去という問題 に焦点を絞って,問題点を解明することが,本稿の目的である。
E 連結報告利益の検討
連結財務諸表は,一般に支配・従属関係にある親子会社群から構成されている 一つの企業集団の経営成績と財政状態を表示するものであるとされている。しか し,実際にこれを作成するにあたって,連結の範聞を決定する際には,実質的な 支配力基準によることなく,むしろ社外発行済議決権株式 (outstandingvoting shares)の過半数所有という持分比率基準によっている。さらに,このうちから 一定の連結基準に合致しないものは 連結の範囲から除外されることになる。
したがって,実質的には支配・従属関係にある子会社であっても,叙上のよう な理由から,連結の範囲から除外された子会社は,連結財務諸表上おいては,そ の実質的な経済的諸関係の実態が十分に反映させられることもなく,単にこれら の会社に対する投資勘定として,取得原価のままで計上されるにすぎないことと なる。
かかる不合理を多少でも是正せんとする方策として,従来から当該非連結子会 社については,その個別財務諸表の添付や結合ないし総合財務諸表の作成,ある
いは連結財務諸表の脚注での説明といった種々の試みと努力が払われてきている。
しかし,そのいずれの方法によっても 基本的には,これらは連結財務諸表上に おいて,その実態を直接的に純損益という形で反映させられるもので、はなかった。
そこで,まず最初に,連結財務諸表上における当該非連結子会社の取扱いにつ
いて, AICPAは
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ARB第51号一連結財務諸表J
において,その公式見解と して,持分法を適用することが好ましいと推奨し,同時に表示上の均衡から,従 来の原価法に対しでも,次のように大きく修正を加えた。すなわち,原価法とは「現在においてはヨリ a般に用いられている方法であるが,投資勘定を原価で表 示し,かつ配当金を受取るごとに利益を計上する方法である。しかしながら,子 会社が受けた損失による投資勘定の重要な減損に対しては,それが一時的なもの であると考えられる場合のほか,引当金を設けるべきである。
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4)また,原価法適 用の場合には,r
連結財務諸表には,非連結子会社の純資産に占める連結会社グ ループの持分,当期における非連結子会社よりの受取配当金,並びに非連結子会 社の当期純利益に占める持分を,脚注その他の方法で公開せねばならないJ
5)と 持分法との表示上の均衡が図られた。さらに,連結との均衡上から,持分法・原価法のいずれの場合でも,
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取得日 における投資原価と純資産持分との聞に差異がある時は 当該子会社が連結され るとすれば,かかる差異の一部は償却の調整として反映される可吉町生があるので,これを適切に認識せねばならない。また 非連結子会社との取引による会社間損 益を調整する必要に対しでも,適切に認識せねばならない
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6)と連結会計上の重 要項目である投資消去差額と会社間損益の適切な会計処理が要求された。しかし,叙上のような均衡上の考慮は 必ずしも論理的なものではなかったよ うに思われる。そこで,この点に関して,いま少し詳しく, (1)連結の場合, (2) 持分法適用の場合および(3)原価法適用の場合に それぞれ未実現会社間利益の 消去に関して,一体どのような会計処理上の相違がみられるかについて考察して みることにしよう。
まず第1は,連結の場合であるが, AICPAはARB第51号の一般連結手続 において,
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連結財務諸表は,単一企業としての財政状態と経営成績を表示する という仮定に基づくものであるから,かかる財務諸表はグループ内の会社間取引4), 5) AICPA, ARB, No. 51: Consolidated Statements, 1959, par. 19. Paul Grady, Inventory of Generαlly Accepted Accounting Principles for Business Enterprises, 1965, p.323← 4.
6) ARB No. 51. par. 20. Paul Grady,op. cit., p. 324.
による損益を含んではならない。したがって,グループ内に残留している資産に 含まれている会社間損益は,全て消去されねばならないJ')とその基本的な見解 を公式に表明している。つまり,連結財務諸表の作成上,資産の会社間売上より 生じた未実現利益は,当該資産が外部者に販売されるか,あるいは消費されるか によって,かかる利益が実現し終わらない限りは,完全に消去されるべきものと
しているのである。
第2は,非連結子会社の投資勘定を持分法によって会計処理している場合であ るが,当該非連結子会社への売上に基づく「未実現会社間損益の消去は,当該子 会社が連結された場合と同じ程度まで行なわねばならない。同じ処理方法は,会 社間売上が非連結子会社によって行われた場合にも適用される
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8)と会社間売上 が,親会社・子会社のいずれによるものかに関係なく,未実現会社間利益の完全 消去を定めている。したがって,かかる規定は,連結との均衡上の配慮、から,連 結基準をそのまま持分法適用の場合にも拡大適用したものである。第3は,非連結子会社の投資勘定を,従来どおり,取得原価のままで会計処理 している場合であるが,かかる場合には. ["もしその売上利益が非連結子会社の 未分配利益に占める未計上の持分を超過していないならば,当該子会社に対する 売上により発生する会社間利益は,消去する必要がない
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9)とされ,ただその金 額に重要性があれば,適切に公開せねばならないと定められている。これに対して, ["その売上が,非連結子会社から連結グループの会社に対して 行われた場合には,会社間損益は,非連結子会社の未分配利益に占める持分額を 計算するにあたって,消去せねばならない
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山と非連結子会社の未実現会社間利 益は消去すべきことを定めている。つまり,原価法適用の場合には, (1)親会社 から非連結子会社への販売による未実現会社間利益は,非連結子会社の未分配利 益に対する親会社の持分額を超過しない限り,消去されないが, (2)非連結子会 社から連結グループ,つまり親会社ないし連結子会社への販売による未実現会社 関利益は,逆に非連結子会社の未分配利益に対する親会社の持分額の計算にあたっ7) ARB No. 51, par. 6. Paul Grady, op. cit., p. 320 8 )ー10) ARB No. 51, par. 20. Paul Grady, op. cit., p. 324.
ては消去されることになるO
(1)の消去不要説は,原価法では非連結子会社の未分配利益に対する親会社の 持分額に,連結財務諸表上,持分法との均衡から,たとえ未実現会社間利益があっ ても,これを消去することなく,この消去額に相当する額だけ「親会社の持分」
として連結利益に計上しておこうとする消極的な均衡上の配慮によるものであろ う。しかし,これは,非連結子会社の未分配利益に対する親会社持分がどのよう に多額であっても,連結報告利益には反映されず,親会社に未実現会社問利益が 存在している場合に限って,これが連結利益に計上されるので,理論的ではな
し、11)。
結局,連結の場合と持分法適用の場合とは,実質的に同じ連結利益が報告され るのに対して,原価法適用の場合だけは,これら三者とは全く異なった連絡利益 が報告されることになるのである。したがって,連結財務諸表が公表されている 場合でも,非連結子会社に対する投資勘定を原価法によるか,あるいは持分法に よって会計処理するかによって,そこに報告される利益は,異なったものとなら ざるを得なかったのであるO
要するに,最初,子会社の連結・非連結より生ずる不合理を解消するために導 入された持分法ではあったが,あくまでも,それは単に持分法の選択適用という 観点から,連結利益と持分法利益との同一化が図られたにすぎないものであった。
特に,未実現会社間利益の消去に関する限り,消去基準は連結の場合と持分法適 用の場合とでは同ーの取扱いが要求されたのに対し,原価法適用の場合には,異 なった取扱いが要求されていたのであるO したがって,同一条件の子会社につい て,連結財務諸表が作成・公表された場合でも,原価法と持分法との選択適用に より生ずる連結報告利益の相違は,依然として存続していた。
そこで, AICPAは, 1966年12月公表