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連結会計基準の国際的統一化

ドキュメント内 連結会計論 (ページ 82-102)

一一一国際会計基準公開草案第3号の特徴と問題点一一

I 序

最近,各国において会計基準の国際的統一化運動が活発に展開され,企業活動 の遂行される経済的・制度的環境条件を会計上調和ないし統一化せんとする努力 が,急激に現実化しつつある。かかる統一化運動の背景には, (1)各国における 外国証券の上場数増大に伴い,発行会社や会計監査人による各国聞の会計基準の 差異調整に要する莫大な犠牲が認識されたこと, (2)多国籍企業や国際企業の海 外活動の拡大に伴い,海外直接投資に関する現地固における関連諸規制による流 動化の阻害や本国基準との差異調整に要する無用の労苦が認識されたこと, (3)  各国聞の相違は伝統,慣行,法令等に基づくものが多いが,中には会計基準の不 備,不徹底等に基因するものもあって,ヨリ一層適正な方向に統ーされて共通的 な基準の成立する可能性が認識されたこと等が,その主たる促進要因として存在

しているものと考えられる1)

叙上のような現実的背景のもとに 1962年 第8回国際会計士会議(Inter national Congress of Accountants)における国際会計基準必要性の強調以来,

会計士国際研究グループ (AccountantsInternational Study Group lによる調 査・研究報告の公表,更にEEC加盟諸国の会計士協会で構成するヨーロッパ会 計士連合 (UnionEuropeenne des Experts Comptables EconomiquestFina‑ ncierslによる共通会計基準設定の活動など,次々に会計基準の国際的統一化運 動は,具体的に展開されてきた2)。そして,これらの米国や欧州における国際会 1 )  Frederick D. S.  Choi,Multinational Financing and Accounting Har‑

mony," Mαnαgement Accounting, March 1974, pp. 14‑5.中島省吾稿rlASC  公開草案第1号の背景および問題点」会計 1073号 (50年3月)18頁参照。

2)  Joseph P. Cummings, "The lnternational Accounting Standards Com mittee‑Its Purpose and Status", The CPA Journal, Sept. 1974. p. 52‑3. 

計基準の形成活動を統合するものとして, 1973年6月,米国をはじめとする9 月の16にのぼる職業的会計士団体をもって構成する会計史上最初の世界的規模の 会計基準設定機関である国際会計基準委員会(InternationalAccounting Stand ards Committee一以下.IASCと略称)の成立をみたのである3)

このIASCの目的は.I国際会計基準に関する趣意書j によれば, I監 査 の 対 象となる計算書および財務諸表の提示にあたり準拠すべき基本的諸基準を,公共 の利益のために作成公表し かっ これが世界的に承認され遵守されることを促 進する

4 ) J

ことにある。しかし,既に述べたように,

I

国際会計基準の形成は,

それぞれの経済的・制度的特殊条件にも固執する各職業的会計士団体の協議を通 じて,会計原則のいわば国際性と風土性との相剖という困難な問題を内包する5)J ものである。かかる意味において, IASCの 目 指 し て い る 多 国 籍 企 業 に よ る 会 計情報の国際的開示や国際的監査活動の強化が 実際にはどのような動機や理念 に支えられているかは,数次にわたる国際会計基準の具体的内容やその現実的機 能の検討を通じて解明されねばならないものと思われる。しかし,本稿では,こ れら一連の国際会計基準を検討するだけの余裕はないので,取敢えずわが国では 目前に迫っている連結財務諸表の制度化6)との関連もあって,特に検討すべき問 題点が多いと思われる1974年12月11日公表の公開草案第3号「連結財務諸表と持

ノ刀法7)

(Consolidated Financial Statements and the Equity Method of Ac‑ 3)  ICCAP. Towards  an  International  Accounting  Profession

The

Journαl 01 Accountαncy, June 1974. p. 80~82.

4)  IASC. Prejiαce to Stαtements 01 International Accounting Stαndαrds, Jan.  1975. para. 2.  (日本語版は, I国際会計基準に関する趣意書」会計ジャーナル 1975年3月号 118頁)なお,本稿における引用文中の傍点は,すべて引用者が施し たものであることに留意されたい。

5 ) 津曲直斜稿「棚卸資産に関する国際会計基準 IASC起草小委員会の原案をめ ぐって 」会計 1072号 (50年2月)37頁。

6 )  わが国における連結財務諸表の制度化については,昭和48年7月9日公表の日本 公認会計士協会会計制度委員会答申「連結財務諸表の制度化を推進するうえにおい ての問題点の検討について」会計ジャーナル 1974年2月号 66~68頁を参照され たい。

counting)を取上げることにする。

そこで,本稿では,まず本草案の全体に貫かれている会計思考を中心に,その 特徴と問題点を明らかにし 次にその主要な特徴である持分法の適用上で,連結 会計思考がいかに導入され展開されているかという観点から,持分法の適用にあ たって問題になると思われる点を中心に考察し これに検討を加えてみたい。そ して,同時にわが国で将来この基準が採用される場合に生ずると思われる若干の 問題点をも解明することが,本稿の課題である。

E 連 結 に 関 す る 草 案 の 特 徴 と 問 題 点

本草案の特徴については,その解説等において既に明らかにされている8)ので,

ここでは専ら本草案の基底になっていると思われる会計思考を中心として,その 特徴と問題点について考察することにする。そこで,本草案における第1の特徴 として,連結範囲の拡大を挙げることができるが,就中,その判定基準として実 質的な支配力基準が採用されていることである。即ち,本草案では, i(a)直接 または間接に,他の会社における議決権の過半数を所有している場合, または,

1 A S C, International Accounting Stαndards, Exposure Draft 3, Pro  posed Stαtement, Consolidαted  Finαncial  Stαtementsαnd the  Equity  Method of Accounting, 1974.なお, 日本語版は,国際会計基準公開草案第3

「連結財務諸表および持分法(案 )J会計ジャーナル 1975年1月号 53‑59頁があ るので,これを参考にした。従って.本草案第3号のパラグラフは,全て本文中に (第……項)として示した。

8 ) 例えば,次のようなものが挙げられる。

川口順一稿「国際会計基準公開草案第3号『連結財務諸表および持分法(案)J 解説」会計ジャーナル 1975年1月号 47‑52

居林次雄稿「連結国際会計基準について」会計シ、ヤーナル 19752月号 8‑12 中島省吾稿「国際会計基準公開草案第3号『連結財務諸表および持分法(案 )J 解説」企業会計 272 (502)71 52

白鳥庄之助稿「連結財務諸表と持分法について一国際会計基準公開草案における 持分法を主題として 」向上 76‑82

辰己正三稿「国際会計基準公開草案第3号『連結財務諸表および持分法(案)J 解説」産業経理 353 (50年3月)53‑60

(b)法制上または合意により,他の会杜の経営者の財務および営業の方針を支 配する力を有している場合

J

(第7項),支配 (control)が存在するものと考え られ,特に過半数の議決権株式を所有していなくても, ["取締役会の過半数を指 名する力により,経営に関する契約により,または法廷の指示によって支配され る

J

(第7項)ものとみなされるのである。

そして,叙上のような条件の下で支配されている会社は,子会社 (subsidiary) と定義され, [ "(a)支配が一時的であると認められるとき,または, (b)資金の 移動に関する厳しい長期の制限により 子会社の資産ないし営業に対する親会社 の支配が阻害されるような状況

J

(第30項)にある場合に限り,当該子会社は,

連結から除外できるものとされている。ただ,特例として, ["裁判所の監督の下 に置かれたり,破産ないし倒産の法律手続が開始された場合

J

(第33項)には,

支配力は喪失するものと考えられるので,同様な趣旨から連結除外とされている。

また,重要性の少ない子会社も,当然のことながら,除外されることになるヘ 従って,わが国の連結意見書で採用されている過半数持株基準以外に実質的支配 力基準が採用され,わが国では連結除外とされている異業種子会社初)までも連結 に含められているのであるO

そこで,かかる連結範囲の拡大に関連して,問題になると思われる点について,

若干考察しておきたい。まず第1は 在外子会社に関する問題であるが,今日の ように在外子会社による営業活動が重要な影響をもっ多国籍化時代においては,

これを連結除外することにより,連結財務諸表の意義が失われてしまうので,こ の点には特に問題はないものと思われるヘただ 資金移動の厳しい長期の制限 下にあるものを除く在外子会社を原則として連結に含める以上,本草案の趣旨に 照らしでも, ["外貨で表示されている財務諸表の換算の諸方法

J

(第4項 (e))に

9)  1 A S C, Preface, op, ci .,tpara. 12. 

10)  大蔵省企業会計審議会「連結財務諸表に関する意見書J(昭和425月19日)連結 基準二40

11)  これは,米国の会計実務においても一般的傾向であるが,未だ約40%の連結会社 は,在外子会社の一部を連結から除外しているo (AICP A, Accounting Trends 

& Techniques, 26th ed., 1972. p. 31.  ) 

関する問題が,本草案では対象外にされているので,早急に解決されねば,本草 案の現実的効果は,充分に上げられないものになってしまうことである。

第2は,異業種子会社に関する問題であるが,今日のように複合企業や多角経 営企業の増大によって,その子会社の営む事業活動の重要性を考えた場合,これ を連結に含める基本的思考には,特に問題はないものと思われる則。ただ,異種 事業の連結に伴って生ずる連結財務情報の欠陥は,部門別財務情報の補足的・追 加的公開によって償われねばならないものと考えられる刷。それにも拘らず,本 草案では,

r

多角的経営の会社の財務諸表における製品種類別, または,業種別 による開示

J

(第4項(h))は特殊事項として除外され,単に重要子会社につい ては,

r

社名,事業の性質,および議決権のある発行済株式の所有割合

J

(第臼項) の開示を要求し,また,重要項目については,

r

主要な地域別,大陸別, もしく は国別

J

(第64項)の分析的開示を要求しているにすぎない。このような点も,

本草案の趣旨を充分に達成するためには,早急に改善されねばならない問題点で あると思われる。

第3は,実質的支配力基準に関する問題であるが,従来,理論的には,支配力 基準が支持されながらも,制度的には容易に受入れられなかったのは,それが抽 象的であって,実務上多くの論議を惹起せしめたことにある。しかし,本草案で は,前述のように,相当具体的に規定しているため,この点についての問題は,

比較的少いのではないかと思われる。ただ 法制上または合意による場合には,

なんらかの支配・従属の関係を表わす文書のような物的証拠を必要とすべきだと 考えるべきではないかという問題がある。更に,これに関連して,資本の所有関 係が殆んどなくて連結に含められた場合 契約等で認められる利益参加の割合は 低いものと考えられるので,かかる場合には,少数株主持分が連結(支配株主)

12)  これは,米国の会計実務においても一般に認められており,米国とカナダ所在の 子会社の一部を営業の性質によって連結していない会社は29%で,在外子会社につ いては僅か2%であるにすぎない。(Ibid.,p. 29‑30. ) 

13)  この点については,拙稿「連結報告会計と部門別報告会計」彦根論叢 162・3

合併号 (488月)117‑133頁および拙稿「部門別財務情報の公開とその有用性に ついて」彦根論叢 169・70合 併 号 (49年11月)168‑86頁を参照されたい。

持分に比較して異常に多額となることもある。かかる場合,本草案では「子会社 として取扱うべく要請される関係の性質

J

(第63項)の開示のみを要求して,持 分関係に関する追加的な開示を全く要求していないことは問題である。私見とし ては,利益参加を中心とする持分諸関係についての追加的な開示を求める必要が あるのではないかと考える。

第2の特徴は,持分法 (equitymethod)の適用であるが,本草案では,連結 財務諸表の作成上,支配が一時的であるという理由で,連結から除外された子会 社や関係会社への投資に対しては 持分法を適用せねばならないとしている(第 31項)。この場合における関係会社 (associatedcompany)とは.(1)子会社以外 の被投資会社で.(2)投資会社が長期投資として保有する意図があり.(3)これに 対して相当の持分上の権利を有し,かつ,その財務および営業方針に対して重要 な影響を与える力を保有しているものをいうのである(第14項)。そして,その 重要な影響 (significantinfluence)とは,方針の支配ではなくて,それらの方 針決定に関与することを指すが,具体的には「取締役会への代表派遣,方針の決 定過程における関与,集団内会社関の重要な取引,経営陣の人事交流,技術情報 の依存関係

J

(第15項)等によって達成されうるものと考えられている。更に,

「投資会社が,被投資会社の議決権の20%未満の持分しか保有していない場合に は,……明らかな反証が認められない限り,重要な影響を与える能力をもって いない

J

(第15項)ものとみなされるのである。

持分法は,本草案での最重要問題でもあるので,次節で詳細に論ずることにし て,ここでは,かかる持分法の適格要件等について,特に問題になると思われる 諸点についてのみ考察することにする。まず第1は,関係会杜概念の解釈の問題 であるが,本草案では,前述のように,関係会社の概念規定として子会社以外の 被投資会社と限定しているが,この場合の子会社とは,持分法を適用せんとして いる連結集団に属している子会社のみを想定しているのか,ヨリ広義に,いかな る企業集団に属している子会社であっても,他の企業集団に属する関係会社には なり得ないと解釈されねばならないのかという問題が生ずる。これが,もし前者 のように狭義に解釈された場合には 一方で、議決権株式の過半数所有に基づいて 連結されているにも拘らず,他方では役員派遣,重要取引,技術情報などによっ

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