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連結報告会計と部門別報告会計

ドキュメント内 連結会計論 (ページ 160-177)

一一一米国における多角経営企業の部門別 外 部 報 告 の 必 要 性 と そ の 問 題 点 一 一 一

I 序

今日,経営多角化の傾向は,世界的にみられる経済現象であるが,米国におい ては,吸収合併による経営多角化の起源は,既に1920年代にみられ,それが第二 次世界大戦後に勢力をもち始めて, 1950年代後半になって,ょうやく顕著なもの となったのである しかし, 1960年代の経営多角化現象は,従来みられた製品 の製造・販売のために垂直的に統合 (verticalintegrating) したり,あるいは 当該関連事業に水平的に結合 (horizontalentering)したりする企業成長の形態 とは異なって,全く関連性がないか,あるいは実に僅かな関連しかもたない産業 に属する企業を結合するところの多角的結合 (diversecombination)にその特 徴がみられるのである2)

かかる経営の多角化は,一般に外部的発展 (externaldevelopment)と呼ばれ ているものであるが,これに対して,従来の副次的・臨時的事業を本格的実施に 移したり,あるいは新規事業を起こしたりして,別の産業部門へ進出するという 内部的発展 (internaldevelopment)としての経営の多角化が図られる場合もあ る310

しかし,一般には前者が圧倒的に多くみられるので,その理由について考えて みると, (1)市場の循環的変動要因あるいは単一製品への過度依存性から生ずる 経済的不安定性を極少化できる, (2)内部的発展によるよりも,買収による方が,

1)  Alfred D. Chandler, Jr., Strategy and Structure, 1962. pp. 383‑396.  2)  Da vid F. Ha w kins, Financial Reporting Practices of Corpora tions, 1972. 

p.398. 

3)  J.  Fred Weston,Diversification and Merger Trends," Business Econom  ics, J,αn.  1970. pp. 50‑57 

ヨリ安価でヨリ危険性の少い方法で,新製品,技術的ノウハウおよび管理技能を 取得できる, (3)水平的・垂直的成長を制限する反トラスト法回避のため,関連 性のない事業へ拡大・発展できる, (4)買 収 を 持 分 プ ー リ ン グ 方 式 で 会 計 処 理 す ることにより,利益および売上を嵩上げする利点が利用できるぺ等を上げるこ とカfできる九

叙 上 の よ う な 理 由 に よ っ て 生 成 ・ 発 展 し た 複 合 企 業 な い し 多 角 経 営 企 業 (conglomera te or di versified company)は,その企業数の増大と経営規模の拡 大とによって,企業会計上に種々の問題を提起するに至った。それは,主として 今日の伝統的な外部報告会計の理論が,単一製品部門 (singleproduct line) し かもっていなかった時代を背景として展開されたものであるから,多数の市場を 有する企業の多角的活動を報告するためには もはや妥当しなくなったことによ るものであるヘ

そこで,本稿では,かかる観点から,多角経営企業の財務報告について,まず,

従来の連結財務諸表では満たされないどのような情報が新たに必要とされている のかを検討し,次に,そこで必要とされている情報がいかなる方法によって公開 されねばならなのかを考察して,これに関連する若干の基本的な問題点を指摘し たいと考えているO

4)  合併会計には買収方式と持分プーリング方式があるが, 1950年代後半から次第に 後者の拡大解釈がなされ.その適用に行き過ぎがみられるようになったので, この 適用は一定の条件に適合した合併にのみ認められるように制限されるに至った。

(AICPA,APB Opinion No. 16: Business Combinations" , Journα101 Acc‑

ountαncy, Oct, 1970. pp. 69‑85.)これは,会計上の重要な問題であるので,後 日,改めて検討したいと考えている。

5)  David F. Hawkins, op. ci, t.p. 398.  J.  Fred Weston, op. ci, t.pp. 50‑57.  John C. Narver, Conglomerαte Mergers and Mαrket Competition, 1967. p.  60 

6)  Ronald Copeland, D. Larry Crumbley and Joseph F. Wojdak, Advαnced  Accounting, 1971. p. 280 

E  部門別外部報告会計の必要性

前述のように,経営多角化現象が一般化している米国では,

I

連結報告が不適 当であって,部門別報告が適切であるという状況が存在することは明白である。

例えば,製造業たる親会社と銀行,金融および保険といった異業種の従属会社の 勘定とを連結することは,ある状況においては認められることもあるが,一般に は不適切な会計実務であると考えられているリからである。これは,今日の米 国で一般に利用されている連結財務諸表が,結局,法律的実体観に立って,支配 会社の個別財務諸表の同次元的拡張形態としての代替表として性格づけられてい ることによるものである810

しかし,たとえかかる異種産業部門の連結を経済的実体観の立場に立って認め たとしても,

I

連結損益計算書は,ある事業経営部門の利益および損失と他のそ れとを相殺し,その多角経営活動の主体の総利益を拡大しているりので,各事 業部門については,

I

通常,財務分析家に利用されている粗利益,成長率,その 他の測定値が,現行の連結財務諸表からは確定しえないのである101

J

それにも かかわらず,

I

関係会社グループの財政状態や経営成績を表示する適切な方法と して発展してきた連結財務諸表は,長年にわたる困難な苦闘の末に獲得した,投 資家大衆にとっては重要な勝利であった111Jと考えられ,したがって,

I

連結情 報 は 企 業 集 団 の 財 政 状 態 や 経 営 成 績 を 綜 合 的 に 表 示 し 得 る 機 能 を 果 た す こ と ができるから, こ の 意 味 で は 不 可 欠 の 財 務 報 告 制 度 と い わ ね ば な ら な

いへ」

7)  A. A. Sommer, Jr.,Conglomerate Disclosure: Freind or Foe?" Journαl  01 Accountancy, May 1967. p. 63. 

8)  揃稿「連結会計思考と持分法」彦根論叢 1589合 併 号 (47年11月)147頁参照。

9)  R. Copeland, D. L. Crumbley and J. F. Wojdak, op. ci, t.p. 281.  10)  Ibid., p.  280. 

11)  Manuel F. Cohen,The SEC and Accountants: Co‑operative Efforts  to  Improve Financial Reporting," Journα101 Accountαncy, Dec. 1966. p. 59  12)  鮒子田俊助稿「多角経営企業の決算報告」産業経理 2810 (43年10月)79

80

そこで,米国証券取引委員会の主要委員であるコーへン (ManuelF.  Cohen)  は,

r

複合企業に関するこれらの諸問題を提起する場合 ある会社と当該従属会 社に関する連結財務諸表公開の重要性を いかなる方法によっても,減少させよ うとするものではない。……複合企業の問題は,新しい問題であって,それは硬 貨の裏面 (theother side of the coin)である則」といみじくも表現している。

つまり,部門別報告 (reportingfor segments)の必要性は,連結財務諸表とは 正に表裏の関係に立っているのであって,後者では,各異種産業部門の資料が一 纏めにされて,専ら企業全体の長期的な実質的収益力と財務的安全性についての 展望を可能ならしめ,各業種別の情報については,これを部門別報告によって補 足せねばならない必要があるのである。

以上のように,連結財務諸表は,本来,その特性から種々の限界をもっている が,それでは,なぜ多角経営企業に連結財務諸表以外に部門別の補足的財務情報 が要求されるのか,その理由について考えてみることにしよう。

まず第一の理由は,株式公開会社の多角経営企業としての数が増加し,当該企 業の会社名だけでは,その営む事業の内容が明らかではないので,当該企業の事 業の種類と当該事業の相対的規模に関する知識を得るためである。すなわち「過 去何年間においては,会社名はよくその事業を表わし,創設者の名前も広くその 事業の種類と関連させられていた。経営の多角化は,これらの多くの会社を徹底 的に変化させてしまったのであるO 会社名が少しでも特定の産業部門を意味する ようであれば,これを避けて慎重に選ばれているO かかる変化は,複雑な数多く の事業の利害関係が,もはや会社名という簡単な言葉では有意味に表現できなく なったという事実を示すものである。むしろ 多角経営企業(特に複合企業的形 態のものについて)の理解には,構成単位たる事業についての情報が必要であ る14l

J

と報告されている。また,

r

事業の多角的部門の相対的重要性は,時代と ともに変化するものであるO したがって,企業の部門別知識がなければ,投資家

13)  Manuel F. Cohen, op. ci t.,p.  59. 

14)  Morton Backer and Walter B.  McFarland, External Reporting for Seg‑ ments of  a Business, (A Reseαrch  Study  in Mαnagerγwnt Reporting,  NAA) 1968. p.7‑8. 

は,これらの変化が企業全体との関連において,安全性ないしは危険性にどのう な影響を与えるかについて評価することができないであろう吋といわれている。

第二の理由は,投資家数の激増,特に機関投資家の保有株式数の顕著な増加に よって,投資の意思決定を合理的に行なうため,専門的な財務分析家の助言や勧 告を重視するに至ったためである。つまり,

r

経営の多角化傾向にともなって,

財務分析における株式市場の重視と財務分析家の役割が非常に増大した。それに もかかわらず,これらの財務分析家や抜目のない分析的な投資家は,多角経営企 業の評価にあたって,これらの会社の総収緩や経営成績をそれぞれの各部門に関 連づけて考えることができないので,失望させられている。というのは,投資目 的上,この穫の企業の過去の業績や将来の危険と期待を適切に評価するためには,

部門別の産業区分が必要不可欠だからである。例えば,分析家は,ある会社があ る部門で損失を計上している事実が,投資家には隠されえたことに気づいた。か かる損失は,大衆に公表される会社全体の利益数値においては,他の部門の利益 と一緒にされてしまうであろう吋と指摘されている。

要するに投資家にとっての株式投資に対する報酬の源泉は利益であるから,そ れが投資意思決定の主たる要因となるので,財務分析家の主目的も,結局,

r

株当りの利益」を予測することにあるといいうるのである。したがって,連結利 益を予測するためには,部門別の売上や利益に対する貢献度が必要とされるので ある。また,近年,投資価値の判定基準として,株価収益率が利用されているた め,部門別の利益が必要なのである。

第三の理由は,多角経営企業の経営者が,他企業の合併によって得た成果を正 しく評価するためである。既述のように経営の多角化には内部的多角家と外部的 多角化とがあるが,いずれの場合でも,

r

経営の多角化は長期的な戦略であり,

短期間のうちに利益の増大は期待しえないものであるヘ

J

内部的多角化の場合,

新しい技術上の問題を解決したり,新市場開拓のため多額の販売促進費を必要と 15)  David F. Hawkins, op. cit., p. 398‑399. 

16)  Ibid., p.  398. 

17)  Leopold  Schachner, Corporate  Diversification  and  Financial  Re‑

porting," Journαl 01 Accountαncy, Apri11967. p. 45. 

するし,調査・開発のために莫大な支出がなされねばならない。また,

I

通常,

売上の持続的な増加を期待して新規事業に進出し,他社の事業拡張計画を的確に 評価できないので,過剰設備の減価償却費が過大となる18)0 

J

さらに,

I

不可避 的な『試行錯誤』的費用( trial‑and‑error"costs)が組織の各階層で生じた場 合,重要な影響を与えるような多額の従業員の訓練費もいる。その結果,内部的 多角化の場合,短期的な利益の増加は殆んど阻止されるのである19)

o J  

次は,外部的多角化についてであるが,

I

合併および買収によって達成される ところの外部的多角化の場合には,短期的な状況は,比較的困難が少ないかもし れないが,それでも利益の減少にはなるであろう。第一に,被買収企業をヨリ大き な実体に統合させることに関連して発生する費用,不要な人員の整理および配置 転換の費用,ならびに調整期間中に生ずる組織内の各階層での一時的な非能率一一 それらの全てが,必ずしも一会計年度にのみ限定されるものではない。第二に,

外部的多角化は,その産業にヨリ一層内部的に発展して行くものとなり,……内 部的発展となるべき外部的多角化は,内部的多角化のもとで遭遇した多くの短期 的な問題をももたらすであろう劃j といわれている。

以上を要約すれば,結局,ある企業の利益が,収益性,成長性の非常に異なる 各種の営業活動によって形成されている場合,企業全体の利益だでなく,各部門 利益が,どのようにして全体利益を厚生しているかについて情報をえなれけば

「多角経営企業に関する過去の業績ならびに将来の危険および期待を評価する凶」

ことができないということである。

叙上のような部門別外部報告の必要性に対する反論として,

I

投資家は,企業 の特定部門 (particularsegments) に 対 し て で は な く , 全 体 と し て の 企 業 (enterprise as a whole)に投資しているのであるから,その結果として,全般 的な結果が満足すべきものであれば,単一の部門がどのような業績を上げている 18)‑20)  Leopold Schachner,Corporate Diversification  and Financial Re‑

porting," JOU7nαl 0/ Accountαncy, April1967. p. 45. 

21)  NAA,Financial Reporting by Diversified Compamies," (Official State  ment of the Committee on Management Accounting Practices) , Mαnα:ge‑ ment Accounting, Sept. 1972. p. 53. 

ドキュメント内 連結会計論 (ページ 160-177)