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第4章 道徳教科書における人権課題に関する教材の特色と傾向

第 2 節 道徳教科書における人権課題に関する教材の整理

(1)分類の手順

梅野(2013)

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は、都道府県及び政令指定都市教育委員会により作成された人権教育資料に掲載さ れている人権課題に関わる学習例示を分類し、人権課題ごとの学習内容の特色を分類しており、人 権課題に関する学習内容の特色を整理している。本章では、国内における小学校・中学校の道徳科 の検定教科書(東京書籍、学校図書、教育出版、光村図書、日本文教、光文書院、日本教科書、学 研、廣済堂あかつき)の計 72 冊(表 16)を対象とし、「人権教育資料における指導例示の分類」(梅 野、2013)

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に関連している教材を抽出していくことを試みる。文部科学省(2008)

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は、 生命・身 体の安全に関わる事象や不当な差別など、今日においても様々な人権問題が生じていることを指摘 しつつ、学校教育においては、様々な人権課題の中から、子どもの発達段階等に配慮しつつ、それ ぞれの学校の実情に応じ、より身近な課題、児童生徒が主体的に学習できる課題、児童生徒の心に 響く課題を選び、時機を捉えて、効果的に学習を進めていくことを求めている。そして、人権教育 資料が国内における人権課題をめぐる問題状況を国民的課題として共有し、解決に向けた素材とし ての公的な位置付けにあることを踏まえれば、人権教育資料の分類結果を基にして、道徳教科書教 材を分析していくことにより両者の接点を整理していくことが妥当だと判断した。そこで、道徳科 の教科書における人権課題に関する内容が掲載されている授業分析を進めるために、先ずは、国内 における小・中学校の道徳の検定教科書(東京書籍、学校図書、教育出版、光村図書、日本文教出 版、学研、廣済堂あかつき、光文書院、日本教科書)を対象とし、人権課題 ①「女性」、②「子ど も」 、③「高齢者」 、④「障害者」 、⑤「同和問題」、⑥「アイヌの人々」 、⑦「外国人」 、⑧「HIV 感 染者・ハンセン病患者・元患者等」 、⑨「刑を終えて出所した人」 、⑩「犯罪被害者等」 、⑪「インタ ーネットによる人権侵害」 、⑫「北朝鮮当局による拉致問題等」、⑬「その他」の掲載数の特色と傾 向を整理していく。その際には、人権課題との関連性を抽出する観点として、人権教育資料におけ る人権課題を分析した結果(梅野、 2013)

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と初等中等教育における人権課題を公的な方針を示して いる「人権教育の指導方法等の在り方について[第三次とりまとめ] 実践編 ~個別的な人権課題に 対する取組~」(文部科学省、2008)

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の内容を加味しながら分類していく。

分類方法の手順としては、道徳教科書の教師用指導書等の資料から教材ごとに掲載されている

「主題名」、 「内容項目」、 「ねらい」 、 「現代的な課題との関連や他教科・領域との関わり、テーマや 重点事項等」に関する記述を手がかりにして、「人権教育資料における指導例示の分類」(梅野、

2013)

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との関連している教材を抽出していく

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。具体的な手順に関しては、光村図書「道徳 5 き

みがいちばんひかるとき」 (以下、【光村図書小 5】と表記する)を分類した結果を基に説明してい

く(表 17)。表 17 の教材番号⑤「どうすればいいのだろう」は、 「いじめや差別問題に関する指導

例示」(人権課題:子ども)に位置付くことが妥当であることを総合的に判断した。初等中等教育 における人権課題「子ども」に対する取組に当たっての基本的な考え方・観点として、「我が国に おける子どもたちを取り巻く環境は、いじめ・校内暴力や、児童虐待、児童買春・児童ポルノなど、

懸念すべき状況にある。大人たちが、未来を担う子どもたち一人一人の人格を尊重し、健全に育て

ていくことの大切さを改めて認識して、自らの責任を果たしていくことが求められており、子ども

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表17 光村図書「道徳5きみがいちばんひかるとき」を対象にした分析結果 (下線は筆者が記した)

資 料 名

学 年

教 材 番 号

主題名:【 】 内容項目:アルファ ベ ット は四 つの 視 点、( )は内容項目 の番号

教材名:「 」

ねらい

現 代 的 な 課 題や他教科・

領 域 と の 関 わり

人権課題(梅野、

2013)との関連

道徳 5き みが いち ばん ひか ると き

小学 校第 五学 年

【広い心で】B(11)

相互理解、寛容

「すれちがい」

擦れ違いを起こしてしまったマミ、えり子の各 視点から出来事を見比べることを通して、友達 と「すれちがい」が起きてしまったらどうすれば よいかを考えさせ、自分の考えや意見を適切に 相手に伝えたり、相手の考えや意見を素直に聞 いたりしながら、広い心で相手の意見や立場を 尊重していこうとする実践意欲と態度を育て る。

いじめ問題

子ども「いじめや 差別問題に関す る指導例示」

【公正・公平な態度 とは】C(13)公正、

公平、社会正義

「 どう すれ ばい い のだろう」

友達とのやり取りの中で、迷ったり悩んだりす る三つの事例を通して、公正・公平に行動するた めには、どんな心が必要かを考えさせ、自分の意 志を強くもち、周囲の雰囲気や人間関係に流さ れずに判断し、自分自身に誠実に、正義の実現に 努めようとする実践意欲と態度を育てる。

いじめ問題

共生 子ども「いじめや 差別問題に関す る指導例示」

【 かけ がえ のな い 命】D(19)生命の 尊さ

「 命の 詩― 電池 が 切れるまで」

宮越由貴奈さんが書いた命についての詩やエピ ソードを通して、命とはどんなものか考えさせ、

自他の生命を大切に、限りある命を懸命に生き ようとする判断力や心情を育てる。

いじめ問題

図書館活用 子ども「いじめや 差別問題に関す る指導例示」

【 れい ぎと は】 B

(9)礼儀

「あいさつって」

「挨拶」に関する三つの事例を通して、心のこも った挨拶や礼儀とは、どんなものか考えさせ、相 手を尊重する気持ちをもって、礼儀正しく挨拶 をしようとする実践意欲と態度を育てる。

情報モラル 特別活動(児 童会活動)

インターネット による人権侵害

「インターネッ トによる人権侵 害に関する指導 例示」

【家族のために】C

(15)家族愛、家庭 生活の充実

「祖母のりんご」

優しかった祖母のことを思い出して気持ちが変 わっていく「わたし」の姿を通して、家族とはど んなものかを考えさせ、愛情をもって育ててく れた祖父母への尊敬や感謝を込めて、家族のた めに進んで役に立とうとする実践意欲と態度を 育てる。

福 祉 に 関 す る教育

高齢者「高齢者に 関する指導例示」

【 友達 を理 解し な がら】B(10)友情、

信頼「絵地図の思い 出」

係の仕事で男女共に協力する児童の姿を通し て、男女に関わりなく友達と助け合うためには どうすればよいか考えさせ、異性とも協力し学 び合って互いに理解し合いながら、友情を育て ていこうとする実践意欲と態度を育てる。

共生 図画工作科 特別活動(学 級活動)

女性「学校におけ る性的役割分業 について考えさ せる指導例示」

【 他国 の人 々を 理 解して】C(18)国 際理解、国際親善

「 小さ な国 際親 善 大使」

国ごとにいろいろな違いがあることに気づき、

強い関心を抱く芽衣の姿を通して、他国の習慣 や文化を理解することはなぜ大切かを考えさ せ、他国への関心や理解を深め、相互に尊重し合 いながら、国際親善に努めようとする実践意欲 と態度を育てる。

共生 国 際 理 解 教 育 食育

外国人「相互理解 を目的とする指 導例示」

【 相手 の立 場に な って】B(7)親切、

思いやり

「 マー クが 伝え る もの」

ピクトグラムについて学ぶ理子の姿を通して、

ピクトグラムにどんな考えや思いが込められて いるか考えさせ、相手の立場に立って他者を思 いやり、誰もが暮らしやすい社会を作っていこ うとする実践意欲と態度を育てる。

共生 福 祉 に 関 す る教育 社会科 図画工作科

障害者「バリアフ リー、 ノーマラ イゼーションに 関する学習の指 導例示」

【公正・公平な社会 を目ざして】C(13)

公正、公平、社会正 義

「 だれ もが 幸せ に なれる社会を」

ハンセン病の歴史や、ハンセン病患者であるき み江さんの思いを通して、誰もが幸せになれる 社会とはどんなものか考えさせ、正しい知識を もち、誰に対しても差別や偏見をもつことなく、

公正・公平な態度で接し、正義の実現に努めよう とする実践意欲と態度を育てる。

いじめ問題 共生 社 会 参 画 に 関する教育 社会科 図書館活用

子ども「いじめや 差別問題に関す る 指 導 例 示 」、

HIV感染者・ハン セン病患者・元患 者等「ハンセン病 問題に関する指 導例示」

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の人権の尊重及び保護に向け、社会全体が一体となって取り組んでいく必要がある。このような中、

学校においては、人権尊重の意識を高める教育の一層の推進に努めるとともに、幼児児童生徒の人 権に十分配慮し、一人一人を大切にした教育指導や学校運営が行われるように努める」(文部科学 省、2008)

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と明示されている内容と関連している箇所に下線を引いて可視化する。

【光村図書小 5】⑤では、主題名「公正・公平な態度とは」、内容項目「C(13)公正、公平、社 会正義」が設定されている。ねらいとしては、「友達とのやり取りの中で、迷ったり悩んだりする 三つの事例を通して、公正・公平に行動するためには、どんな心が必要かを考えさせ、自分の意志 を強くもち、周囲の雰囲気や人間関係に流されずに判断し、自分自身に誠実に、正義の実現に努め ようとする実践意欲と態度を育てる。」と記述されていると共に、現代的な課題や他教科・領域と の関わりとして、「いじめ問題」と「共生」への取組であることが確認できる。下線の箇所を鑑み て、 【光村図書小 5】⑤は、 「いじめや差別問題に関する指導例示」 (人権課題:子ども)に位置付く ことが妥当であることを総合的に判断した。

上記の手順で【光村図書小 5】を分類していくと、子ども「いじめや差別問題に関する指導例示」

は、 ( 【光村図書小 5】④、⑤、⑥、㉛)が該当する。女性「学校における性的役割分業について考 えさせる指導例示」では、 【光村図書小 5】⑭が該当し、高齢者「高齢者に関する指導例示」 ( 【光村 図書小 5】⑧) 、障害者「バリアフリー、ノーマライゼーションに関する学習の指導例示」 ( 【光村図 書小 5】㉘) 、外国人「相互理解を目的とする指導例示」 (【光村図書小 5】㉗)、HIV 感染者・ハンセ ン病患者・元患者等「ハンセン病問題に関する指導例示」 (【光村図書小 5】㉛) 、インターネットに よる人権侵害「インターネットによる人権侵害に関する指導例示」( 【光村図書小 5】⑦)が該当す る。なお、 【光村図書小 5】㉛は、 「ハンセン病の歴史や、ハンセン病患者であるきみ江さんの思い を通して、誰もが幸せになれる社会とはどんなものか考えさせ、正しい知識をもち、誰に対しても 差別や偏見をもつことなく、公正・公平な態度で接し、正義の実現に努めようとする実践意欲と態 度を育てる」と明示されていると共に、現代的な課題や他教科・領域との関わり、テーマや重点事 項として、 「いじめ問題」への取組として設定されている。そのため、子ども「いじめや差別問題に 関する指導例示」と、 HIV 感染者・ハンセン病患者・元患者等「ハンセン病問題に関する指導例示」

の両方の要素が確認できた場合には、重複して分類した。上記の手順によって、道徳教科書から、

人権課題と関連している教材を抽出・整理していく。

(2)道徳教科書における人権課題に関する教材の抽出

国内における小・中学校の道徳の検定教科書(東京書籍、学校図書、教育出版、光村図書、日本文 教出版、学研、廣済堂あかつき、光文書院、日本教科書)を対象とし、人権課題 ①「女性」、②「子 ども」 、③「高齢者」 、④「障害者」 、⑤「同和問題」 、⑥「アイヌの人々」 、⑦「外国人」 、⑧「HIV 感 染者・ハンセン病患者・元患者等」 、⑨「刑を終えて出所した人」 、⑩「犯罪被害者等」 、⑪「インタ ーネットによる人権侵害」 、⑫「北朝鮮当局による拉致問題等」、⑬「その他」の関連性を教科書会 社ごとに整理していく。以下に整理した結果を教科書会社ごとに示す(東京書籍:表 18、学校図

書:表 19、教育出版:表 20、光村図書:表 21、日本文教出版:表 22、学研:表 23、廣済堂あかつ

き:表 24、光文書院:表 25、日本教科書:表 26) 。