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96 グループ活動の際に

児童 1 段目の表札

2 段目の表札

()内の記号は人権教育を 通じて育てたい資質・能 力の構成要素

人数 (%)

n=24

3段目の表札

人 数 (%)

n=24 A1,A2,A6,

A12,A20,A18 譲り合うことが大切であるこ

とへの気付き

対立の際には譲り合うこ とが重要であることへの 気付き(p)

12 (50)

対立を解消す るために譲り 合うことが重 要であること への気付き

21 (87) A1,A3,A4,

A7,A24,A19 対立の解決方法として譲り合

うことを肯定

A2,A13 譲り合うことが対立の解決に

つながることへの気付き A8,A13,A14,

A16,A23 ケンカに関する否定的な心情 ケンカを避けるために譲

り合うことが大切である ことへの気付き(g)

7 (29)

A10,A22 ケンカした際に譲り合うこと

が大切であることへの気付き A4,A8,

A19,A21 対立の解決を体験したことへ

の言及

対立を解決することを疑 似体験したことへの言及 (n)

5 (20)

A1, A4 対立を解決する物語への言及

A1,A8,A17,

A21 対立を解決したことを肯定

対立を解決する行動の重 要性への気付き(p)

8 (33) A8,A10,A15,

A19 対立を解決する方法への言及

A5,A15,A17 対立を解決する学習への意欲

A11,A13,A13,

A23 日常生活で対立した際に譲り

合うことを観想 日常生活において他者と 対立した場面を観想(k)

6

(25) 日常生活で対

話や譲り合い を通して自他 を尊重しよう とする意欲

11 (45)

A2,A11,A12 日常生活で対立する場面への

言及 A6,A9,A11,

A18

他者のことを考慮して譲り合 うことへの意欲

譲り合うことによって自 他を尊重しようとする意 欲(g)

6 (25)

A1,A24 対話を通して対立を解決しよ

うとする意欲

A5,A21 グループで協力して活動した

ことを肯定 グループ活動で他者と協 力したことを肯定(p)

4 (16)

グループ活動 で他者と協力 した際に多様 な意見が生じ ることへの気 付き

8 (33)

A2,A3 他者を肯定したことへの言及

A14,A17,A21 グループで多様な意見交換を

したことに関する言及 グループ活動の際に多様 な意見が生じたことへの 気付き(p)

4 (16)

A8,A15,A23 意見に差異が生じたことへの

言及

第一に、他者との対立を解消するためには、譲り合うことが重要であり、他者と協力していくこ とが問題を建設的に解決していく上で重要なことに気付いたことが学習成果として挙げられる。対 立した状況の問題解決をグループで話し合うことにより、 「先に譲ることで問題を解決する(3 班)」

ことを児童が見出すとともに、学習感想文の記述に、 「おともだちとかと、はなしあうとかゆずり あうことをこういうときは、しないといけないことをまなびました」(A13)と記している。また、

学習感想文記述の分析結果からは、 「人権教育を通じて育てたい資質・能力の構成要素」の価値的・

態度的側面の「k 人権の観点から自己自身の行為を省察し、主体的に関与しようとする意欲・態度」

や、技能的側面の「p 協力的・建設的に問題解決する技能」が抽出できた。そして、 「対立を解消す るために譲り合うことが重要であることへの気付き」(3 段目の表札)が 21 名(87%)で確認できた。

即ち、当該授業によって、問題を建設的に解決していくために、他者と協力していくことが重要で あることに気付かせることに成果があったといえよう。

第二に、日常生活の対立を回避するために対話や譲り合うことへの意欲をもたせることに学習成

果があったことが挙げられる。学習過程③では、各グループが対立を回避する解決方法をロールプ

レイによって体験するとともに、学習感想文の記述に、「いちりんしゃや、てつぼうでとりあった

101

ら、ゆずりあったり、じかんをじゅんばんずつ、こうたいしたりしたい」(A11)と記している。ま た、学習感想文記述の分析結果からは、「人権教育を通じて育てたい資質・能力の構成要素」の価 値的・態度的側面の「g 自他の人権を尊重しようとする意欲・態度」や、技能的側面の「n 自他を 尊重するためのコミュニケーション技能」が抽出できた。そして、日常生活で対話や譲り合いを通 して自他を尊重しようとする意欲」(3 段目の表札)が 11 名(45%)で確認できた。即ち、当該授業に よって、日常生活の対立を回避することへの意欲をもたせることに波及効果があったといえよう。

第三に、他者と協力をすることにより多様な意見が生じることを実感することが学習成果とし て挙げられる。対立した状況の問題解決をグループで話し合うことにより、「他者と協力して問題 を解決する」(1 班、2 班、4 班)ことを見出すとともに、学習感想文の記述に、 「一ばんさいしょ は、なやんでたけど、ひとりひとりかんがえて、きょうりょくすればぜったいにいけるとしっ た」(A21)と記している。また、学習感想文記述の分析結果からは、「人権教育を通じて育てたい 資質・能力の構成要素」の価値的・態度的側面の「g 自他の人権を尊重しようとする意欲・態 度」や、技能的側面の「p 協力的・建設的に問題解決する技能」が抽出できた。そして、 「グルー プ活動で他者と協力した際に多様な意見が生じることへの気付き」(3 段目の表札)が 8 名(33%)で 確認できた。即ち、当該授業によって、他者と協力をすることにより多様な意見が生じることを 実感する経験になったといえる。

授業記録から、当該授業は小学校 1 年生が対立を解決するために対話したり、譲り合ったりしな がら、他者と協力する活動を通して、自他を尊重することを体験することが確認できた。それとと もに、学習成果の分析結果として、人権教育を通じて育てたい資質・能力の価値的・態度的側面(g、

k)と技能的側面(n、p)の構成要素を抽出することができた。とりわけ、「人権教育を通じて育てた い資質・能力の構成要素」である、価値的・態度的側面(g、k)と技能的側面(n、p)の両側面の構成 要素を複合的に抽出できたことを踏まえれば、参加型人権学習「どうすれば いいかな」は、子ど も同士の対立を子どもたち自身が解決していくことや、自他を尊重していくことを体験的に学び、

人権感覚を醸成する上で期待できる学習方法だといえよう。さらに、本実践は、道徳科の内容項目 B 「主として人との関わりに関すること」の「友情・信頼」の指導に関する学習成果があることが考 察できる。 『小学校学習指導要領解説 特別の教科 道徳編』には「友情、信頼」の第 1 学年及び第 2 学年の指導の要点について、 「この段階においては、幼児期の自己中心性から十分に脱しておらず、

友達の立場を理解したり自分と異なる考えを受け入れたりすることが難しいことも少なくない。し

かし、学級での生活を共にしながら一緒に勉強したり、仲良く遊んだり、困っている友達のことを

心配し助け合ったりする経験を積み重ねることで、友達のよさをより強く感じるようになる。指導

に当たっては、特に身近にいる友達と一緒に、仲よく活動することのよさや楽しさ、助け合うこと

の大切さを実感できるようにすることが重要である。また、友達とけんかをしても、友達の気持ち

を考え、仲直りできるようにする。そのためには、友達と一緒に活動して楽しかったことや友達と

助け合ってよかったことを考えさせながら、友達と仲良くする大切さを育んでいくようにする必要

がある」

383

と明示されている。授業実践の記録を分析していくと、 「おともだちとかと、はなしあう

とかゆずりあうことをこういうときは、しないといけないことをまなびました」(A13)や、 「いちり

んしゃや、てつぼうでとりあったら、ゆずりあったり、じかんをじゅんばんずつ、こうたいしたり

したい」(A11)、 「一ばんさいしょは、なやんでたけど、ひとりひとりかんがえて、きょうりょくす

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ればぜったいにいけるとしった」(A21)という記述から身近なクラスメイトとの生活を省察しなが ら、友達と関係を築いていこうとする記述が確認できる。また、1 班の解決策「仲間と協力して対 立している問題を解決する」は、近くにいる仲間に助けを求めて問題を解決するという方法を見出 しており、 「仲良く遊んだり、困っている友達のことを心配し助け合ったりする経験を積み重ねる」

場面を想像して、問題を解決しようとしていることが読み取れる。また、「グループ活動で他者と 協力した際に多様な意見が生じることへの気付き」(3 段目の表札)が 8 名(33%)で確認できたこと は、 「相互理解、寛容」にも関連していることが読み取れる。分析結果から、参加型人権学習「どう すれば いいかな」は、道徳科の内容項目に即した授業であることが考察できる。

ここまで、小学校 1 年生を対象とした参加型人権学習「どうすれば いいかな」の授業実践から、

「人権教育を通じて育てたい資質・能力の構成要素」をもとに学習成果を検討してきた。『生徒指 導提要』(文部科学省、2010)

384

の随所に「人権」の語が示されるとともに、児童生徒に人権教育を 通じて育てたい資質・能力の重要性が強調されているものの、小学校 1 年生に推奨されている参加 型人権学習が、人権教育を通じて育てたい資質・能力の育成に寄与しているのかどうかは、これま で検討されてこなかった。しかしながら、本研究の分析結果から「人権教育として育てたい資質・

能力の構成要素」の価値的・態度的側面「g 自他の人権を尊重しようとする意欲・態度」と「k 人 権の観点から自己自身の行為を省察・観想し、主体的に関与しようとする意欲・態度」や、技能的 側面の「n 自他を尊重するためのコミュニケーション技能」や「p 協力的・建設的に問題解決する 技能」を抽出できた。このことは、小学校1年生を対象にした参加型人権学習(道徳授業)におい て、「人権教育を通じて育てたい資質・能力の構成要素」が授業分析の指標として活用できること が実証されたとともに、当該授業は、実効性を目指す道徳科の問題解決型の授業に位置付くことが 考察できる。

以上のように、学習成果の分析結果として、 「人権教育を通じて育てたい資質・能力の構成要素」

の価値的・態度的側面(g、 k)と技能的側面(n、 p)の構成要素を抽出した。とりわけ、 「人権教育を通 じて育てたい資質・能力の構成要素」である、価値的・態度的側面(g、k)と技能的側面(n、p)の両 側面の構成要素を複合的に抽出できたことを踏まえれば、小学校 1 年生を対象とした参加型人権学 習は、子ども同士の対立を子どもたち自身が解決していくことや、自他を尊重していくことを体験 的に学び、人権感覚を醸成する上で期待できる学習方法だといえよう。また、学習感想文の記述内 容は、先行研究と関連していることが読み取れることからも、「人権教育を通じて育てたい資質・

能力の構成要素」は、小学校1年生を対象にした授業実践を人権教育の観点から分析していく際の 指標として適応できることが考察できる。

349 文部科学省・人権教育の指導方法等に関する調査研究会議「人権教育の指導方法等の在り方について[第三次とりまとめ]

指導の在り方編」、2008年.

350 文部科学省・人権教育の指導方法等に関する調査研究会議「人権教育の指導方法等の在り方について[第三次とりまとめ]

指導の在り方編」、2008年.

351 梅野正信が人権教育指導資料・教材資料等の提供を受けている都道府県及び政令指定都市の教育委員会は、札幌市、青森 県、宮城県、福島県、群馬県、栃木県、茨城県、埼玉県、さいたま市、千葉県、東京都、神奈川県、静岡県、愛知県、名古 屋市、岐阜県、富山県、新潟県、長野県、三重県、和歌山県、滋賀県、京都府、京都市、奈良県、大阪府、兵庫県、神戸 市、岡山県、広島県、鳥取県、香川県、高知県、愛媛県、福岡県、大分県、佐賀県、長崎県、熊本県、熊本市、宮崎県、鹿 児島県が挙げられる.詳細に関しては、梅野(2012)を参照されたい。なお、本研究では梅野(2012)が収集した人権教育資料 に、梅野正信が新たに人権教育資料の提供を受けた『なかまとともに小学校1』(奈良県教育委員会、2014)と『平成26年度 静岡県人権教育の手引き』(静岡県教育委員会、2014)を追加して調査した.

352 梅野(2012)は、人権教育資料に掲載されている指導例示の学習活動の内容・方法を「①人間関係の改善を目的とする技能の