3 運動の法則
3.1 速度・加速度
位置ベクトル 物体の位置は原点からの距離だけでは決まらず,方向や 向きも指定しなければならない.「大阪は東京から西南西に600 kmに位置 する」という具合である.つまり物体の位置はベクトル量である.
図3.1 東京から見た大阪の位置
2次元の位置ベクトルは,2つの量で表される.デカルト(直交)座標系 では,図に示すように
r= (x, y) (3.1)
あるいは,極座標では,ベクトルの長さrと方向θという2個の量を指定 すると(図3.2参照),
r= (r, θ) (3.2)
となる.ここで,rを動径成分,θを接線成分という.
x=rcosθ , y=rsinθ (3.3) である.
3次元の場合には,図3.3に示すように,極座標表示は3つの量(r, θ, ϕ) で表される.ここでϕはベクトルrをx-y平面に投射(射影)したときの,
図3.2 極座標
x軸となす角である.(この場合,ϕを方位角,θを極角とよぶ.)図を見て わかるように
x=rsinθcosϕ y=rsinθsinϕ z=rcosθ
(3.4)
である.
図3.3 3次元の極座標
変位ベクトル 時刻tのときの物体の位置ベクトルをr,時刻t0(t0 > t) のときの位置ベクトルをr0とする.
R=r0−r (3.5)
を変位ベクトルという.
3.1 速度・加速度 33 t0とtの間隔がきわめて短く,r0とrがきわめて近いとき,
∆t=t0−t
∆r=r0−r (3.6)
と書く.ここで∆(デルタ)という記号は,「きわめて小さい量」というこ +小文字のδを「きわめて 小さい量」として使う場合も 多い.
とである.
図3.4 車の移動を表す変位ベクトル
速度・加速度
v= ∆r
∆t (3.7)
で定義されるようなベクトルを速度,
α= ∆v
∆t (3.8)
で定義されるようなベクトルを加速度という.
物体がx方向のみに運動しているときは,ベクトルを考える必要はない.
速度,加速度は
v= ∆x
∆t , α= ∆v
∆t (3.9)
で定義される.この場合,xをtの関数,x(t)と考えれば,速度は曲線 x=x(t)の勾配を表す(図3.5参照).
一般に十分小さい∆tを考えるとき,∆x
∆t , ∆r
∆t , ∆v
∆t を微分という.
微分 tの関数としてx(t)の曲線が描ければ,それから微分をつくる(” 微分する”)のは簡単である.つまり定規を使って勾配を求めればよい.代 表的な関数の微分を勉強しておこう.
1.
x(t) =t2 (3.10)
図3.5 v= ∆x
∆t と勾配tanθ.
x(t+ ∆t) = (t+ ∆t)2=t2+ 2t∆t+ ∆t2≒t2+ 2t∆tであるから,
v= ∆x
∆t = x(t+ ∆t)−x(t)
∆t ≒
2t∆t
∆t = 2t (3.11) となる.
2. 一般にx(t) =tn(n= 1,2,3,· · ·)の場合,x(t+ ∆t) = (t+ ∆t)n= tn+ntn−1∆t+· · ·≒tn+ 2tn−1∆t であるから,
v= ∆x
∆t = x(t+ ∆t)−x(t)
∆t ≒
ntn−1∆t
∆t =ntn−1 (3.12) という公式が得られる.逆に
x(t+ ∆t)≒x(t) + ∆x
∆t ∆t (3.13)
とも書ける.
なお,微分する関数が
x(t) =f(t)g(t) (3.14)
という積の形になっている場合,
x(t+ ∆t) =f(t+ ∆t)g(t+ ∆t)≒ (
f(t) + ∆f
∆t ∆t ) (
g(t) + ∆g
∆t ∆t )
(3.15) なので,
∆x
∆t = f(t+ ∆t)g(t+ ∆t)−f(t)g(t)
∆t ≒
∆f
∆t g(t) +f(t)∆g
∆t (3.16) という形に書ける.さらに
x(t) =f(at) (aは定数) (3.17)
の場合,x(t+ ∆t) =f(a(t+ ∆t)) =f(at+a∆t)≒f(at) + ∆f a∆ta∆t より,T =atとして,
∆x
∆t =a∆f(T)
∆T (3.18)
3.1 速度・加速度 35 となる.より複雑なx(t) =f(g(t))の場合は,T =g(t)とおいて,
∆x
∆t = ∆g
∆t
∆f(T)
∆T (3.19)
となる.
∆t,∆x,∆f の無限小の極限を考えたものが微分である.この極限は
∆x
∆t → dx
dt のように∆のかわりにdを使って表す.
速度の合成・相対速度 光速に近い速度の場合を除き,通常,速度vで 運動している電車の中でミニカーを速度v0で動かせば,ミニカーは地上に 対し
V =v+v0 (3.20)
で運動していることになる.これを速度の加法則という.
図3.6 電車中のミニカーの運動.
逆に速度vで運動している物体を,速度v0で運動している観測者から見 ると,物体の速度は
u=v−v0 (3.21)
と観測される.これを相対速度という.v=v0なら相対速度u=0となり,
静止しているように見える.