7 万有引力と惑星
例題 7. 1 地球の質量
7.3 惑星の運動
図7.10 フィギュアスケートのスピン
ら,これらは等しい.上の関係を使うと,
mrAvA = mrBvB
mrA2ωA = mrB2ωB r2AωA = r2BωB
∴ ωB ωA
= r2A r2B
(7.44)
つまり,手を縮めると,回転速度(角速度)は大きくなることがわかる.
地球,その他の惑星,太陽は自転しており,何十億年もの間,スピンをし つづけている.一方,ミクロの世界でもスピンが存在する.すなわち,電 子や原子核,原子核をつくっているクォークも自転しているのである.特に 電子は大きさがないと思われているのに,スピンをもっているというのが 興味深い.これはいままで述べたことと矛盾している.角運動量は回転軸 +電子が大きさをもたない
ことは,実験的にもかなりの 精度で確認されている.
からの距離と速さの積なので,大きさがないものは速さ無限大で回転して いない限り,スピンはもてないからだ.ミクロの世界は古典力学と違う法則 が支配しているという典型的な例である.
7.3 惑星の運動 107 となる.最後の不等号は運動エネルギーが常に正であることからきている.
つまり惑星の運動範囲は E+
( GmM
r )
(≥0) (7.47)
を満たす領域でのみ可能である.そこでrを横軸に,V(r)を縦軸にプロッ トしてみよう(図7.11).この場合,E >0とE <0ではようすが異なる.
われわれの惑星についていえば,すべての惑星についてE <0である.そ れは以下のようにしてわかる.
上の不等式はE−V >0のことであるから,y軸の値がEをとる,x軸 に平行な直線を描くと,この直線がV(r)よりも上のところにある領域が,
運動の可能な領域である(可動域).E >0の場合,これはあらゆるrの領域 が可動域である.一方,図7.11をみてかわるように,E <0では,r≦rm
の範囲でのみ,惑星の運動が可能である.これはわれわれの惑星が無限遠
に飛んでいかないことを意味している. +太陽に近づくと,角運動量 の保存則から,vが大きくな り,遠心力が働く.これによ り惑星は太陽に衝突しない.
太陽に一度近づいて,その後,無限に飛び出してしまう星もある.これ らはE≧0となっている.
図7.11 E−V ≧0の範囲.
軌道方程式 万有引力のもとで,運動をする星々の軌道を表すのが,軌 道方程式である.軌道方程式は,通常のx, y座標でなく,角度θと中心か らの距離rで表すと便利である.これを極座標とよぶ(図7.12).このと き,惑星の軌道方程式は
r= `
1 +cosθ (≥0) (7.48)
と表せる.これは <1の場合,楕円である.角運動量LとエネルギーE +このとき,原点(太陽の位 置)は楕円の焦点である.楕 円の中心でないことに注意.
を用いると,`, は
`= L2
GM m2 (7.49)
=
√
1 + 2L2E
G2M2m3 (7.50)
と定義される.は離心率とよばれるが,その意味はすぐ後で述べる.
図7.12 極座標.
ところで−1≤cosθ≤1であるから,軌道のようすはが1を境に大き く変わることがわかる. <1の場合,太陽からの距離rは
r=rmax = `
1− (7.51)
r=rmin = `
1 + (7.52)
よって惑星は太陽から有限の距離にとどまる.rmin,rmaxはそれぞれ近日 点,遠日点にあたる.一方,= 1, >1はそれぞれ放物線軌道,楕円軌道 となる(図7.13参照).
の意味をもう少し考察しよう.= 0に対応するのは円軌道である.式 (7.51)から
rmax
rmin = 1 +
1− (7.53)
となり,は楕円の円からの「ゆがみ」,つまり「いびつさの程度」を表す ことがわかる.離心率の“心”とは円のことで,は円軌道からどれだけず れているかを表している.
第1,第2宇宙速度 できる限り地表に近く,円軌道で地球を周回する人 工衛星を打ち上げるのには,どのくらいの速度が必要であろうか.答えは 水平方向にv1=7.9 km/sである(図7.14).この速さを第1宇宙速度とい う.この速さをさらに増やして,ついに初速がv2=11.2 km/sに達すると,
ロケットは地球の引力圏を離れて宇宙の彼方に飛んでいく.このとき軌道 は放物線となる.この速さを第2宇宙速度という.
第1宇宙速度を導出しよう.人工衛星は地表近くにあるので,円運動の
7.3 惑星の運動 109
図7.13 楕円軌道,放物軌道,双曲線軌道
半径はR= 6400 kmである.遠心力と重力がつり合うとすると
mv12
R = mg
∴v1 = √ gR
(7.54) 一方,第2宇宙速度は以下のようにして求められる.地表での力学的エ ネルギーEは
E= m 2 v22+
(
−GmM R
)
(7.55) 一方,無限遠にぎりぎり到達するとすると,その場合,速さは0になり,運 動エネルギーは0,無限なのでポテンシャルエネルギーも0なので,E= 0 である.力学的エネルギーの保存則を用いると,
0 = m 2 v22+
(
−GmM R
)
(7.56) となり,
v2=
√2GM
R (7.57)
となる.式(7.13)から
v2=√
2gR=√
2v1 (7.58)
g=9.8 m/s2, R = 6.4×106 mを代入して,v1 = 7.9×103 m/s ,v2 =
1.1×104 m/sを得る. +これはあくまで地球の引
力圏を脱出する速度である.
太陽系を脱出するにはさらに 大きな速度が必要となる.
気象衛星,放送,通信用の衛星は地表に対して止まっていなければ不便 である.これらは静止衛星とよばれる(図7.15).
+一方,スパイ衛星は地表 近くを何度も周回するように 打ち上げる.地表近くだと地 球のまわりを第1宇宙速度で 回ることで何周もできて,1 日に何周もでき,また地球の 自転により,少しずつ違う場 所の画像もとれる.その上,
近くなので写真もより鮮明で ある.
静止衛星の地表からの距離を見積もってみよう.静止衛星の高度をh,地 球の半径をR,自転周期(24時間)をTとすると,衛星の速度vsは
vs= 2π(R+h)
T (7.59)
図7.14 第1宇宙速度と第2宇宙速度
図7.15 静止衛星とスパイ衛星の違い
遠心力と重力とのつり合いにより,
vs2
R+h = G M
(R+h)2
∴(R+h)vs2 = M G=gR2
∴R+h =
(gR2T2 4π2
)1/3
(7.60)
これからR+hは約42,000 km,hは約36,000 kmとなる.これはかなり +R = 6.4×106 m, T =
24(時間)×60(分)×60(秒) = 86400 sを代入する.なお,
一日は約105s(約10万秒),
1年は約3×107 s(約3千 万秒)と覚えておくと便利で ある.
の距離である.衛星電波を送って,相手届くのに70,000 km以上かかる.
往復で140,000 kmである.電波は光の一種で1秒間に300,000 km 進む.
7.3 惑星の運動 111 よって,相手と話すと0.5秒の返答の遅れが生じることになる.