図5.26 (左)組立優先(右)回収優先
5.7.1 シミュレーション設定
故障ロボット回収の有効性と二つの回収手法の違いを調べるため,提案手法を6角形パネル のSSPS組立シミュレーションに適用し,その有効性を検証する.大規模構造物組立において は,退避場所が少ない小規模の段階で最もデッドロックが発生する.したがって,本研究では 実際の規模の大規模構造物に提案手法を適用する前段階の検証として,ロボットが小規模環境 下で正しくデッドロック回避と故障回収が出来ることを確認するため,61枚の小規模 SSPS 組立シミュレーションにおいて提案手法の有効性を検証する.具体的には,表5.8に示すケー スを比較する.この表の各ケースはそれぞれ異なる回収手法を示している.例えば,Case 1 の回収無しは,故障ロボットを回収せず,構造物の組立に専念する.
表5.8 シミュレーションケース
回収無し 回収有り 組立優先 回収優先 Case 1 Case 2 Case 3
表5.9にシミュレーションの各種設定を示す.表の上から,組立られるパネル数(及び,そ のときロボットが移動可能な頂点の数),SSPSの最も外側のパネルを一度に組立る場合に必要 なロボット数,及びそのときのロボット割合を示す.これは,最も外側のパネルを一度に組立 る場合,ロボット最大数以上のロボットは必要無いことを意味する.パネルは6角形パネルを 用い,シミュレーション初期状態において中央のパネル保管所1枚のみの状態から開始する.
ロボットの故障については,ロボットは各パネルの頂点に到着したときに一定の確率で故障 し,構造物上で停止する.この故障率は0.02%から0.1%まで,0.02%ずつ増加させ,それぞれ
5.7 近実環境下における解析:故障ロボットを回収する場合 71
表5.9 シミュレーションパラメータ
パネル数(頂点数) 61(150)
ロボット最大数 50 ロボット最大割合 0.33(=50/150)
の故障率で各ケースを比較する.この故障率は,ロボットが全体の約5%から20%故障し,組 立成功時に約95%のロボットが故障しない故障率(0.028%)の前後の値である.また,ロボッ トはパネルのフレームの上のみを移動するため,ロボット台数が増加すると,SSPS上で到達 不可能なパネルの頂点が出来ることがある.この場合,組立は事実上失敗であるため,この状 態で5000ステップ経過した場合は組み合て失敗とみなす.これは,通常の組立は通常2500 ステップで完了するため,その倍である5000ステップを閾値としたものである.
5.7.2 評価基準
評価基準は,これまでと同様に,組立成功率と平均組立時間を比較する.
5.7.3 結果
■結果1:組立成功率の比較
図5.27〜図5.28にそれぞれケース1から3における組立成功率を示す.各図の縦軸及び横 軸はそれぞれ組立成功率とロボット数を表す.各線の違いは,故障率の違いを表す.図5.27 の故障ロボットを回収しない場合と,図5.28上下の故障ロボットを回収する場合を比較する と,図5.27の組立成功率は図5.28上下よりも低い.特に,ロボット数が増加するとその差は 顕著になり,ロボット数が増加しても図5.27では組立成功率は上がらないが,図5.28上下で は逆に組立成功率は1.0近くに収束する.また,図5.28上下を比較すると,回収優先の方は ロボット12体以上で組立成功率100%を達成している.
■結果2:平均組立時間の比較
次に,図5.29-図5.30にそれぞれケース1から3における平均組立時間を示す.各図の縦
軸及び横軸はそれぞれ平均組立時間とロボット数を表す.各線の違いは,組立成功率の図と同 様,故障率の違いを表す.これらの図から,図5.29の故障ロボットを回収しない場合は,ロ ボット数が増加することで組立時間が短縮するが,280ステップ程度程度で収束している.一 方,図5.30上下の故障ロボットを回収する場合は,ロボット数の増加により,組立時間が短 縮し,220ステップ付近に収束し,故障ロボットを回収しない場合よりも効率的である.ただ し,図5.30上下ともに収束値は微差である.したがって,組立時間においては故障ロボット の回収方法の差は殆どないと言える.
図5.27 故障回収しない場合(Case 1)の組立成功率
図5.28 組立成功率:(上)組立優先(Case 2)(下)回収優先(Case 3)
5.7 近実環境下における解析:故障ロボットを回収する場合 73 以上の結果から,回収優先手法を用いて故障回収する場合はロバストな組立が可能であると 言える.
図5.29 故障回収しない場合(Case 1)の平均組立時間
5.7.4 考察
■考察1:成功率の収束性
ロボットの故障確率が高い場合,図5.27〜図5.28に示されるように,ロボット数が少ない とき,組立成功率も減少する.これは,少数しかいないロボットが高い故障率で全て故障し,
組立出来なくなるためである.この傾向はケース2及び3にも見られるが,ロボット数が増加 するとケース2と3の組立成功率は増加し,最終的に1.0(組立率100%)に収束する.つまり,
故障ロボットを回収する手法を用いることで,ロボットの確実なデッドロック回避を達成した と言える.これに対し,ケース1ではロボットが故障する場合に確実な組立を維持できないこ とが明らかである.尚,故障ロボットを回収しないケースにおける,故障ロボット数は最大で も5体を超えず,1割程度のロボットが故障しているのみである.これは,故障ロボットが数 台あるだけで組立成功率を大きく下げる要因となっていることが明らかであり,故障ロボット を回収する手法は,故障ロボットを早期に回収することで故障ロボットの増加を防いでいると 言える.
以上のことから,故障ロボット回収手法により拡張した二体一組協調手法は,故障ロボット の回収を優先することで組立を可能にする手法であると言える.
■考察2:回収優先手法と組立優先手法の平均組立時間
平均組立時間について考察する.ケース2と3を比較すると,両方ともほぼ同じ値に収束し ている.これは,組立優先手法が回収よりも組立を優先することで,組立速度の面で有利であ
図5.30 平均組立時間:(上)組立優先(Case 2)(下)回収優先(Case 3)
図5.31 組立優先手法を用いた場合のデッドロック