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本研究では,提案手法における実機ロボット環境下での有効性を故障のない環境下について は検証出来,またシミュレーションにおいても故障により停止する際の有効性を明らかにし た.しかし,実際の組立は,より複雑な環境下であり,発生する問題は多岐に渡る.具体的に は,本研究において以下の事項が実機ロボット検証において不足しており,今後取り組むべき 課題として挙げられる.

ロボットが電気的に故障し,異常な通信や行動を取る場合

ロボットの通信にノイズがある場合

太陽フレア等による広範囲のロボット故障

太陽発電パネルの故障の考慮

構造物の歪みや応力等の物理的な側面の考慮

8.1 おわりに

本論文では, 複数移動ロボットによる大規模構造物組立において発生するデッドロック問題 に対し, 二体一組の主従交換に基づくデッドロック回避手法を提案し,理想環境下において回 避可能となるロボット割合を明らかにするとともに,個体差や故障を含み構造物が大規模にな る近実環境下での有効性を検証し,ロボットの偏りによって発生するデッドロック問題をロ ボットの移動を一方通行化する手法によって解決可能であることを示した.以下に,本論文の 各章で得られた知見をまとめる.

第1章では,近年の構造物の大規模化について,いくつかの例とともに説明し,人間による 建造が危険性やコストの面から困難であり,複数ロボットによる組立が必要であることを述べ た.また,複数移動ロボットによる組立で発生するデッドロック問題について説明し,本研究 の目的が,それらの制限を持つロボットを用いたデッドロック回避手法の提案と検証であるこ とを示した.

第2章では,複数のロボットが構造物上で自律行動により大規模構造物組立における場合 の,移動・機能・通信という三つの制限の説明と,この制限下で発生する,ロボットが他ロ ボットの移動を阻害するデッドロック問題について説明し,既存のロボット制御手法による組 立が困難であることを示した.また,構造物上で発生するデッドロック問題について分類し,

それらを全て解決することで組立可能であることを示した.そして,大規模構造物組立の検証 においては,組立るパネルやロボット数の多さと故障の影響等,シミュレーションによる調査 が必要であり,組立手法の有効範囲を理論的な観点から明らかにし,シミュレーションでは再 現出来ない問題に対しては実機での検証が必要となるということの必要性を述べ,第5章以降 でシミュレーション・理論・実機により提案手法の有効性を検証することを示した.

第3章では,本論文で大規模構造物の一例として取り扱った宇宙太陽発電衛星のモデルを挙 げ,その規模の大きさと,ロボットが常に太陽熱に晒される過酷な環境下であり,故障が発生 することを述べ,大規模構造物組立においても困難な問題であることを示した.また,組立に

136 第8章 結言 用いるパネルモデル及びロボットモデルの例を取り上げ,これらを用いた宇宙太陽発電衛星組 立問題をモデル化した.

第4章では,役割の異なる二体のロボットを主従関係に基づく一組のチームとみなし,デッ ドロックが発生した際に,その主従を交換することによってデッドロック状態を解消する手法 を提案した.具体的には,まず,パネルの展開と接続という2 つの役割をソフトウェア上で 切り替えられるロボットを設計し,パネルを展開する役割のロボットをリーダ,パネルを接続 する役割のロボットをフォロワとした二体一組と見なし行動させることを述べた.その際,移 動においてはリーダがフォロワを先導し,組立においてはリーダが展開しフォロワが接続し,

デッドロックが発生した場合は,リーダとフォロワの役割を交換することで回避することを述 べた.ロボットの目的地設定については,各パネルにおいてその周囲で展開が必要なパネル数 を需要度とみなした需要度マップについて説明し,需要度にもとづいた目的地設定と,距離に もとづいた目的地設定の2つについて説明した.

第5章では,第4章で提案した二体一組ロボットの主従関係交換手法を SSPS組立シミュ レーション上に適用し,その有効性を検証した.具体的には,全てのロボット速度が均一で,

故障のリスクのない理想的環境のシミュレーションにおいて,組立が100%完了することを示 すとともに,需要度と距離の2つの目的地設定方法について比較し,距離に基づく目的地設定 を用いて効率的に組立可能であることを示した.次に,提案手法の近実環境下での有効性を検 証するため,ロボットに個体差があり,速度が異なる環境下とロボットが故障する環境下のそ れぞれに適用した.その結果,ロボット速度については,一部のロボットの速度が少し遅い方 が,移動時の時間が少しずれることで相互に阻害する場合が減少し,効率的に移動可能である ことを明らかにした.ロボットの故障については,故障ロボットを回収出来る場合は,構造物 の組立よりも故障ロボットの回収を優先する方が,構造物の組立を優先する場合よりも組立成 功率が高く,組立速度も同程度を維持できることが明らかにした.また,故障ロボットを回収 出来ない場合は,約半数のロボットの故障時に,ロボット割合に対するリカバリーレートの値 が最大となり,ロボットが故障し回収出来ない場合でも,半数のロボット故障までは組立を最 大化することを示した.この章のシミュレーション実験により,二体一組ロボットの主従関係 交換手法は故障がない環境下で組立を可能にし,ロボットが故障する場合でも,その組立を最 大化するための条件が明らかとなり,ロボットを設計する上での指標になることを示した.

第6章では,第4章における提案手法について理論的に計算し,ロボットが1頂点に1体 のみ存在出来るという原則の元では,全頂点に対して約 61%のロボット割合までデッドロッ クを回避して組立可能であることと,ロボットの偏りによってロボットが一箇所に集中するこ とで発生するデッドロック状態の例を示し,提案手法では回避出来ないことを明らかにした.

この問題に対し,ロボットの偏りによるデッドロックを回避する手法として,各ロボットが持 つ構造物の完成図において,各パネル上の辺のロボットの移動方向を一方通行化する回転パネ ルを提案することで予め向き付けをし,ロボットをその方向にしたがって移動させることで,

デッドロック状態を回避する手法を提案した.この手法では一方通行移動を維持するため,ロ

パネル(3枚)で実験したところ,証明内容通り移動することが確認できたため,故障が無けれ ば,近実環境下にも適用出来る手法であることが明らかとなった.

第7章では,提案手法の一般化の観点から第5章及び第6章の成果をまとめた.具体的に は,六角形・四角形・三角形という平面充填可能なパネル全てにおいて組立可能であることを シミュレーションで検証し,理論的に証明したことから,平面構造物の組立が可能であり,更 にこの際の構造物規模は如何なる枚数であっても組立可能であることを示した.また,立体構 造物の多くは平面構造物を合わせたものであるため,立体構造物各面にパネル保管所を設定す ることにより組立可能であると言える.また,組立完了時の故障していないロボット割合が信 頼水準95%を維持すると仮定した場合のロボットの故障率において,故障ロボットの回収を組 立よりも優先することでほぼ100%の組立成功率を達成できることを明らかにした.

最後にこの章において本研究の知見をまとめると以下のようになる. (1)主従関係交換手法 は,故障無しの環境下であれば61%のロボット数まで確実に組立可能であることが明らかとな り,提案手法を適用する場合に組立可能なロボット数を保証出来る.(2)近実環境下において,

主従関係交換手法を用いる場合,ロボットに個体差があり速度が異なる場合でも効率的な組立 が可能であり,ロボットの半数の故障までは故障時の組立成功率を最大化し,故障ロボットの 回収が可能な場合は組立よりも回収を優先することで組立成功率をほぼ100%にすることが出 来る.これは実問題に応用する際にロボットの個体差,故障率やロボット数,及び故障ロボッ ト回収時のロボットの振る舞いの設計に利用可能である.最後に,(3)移動の一方通行化に基 づく主従関係分離手法を用いることで,如何なる枚数のパネルであっても,構造物上で一箇所 でも移動可能な場所があれば,組立可能であることを証明した.以上の知見から,大規模構造 物組立問題において,理論化された確実な組立を保証する手法を確立し,実際の組立問題への 適用に向けた道を切り開いた.