たものを表5.10に示す.シミュレーションケースは単独行動手法をCase 1,提案手法の主従 関係交換手法をCase 2として比較する.六角形4層の61枚パネルの構造物を用い,ロボッ ト数は4対から50体まで,それぞれ100回ずつ試行する.移動・展開・接続の速度は,全ロ ボットで1.0vの均一であり,故障しない理想環境下であるとする.
表5.10 単独行動手法と提案手法の比較
単独行動手法(Case 1) 主従関係交換手法(Case 2)
情報共有 大域通信 局所通信
協調形態 単独 二体一組
5.8.1.2 評価基準
シミュレーションの結果は,これまで同様に組立成功率と平均組立時間を比較する.
5.8.1.3 結果
組立成功率については両手法ともに100%であったため割愛する.図 5.33に平均組立時間 の比較を示す.図中の横軸は最大のロボット数,縦軸は平均組立時間を表している.単独行動 手法が赤四角,提案する主従交換手法は青菱型で表される.この図から明らかなように,提案 手法は局所情報を用いているにも関わらず,大域情報を用いた単独行動手法と比較して組立時 間を4割から5割近く削減している.
以上から,提案手法によって組立成功率を維持しながら,従来手法と比較して効率的な組立 を実現可能であることが明らかとなった.
5.8.1.4 考察
単独行動手法と比較して大きく組立効率が向上した理由としては,展開ロボットと接続ロ ボットが主従関係に基づいて二体一組で行動する点が挙げられる.単独行動手法では,展開ロ ボットがパネルを展開しても,接続ロボットが近傍に来るまでは展開ロボットは次の行動に移
5.8 提案手法の性能範囲調査 77
図5.33 単独行動手法と提案手法の平均組立時間の比較
ることが出来ず,パネルを把持し続けることで他の展開ロボットの移動の阻害にも繋がり,組 立時間が大きく損なわれる.対して,提案手法では,展開ロボットが常に二体一組で行動する ため,パネルを展開してから接続されるまでの時間損失がなく,ロボットの待機による他ロ ボットの移動阻害も頻度が少ない.したがって,提案手法における二体一組協調は組立効率向 上に大きく貢献することが明らかである.
5.8.2 大域通信利用との比較
単独行動手法との比較では,ロボットの二体一組行動の有効性を明らかにした.ここでは,
主従関係交換の有無による効果について検証するとともに,局所情報と大域通信の比較をする ことで,大域通信を用いる場合に対しどの程度組立効率を維持出来るか議論する.
大域通信を用いる場合,全てのロボットの需要度マップが毎時共有されるものとし,デッド ロックは同じルールで回避する.大域通信では全体のパネル展開状態は把握出来ており,中 央のパネル保管所で距離をもとに目的地を設定するため,ロボットの配置が均等に分散され,
デッドロックを予防する要素を含んでいる.
5.8.2.1 シミュレーション設定
シミュレーションでは,表5.11のケースを比較する.速度差についてはこれまでと同様に,
移動速度については平均0.8v,分散0.2vの正規分布,展開・接続速度については平均0.4v, 分散0.1vの正規分布を用いる.また,パネル規模は4層の六角形パネル61枚とし,ロボット 数も4体から50体までを利用する.
シミュレーションの結果は,これまで同様,組立成功率及び平均組立時間を比較する.
5.8.2.3 結果
図5.34,図5.35,及び図5.36には,主従交換無しの大域通信と提案手法の組立成功率,平 均組立時間,及び主従交換有りの大域通信と提案手法の平均組立時間の比較を示す.主従交 換有りの大域通信と提案手法では組立成功率はどちらも100%であるため,割愛する.両図の 横軸は最大で構造物上に出せるロボット数,縦軸はそれぞれ組立成功率,平均組立時間を表 す.青のマーカーが大域情報の結果を,赤のマーカーが提案手法を表す.図5.34から,主従 交換無しの大域通信では,ロボット数の増加に対して組立成功率が下降傾向であるのに対し,
局所通信利用の主従交換有りのケースと大域通信利用の主従交換有りのケースでは組立成功 率100%である.したがってデッドロック時の主従関係交換は大域通信,局所通信に関わらず デッドロック回避に有効であることが明らかである.また,主従関係交換無しの大域通信に対 し,提案手法の方が平均組立時間が短い.これは,主従関係交換がデッドロック回避だけでな く,組立効率の向上にも効果があることを示唆している.但し,主従交換有りの大域通信と比 較すると,組立効率は大域通信利用の場合の方が上回り,約10ステップ程度の差が出る.
図5.34 主従交換無しの大域通信と提案手法 の比較:組立成功率
図5.35 主従交換無しの大域通信と提案手法 の比較:平均組立時間
5.8 提案手法の性能範囲調査 79
図5.36 主従交換有りの大域通信と提案手法の比較:平均組立時間
5.8.2.4 考察
提案手法の組立時間は,主従交換有りの大域情報に比べて長く,効率が悪いが,これは図 5.37のように,組立の最後に 1組ロボットが残った場合に他ロボットとの情報交換が出来な いことで余分な移動が発生することが原因の一つとして挙げられる.通常5ステップ程度で中 央のパネル保管所に移動するところ,15ステップ程度かかる場合があり,大域情報利用時に 対し10ステップ程度組立時間が余分にかかる大きな理由であると言える.したがって,組立 完了までにかかる時間のみを考慮した場合,提案手法は,局所情報を利用していながら,大局 情報を利用した場合と同等の効率を得られる手法であると言える.
図5.37 局所情報利用の場合の最後の周回移動
とロボットの偏りに基づくデッド ロック回避
この章では,二体一組の主従関係交換手法において,その有効性を保証出来るロボット割合 について明らかにすることで,提案手法の有効範囲を明らかにする.また,提案手法の有効範 囲を超えるロボット割合においてデッドロックに陥る問題に対して,有効性を保証するための 新たな手法を提案し,その有効性を理論的に証明し,実機上での動作を検証する.
表6.1は2章において提示した本論文のアプローチと各章の対応である.この表において灰 色の部分がこの章が対象とする部分である.
表6.1 本研究の課題
理想環境 近実環境(個体差・故障) シミュレーション 第5章・前半 第5章・後半
理論・実機 第6章・前半(理論) 第6章・後半(実機)