第 9 章 教員に求められる教育力
3 諸外国での BYOD 状況
165
166 育にBYODを取り入れている国が増えてきている。
Horizon104という世界 195 か国の教育における未来技術の導入を分析してい
る活動団体は、BYODが世界中の学校で受け入れられることを示している105。 例えば、カナダのオンタリオ校では、「デジタルラーニング」が行われており、
58%の生徒が自分自身のデバイスを用いて利用している。2013年と比較すると
導入率は77%の上昇であり、近年、BYODを積極的に取り入れていることがわ
かる。また、ヨーロッパでは、イギリスの 500 人以上の教員、教頭、校長への 2014年の調査で、回答者の3分の2が、BYODが学校組織への影響があること を明らかにしている。一方、2015年3月に米国ニューヨーク市では、携帯電話 使用の禁止を解くといった動きがみられる。テキサス州のガストン郡学校では、
スペイン人学生が研究ツールとしてスマートフォンを用いるなど、BYOD を取 り入れることで、教員の役割が講師から手助けする人と変化していることを示 唆している。
以下、いくつかの国におけるBYODの状況について、さらに調査をした。
3.1. デンマーク
デンマーク政府は、2013年度から学校でのBYOD を前提としたICT 環境整 備を進めている。デンマークの児童生徒の保護者は、早くから子どもにPC・タ ブレット・スマートフォンを与える事を積極的に捉えている。持ち込みしてい るデバイスは、スマートフォン・タブレット・ノート PC と様々であり、統一 性はない。BYOD を前提とした方針は、学校現場でも肯定的に受け取られてお り、児童生徒が使い慣れたデバイスであれば、教員は操作上のトラブルを懸念 する必要がないと考えられている。また、学校側は機材を持ち込まない児童生 徒に対する保障分の機材整備に焦点化すれば良いので、結果として予算節約に なっている。また、推奨デバイス106を定めており、現在は、Netbooks、Laptops、
Chromebooks、iPad(miniは除く)、MacBookが認可されている。
デンマークの最高の教育は、児童生徒にテクノロジーを持たせることであり、
特定の時間に限らず、いつでもどこでも学習できる環境であると考えられてい る。オンラインの教科書を基準とするなど、ICT化を進めている。デバイスは、
児童生徒の教育のための学習道具であり、鉛筆や電卓は過去のものと考えられ ているが、全ての児童生徒にデバイスを配布するほどの財源はなかった。
104 NMC HORIZON,http://www.nmc.org/nmc-horizon/(2015年11月2日取得)
105 NMC HORIZON,「Horizon Report > 2015 K-12
Edition」,http://cdn.nmc.org/media/2015-nmc-horizon-report-k12-EN.pdf(2015年11月 2日取得)
106 DENMARK SCHOOL DISRICT,「DISTRICT TECHNOLOGY FEE – BYOD」
http://www.denmark.k12.wi.us/parents/byod.cfm(2015年11月2日取得)
167 デバイスの選定においては、児童生徒の成長レベルに合わせて、保護者が決 めるよう促している。また、6歳から12歳の児童には、キーボード入力技術が 重要であると考えており、デバイスを選ぶ上で、キーボードを用いてアクセス できることが重視されている。また、Chromeブラウザ(無料ダウンロード)を 使うことを必須としているため、児童生徒はGoogle Docs も使用する環境であ る。
また、デバイスを購入できない家庭の児童生徒は、授業がある期間は、コン ピュータ教室を利用するといった対応をしている。
3.2. フィンランド
フィンランドでは、政府は、2012 年まで ICT 機材の学校投資に抑制的であ った。校内の学校配備機材はデスクトップやノートPCが主流で、児童生徒の持 ち込み機材以外でタブレットを見かける機会は少なかった107。
しかし、EUや OECDの国際比較で、フィンランドのICT活用の低迷が明ら かになったため、2013年から積極的方針に改めることになった。
3.4. 米国
米国の Miami Dade School District108では、Windows や Mac OS、iOS、
Android といった OS にて、BYOD を認めている。その他のスペックは最低要
件を規定して、要件を満たした端末を、各家庭で購入している。また、Cheshire
Public Schools109では、インターネットに接続可能であれば、どの端末を選択し
てもよいと。いくつかの制限や要件を提示した上で、各家庭が端末を決定でき る傾向にある。2013年度には、米国の学区の56%がBYODプログラムを実施 しているという調査結果もあるように、米国ではBYODが進んでいる。
3.5. オーストラリア
オーストラリアのクイーンズランド州では、2012 年から、年間 4~5 百万豪 ドルの予算を州が費用負担している。21 世紀力を実現する教育を実施するため に、デジタル教材開発はあくまでその一環である。この予算は、人件費プラス
107 豊福晋平, 「北欧における初等中等教育の情報化-学校教育 1:1/BYOD 政策とその背 景
-」,http://i-learn.jp/eduwoods/doc/141208CIEC.pdf#search='%E3%83%87%E3%83%B3
%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%AF+BYOD'(2015年11月2日取得)
108 DadeSchools.net,http://wifi.dadeschools.net/(2015年11月2日取得)
109 CHESHIRE PUBLIC SCHOOLS,
http://www.cheshire.k12.ct.us/district-departments/curriculum--instruction/bring-your-own-device--dodd-11-initiative(2015年11月2日取得)
168 諸費用が、オーストラリアのナショナルカリキュラム(新しい全国学習指導要 領)のためにかけられている。しかし、地域によっては、BYOD を取り入れて いる。全端末許容型を取り入れており、一人で 3 台を所持する児童生徒もいる とのことである。また、学校用と家庭用のパソコンを 2 台持ち、使い分ける生 徒もいる。こうした学校の多くは、廊下にインターネットに常時接続できるパ ソコンを設置していたが、その後はコンピュータ室を設置する過程を経て、
BYODに移行した。日本でも、BYODでの導入を行うには準備期間を要するだ ろう。