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第 9 章 教員に求められる教育力

3 教員を取り巻く制度と課題

3.2. 採用試験

わが国の小・中学校数は、公立学校87(公立小学校が約 99%、公立中学校が

約93%)がほとんどを占めている。公立学校での教員採用試験は、47都道府県

や20政令指定都市の教育委員会が実施する。教員希望者は、教育に関する法令

85 教育家庭新聞(201491日付),「教育実習生にICT活用を義務化 実習生のトライ

&エラーが刺激に-信州大学教育学部」,

http://www.kknews.co.jp/maruti/news/2014/0901_2a04.html(2015101日取得)

86 The University of Queensland[2015],「Courses and Programs」,

http://www.uq.edu.au/study/program_list.html?acad_prog=2312(2015101日取得)

87 文部科学省[2014],「平成26年度学校基本調査(確定値)の公表について」

156 や理論に関する教職知識、授業を行う上で必要な専門知識を問う筆記試験、教 員としての実践的指導力、論理的表現力などを評価する論文試験、面接試験、

実技試験といった様々な種類の試験を受験しなければならない。また、実技科 目においては、体育・音楽・図画工作・外国語について、各教育委員会にて独 自に定めた試験を実施している。

これらの中で、ICT 活用力を問う試験は、青森県、長野県、さいたま市、神 戸市等の2014年度の採用試験問題を調べたが、見当たらなかった。一方で、横 浜市88の教員採用試験では、指導案を作成する問題において、「主体的な学び」

を発展させることのできる授業力が求められているといった記載がされている ため、21世紀力を問う設問に近いと考えられる。しかし、ICTを活用した個別 学習・協働学習を問うまでには至っていない。

先行的な事例として、2014年度より、佐賀県教育委員会では、教員採用二次 試験で実施する「模擬授業」に、全国で初めて電子黒板を用いた89。具体的には、

指導効果を高めるために電子黒板をどのように用いるかを評価するため、模擬 授業の構成、表現や態度等、といったICTリテラシーを確認するものである。

佐賀県内では電子黒板の普及率も高まり、これを授業の中で利用する力は教 員の基本的な能力であると判断したから、採用試験で実施することにしたので ある。小学校、中学校、高等学校、特別支援学校等、すべての学校が対象であ る。

初年度において、二次試験受験者数90は全体で 409 名であり、その中の 243 名が名簿登録者となった。今後も、佐賀県では、毎年一定数のICT リテラシー のある新任教員が増加していくことになる。

ニュージーランドには、教員登録機関があり、教員採用時の指導力基準を決 めている。完全登録教員、仮登録教員、承認必要登録教員の 3 つに分類してい る。

完全登録教員とは、教員としての資質や能力を満たしている正規の教員であ る。3年毎に教員登録を更新する必要がある。仮登録教員とは、教職課程を修了 した新人教員である。完全登録教員になるには、5つのステップ91がある。1.ITE

88 横浜市,「横浜市公立学校教員採用候補者選考試験 指導案問題」,

http://www.city.yokohama.lg.jp/kyoiku/saiyou/pdf/h25-sidouan.pdf(2015729日取 得)

89 佐賀県, http://www.pref.saga.lg.jp/web/kisha/_71028/_71188.html(2015729 取得)

90 佐賀県,「平成27年度佐賀県公立学校教員採用選考試験(実施状況)」,

https://www.pref.saga.lg.jp/web/var/rev0/0163/1543/zissizyoukyou.pdf(2015729 日取得)

91 EDUCATION COUNCIL,

http://www.educationcouncil.org.nz/content/beginning-teaching(2015730日取得)

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(Initial Teacher Education)プログラムを修了すること、2.暫定的な証明書(仮 登録)に応募すること、3.仮登録をすること、4.はじめの2年間はメンター教員 の下でプログラムを受けること、5.完全登録教員に応募することである。完全登 録教員に応募するには、メンター教員や所属している校長に認められなければ ならないため、2年で満たさなかった場合は、仮登録期間を延長することもある。

また、昇任必要登録教員とは、産休等で一度学校現場から離れた教員資格を所 持している者を指す。

前述のフレームワークに一度登録すると、2年間の暫定登録期間で、初年度に

200日または1,000時間以上の実務、初任者研修を受講する必要がある。2年目

は、学校長がフレームワークを基に査定を実施し、適格であるとみなされると 正規登録される。正規登録後も、能力を満たしているのか査定が行われる。

大学を卒業した新任教員は、生徒のための学習プログラムを管理する。生徒 に必要な学習内容を満たすための戦略を理解し、カリキュラム、評価等の授業 設計を行う。同僚(先輩)教員と協力して、生徒の学校での生活に貢献する。

生徒の学びのカリキュラムの拡大のために、ICTを使用した指導を行える、ICT 活用力を身に付けることが目標である。

一般的な教員は、7つのフレームワークの項目の達成することで、完全登録の 必要条件を満たす。教育によって、彼らの個々のニーズと多様な文化、社会、

言語に合うよう調整を行う。また、カリキュラム、評価といった条件を満たす 教育プログラムを設計、実行する。生徒の知識と理解を分析して、フィードバ ックと評価を行う。ICT を用いた教育には、内容を選び、意味のある計画をす ること。効果的な教育戦略を行うことが目標である。

熟練教員(学科主任)は、自らの活動と同僚の活動を改善するために、協力 して働く学校の中でも、知識のある教員である。定期的に生徒のための教育結 果を改善するために、効果的な教育に関する議論を行い、教員の背景と多様な 個々の特徴を理解することが求められており、学習テーマとカリキュラム内容 についての徹底的な知識を持っている。また、高いプレゼンテーション技術が 求められ、効果的に、生徒、同僚教員、保護者と情報交換を行う。授業内容を 改善し、ICT を使用するために、高水準な教育知識と技術を、同僚教員に提供 できる内容でモデル化することが目標である。

リーダー教員である校長や教頭は、同僚教員、保護者と地域の人によって認 められた存在であり、一貫した革新的な教育を行う。学校の内外で、生徒のた めの教育機会を改善するための活動を先導的に行い、学習環境を確立する。専 門知識を後輩教員に展開し、効果的な授業と学習機会といった情報や、技術、

知識を提供する。生徒の理解力を向上させるために、生徒の評価データを分析 する。すべての生徒のために、学習機会と知識を増やすための効果的な教育戦

158 略において、ICT を用いるようにし、学校内の同僚教員を支えることが目標で ある。

これらの経験値による分類を行うことで、教員は、各レベルに応じて ICT リ テラシーや具体的にどの程度のICT 活用力を身に付ければよいかが明確になる。

また、ICTを用いた教育における国家ビジョンにて、「生徒と教員は、日常的 にデジタルテクノロジーを用いて知識を共有していく協働活動を行う」92ことが、

教育目標のひとつとして掲げられている。また、クイーンズランド州において も、「電子的な環境で生徒たちが協働的に知識、経験を深める」93ことを目標と している。これらから、国や州レベルで、教員のICT 活用力の向上も目標とし ていることがわかる。