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第3章 話し合い活動を中心とした特別活動の授業・

第2節  話し合い活動を取り入れた特別活動の授業

 第1節 話し合い活動の意義の中の「トゥールミンの議論モデル」

を用いて、以下のように、「友情とは何だろうか1と「納得する話し 合い」について、授業を行った。

「友情とは何だろうか」では、班で行われる話し合いの手順を確認し、

それぞれの意見の必要性や有用性を相互行為を行うことで吟味して いく。また、「納得する話し合い」では、話し合いの結果が納得のい くものになるためには、ルールが必要であることを示し、今後の話し 合い活動の中で、自分たちの意見や考えが正当なものかどうかをクラ

ス全体で吟味し、話し合いのルールづくりを行った。

1 実践例「友情とは何だろうか」

(!)授業に向けて

① 題材  友情とは何だろうか(1年4クラス)

② ねらい 「規範構造」の質的変容を目指した相互行為として話し       合いの「場」を設定し、行為調整能力をつける。

③ 授業の構想図

裏づけ 友情とは、互いの信頼関係 の上に成り立っているから 理由づけ

根拠

優しくすることだけ が友情ではないから

友情とは何かと

いうと

限定 主張

きっと 悪いことをしている と、注意してくれる

反証本当の友だちと思っ

図3−3 授業の構想図 ていない限りは 「友情とは何」

一52一

(2)授業の考察

 「友情とは何か」、「どんなときに友情を感じますか」という問いに 対して、ほとんどの生徒は、友だちが○○してくれるときを思い起こ

していた。他人が自分にある働きかけをしたときと捉えている。また、

○Oしてあげるときなどのように自分が他人に働きかけたときを想 定している生徒もいた。どちらも一方通行で双方向の行為ではない。

あるクラスでの意見をまとめてみると、以下のような結果になった。

・困ったときに、助けてくれる、声をかけてくれるなど、

○○してくれる…  30人

・一盾ノ遊ぶ、がんばる、登下校、宿泊体験をするなど、

共に○○する…  5人

・教え合ったり、助けあったり、話し合う、協力し合うなど、

相互作用…  4人

 確かに、「○○してくれる」友だちが、特に困ったときにそばにい てくれたらありがたいなと感じるであろう。しかし、それは「友情」

であるといえるのであろうか。

 また、「共に○○する」友だちの問では、同じ時間や場所を共有す るだけで「友情」は感じとられない。気の合う、合わないにかかわら ず、一緒に遊んだり、勉強したり、寝泊りすることはできる。ただ、

「共に○○する」中でお互いが相手を思いやり、尊重し、理解しよう と働きかける中で、友情が芽生えることは考えられる。互いに教え合 ったり、助け合ったり、協力し合う、双方向の関係性ができてこそ、

「友情」が芽生え、信頼関係が自己と他者の問に作られていくと考え

られる。

 「友情」の定義だけでなく、友情の性質、定理について考えてくれ た生徒もいる。親友と思っている友だちとの間でも、裏切りや課いは ないとはいえない。なぜ、問題が発生したのか、その友だちとの関係 性をどう修復していけばいいのかをもう少し追求し、深く考えさせる

いのかを、「[大人(教師)一『子ども一子ども』]→対象(世界)」

中全員のことを考えていい案を考え、新しい意見をつくる。

で、友情という世界の奥底に隠れている根拠を追求をさせ、行為を調 整する力までは、引き出せなかったと思う。新しい考えを創造する授 業を展開させてこそ、「真の友情」に迫ることができたと反省する。

友情とは何

当の友情

い、

   へ本るのいがなもすのにうやる分まれれ半しわくはてばてとれうしこわ︑意いこの注しにもに悲ぐいきてすうとつともるなるくいに切すて口裏やし2がれをは方わ

  コ  な  て  し  談  相  も  で  何 の﹁

 も⁝のるてもきれなでく要にて必きいどと付けた高

いつにし守き

たことをしているときに注意できる り、逆に貸したりする

おこってくれる りはないとを気にしてくれる

つるた違作れら裏の にていに逆つな気

︑こはをりおりと ︑切こ

かをとるる間にくたも人ず束たれえが煽てしてのとと一こドむ約つく合ち一しをつ他ここ︑︑ン︑︑あてしだを貸とあもいいははモははがけ心友地をこはり悪しととやとと事かもや基物なかよかれ情情イ情情みをで分密れめん分何う友友ダ友友写声何自秘忘だけ自

実践例「納得する話し合い」

2

(1)授業に向けて

納得する話し合い(1年3クラス)

「話し合い活動」を行う場で、理想的発話状況が作られ 題材

ねらい

① ②

るためのルールづくりを行う。

授業の構想図

その理由は正しいと認めら れたから

裏づけ

意見には理由がある

から

理由づけ

主張

決まったことは実行 できるはずである 限定

きっと 根拠

納得する話し合

いとは

理由が納得できなくて 意見を変えない限りは 反証

授業の構想図「納得する話し合い」

         一54一

図3−4

(2)授業の考察

 「友情とは何だろうか」では、最初の例示の仕方が「OOしてくれ た」という話だったので、「友達が信頼を裏切るような行為をした場 合」を例示すると、多様な意見が引き出せた。「『子ども一子ども』]

→対象(世界)」だけでは、心情的な発言しか出てこないが、少し、

話し合いの指針を例示することで、子どもたちの相互行為が深まるこ とがわかった。それを踏まえて、「話し合いの必要性」について例示 した後、「[大人(教師)一『子ども一子ども』]→対象(世界)」の関 係性の中で「納得する話し合いとは?」を提示し、「なんで?」を合 言葉に考えさせ、意見を求めた。最初、クラス全体で話し合いを進め たが、手を挙げて発表する生徒は2,3人で話が進まず、結局班活動で 話し合った結果を発表させた。予想以上に子どもたちは深く考え、渡 邉(2005)による話し合いのルール11へと近づいていった。

納得する話し合い

(生徒の意見)

・一lひとり、みんなが意見を出

し合う。

・自分の意見をちゃんと言う。

・他の人の意見を最初から全否定 するのではなくどうしてです かと聞く。尊重する。

・最初と最後に賛成か反対か聞  く。意見を変えてもよい。

・先を見通して考え、意見を言う。

・全員のことを考えていい案を考  え、新しい意見をつくる。

・決めたことを実行する。

渡邉(2005)による

話し合いのルール

i誰も自分の言うことをじゃま

 されてはならない。

h自分の意見は理由を必ずつけ

 て言つ。

逝他の人の意見にははっきり賛 成か反対かの態度表明をする。

その際、理由をはっきり言う。

拉理由が納得できたらその意見

 は正しいと認める。

v意見を変えてもよい。ただし、

 その理由を言うこと。

Viみんなが納得する理由を持つ

いる。

1誰も自分の言うことをじゃまされてはならない。

 ある特定の人だけがしゃべれるようなところでは話し合いは成り 立たない。誰もが意見を言える。

ll自分の意見は理由を必ずつけて言う。

 理由が問題。「私は…  と思う。なぜなら〜だから」と言う。「な ぜなら、だから」を必ずつけて言う。

hi他の人の意見にははっきり賛成か反対かの態度表明をする。その際、

 理由をはっきり言う。

 誰か意見を言っていても聞いていないとか、次に意見を言う人がそ れを踏まえてないとか、そういうことはありえない。あってはいけな

い。

N理由が納得できたらその意見は正しいと認める。

 「…  は〜である」が、正しいかどうかを決めるのは、神様では ない。先生でもない。理由である。根拠である。根拠がはっきりして いれば、誰も否定できなかったらその意見は正しいと認めようという のが18世紀以後のわれわれの社会の大原則、これを民主主義という。

v意見を変えてもよい。ただし、その理由を言うこと。

 意見は変わるもの。より正しい考え方に気づけば、それに変えてい けばよい。いつまでも古い意見、自分の意見にこだわっているのは頑 固である。意見は変えてもよい。ただし、変わるには、何か自分の間 違いに気づいて、別の正しい意見の方がよいというふうに自分が判断 したのなら、その部分をきっちり表明しなければならない。何の根拠 もなしに変わるのはありえないこと。前の意見が信用できなくなる。

したがって、話し合いを危うくしてしまう原因になるのでこれは認め

られない。

viみんなが納得する理由を持つ意見は、みんなそれに従わなければな

 これは重要。みんなで決めたらそれを守るというのが当然。守れな いと思えば、意見を言えばよい。「それはいくらなんでもそう決めた       一56一

ら非現実的だよ」、「できないのにそう決めてもしょうがないじゃない か」と言えばよい。妥当なところで、できるところで、みんなが合意 すればよい。合意するということはそれができるということ。道徳の 時間や学級会で話し合いを行う、その前提は「決まったらその通りや

る」というのが話し合いの意味である。

 「納得する話し合い」の授業で、「一人ひとり意見を言う」、「賛成 や反対」、「意見を変える」などの意見は出たが、「理由を言う」こと や「決めたことを実行する」などの意見は、こちらからヒントを出し て、やっと引きだすことができた。しかし、「理由が納得できたらそ の意見は正しいと認める」これを引きだすのがむずかしく、発問に戸 惑った。やはり、「『子ども一子ども』]→対象(世界)」に加えて、

「[大人(教師)一『子ども一子ども』]→対象(世界)」の関係性の 中で、話し合いを行う必要性を実感した。

 また、「全員のことを考えていい案を考え、新しい意見をつくる」と 生徒から出てきた意見を7つ目の意見として、採用することにした。

新しい意見を出してもよい。ただし、理由を言うこと。

雪 、 量 

その理由→正しい?

どちらでもない その理由→正しい?

その理由→正しい?

吟味

納得

了解・

合意・

新しい 意見

〈一人ひとりの意見〉〈思見をしえてもよい>t一 図3−5 「話し合い活動」のイメージ図

実践しよう