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図3−9

第4節  話し合い活動を取り入れた数学の授業

 特別活動や道徳の時間の話し合い活動では、お互いの意見を吟味 しながら、了解・合意を目指した。数学の授業での話し合い活動は、

お互いに問題の解き方を出し合うことで、答えはひとつではあるが、

解き方はさまざまであったり、途中までは理解しているのだけれど もという基礎的な知識を出し合うことで、それを一つにつなげて、

解答を導き出すことを話し合い活動を通じて行う。

1実践例「方程式の利用」

(1)授業に向けて

①単元 方程式の利用13(1年1クラス)

② 目標  文章題から方程式をつくること

③ 授業の構想図

文章題から、文字の入った等式(方程式)

の立式の方法を手順を踏みながら説明を聞く

班学習 No

文章題を立式できたか

Yes 班員の説明を聞く

方程式を解く

解が題意に適しているか No

Yes 班員の説明を聞く

文章題の答えを求める。(単位をつける)

(2)授業の考察

なぜ答えがそうなるのか、人に説明できて、その人がなるほどと納 得できたときに本当の理解はやってくる。数学の理解度は個々で極 端に差があるので、子ども同士での説明も困難な様子であった。(例 えば、つまづきが、正の数・負の数の計算なのか、方程式の移項な のか、等式の性質なのかなどさまざまであり、子どもたちは自分を 基準に考えるので、説明に困る。)また、説明される方も、わから なくても、みんなが納得していて、自分だけわからないと言い出し にくい場合もあり、理想的発話状況を作るのがとても難しい。した がって、教師も班の話し合いに加わり、生徒一人ひとりのつまづき を把握したうえで、話し合いがスムーズにいくように、[『子ども 一子ども』]→対象だけではなく、[大人一『子ども一子ども』]→

対象の関係性を作り出し、話し合い活動を行う必要がある。

H実践例f図形の性質の説明」

(1)授業に向けて

① 単元  図形の性質14(2年1クラス)

② 目標   「対頂角が等しい」ことを筋道を立てて説明できる

③ 授業の構想図

2本の鉛筆を交差させて、角度に注目させ、気 のついたことを発表する。

ペア学習

対頂角の性質に気づいたか   Yes

No

ペアで相談する 発表する

No なぜ対頂角は等しいかを

   説明する

Yes ペアの説明を聞く

対頂角が等しい理由を説明し文章化する

(2)授業の考察

 このクラスはペア学習が初めてだったため、いきなりペアを組ま せ行うと、支持した通りのペアにならないことがあった。また、全 員を立たせて、ペアでの相談が終わり次第、席につくように支持を すると、1分も立たないうちに、全員が席についてしまった。話し 合いの手順やなぜペア学習をする必要があるのかを理解させて行

うべきである。

 また、「対頂角は等しい」という性質は相談によって、導くこと はできたが、「対頂角はなぜ等しいのか」という発問に全員がシL一一一一 ンとしてしまい、何をどう考えていいのか、手がかりをつかむこと もできていないようすであった。図形の分野で、特に証明は苦手な 生徒が多く、証明にいくまでの説明、また、定義、性質、定理がし っかりと頭に入っていないと手がかりをつかむことすらできない。

 したがって、小学校や中学1年生で既習している内容をフィード バックしながら、中学2年生の図形分野に入っていく必要がある。

 この授業でも、「一直線の角は180度であるjという既習内容を 使い、説明を行うことと、三段論法の考え方を使うので、先にヒン トになるような例示を与えておいて、考えさせなければ、「対頂角 は等しい」という性質を導くことは困難である。

 また、文字に対する抵抗感のある生徒も多い。したがって具体的 な数字で測定を行い、等しくなることを確認してから、帰納的に一 般化する方法も考えられた。

 頭の中でぼんやりとしている考えをきちんと言葉に表し、また文 章化していくことは、筋道を立ててものごとを考えていく力になる。

数学の時間に数学的な考え方、論理的思考力をつけることは、すべ ての話し合い活動でみんなが納得する理由を述べることへとつな

皿実践例「関数の融合問題」

(1)授:業に向けて

①単元 関数とグラフ15(3年1〜9クラス)

② 目標  班で、相談しながら段階を踏んで問題を解く。

③ 授業の構想図

問題と話し合い活動の手順をもらい、相談しながら 竭閧 一問ずつ解く

Yes

班学習       No

@     班員全員が理解できたか

@       ↓

@      .7わかるまで説明する/

r先生を呼び、説明する 1

個別学習

@     自分の力で解けたか  一

@      No

^先生、友だちに質問/

Yes   ¶

7

人に説明しその人が理解できたときが真の理解

(2)授業の考察

 「問題が解ける」と一口に言ってもさまざまである。やり方をた だ教わり、その通り実行するだけで、簡単に答えが出る場合もある。

「なぜ、そうなるの?」と聞かれて、説明するが、理由が理由にな っておらず、納得してもらえないことが多々ある。そのうち、疲れ てきて、答えを教えてしまうケースもある。

 「わからない」というのもさまざまなケースがある。言葉の意味 がわからなかたり、既習内容がきちんと頭に入っていなくてわから なかったり、原理がわからなかったりとさまざまである。教師は「だ れが、どこで、つまついているか」を把握しなければならない。40 人を一人の教師で見ることは難しく、3年生はT・Tの授業展開し

ている。

      一78一

 ただ、今までの授業展開は一斉指導で、教師が前で説明し、生徒 はひたすらノートにそれを書き写すのみのものであった。

 そこで、できるだけ教師が二人をフルに生徒たちが活用できるよ うに、班での話し合い学習、個別質問学習を行っ』た。

 少なくとも、一斉指導のときには、話も聞かない、ノートもとら ない、問題を読むことさえしなかった生徒が、班で全員が理解した ら進むというシステムにしっかり、目をさまし、友に助けを求め、

理解しようと生き生きと活動していた。主体的に取り組む姿勢は養 われたと感じられた。

 しかし、一方、班の編成の仕方や、班の中での理想的発話状況が 作られているかは、教師側が答えの説明を求めるときに、しっかり

と把握する必要がある。班で一人だけわからない場合、なかなか「わ からない」とはいいにくい状況を作ってはいけない。

 今後、さらに、学習形態を工夫し、班編成の仕方も考慮して、生 徒のつまづきを少しでも減らしていける授業方法の改善を図って

いきたい。

【註]

1)J.ハーバーマス 前掲書,2000p.193 2)同上書 p.191

3)ユルゲン・ハーバーマス著 河上倫逸・M.フリーブリヒト・平井俊彦訳  『コミュニケーション的行為の理論【上]未当社,1985p.66

4)石川 前掲論文 p.74 5)同上 p,77

6)同上 p.78 7)同上 p.78

8)秋田前掲書p.117

9)足立幸男『議論の論理』木鐸社,1984 p.102

10)秋田喜代美 『授業研究と談話分析』 目下放送出版協会,2006p.117 11)同上pp.76−77

12)辻信一『ハチドリのひとしずく』光文桂,2005pp,3−15