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第3章 高架橋の耐震性能評価

3.3 検討結果と考察

3.3.2 解析結果

表3.4にC点(ひびわれ荷重点),Y点(降伏荷重点),M点(最大荷重点),N点(耐

力低下領域の降伏荷重点)の解析値と交番載荷試験における実験値の比較を示す.また, 図3.13に高架橋全体系の解析値と実験値の荷重一変位関係(包路線)を示す.

なお,解析における変位の基準点および降伏点の設定は,実高架橋の交番載荷試験の 条件と同一とした.

また,解析は片側モデルで実施しているため,図3.13における荷重は,解析値を2 倍することにより,高架橋全体の荷重に変換したものである.

解析値と実験値の比較においては,Y点,M点,N点の荷重は概ね等しい値である.

一方,水平変位に関しては,Y点,N点では,解析値が実験値よりも大きい傾向にあり, M点では解析値は実験値の約1.8倍となっている.しかしながら,解析値のM点付近

表3.4 解析値と実験値との荷重一変位関係の比較

解析値 荷 重P(kN) 361 1,280 1,635 1,280

水平変位 ∂(mm) 9.2 52.1 170.8 275.8 実験値

(正側)

荷 重P(kN) 1,2‑95 1,768 1,295

水平変位 ∂(m) 41.7 94.5 239.4

実験値 (負側)

荷 重P(kN) ‑1,203 ‑1,624 ‑1,203 水平変位 ∂(mm) ‑43.7 ‑96.7 ‑240.2 実験値

(正負平均)

荷 重P(kN) 1,249 1,696 1,249

水平変位 ∂(mm) 42.7 95.6 239.8

51‑

までの実験値の耐力低下はわずかであり,解析値のM点付近から実験値は顕著な耐力 低下を示しているという点では,解析は実験を良くシミュレートしているものと考えら れる.また,Y点からM点までの荷重は,解析値が実験値を下回っていること,N点

付近では逆に解析値の荷重が実験値をやや上回っていることの相違はあるものの,高架 橋を設計あるいは耐震性能を照査するという点では,モデル化の方法を含めて,本評価 手法の適用性が高いことが示された.

2000

1500

1000

500

0

‑500

‑1000

‑1500

‑2000

ー300 ‑200 ‑100 0 100 200 300

図3.13 解析値と実験値との荷重一変位関係の比較

(2)じん性率の比較

交番載荷試験における柱軸方向鉄筋の降伏点付近の計測ひずみ値を表3.5に示す.表 3.5の載荷ステップは,±1/100の1回目のサイクルの値である.柱の軸方向鉄筋の降 伏ひずみ2,000〝に到達する順序としては,正側,負側ともに柱下端が先行し,続いて 柱上端となっている.これは,フーチングが橋軸直角方向で一体型であり,杭基礎であ

ることから,梁の剛度よりも大きく,水平荷重による応力を負担したためと考えられる.

高架橋柱の軸方向鉄筋のひずみを計測した柱4本のうち,柱上端あるいは柱下端のい ずれかで,柱4本の軸方向鉄筋が降伏した場合の高架橋全体系としてのじん性率(〝J

を次式により算出した結果と,プッシュオーバー解析により算定した荷重一変位関係か ら次式で求めたじん性率(〟a)の比較を表3.6に示す.実験値における正負平均のじ ん性率は〟t=5.62であり,解析値におけるじん性率は〝a=5.29である.解析値のじん性 率は,実験値のじん性率に比べて約10%小さな値である.しかしながら,荷重一変位関 係と同様に,耐震性能を照査するうえでは,安全側の評価となることから,本手法によ

り,じん性率も推定可能と考えられる.

= ∂。/∂y

∂。:N点(耐力低下領域の降伏荷重点)の水平変位

∂y:Y点(降伏荷重点)の水平変位

(3.25)

表3.5 降伏点付近の計測ひずみ値

柱軸方向鉄筋のひずみ(山 lL柱下端

(東側)

2R柱下端 (東側)

3L柱下端 (東側)

4R柱下端 (東側)

l,023.6 32.5 1,881 1,843 1,944 l,646

l,071.0 34.0 1,978 l,921 l,721

l,178.0 37.6 乙封迫 と1之Z 2,233 l,896

⊥≧2皇8 剋J 2,964 2,426 2,554

載荷 荷重

水平 変位

柱軸方向鉄筋のひずみ(〟) 1L柱下端 2R柱下端 3L柱下端 4R柱下端 (kN) (mm) (西側) (西側) (西側) (西側)

柱軸方向鉄筋のひずみ(〝) 1L柱上端

(西側)

2R柱上端 (西側)

3L柱上端 (西側)

4R柱上端 (西側)

l,464.3 48.7 l,906 1,865 2,084 り70

1,492.9 50.5 l,993 l,923 2,136

l,528.0 5l.9 1,980 2,180 2,079

1,590.7 52.9 2,463 之ユ塑 2,105 2,j97

l,619.2 57.4 2,820

載荷 荷重 (kN)

水平 変位 (mm)

柱軸方向鉄筋のひずみ(〟) lL柱上端 2R柱上端 3L柱上端 4R柱上端

(東側) (東側) (東側) (東側)

‑1,202.7

‑l,292.6

‑1,39l.1

‑1,430.9

‑1,477.7

‑1,518.3

表3.6 じん性率の比較

解析値 荷 重P(kN)

5.29

水平変位 ∂(mm) 52.1 275.8 実験値

(正側)

荷 重P(kN) 1,295 1,295

5.74

5.62

水平変位 ∂(mm) 41.7 239.4 実験値

(負側)

荷 重P(kN) ‑1,203 ‑1,203

5.50

水平変位 ∂(mm) 43.7 ‑240.2

(3)高架橋全体系の姐傷順序

解析による各部材の損傷順序を図3.14に示す.

なお,表中の「○数字」は,損傷順序を示しており,表中の「空欄」は損傷がないこ とを意味する.また,表中の水平変位は,高架橋の載荷点における水平変位を示したも のであり,表中の「地盤(フーチング近傍)」の「塑性化(m)」とは,水平方向は有

効抵抗土圧力度,鉛直方向は単杭の最大周面支持力あるいは基準先端支持力に達したと きの変位である.

解析による高架橋の損傷順序では,まず,各柱に概ね同時にひび割れが生じた後杭 の一部にひび割れが生じる.その後,各柱の上端と下端が概ね同時に降伏し,地表面近 傍の地盤バネが降伏した後,各柱の上端と下端がほぼ同時にM点に到達する.さらに, 各柱の上端,下端がほぼ同時にN点に達する.各柱の上端,下端がはぼ同様な挙動を

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縦梁

Dl‑D2間 D2上部 D2‑D3間 D3上部 D3‑D4間

D4上部

Dl 上端

54 173 275

下端 ① ③ ⑨ ⑪ 13 53 172 272

D2 上端

10 52 169 277

下端 ① ③ ⑨ ⑪ 13 54 173 278

D3 上端 ① ③ ⑨ ⑪ 10 52 169 276

下端 ① ③ ⑨ ⑪ 13 54 173 276

D4 上端 ① ③ ⑨ ⑪ 9 53 170 276

下端 ① ③ ⑨ ⑪ 13 53 171 275

(頭部)

Dl45

D2153

D384

地盤 (フーチング近

傍)

Dl 鉛直

D2 水平94

鉛直

D3 水平94

鉛直

D4 水平110

Dl‑D2中間 D2‑D3中間 D3‑D4中間

図3.14解析による各部材の損傷順序

示すが,これは柱上端と柱下端の耐力比が,柱上端と柱下端に生じる断面力の比とほぼ 等しいためであると考えられる.N点までの過程においては,縦梁や杭基礎の部材は降 伏せず,地盤の降伏も地表面近傍に限定されているため,高架橋全体としては安定した 荷重一変位関係を示している.

実高架橋の交番載荷試験は,柱の部材性能に着目した実験であったため,梁や杭基礎 にはひずみゲージが設置されない.そのため,解析と実験の高架橋各部材の損傷順序を 対比することはできなかった.一方,損傷箇所については,N点到達後となる実験終了 後の目視観察では,柱の損傷は上下端部の1D区間(D:柱部材の断面高さ)に集中し ていたこと,杭頭部のコンクリートに曲げひび割れが発生していたこと,縦梁およびフ ーチングにはひび割れが生じていなかったことから,解析と実験の損傷箇所は同一ある

ことを確認した.

よって,解析と実験の損傷順序は対比できないが,損傷箇所については,解析結果と 実験結果は同一であり,本評価手法は推定精度が高いことが確認できた.

3.3.3解析値と実妹値との荷重一変位関係の違いに関する検討

3.3.2の(1)荷重一変位関係に示したように,材料試験に基づく物性値を用いて,「鉄 道耐震標準」の解析モデルに基づくプッシュオーバー解析は,実高架橋の交番載荷試験

における荷重一変位関係を良くシミュレートできている.しかしながら,実験値の荷重 がY点〜M点で大きいことや,解析値の変位が大きいことなどの差違も見られる.こ

こでは,これらの差違の要因を特定するため,考えられる幾つかの要因について条件を 変化させた解析を行い,荷重一変位関係に及ぼす影響について検討した.

検討ケースは,前述の解析(Analysis‑A)とは別に,基礎条件を固定とした場合 (Analysis‑B),柱上端のコンクリートの圧縮強度を柱下端と同強度とした場合 (Analysis‑C),軸方向鉄筋の抜出しを無視した場合(Analysis‑D)の3種類を行った・

各検討ケースの荷重一変位曲線と交番載荷試験の包絡線(Test)との比較を図3.15 に示す.各ケースともC点〜M点までの包絡経路については大きな違いはなく,実験 値のM点での水平変位をシミュレートすることはできなかった.

Analysis‑BとAnalysis‑Dは,Analysis‑Aと概ね一致していることから,本高架橋にお いては,基礎条件を固定とした場合や軸方向鉄筋の抜出しを無視した場合は,荷重一変 位曲線に与える影響は小さいものと考えられる.また,Analysis‑Cから,柱上端のコン

クリート強度を大きくし,柱下端のコンクリート強度と同一にした場合には,構造物系 として,変形性能が増大する結果となった.これは,解析対象の高架橋の柱のコンクリ ート強度は,柱下端部が43.7N/m2,柱上端部が24.4N/m2と大きな違いがあったが, 柱上端部のコンクリート強度を柱下端部と同じ値とした場合,式3.14および式3.15に おけるMmが大きくなり,これに伴いN点変位が増大したものと考えられる.

なお,Y点〜M点の荷重および変位における解析値と実験値との違いについて,今後 も検討する必要がある.

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