第6章 損傷レベル4まで被災した無補強RC柱の補修方法の検討
6.4 実験結果と考察
6.4.1 損傷度の違いによる復元効果
本検討で比較する試験体は,試験体Cl,試験体C2および試験体C3の3体である.これ らの試験体は,同一の試験体であり,交番載荷により,それぞれ異なる損傷度を与え, 同一の材料で補修し,再度,同一の交番載荷を実施し,それぞれの復元効果を比較した.
(1)第1回目の載荷試掛こおける荷重の低下程度と損傷状況
試験体Clの降伏変位(16y)は正側が13・2mm,負側が‑13・0mmであり,降伏荷重(Py) は正側が79.9即,負側が‑79.1釧であった.+3∂yで最大荷重95・9脚に到達し,‑7∂yの載 荷時において,かぶりコンクリートの剥落と同時に降伏荷重を下回ったため,ここで載 荷を終了した.
試験体C2の降伏変位は正側で14.0mm,負側が‑12.8mmであり,降伏荷重は正側が 80.8kN,負側が‑81.5釧であった.なお,+2∂y以降の変位制御は,その他の試験体との 比較のため,16yを13mmとした・最大荷重は‑26yで98・3kNに到達し,‑76yで降伏荷重
を低下した.+8∂yにおいて,載荷荷重が降伏荷重の70%を下回ったため,このステッ プで載荷を終了した.
試験体C3の降伏変位は正側で13.2Ⅲ皿,負側が‑13.0Ⅱ皿であり,降伏荷重は正側が 80.1脚,負側が‑81.6釧であった.‑2∂yで最大荷重96・7畑に到達し,‑6∂yにおいて降伏 荷重を下回った.その後,‑7∂y載荷後の軸力増載荷時において,軸力保持不能となっ たため,載荷を終了した.
各試験体の経験最大水平変位と最大低下荷重の関係を表6.10に示す.各試験体の損 傷度の目標値は,試験体Clが履歴ループの最大荷重がポストピーク領域における降伏 荷重に至るまで,試験体C2が履歴ループの最大荷重がポストピーク嶺域における降伏 荷重の70%に至るまで,試験体C3が履歴ループの最大荷重がポストピーク領域における
降伏荷重の50%を下回る時点であったが,試験体C2については,+8∂の載荷途中で急激 に水平変位が進行したため,結果的に,降伏荷重の46%を低下した損傷となった.また, 試験体C3についても,載荷中に軸力が保持できなくなり,降伏荷重の37%を低下した損 傷となった.
表6.10 経験最大水平変位と最大低下荷重
‑113‑
写郎・2試験傭Cl(‑76y)写真6・3試験体C2(+86y)写某6・4試躾体C3(‑76y)
写真6・5試験体Cl(‑78y)写恥6試験体C2(+88y)写真6・7試験体C3(‑76y)
載荷終了後の各試験体の損傷状況を写暮6.2〜6.7に示す.かぶりコンクリートの浮き および剥落の範囲は概ね同一であるが,損傷度が大きいはど,軸方向鉄筋の座屈程度が 大きかった.
(2)試験体の補修実績
試験体の補修に用いる材料および鉄筋の整正方法は,3試験体共通であり,座屈した 軸方向鉄筋はそのまま再利用し,帯鉄筋は破断したものはフレア溶接による整正,フッ クが外れたものは曲げ加工を行った.帯鉄筋の整正本数の実績を表6.11に示す.
ひび割れ箇所については,柱基部から1・5D(D:柱幅)の範囲を対象に,エポキシ樹 脂を注入し・コンクリートの剥離,剥落箇所は,素手で除去可能なものは取り除き,エ
ポキシ樹脂モルタルにより鉄筋のかぶり30mmを確保するように,変形した鉄筋に沿わ せて断面修復を行った・このため,元の柱断面よりも大きくなった箇所が生じた.断面
修復による元の柱断面からの増加量を表6.12に示す.また,補修完了後の試験体の状況 を写文6.8〜6.13に示す.
表6.11帯鉄前の整正本数の実績 補修後の
試験体No
帯鉄筋の整正方法(本数)
曲げ加工 …フレア溶接 鉄筋取替
CIR
口 口
i oC2R 5 0
;
0C3R 2 2
…
0衷6.12断面修復よる元の柱断面からの増加王 柱基部から
の高さ(m皿)
試験体CIR 試験体C2R 試験体C3R A面 B面;c面:D面 A面…B面…c面;D面 A面;B面;c面:D面
400
口 口
300 7 3 16 6 3 2 17
田
2 13 4200 17 10 32 12 6 5 20 10 4 18 17 】0
100 24 26 25 16 31 12 34 19 35 18 30 18
0 25 3(i 2(; 37 37 3l 43 52 30 36 50 47
‑100 6 24 25
‑200 9 6
「柱基部からの高さ」のマイナスは,接合部内の方向を示す.
写真6.8 書式巌体CIR 写真6.9 盲式験体C2R 写真6.10試験体C3R
ー115
写真6.11試験体CIR 写井6.12試験体C2R 写よ6.13試腕件C3R (3)娘博虔の遠いによる復元率の評価
RC柱の損傷度の違いによる保有性能の復元効果は,それぞれの試験体について,元 の試験体の性能と補修後の性能との比放から評価する.
a)補修後の試験体の嫡傷過程と損縞状況
試験体CIRの変位+13・Omm時の荷重は58・9蜘であり・最大荷重は+3∂yで96・6加であっ た・づ∂yで元の試験体Clの降伏荷重を下回り,+8∂,で補修前の試験体の降伏荷重の約
1ノ2の40・9kNとなり,‑8∂,載荷時で軸力保持不能となった.
試験体C2Rの変位+13・0Ⅱ皿時の荷重は61・蝕Nであり,最大荷重は十3∂,で98.5kNであっ た・+5∂yで元の試験体C2の降伏荷重を下回り,‑6∂yで耐荷重53・1蜘,+7∂y載荷時に おいて軸力保持不能となった.
写郎・14CIR(‑88,) 写真6・15C2R(178,) 写郎.16C3R(‑68,)
写真6.17CIR(一86,) 写真6‑18C2R(+76,) 写菖6.19C3Rト68,) 試験体C3Rの変位十13・7mm時の荷重は64・OkNであり,最大荷重はづ∂,でIlO・4山ヾであ った・‑5∂yで元の試験体C3の降伏荷重を下回り,‑6∂,で帯鉄筋の破断とともに,軸力 保持不能となった.
各試験体の第1回目の交番載荷試験と補修後の第2回目の交番載荷試験における荷重 一変位履歴曲緑の比較を回6.3〜6.5,荷重一変位履歴曲線から求めた包括線を囲6.6〜
6.8,第2回目の補修試験体の載荷終了後の損傷状況を写其6.14〜6.1gにそれぞれ示す.
一
■‑▲d、セミ
ーほ0 一名0 ‑4t) 0 40 80 120
図6.3 Cl/CIRの荷重一変位履歴曲線
二∵=せこ
‑12U ‑80 ‑40 0
変化(mm)
国6.4 C2/C2Rの荷重一変位履歴曲線
ー4
(Z老舗璧
トーCl‑サCl射
障伏布t
\も.
:\m
隋伏荷t‑120 一己0 ‑40 (1 4D 甘0 1:〉0
周6.6 Cl/CIRの包結線
官選環璧
ー117‑
l‑C2‑‑C2Rl
陣妖術量
l
Y
l
l
∴
腑Il
0
変位(mm)
圃6.7 C2/C2Rの包結線
0
0
0
0
0 4
4
qP
2
(Zさ嘲檻
■
‑120 ‑80 ‑40 0
変位(mm)
40 80 120
国6.5
C3/C3Rの荷重一変位履歴曲線
(Zさ瞞轄
b
!トC3◆C3Rl
1棒状荷土
n川 u円
\、
b n
【(\
降伏荷重ー120 ‑80 ‑40 0
変位(mm)
40 80 120
図6.8
C3/C3Rの包絡線
b)固有振動数の復元率第1回目の交番載荷試験後の損傷状態における試験体Cl,試験体C2,試験体C3の 固有振動数と,補修後の試験体CIR,試験体C2R,試験体C3Rの固有振動数の比較を 表6.13に示す.
損傷状態別の固有振動数の比較では,固有振動数は16.6〜17.2Hzであり,損傷レベ ル4の領域では,損傷度の違いによる固有振動数には差はみられない.補修後の試験体 においても,26.4〜27.8Hzであり,損傷度の違いによる固有振動数の復元率には大きな 違いは見られず,損傷度が一番大きい試験体C3の復元率が一番大きい値となった,こ れは,断面修復による柱部材の寸法がその他の試験体よりも大きかったことが要因と考 えられる.つぎに,交番載荷試験を実施する前の健全時の試験体Cl,試験体C2,試験 体C3の固有振動数と,第1回目の交番載荷試験終了後に補修した試験体CIR,試験体 C2R,試験体C3Rの固有振動数の比較を表6.14に示す.
表6.13 損傷時と補修後との固有振動数の比較
固有 振動数
(Hz)
17.0 26.5 17.2 26.4 16.6 27.8
復元率 156% 153% 167%
表6.14健全時と補修後との固有振動数の比較 試験体No
測定時期
Cl ≡ CIR
初期値
C2 :C2R
̲̲̲̲̲̲̲l̲̲̲̲̲̲̲̲
初期値
C3 :C3R
.̲̲̲■̲̲J̲̲̲̲̲̲●̲.
初期値 固有
振動数 (Hz)
36.4 26.5 35.4 26.4 36.3 27.8
復元率 73% 75% 77%
健全時の試験体の固有振動数に対する補修後の試験体の固有振動数の復元率は,73
〜77%であった.
C)初期剛性の復元率
初期剛性の復元率を表6.15に示す.補修試験体CRの柱の軸方向鉄筋は既降伏である ため,補修試験体CRの降伏変位は,損傷前の試験体Cの降伏変位を基準とした.本章で 示す初期剛性とは,降伏点における割線剛性である.
試験体CIR,試験体C2R,試験体C3Rの初期剛性の復元率は,それぞれ78%,82%,
84%であり,初期剛性の復元率についても,損傷度が大きい試験体を補修したものはど, 復元率がよい結果となっている.
表6.15 初期剛性の復元率
Cl 6.09
78
負側 ‑79.1 ‑12.9 6.14
CIR 正側 58.9 13.0 4.53
4.77
負側 ‑65.5 ‑13.1 5.02
C2 正側 80.8 14.0 5.77
6.08
82
負側 ‑81.5 ‑12.8 6.39
C2R 正側 61.9 13.1 4.74
4.99
負側 ‑68.4 ‑13.1 5.23
C3 正側 80.1 13.2 6.05
6.17
84
負側 ‑81.6 ‑13.0 6.28
C3R 正側 64.0 13.7 4.68
5.18
d)最大荷重時の荷重復元率
第1回目の交番載荷試験に対する補修後の第2回目の交番載荷試験の最大荷重時の荷 重復元率を表6.16に示す.なお,本章で示す復元率とは,元の試験体の性能に対する補 修後の試験体の性能として比較する.
最大荷重時の荷重復元率は,試験体CIRと試験体C2Rの正負平均値は101%,試験体 C3Rは110%であり,損傷度が一番大きい試験体C3Rの復元率が元の性能を上回る優れた 値となっている.損傷度が小さい試験体を補修したものに比べ,損傷度が大きな試験体 を補修したものの方が,荷重復元率が優れているのは,後者は前者よりも断面修復を行 った範囲が広く,試験体のコンクリート強度よりも大きな断面修復材料を用いたことに
‑119‑
より,変形の拘束および軸方向鉄筋の座屈を遅延させたためと考えられる.
表6.16最大荷重時の荷重復元率
101 102 101
CIR +3∂y 36.0 96.6 ‑3∂y ‑34.2 ‑96.5
C2 +2∂y 25.4 94.3
104 ‑2∂y ‑25.1 ‑98.3 98 101
C2R +3∂y 38.1 98.5 づ∂y
‑35.1 ‑96.2 C3 +2∂y 25.2 95.0
105 ‑2∂y ‑24.0 ‑96.7
114 110
e)じん性率の復元率
ポストピーク嶺域の降伏荷重に至った変位(以下,N点変位)に対するじん性率〟.
の復元率を表6.17に示す.本章で示すじん性率〟‑とは,各試験体の荷重一変位履歴曲 線から求めた包路線におけるN点変位を降伏変位で除した値である.また,補修試験体 は既に軸方向鉄筋が降伏しているため,補修試験体の降伏変位は,損傷前の試験体の降
表6.17N点変位に対するじん性率ulの復元率
Cl 6.3
88
負側 ‑12.9 ‑78.1 6.1
CIR
正側 87.9 6.7
5.3
負側 ‑52.8 4.1
C2 正側 14.0 91.5 6.5.
6.5
負側 ‑12.8 ‑83.2 6.5 85
C2R 正側 81.5 5.8
5.6
負側 ‑68.1 5.3
C3 正側 13.2 82.5 6.3
6.1
負側 ‑13.0 ‑76.1 5.9 84
C3R 正側 69.3 5.3
5.1
伏変位とした.
試験体CIR,試験体C2R,試験体C3Rの復元率は,それぞれ88%,85%,84%であり,
じん性率は損傷度が大きな試験体を補修したものはど,復元率が小さくなる傾向にある.
この理由としては,今回の補修では帯鉄筋は整正のみに留めているため,損傷度が大き いほど,帯鉄筋による軸方向鉄筋の拘束効果が低下しているためと考えられる.よって, じん性率の復元には,帯鉄筋の交換,あるいは,せん断補強としての外面被覆材などの 補強が必要と考えられる.
f)エネルギー吸収能力
各試験体の水平変位に対する累積吸収エネルギー(』W)の比較を図6.9に示す.こ こで示す累積吸収エネルギーとは,接合部と柱部材でのエネルギー吸収量である.また, 載荷ステップごとの履歴ループから求めた等価粘性減衰定数を図6.10に示す.
補修試験体CRは,元の試験体Cに対して,各試験体ともに,等価粘性減衰定数は18%
程度の低下である.
0
0
0
0
0
0 7
′‑U
5
4
3
2
(∈・Nさ声『
0
O 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
変位(mm)
図6.9 累積吸収エネルギーの比較
0.50 0.45 0.40 0.35 0.30 0.25 0.20 0.15 0.10 0.05 0.00
O 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
変位(mm)
図6.10 等価粘性減衰定数の比較
‑121‑