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補修材料の違いによる復元効果

第6章 損傷レベル4まで被災した無補強RC柱の補修方法の検討

6.4 実験結果と考察

6.4.2 補修材料の違いによる復元効果

本検討で比較する試験体は,試験体C3,試験体C4および試験体C5の3体である.これ らの試験体は,同一の試験体であり,交番載荷により,それぞれ同一の損傷度を与え, 異なる材料で補修し,再度,同一の交番載荷を実施し,それぞれの復元効果を比較した.

(1)試躾体の損傷状況の評価

本研究の目的は,各種の補修材料の効果を比較検討することである.このため,比較 する試験体の損傷程度が同一であることが必須条件である.そこで,比較対象の試験体 3体について,第1回目の交番載荷試験における保有性能と損傷状況に着目して,その相 違に関する考察を以下に述べる.

a)荷重一変位関係の比較

試験体C3,試験体C4および試験体C5の降伏荷重時および最大荷重時と変位との関係 を表6.18に,荷重一変位履歴曲線を図6.11にそれぞれ示す.

表6.18 降伏荷重および最大荷重と変位との関係

\響 ステッカ変

ステッ司変

降伏 荷重 時

Cl

+1∂y ‑1∂y

C2 13.7Ⅲ1m 81.8kN

‑13.6ⅢⅡn ‑79.OkN

C3 14.2mm 79.9kN ‑13.Omm ‑79.9kN

最大 Cl +2∂y 25.2mIn 95.OkN ‑2∂y ‑24.0Ⅱlm ‑96.7kN 荷重

C2 +3∂y 34.1mIn 96.5kN ‑2∂y ‑25.3mIn ‑95.1kN

100

75

50

25

,』

0

程̲25

‑50

‑75

‑100

‑100 ‑75 ‑50 ‑25 0 25 50 75 】00

変位(mm)

図6.11試験体Cl,C2,C3の荷重一変位履歴曲線

降伏時における変位および荷重は,3試験体ともに,正側も負側も概ね同等である.

最大荷重時の比較では,試験体Clの正側の最大荷重のピーク時の変位に多少違いが見 られるが,荷重の大きさは同等である.

荷重一変位履歴曲線の比較では,3試験体ともに±6∂,の履歴までは,概ね同一の履 歴経路を辿っている.しかしながら,+7∂,載荷時のピーク変位から荷重の低下度合い に違いが生じている.これは,本試験体の柱部材の帯鉄筋の定着方法がフック定着であ るため,かぶりコンクリートの剥落進展状況の違いにより,軸方向鉄筋の座屈抵抗力に 違いが生じたためと考えられる.

b)掛情状況の比較

載荷終了後の損傷状況を写真6.20〜6.25に示す.なお,各試験体の載荷終了ステッ プは,試験体C3は‑7∂y,試験体C4は+8∂,途中,試験体C5は‑7∂y途中である.各試験 体の経験最大水平変位と最大低下荷重を表6.19に示す.

試験体C4はその他の試験体と異なり,一7∂,の載荷ステップにおいても軸力を保持で きたため,十8∂yの載荷を実施した・しかし,載荷の途中で,荷重が増加せず,変位の みが増大したため,+8∂,の載荷途中で終了した.終局時の損傷状況の比較では,かぶ

りコンクリートの剥落範囲は柱基部から1D区間の柱部であり,大きな差異は見られな かった.柱の軸方向鉄筋の損傷状況の比較では,他の試験体に比べて,試験体C3の軸 方向鉄筋の座屈が顕著であった.これは,試験体C3はその他の試験体よりも,負側の 経験最大水平変位が大きいことが原因であると考えられる.

なお,加力範囲の目標は降伏荷重の50%を下回るまでであり,本試験体での目標荷重 値は約40kNである.しかしながら,試験体C3および試験体C5の最大低下荷重がそれぞ れ30.4kN(37%低下)と32.1kN(40%低下)と小さいのは,載荷中に試験体が軸力を保 持できなくなったためである.

写真6.20C3(‑78,) 写真6.21C4(+88y) 写真6.22C5(‑76,)

‑1㌘トー

写耶・23C3(‑76y) 写郎・24C4(+86y) 写真息25C5(‑78y)

表6.19経験最大水平変位と最大低下荷重

C)保有性能の比較

保有性能の比較は,累積吸収エネルギー(』W)により,各試験体の性能の相違を検 証するものとする・図8・12に・試験体C3,試験体C4および試験体C5の水平変位に対す

る累積吸収エネルギーの比較のグラフを示す・3試験体ともに,各変位に釦ナる累積吸 収エネルギー量は同等であり,これらの試験体の保有性能は同等であると評価できる.

(∈・Zさき『

4() 60

変位(mm)

図6.12累積吸収エネルギーの比較

d)固有振動掛こよる剛性低下程度の推定

関ら10)により,RC柱部材の被災前後および復旧前後の固有振動数を測定すれば・曲 げ剛性の復元率が確認できることが報告されている.ここでは,試験体の初期状態,交

番載荷試験による損傷程度および補修後の剛性回復を推定するため,①第1回目の交番 載荷試験実施前,②第1回目の交番載荷試験終了後(終局時の状態),③補修後の第2回

目の交番載荷試験開始前に,衝撃振動試験(血pactⅡ)10)により,各試験体の柱部材の2 次モードの固有振動数を測定した.試験開始前と試験終了後に測定した各試験体の固有 振動数を表6.20に示す.

試験開始前の固有振動数は34.5Hz〜36.3Hz,第1回目の交番載荷試験終了後の固有振 動数は15.0Ⅲz〜16.6Hzであり,いずれも同等な値を示している・ポストピーク嶺域まで 損傷したRC部材の剛性低下程度を,固有振動数の低下率により定量的に評価すること は,かぶりコンクリートの剥落状態やコアコンクリートの圧壊状態の違いにより困難で はあるが,試験開始前と試験終了後との固有振動数の低下率は,3試験体ともに同等の 値を示していることから,試験体の剛性低下程度も概ね同等であると推察することがで きる.

表6.20試続開始前および試験終了後の固有振動数

(2)試臓体の補修実績

試験体の鉄筋の整正方法は3試験体共通で,座屈した軸方向鉄筋はそのまま再利用し, 帯鉄筋は破断したものはフレア溶接による整正,フックが外れたものは曲げ加工を行っ

た.帯鉄筋の整正本数は表6.21のとおりである.

ひび割れ箇所については,柱基部から1.5D(D:柱幅)の範囲を対象に,試験体C3R および試験体C5Rにはエポキシ樹脂を,試験体C4Rにはセメント系超微粒子注入材を注 入した.コンクリートの剥離,剥落箇所は,素手で除去可能なものは取り除き,表6.5

に示す材料により,鉄筋のかぶり30Ⅱ皿を確保するように,変形した軸方向鉄筋に沿わ せて,断面修復を行った.このため,元の柱断面よりも大きくなった箇所ができた・断

面修復による元の柱断面からの増加量を表6.22に示す.また,補修完了後の試験体の状 況を写真6.26〜6.31に示す.なお,写真6.28の試験体C5Rの補修状況は,ポリエステ ル製繊維シートを施工する前の状態のものである.

‑125‑

表6.21帯鉄筋の豊正本数の実損 補修後の

試験体No

帯鉄筋の整正方法(本数)

曲げ加工

…フレア溶接;鉄筋取替

C3R 2 2

C4R 2 3

C5R 2 2 0

表6.22断面修偏による元の柱断面からの増加量 柱基部から

の高さ(mm)

試験体C3R 試験体C4R 試験体C5R A面 B面 C面 D面 A面

童B面

C面 D面 A面 B面

≒c面

D面 400

300 2 13 4 5 9 4 5 4

200 4

17 10 29 7 19 15 23

25

7

100 35 18 30 18 38

22

…21

34 13

室32

19

0 30

50 47 41 23 25 28 30 18 30 23

‑100 25 10 17

‑200 6

3

「柱基部からの高さ」のマイナスは,接合部内の方向を示す.

写真6.26試腕体C3R 写真6.27盲式獣体C4R 写文6.28試献体C5R

写真6.29試験体C3R 写ま6.30試験償C4R 写真6.31試験体C5R (3)捕俸材料の違いによる復元率の評価

異なる材料で補修した場合のRC柱の保有性能の復元効果は,それぞれの試験体につ いて,6.4.1の(3)と同様に,元の試験体の性能と補修後の性能との比較から評価する・

a)捕修後の試献体の損傷過程と損悔状況

試験体C3Rの変位十13.7mm時の荷重は64.OkNであり,最大荷重は‑36,でI10・4kNであ った.元の試験体C3の降伏荷重を下回った載荷ステップは,正側が+6∂y,負側がづ∂, であった.‑6∂yで帯鉄筋の破断とともに,軸力保持不能となった・

試験体C4Rの変位+13.Omm時の荷重は46,4kNであった.最大荷重は‑26,で72・8kNであ り,試験体C4Rの最大荷重は,正イ軋負側ともに,元の試験体C4の降伏荷重を越えなか った.+5∂,での載荷では,載荷荷重が上がらず水平変位が進行し・‑5∂,の載荷中で軸 力保持不能となった.

試験体C5Rの変位+13.Omm時の荷重は弧4kNであり,最大荷重は‑3∂,で91・2kNであっ た.元の試験体C5の降伏荷重を下回った載荷ステップは,正側が十5∂,,負側が‑6∂y であった.降伏荷重の50%を下回った載荷ステップは,正側は十8∂,であったが,負側 は‑9∂yでも降伏荷重の50%以上を保持していたt‑9∂y終了後の増載荷軸力時で・目標 荷重の422kNまで上がらなかったため,ここで載荷を終了した.試験体C5Rは,試験体 C3Rや試験体C4Rと異なり,載荷ステップを増しても,急激な荷重低下は最後まで見ら れなかった.

各試験体の第1回目の交番載荷試験と補修後の第2回目の交番載荷試験における荷重 一変位履歴曲線の比較を園6.13〜8.15,各補修試験体CRの荷重一変位履歴曲線から求 めた包終線の比較を固6.16,第2回目の補修試験体の載荷終了後の損傷状況を写真6.32

〜6.37にそれぞれ示す.

ー127一

0

変位(mml

120

80

48

」い

‑80

一】ヱ0

50 】抑 150

‑1!ロ ー】即 ‑50 0

変位h血

岡6・13C3/C3Rの荷重一変位履歴曲線 臣帽.14C4/C4Rの荷重一変位属歴欄線

園6.15C5/C5Rの荷重一変位履歴曲線

.【

一三一‑后】ヽ

‑CコR・‑‑C4Rl‑‑C5R / C3R

r ‑、

c4Rl

l

C5R

0

変位(mm〉

同6.16C3R/C4R/C5Rの包路線

写真6・32試験体C3R 写真6β3試願体C4R 写真6.34試験体C5R

写文6.35試臓傭C3R 写真6.36試臆体C4R 写真6.37 試験体C5R

b)固有振動数の復元率

第1回目の交番載荷試験後の損傷状態における試験体C3,試験体C4,試験体C5の 固有振動数と,補修後の試験体C3R,試験体C4R,試験体C5Rの固有振動数の比較を 表6.23に示す.試験体の損傷状態に対する補修方法による固有振動数の復元率は,RM 補修の試験体C3Rが167%,PCM補修の試験体C4Rが152%,HM補修の試験体C5R

が206%であり,HM補修が一番優れている.HM補修の復元率が優れた要因としては, M補修とPCM補修との復元率に差がないことから,断面修復材料の違いによるもの ではなく,外周被覆材による効果と考えられる.

表6.23 損傷持と補修後との固有振動数の比較 試験体No

測定時期

C3 : C3R

‑7∂,郵初期値

C4 :C4R

+8∂y郵初期値

C5 :C5R

‑7∂,後≡初期値

固有 振動数

(Hz)

16.6 27.8 16.0 24.3 15.0 30.9

復元率 167% 152% 206%

つぎに,交番載荷試験を実施する前の健全時の試験体C3,試験体C4,試験体C5の 固有振動数と,第1回目の交番載荷言式験終了後に補修した試験体C3R,試験体C4R, 試験体C5Rの固有振動数の比較を表6.24に示す.

RM補修の試験体C3Rの固有振動数の復元率は77%,PCM補修の試験体C4Rは70%, 日M補修の試験体C5Rは86%であり,3試験体ともに,補修試験体CRの固有振動数は, 元の試験体Cの固有振動数まで復元できていない.

ー129‑