3.3.1 Merrill Lynch
Merrill Lynch(メリルリンチ)証券の戦略は、対象とする顧客を広く一般に求めるので はなく、裕福な層にターゲットを絞っている点である。ただし、その裕福な層には,木目 細かいサービスを提供しており、これら顧客のとの長い期間の繋がりを優先している。
既にオンライン取引きでの手数料ベースでブローカー(仲買人)となっている人達との 潜在的衝突を避けたり、または、遅らせたりするために、メリルリンチ証券は、取引手数 料を一件あたりで徴収しない特別な口座を維持している5万5千人の顧客に対してのサー ビスに限定している。
これらの口座は、開設に必要な最低資産が10万ドル(約1200万円)であり、米国 内最大手のメリルリンチ証券の500万口座の約1%にあたる。
従来の投資会社のほとんどで、インターネット経由での自身の口座照会を行う事が許さ れていたが、全ての会社がオンライン取引への移行に対しては抵抗をしていた。とりわけ、
メリルリンチ証券は、新しいサービスの発表を行っていなかった。
フォレスターリサーチ(米国マサチューセッツ州)の業界アナリストであるビル・ドイ ルによると、「従来の投資会社は、ブローカーの激しい反発に不安を抱いている。オンラ イン取引は、顧客とブローカーの関係を弱めてしまう。」との事である。
「同時にそれは完全に避けては通れない話しである。また今後の予想として、オンライ ン取引口座数が、現在の530万から、99年中に840万に増加する見込みであり、同 じようにオンライン口座の資産合計も、2300億ドル(約28兆円)から4000億ド ル(約48兆円)近くまで増える見込みである。」
オンライン取引での手数料は、大手の総合サービスを行っている会社(メリルリンチ証 券、ソロモン・スミス・バーニー、モルガン・スタンレー・ディーン・ウィッター、プル デンシャル・セキュリティ、ペインウェバーなど)での、他の取引料金の額に比べて微々 たるものである。これらの会社では、取引あたり100ドル、200ドル以上を要求され るのが常である。
これに比較して、オンライン・ブローカーとして最大手のチャールズ・シュワッブは、
図3−5 米国のオンライン取引の推移 0
200 400 600 800 1000 1200
1998 1999
0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 4500 口座数
資産額(億ドル)
インタネット取引に30ドルの手数料を要求している。この業界のパイオニアである E*Trade では取引あたり15ドル、アメリトレードなどのような新興会社では、8ドルとい う安さである。
従来の会社は、顧客は個々に対するサービスの充実を求めており、取引に対する手数料 にはあまり関心を示していないと考えている。
金融業界のコンサルタントは、その顧客との長期にわたる取引での密接な関係に努めて いる。顧客に対するトータルの資産運用を全体的に考えている、とメリルリンチ証券のス ポークスマンであるボビー・コリンズは話す。
ただし、前述のドイルによれば、このメリルリンチ証券の動きは、その他の総合サービ ス会社をより、オンライン取引への道に導く力が働く。
従来の投資会社は、オンラインブローカの集団に集まっている資産を、単なるお金の遊 びと捨て去るが、実際のお金の動きはオンライン取引の方に動いており、これらの会社が 無視できないだけの何かがある。
3.3.2 Fidelity
Fidelity Investiments(フィデリティ証券)は、最近オンライン取引に積極的に取組ん でいる。サイバー空間は現実の世界と異なりつかみ所が無いイメージがあるが、しかしそ の中で急激に伸びているオンラインでの株取引市場への参入機会を探るため、フィデリテ ィ証券「その日の取引」のお店と呼ばれる、インターネットだけを使ったブローカー(仲 買人)達が取組んでいる特別なサービスの提供に力を注ぎはじめている。
株式売買のためにWebに集まる投資家に対し、フィデリティ証券からはまだ公表され ていないようであるが、オンライン投資ブームを刷新し、新たな競争の波をおこそうとし ているようである。
フィデリティ証券が視野に入れている新しいサービスは、まだ曖昧ではあるが、①リア ルタイムでの口座残高更新、②リアルタイムで使い放題の相場情報、さらに③NASDA Q(米国店頭株式市場)レベル2として知られており、その時点での実勢価格だけでなく、
売買人達の気配値を示し、市場の売り買いを助長するサービスなどである。
フィデリティ証券は、国内で2番目に大きな「株のディスカウントブローカー」として よりも、一番大きな投資信託会社として有名である。オンライン投資会社としては、それ ほど突出していない。
しかし、個人を対象とする世界の証券会社の4つに一つが、オンライン上に作られ、ま た物理的店舗を構えた従来のブローカーとの取引きよりも、オンラインでの取引きが頻繁 に行われており、フィデリティ証券はそれらのツールをオンライン投資家との競争の鍵と 見ている。
そのような投資家用ツールは、フィデリティ証券やチャールズ・シュワッブ社(Charles Schwab & Co.)等の総合サービスの投資信託会社のオンライン投資部門にあるのではなく、
E*Trade 社や Datek 社など星の数ある「その日の取引きを相手にする会社」により似たオン ラインだけに特化した投資会社に見かけられる。
そのような最近の流行に乗ったWebブローカーは、もちろん最先端のツールを用いて いたり、価格の割引などを行っていたりしている。最近彼らは、停電やソフト不具合など
の原因で株価に遅れを出し、その結果として、取引で顧客に何万ドルもの余分の費用を使 わてしまうという不始末を犯してしまった。
この騒動は、オンライン投資の世界に傷をつけた。しかし、これにより、新しい世代の お店がいかにサイバー投資を支配し、フィデリティ証券などの従来型の会社ではまだ使わ れていないツールやサービスを用いているかを強調した。
フィデリティ証券は、一方では現在の取引き手法も用いながら、他方でオンライン取引 きでのハイエンドを目指しており、明らかに大きなビジネスを築こうとしている。
オンライン・ブローカーの口座数は、全部で180万あり、業界ランキングは、オンラ イン取引全体の29%のシェアを持つチャールズ・シュワッブ社が業界のリーダとして君 臨し、以下、ウォーターハウス・セキュリティ社(Waterhouse Securities)、E*Trade 社、
Datek 社(いずれもWebベースの会社)が続き、フィデリティ証券は5番目(9.4%の シェア)である。
フィデリティ証券は、競合他社が注目している新しいサービスの提供時期をはっきりさ せていない。しかし、フィデリティ証券に近い筋によると間もなくそのサービスが提供さ れるようである。
フィデリティ証券の取引仲介サービスを担当している上級副社長マシュー・サドラー氏 によると、オンライン取引業界は、彼らの提供するサービスを価格面から別の方向に強化 している。オンライン投資家全員が、全体の価格への融通が利くわけではない。サービス や信頼性、ツールや情報の適格性など彼らにとってもっと他に重要な要素があるはずであ る。
フィデリティ証券の新しいサービスは、3万6000の最も積極的なオンラインユーザ を対象としている。彼らは、フィデリティ証券のオンラインユーザの2%にあたり、年に 少なくとも36回は取引きを行っている。
しかし、フィデリティ証券は、現在支店で人を介して取引を行っている一般の顧客を、
オンラインで行わせる事により、経費を削減したいと考えている。
ちなみに、Fidelity とは日本語で「忠実、誠実」という意味を持つ。