第 4 章 日本に襲来する台風に対する温暖化影響評価
4.2 計算対象の台風について
本節では,台風強度の将来変化に対する統計的評価を行うために対象とする計49 事例の台風について紹介する(図-4.2.1).本研究で対象とする台風事例は,日本に
図-4.1.1 本研究の擬似温暖化実験の計算フロー PGWE (将来気候) 再現実験(現在気候)
現在気候台風の 初期・境界条件(𝐴𝑝) 𝐴𝑝: NCEP FNLデータ
高潮モデル (SSM)
現在気候における高潮の場 例: 潮位偏差,流速
将来気候台風の 初期・境界条件(𝐴𝑓)
= + ∆
∆ = −
𝐺𝑓 将来気候の平均値 各月の20年間平均値を利用
𝐺𝑝 現在気候の平均値
高解像度台風モデル (HTM)
現在気候台風の気象場 例: 中心気圧, 最大風速
ダウン スケーリング
GCMs 気候場
将来気候台風の気象場 例: 中心気圧, 最大風速
将来気候における高潮の場 例: 潮位偏差,流速
1 × 1 解像度
高解像度台風モデル (HTM)
高潮モデル (SSM)
× ×
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上陸した2000年から2017年の期間における計49事例の台風を対象とする.気象庁 によると2000年から2017年の期間に,日本に上陸した台風は53事例が記録されて いる(気象庁,2018).本研究では,将来台風により引き起こされる沿岸災害への影 響を考慮するため,高潮災害のリスクがより大きい太平洋岸および東シナ海岸に上 陸した台風を対象とする.したがって,53事例から日本海側に上陸した3事例(2004 年台風15号(Typhoon Megi),2010年台風4 号(Typhoon Dianmu),2010年台風9 号(Typhoon Malou):それぞれ青森県,秋田県,福井県に上陸)を除外する.さら に,本研究で使用する高解像度台風モデルにより台風の全生涯を計算するのが困難 であった1事例(2002年台風6号;Typhoon Chataan)を対象外とし,4事例を外し た計49事例を対象台風とする(図-4.2.1).この 2002年台風6号は,入力条件とし て使用する NCEP 客観解析データ FNL によって発生時の台風が適切に表現されて おらず,モデル内で発生数日後からしか台風を捉えることができなかった事例であ る.計算の初期時刻は,気象庁ベストトラックにおいて最大風速が約17 m/sを超え
「台風」と定義された時刻として,計算の終了時刻は,同ベストトラックにおいて
「台風」でなくなり「温低化」もしくは「熱帯低気圧」へとなった時刻とする.
前節の現在気候実験と将来気候実験の結果を利用して,日本に上陸する台風の強 度に関する将来変化について考察を行う.考察の際には,中心気圧(Pc),最大風速
(Vm)および最大風速半径(Rm)に着目して解析を行う.その際,高解像度台風モ
デルのD3(3 km)により出力される15分毎の中心気圧,10 m高度の風速を記録し
た位置から台風中心までの距離から最大風速半径を抽出する.しかし,そのままの 値では時間変動が非常に大きく,最大瞬間風速(瞬時値)等のばらつきの大きな値 を抽出する可能性があるため,本研究ではこれらの値を気象庁ベストトラックの標 準時間間隔と同じ6 時間単位で時間平均した値を中心気圧,最大風速および最大風 速半径と定義する.本研究では,特に,台風の上陸時強度の将来変化に着目した解 析を行う.
本数値計算手法の妥当性を検証するために,現在気候実験により表現された全49 事例の台風強度および最大風速半径に対して精度検証を行う.中心気圧および最大 風速の精度検証の際には,観測値として気象庁ベストトラックの値を使用する.一 方で最大風速半径については,気象庁ベストトラックでは記載がない上に,直接観 測されているパラメータではないため,精度検証の際には最大風速半径の推定に広 く用いられている以下の Myers(1954)の気圧分布式から推定した推定値を用いる
(Myers,1954).
𝑃(𝑟) = 𝑃𝑐+ ∆𝑃𝑒𝑥𝑝(−𝑅𝑚
𝑟 ) (4.2.1)
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ここで,𝑃(𝑟)は台風の中心からr km離れた地点の気圧(hPa),𝑃𝑐はその時の台風中 心気圧(hPa),∆Pは標準大気圧からの気圧深度(ここでは 1013−𝑃𝑐で算出される),
𝑅𝑚は最大風速半径(km),rは台風中心位置と観測地との距離(km)である.この式 を,次のように整理し直すことで,
𝑅𝑚 = −𝑟 ln𝑃𝑟−𝑃𝑐
∆𝑃 (4.2.2)
式(4.2.2)に示すように最大風速半径𝑅𝑚に関する式を得る.これにより,台風上陸 時刻における中心気圧,および,気象官署の位置情報と海面気圧の観測値から最大 風速半径を推定することができる.Rmは時間変動が激しい値のため(Takagi et al.,
2015),ここでは推定誤差を小さくするために,台風中心から最も近い 3地点の気象
官署データから得られたRmを平均して観測値とする.
図-4.2.1 本研究の対象である2000から2017年の期間に日本に上陸した台 風49事例,線色は各台風事例を示す(図右端のシンボルに対応)
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