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第 4 章 日本に襲来する台風に対する温暖化影響評価

4.3 台風 49 事例の現在気候実験

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次に,中心気圧(Pc)の計算結果について確認する(図-4.3.2および図-4.3.3).図 -4.3.2は気象庁ベストトラック(観測),図-4.3.3は高解像度台風モデルによる全49 事例の台風のPcの時系列をそれぞれ示す.図の左側ほど台風の発生時刻に近く,右 側ほど台風の発生期,最盛期,消滅期(温低化)へと進行する.事例により台風と しての存在期間が異なることに注意を要する.また,図の星印はピーク時,丸印は 上陸時を表している.観測による全事例の中心気圧の平均値は,ピーク時で945.1 hPa,

上陸時で969.9 hPaであった.一方でモデルによる全事例のピーク時における平均中 心気圧は946.2 hPa,上陸時では965.8 hPaであった.これらの比較により,高解像度 台風モデルは,強い台風であっても弱い台風であってもその全生涯の強度変化を全 体的に上手く捉えることができているといえる.例えば,全49事例の中でピーク時 のPcが最も低い2014年台風19号(Typhoon Vongfong)は,観測は中心気圧900 hPa,

計算では902.7 hPaとなっており高精度に表現できている.また,上陸時の勢力が最 も強かった事例は2004年台風18号(Typhoon Songda)と2007年台風4号(Typhoon

Man-yi)であり,気象庁ベストトラックによるPcは945 hPa,モデルによる計算ではそれ

ぞれ935.6 hPaおよび945.9 hPaとなっておりピーク時と同様に適切に表現できている と言える.

図-4.3.2 気象庁ベストトラックによる台風49事例のPcの時系列 星印はピーク時,丸印は上陸時を示す.線色は図-4.3.1に同じ

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図-4.3.3 高解像度台風モデルによる台風49事例のPcの時系列

星印はピーク時,丸印は上陸時を示す.線色は図-4.3.1に同じ

図-4.3.4 (a)ピーク時のPcの散布図 (b)上陸時のPcの散布図

観測値:気象庁ベストトラック,推定値:高解像度台風モデル

(a) (b)

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また図-4.3.4は(a)ピーク時および(b)上陸時におけるモデル(推定)と気象庁ベス トトラック(観測)の間のPcの散布図を示す.ピーク時については(図-4.3.4 (a)),

バイアス誤差は1.17 hPa,平均二乗誤差(RMS誤差)は8.72 hPa,相関係数は0.95と なり,全体的に高精度に台風のピーク強度を再現できていると言える.また,上陸 時についても(図-4.3.4 (b)),バイアス誤差は−3.80 hPa,RMS誤差は9.67 hPa,相関 係数は0.85となり,ピーク時と比べると精度は劣るものの,大きなバイアス誤差は有 しておらず,上陸時のPcの平均的特性を概ね再現できていると見なすことができる.

上陸時には台風強度が急変する時間帯であることから,推定と観測との間のばらつ きが大きくなったと考えられる.

続いて最大風速(Vm)の計算結果について確認する(図-4.3.5および図-4.3.6).

中心気圧の場合と同様に,図-4.3.5は気象庁ベストトラック,図-4.3.6は高解像度台 風モデルによる全49事例の台風のVmの時系列をそれぞれ示す.観測による全事例の 平均値は,ピーク時で42.9 m/s,上陸時で32.3 m/sであった.モデルでは,ピーク時 で44.6 m/s,上陸時で33.5 m/sとなり,Pc同様,高解像度台風モデルは,台風の強弱に 関わらず,全事例のVmを高精度に表現できているといえる.全49事例の中でピーク 時のVmが最も大きい2014年台風19号(Typhoon Vongfong)は,観測は最大風速60 m/s となり,モデルによる推定は54.6 m/sと上手く表現できている.また上陸時の勢力に ついては2009年18号(Typhoon Melor;他14事例)であり,観測では40 m/s,計算は 39.4 m/sとピーク時と同様に適切に表現できていると言える.また図-4.3.7は (a)ピ ーク時および (b)上陸時のVmの散布図を示す.ピーク時については(図-4.3.7 (a)),

バイアス誤差は1.73 m/s,RMS誤差は4.74 m/s,相関係数は0.91となり,全体的に高精 度に台風のピーク強度を再現できていると言える.また,上陸時についても(図-4.3.7 (b)),バイアス誤差は1.20 m/s,RMS誤差は5.46 m/s,相関係数は0.71となり,ピー ク時と比べると精度は劣るものの,大きなバイアス誤差は有しておらず,Pcに加え てVmについても高い精度で計算できているとみなせる.

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図-4.3.5 気象庁ベストトラックによる台風49事例のVmの時系列

星印はピーク時,丸印は上陸時を示す.線色は図-4.3.1に同じ

図-4.3.6 高解像度台風モデルによる台風49事例のVmの時系列

星印はピーク時,丸印は上陸時を示す.線色は図-4.3.1に同じ

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最後に最大風速半径(Rm)の計算結果について確認する(図-4.3.8および図-4.3.9).

図-4.3.8 は,高解像度台風モデルによる全 49事例の台風の Rmの時系列を示す.台 風強度と同様に,図の星印はピーク時,丸印は上陸時を表している.図-4.3.9に上陸 時における高解像度台風モデルによる推定と Myers の式(4.4.2)による推定値を観 測値とした場合の散布図を示す.上陸時の Rmの推定精度は,バイアス誤差は11.91

km,RMS誤差は26.78 km,相関係数は0.78となった.RMS誤差は無視できない大

きさではあるが,先行研究においても Rm の値は時間変動が非常に大きいことが確 認されており(Takagi et al., 2015),推定と観測との間のばらつきが大きくなったと 考えられる.しかしながら,系統的な誤差は比較的小さく,上陸時の台風の大きさ を概ね再現できていると考えられる.以上の精度検証結果より,台風強度(Pc,Vm) および台風構造(Rm)をともに高い精度で表現できているといえる.したがってピ ーク時であっても上陸時であっても次節の将来気候実験(擬似温暖化実験)の結果 はある程度信頼性は高いものと見なすことができる.

図-4.3.7 (a)ピーク時のVmの散布図 (b)上陸時のVmの散布図

観測値:気象庁ベストトラック,推定値:高解像度台風モデル

(a) (b)

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図-4.3.8 高解像度台風モデルによる台風 49事例のRmの時系列

星印:ピーク時,丸印:上陸時を示す.線色は図-4.3.1に同じ

図-4.3.9 上陸時のRmの散布図(観測値:気象庁ベストトラック,

推定値:高解像度台風モデル)

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