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第 5 章 パッシブ可変オイルダンパーを用いた免震建物の動的解析による制御効果の検証

5.3 切替作動のバラツキが免震層のねじれ応答に及ぼす影響の検証

5.3.2 解析結果

免震層のねじれ応答に伴う免震層端部の最大応答変位の増加をみるため,ダンパーの切 替作動にばらつきが生じる CASE 2~4 の最大変位(両端部の最大値)を,全ダンパーが同 時に切り替わる CASE 1 と比較して図 5.9 に示す。また,免震層両端部の最大変位差(最大 ねじれ変位)を図 5.10 に示す。

片側のダンパーが CH に固定された CASE 3 において,どの地震動レベルにおいても大き なねじれ変位が生じる傾向が得られている。地震の最中に残りのダンパーも切替変位に達 して CH に切り替わる告示波 L3 では,片側のダンパーのみが CH に固定されたままの告示波 L2 よりも,最大ねじれ変位が小さくなっている。

CASE 4 では,L2 地震動で片側のダンパーが切替変位を超えて CH に切替るため,L2~L3 地震動に対して CASE 3 と同様に大きなねじれ変位が生じる傾向にある。一方,上部建物が 偏心した CASE 2 では,ダンパーの切替変位がばらつく CASE 3,4 に較べて最大ねじれ変位 が小さくなる傾向があるが,片側のダンパーのみが切替変位に達する告示波 L2 およびエル セントロ波 L3 の 2 波では,CASE 3 同様に大きなねじれ変位が生じている。

免震層端部の最大変位については,上部建物が偏心した CASE 2 において,標準ケース

(CASE 1)よりも最大で 10mm 程度大きくなる程度である。また,片側のダンパーのみが CH に固定され,最大ねじれ変位が大きくなる CASE 3,4 でも,CH に切り替わった片側のダン パーによって免震層全体の並進変位が抑えられることから,免震層端部の変位が標準ケー スを上回ることはなく,切替作動に大きなばらつきが生じても免震層の最大変位に与える 影響は小さいことがわかる。

図 5.11 に,告示波の最大加速度を 500mm/s2ピッチで増加させた際の免震層最大変位を CASE 1 と比較して示す。図中には両端部の変位差(ねじれ変位)の最大値も示す。CASE 2 では,ダンパーが切り替わる前の 4,000mm/s2入力時における最大ねじれ変位は 35mm である が,片側のダンパーのみが CH に切り替わる L2 入力時(4,250mm/s2)には,最大ねじれ変位 は 90mm と大きくなる。それ以上の入力では,全てのダンパーが CH に切り替わるため,最 大ねじれ変位は L2 入力時よりも小さくなっている。

CASE 3 では,片側のダンパーが CH に固定されていることから,小さな入力レベルからね じれ変位が生じている。最大ねじれ変位は L1 入力時に 25mm,L2 入力時に 106mm,L3 入力 時に 91mm である。4,000mm/s2を超える入力では,全てのダンパーが CH に切り替わるため,

最大ねじれ変位の増加が抑制されていることがわかる。端部 1 のダンパーが常に高減衰で あるため,免震層中央の変形は抑制され,端部 2 の変位も概ね CASE 1 以下の応答となって いる。なお,L3 入力時には,両端部の最大変位は CASE 1 に漸近している。CASE 4 につい ても,端部 1 のダンパーが CH に固定される 2,500mm/s2以上の入力では,CASE 3 と同様の傾

88 向が見られる。

図 5.9 免震層最大変位の比較

図 5.10 免震層の最大ねじれ変位の比較 0

50 100 150

200 CASE2 CASE3 CASE4

免震層最大ねじれ変位 (mm)

エ ル セ ン L1

タ フ ト L1

八 戸 L1

告 示 波 L1

エ ル セ ン L2

タ フ ト L2

八 戸 L2

告 示 波 L2

エ ル セ ン L3

タ フ ト L3

八 戸 L3

告 示 波 L3

A I C 003 0

100 200 300 400 500

600 CASE1(中央) CASE2(端部) CASE3(端部) CASE4(端部)

免震層最大変位 (mm)

エ ル セ ン L1

タ フ ト L1

八 戸 L1

告 示 波 L1

エ ル セ ン L2

タ フ ト L2

八 戸 L2

告 示 波 L2

エ ル セ ン L3

タ フ ト L3

八 戸 L3

告 示 波 L3

A I C 003 クリアランス

切替変位

89

(a)CASE 2:建物偏心ケース (b)CASE 3:片側固定ケース

(c)CASE 4:切替変位ばらつきケース

図 5.11 入力加速度と免震層最大変位(告示波ランダム位相)

0 100 200 300 400 500 600 700

0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 CASE1(中央)

CASE3(中央) CASE3(端部1) CASE3(端部2) CASE3(ねじれ変位)

免震層変位 (mm)

入力加速度 (mm/s2) レベル1

レベル2

レベル3 切替変位

0 100 200 300 400 500 600 700

0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 CASE1(中央)

CASE4(中央) CASE4(端部1) CASE4(端部2) CASE4(ねじれ変位)

免震層変位 (mm)

入力加速度 (mm/s2) レベル1

レベル2

レベル3 切替変位(端部2)

切替変位(端部1) 0

100 200 300 400 500 600 700

0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 CASE1(中央)

CASE2(中央) CASE2(端部1) CASE2(端部2) CASE2(ねじれ変位)

免震層変位 (mm)

入力加速度 (mm/s2) レベル1

レベル2

レベル3 切替変位

90

図 5.12 に CASE 2~4 に対する告示波 L2,L3 入力時の免震層両端部の最大変位,ダンパ ーの減衰係数および免震層のねじれ変位の時刻歴波形を示す。CASE 2 では,L2 入力時に端 部 2 のダンパーのみが切替変位に達して CH に切り替わるため,その直後からねじれ変位が 増加している。

一方,L3 入力時には,両端部のダンパーがほぼ同時に切り替わるため,ダンパーの減衰 力の違いによるねじれ変位の増加は見られない。CASE 3 では,L2 入力時には端部 1 のダン パーのみが CH に固定されているため,両端部のダンパーの減衰力の違いにより最大 100mm 程度のねじれ変位が生じている。一方,L3 入力時に端部 2 のダンパーも CH に切り替わると,

その後はねじれ変位は生じなくなる。CASE 4 も同様に,片側のダンパーのみが CH に切り替 わる 150mm~300mm の変位振幅の領域ではねじれ応答が生じているが,全てのダンパーが CH に切り替わる 300mm を超える変位振幅の領域では,ねじれ変位がなくなっている。

以上より,小さな入力レベルの地震動に対しては,建物の偏心や切替変位の違いに起因 するダンパーの切替作動のばらつきで免震層にねじれ変位が発生するものの,ダンパー変 位が切替変位を超えるような大きな入力レベルに達してしまえば,全てのダンパーが CH に切り替わることでねじれ応答が抑制されるため,ダンパーの切替作動のばらつきが免震 層最大変位に及ぼす影響が小さいことが確認された。

91

(a)CASE 2:L2 入力時の免震層最大変位と減衰係数およびねじれ変位

図 5.12 免震層最大変位と減衰係数およびねじれ変位の時刻歴波形(告示波ランダム位相)

-40 -30 -20 -10 10 20 30 40 0

0 10 20 30 40 50

免震層変位

端部1

端部2

変位 (cm)

時間 (s)

0 1 2 3 4

0 10 20 30 40 50

減衰係数

端部1

減衰係数 端部2

時間 (s)

CL

CH

-20 -15 -10 -5 10 15 20 0 5

0 10 20 30 40 50

ねじれ変位

変位 (cm)

時間 (s)

92

(b)CASE 3:L2 入力時の免震層最大変位と減衰係数およびねじれ変位

図 5.12 免震層最大変位と減衰係数およびねじれ変位の時刻歴波形(告示波ランダム位相)

(つづき)

-40 -30 -20 -10 10 20 30 40 0

0 10 20 30 40 50

免震層変位

端部1

端部2

変位 (cm)

時間 (s)

0 1 2 3 4

0 10 20 30 40 50

減衰係数

端部1

減衰係数 端部2

時間 (s)

CL

CH

-20 -15 -10 -5 10 15 20 0 5

0 10 20 30 40 50

ねじれ変位

変位 (cm)

時間 (s)

93

(c)CASE 4:L2 入力時の免震層最大変位と減衰係数およびねじれ変位

図 5.12 免震層最大変位と減衰係数およびねじれ変位の時刻歴波形(告示波ランダム位相)

(つづき)

-40 -30 -20 -10 10 20 30 40 0

0 10 20 30 40 50

免震層変位

端部1

端部2

変位 (cm)

時間 (s)

-20 -15 -10 -5 10 15 20 0 5

0 10 20 30 40 50

ねじれ変位

変位 (cm)

時間 (s) 0

1 2 3 4

0 10 20 30 40 50

減衰係数

端部1

減衰係数 端部2

時間 (s)

CL

CH

94

(d)CASE 2:L3 入力時の免震層最大変位と減衰係数およびねじれ変位

図 5.12 免震層最大変位と減衰係数およびねじれ変位の時刻歴波形(告示波ランダム位相)

(つづき)

-40 -30 -20 -10 10 20 30 40 0

0 10 20 30 40 50

免震層変位

端部1

端部2

変位 (cm)

時間 (s)

0 1 2 3 4

0 10 20 30 40 50

減衰係数

端部1

減衰係数 端部2

時間 (s)

CL

CH

-20 -15 -10 -5 10 15 20 0 5

0 10 20 30 40 50

ねじれ変位

変位 (cm)

時間 (s)

95

(e)CASE 3:L3 入力時の免震層最大変位と減衰係数およびねじれ変位

図 5.12 免震層最大変位と減衰係数およびねじれ変位の時刻歴波形(告示波ランダム位相)

(つづき)

-40 -30 -20 -10 10 20 30 40 0

0 10 20 30 40 50

免震層変位

端部1

端部2

変位 (cm)

時間 (s)

0 1 2 3 4

0 10 20 30 40 50

減衰係数

端部1

減衰係数 端部2

時間 (s)

CL

CH

-20 -15 -10 -5 10 15 20 0 5

0 10 20 30 40 50

ねじれ変位

変位 (cm)

時間 (s)

96

(f)CASE 4:L3 入力時の免震層最大変位と減衰係数およびねじれ変位

図 5.12 免震層最大変位と減衰係数およびねじれ変位の時刻歴波形(告示波ランダム位相)

(つづき)

-40 -30 -20 -10 10 20 30 40 0

0 10 20 30 40 50

免震層変位

端部1

端部2

変位 (cm)

時間 (s)

0 1 2 3 4

0 10 20 30 40 50

減衰係数

端部1 端部2

減衰係数

時間 (s)

CL

CH

-20 -15 -10 -5 10 15 20 0 5

0 10 20 30 40 50

ねじれ変位

変位 (cm)

時間 (s)

97 5.4 小ストローク免震への適用効果の解析的検証