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加振結果より評価したダンパーの力学的性状

第 2 章 風揺れの制御を対象とした粘弾性・弾塑性要素複合制振ダンパーの開発

2.3 動的加力試験による性能検証

2.3.3 加振結果より評価したダンパーの力学的性状

図 2.15 に正弦波 0.33Hz の微小振幅加振の 3 サイクル目より得られた試験体全体の履歴 曲線を示す。実験時の室温は約 20℃である。図 2.16 に実験結果より評価した各加振振幅に おける試験体各部の貯蔵剛性Kdと等価減衰定数hを示す。等価減衰定数hは,正弦波加振 1サイクルの消費エネルギーEdと貯蔵剛性Kdを元に,式 2.3 を用いて求めた。





 

 



Kd d h K Kd Ed

2

2

  max

   

 

……… (2.3)

ここに,

Ed (kN・mm) :1サイクルの消費エネルギー

max(mm) :最大振幅 Kd (kN/mm) :貯蔵剛性 Kd (kN/mm) :損失剛性

ジエン系粘弾性体の貯蔵剛性はアクリル系に比べて約 1.5 倍大きいため,試験体全体の 貯蔵剛性はアクリル系試験体に比べて若干大きくなっている。一方,等価減衰定数は両者 ともに 0.1 程度であることから,両試験体は,ほぼ同等のエネルギー吸収能力を有すると いえる。

また,両試験体共に振幅依存性は小さく,振幅 0.1mm(粘弾性体歪み 5%)の微小変形に おいても安定した剛性とエネルギー吸収能力を有することがわかる。なお,0.2mm 以下の微 小振幅で等価減衰定数が若干大きくなる理由として,試験装置の摩擦の影響が考えられる。

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(a)複合制振ダンパー(ジエン系試験体)

(b)複合制振ダンパー(アクリル系試験体)

図 2.15 微小振幅の正弦波加振における複合制振ダンパーの履歴曲線(加振振動数 0.33Hz)

-400 -300 -200 -100 0 100 200 300 400

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

複合ダンパ(ジエン系)

0.2mm(10%) 0.4mm(20%) 0.6mm(30%) 1.0mm(50%) 2.0mm(100%)

荷重 (kN)

変形 (mm)

振幅(粘弾性体歪み)

-400 -300 -200 -100 0 100 200 300 400

-2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2

複合ダンパ(アクリル系)

0.2mm(10%) 0.4mm(20%) 0.6mm(30%) 1.0mm(50%) 2.0mm(100%)

荷重 (kN)

変形 (mm)

振幅(粘弾性体歪み)

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(a)複合制振ダンパー(ジエン系試験体)

(b)複合制振ダンパー(アクリル系試験体)

図 2.16 微小振幅の正弦波加振における複合制振ダンパーの貯蔵剛性と減衰定数

0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500

0 0.5 1 1.5 2

全体 ダンパー部 ブレース部

貯蔵剛性 Kd(×10-1 kN/mm)

変形(mm) 貯蔵剛性(ジエン系)

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6

0 0.5 1 1.5 2

全体 ダンパー部

変形(mm) 等価減衰定数(ジエン系)

減衰定数 h

0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500

0 0.5 1 1.5 2

全体 ダンパー部 ブレース部

貯蔵剛性 Kd(×10-1 kN/mm)

変形(mm) 貯蔵剛性(アクリル系)

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6

0 0.5 1 1.5 2

全体 ダンパー部

変形(mm) 等価減衰定数(アクリル系)

減衰定数 h

29 (2) 入力レベルと各部の挙動

図 2.17 に,正弦波 0.33Hz 加振時(室温約 20℃)におけるジエン系,アクリル系の複合 制振ダンパー試験体各部の最大荷重,最大変形,単位振幅当たりの 1 サイクル吸収エネル ギーと加振振幅の関係を示す。

両試験体とも振幅 2mm 以下の微小振幅加振においては,ブレース部は弾性範囲内のため エネルギーを吸収せず,ダンパー部でのみエネルギー吸収が行われている。ダンパー部各 部の最大変形(図 2.17(c),(d))の図から,滑り機構ではすべりが発生せず,粘弾性体のみ が変形してエネルギーを吸収していることがわかる。

一方,加振振幅 10mm,30mm の大振幅加振では,ブレース部は鋼材系履歴ダンパーとして 機能するため,ブレース部のエネルギー吸収量が急激に増大している。ダンパー部の荷重 は滑り機構によって一定値に制限されている。

ダンパー部の変形については,加振振幅が大きくなるにつれて滑り機構の変形が支配的 となり,粘弾性体の変形量がほぼ一定値に抑制されることがわかる。ジエン系に比べて剛 性が低いため,アクリル系粘弾性体の変形量が若干大きくなるが,限界ひずみ 500%(変形 10mm)に対して十分余裕がある。

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(a)各部の最大荷重(ジエン系) (b)各部の最大荷重(アクリル系)

(c)各部の最大変形(ジエン系) (d)各部の最大変形(アクリル系)

(e)単位振幅当たりの 1 サイクル 吸収エネルギー (f)単位振幅当たりの 1 サイクル吸収エネルギー

(ジエン系) (アクリル系)

図 2.17 複合制振ダンパーの加振振幅とダンパー各部の荷重,変形,吸収エネルギー 0

200 400 600 800 1000 1200

0 5 10 15 20 25 30 35 全体ダンパー部

ブレース部

荷重 (kN)

振幅 (mm)

0 5 10 15 20 25 30 35

0 5 10 15 20 25 30 35 全体

粘弾性体滑り機構

変形 (mm)

振幅 (mm)

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3

0 5 10 15 20 25 30 35 全体

ダンパー部 ブレース部

エネルギー (kN・m/mm)

振幅 (mm)

0 200 400 600 800 1000 1200

0 5 10 15 20 25 30 35 全体

ダンパー部 ブレース部

荷重 (kN)

振幅 (mm)

0 5 10 15 20 25 30 35

0 5 10 15 20 25 30 35 全体

粘弾性体滑り機構

変形 (mm)

振幅 (mm)

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3

0 5 10 15 20 25 30 35 全体

ダンパー部 ブレース部

エネルギー (kN・m/mm)

振幅 (mm)

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