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動的加力試験による性能検証

第 4 章 免震建物を対象としたパッシブ可変オイルダンパーの開発

4.3 動的加力試験による性能検証

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(a)CL(低減衰)固定時 (b)CH(高減衰)固定時

図 4.5 減衰力―変位曲線(減衰係数固定時)

図 4.6 最大減衰力の測定結果と設計値の比較(減衰係数固定時)

-1000 -500 0 500 1000

-400 -300 -200 -100 0 100 200 300 400 CL固定

減衰力 (kN)

変位 (mm)

伸び縮み

125mm/s 250mm/s 500mm/s 750mm/s 1000mm/s

-1000 -500 0 500 1000

-400 -300 -200 -100 0 100 200 300 400 CH固定

減衰力 (kN)

変位 (mm)

125mm/s 250mm/s 500mm/s 750mm/s 1000mm/s

伸び縮み

-1000 -500 0 500 1000

測定値(CH) 測定値(CL)

最大減衰力 (kN)

最大速度 (mm/s)

縮み伸び

設計値(CH)

設計値(CL)

0 200 400 600 800 1000

62 4.3.2 減衰係数切替時の特性評価試験

加振速度 100mm/s~1,000mm/s の変位制御三角波加振を実施し,速度一定の領域において 減衰係数を切り替え,減衰力の切り替わりが生じるまでの時間遅れを計測した。この時間 遅れは,スイッチ弁が作動してからシャットオフ弁がバイパス流路を閉鎖するのに要する 時間に対応している。表 4.2 に三角波加振の試験条件を示す。変位検出ロッドの切替変位 は 100mm とした。

図 4.7 に加振速度 150mm/s,500mm/s において,ダンパーの伸側・縮側で減衰係数を切り 替えた際の減衰力と変位の時刻歴を示す。ダンパー変位が切替変位を超えた後に減衰力が 増加し,減衰係数がCL(低減衰)からCH(高減衰)に切り替わることが確認される。ダ ンパー変位が切替変位を超えてから,減衰力の変化が生じるまでの時間遅れは 0.2 秒程度 であり,一般的な免震建物の 1 次固有周期(3~5 秒)に較べて十分小さな値である。

図 4.8 に各速度で計測した減衰力切り替えの時間遅れを示す。時間遅れは 100mm/s~

1,000mm/s の速度領域において伸側・縮側共に 0.11~0.20 秒の範囲にあり,速度の増加に 伴い,切替変位を超えてからシャットオフ弁が作動するまでの時間遅れが短くなる傾向が みえる。加振速度の増加に伴いパイロット圧が上昇し,シャットオフ弁の反応速度が短く なるためと考えられる。

表 4.2 減衰係数切替時の試験条件

加振波 周期(s) 振動数(Hz) 変位(mm) 速度(mm/s)

12.0 0.08 100

8.0 0.13 150

6.0 0.17 200

4.0 0.25 300

2.4 0.42 500

1.6 0.63 750

1.2 0.83 1000

三角波 300

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図 4.7 減衰係数切替時の変位と減衰力の時刻歴波形(三角波加振時)

-300 -250 -200 -150 -100 -50 0 50

-600 -400 -200 0 200 400 600

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3

変位(mm) 減衰力(kN)

時間 (s) 0.193s

変位検出ロッド 設定変位100mm

縮み伸び 伸び縮み

減衰力

変位 シャットオフ弁

開 → 閉

-50 0 50 100 150 200 250 300

-600 -400 -200 0 200 400 600

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3

変位(mm) 減衰力(kN)

時間 (s)

縮み伸び 伸び縮み

0.202s 変位検出ロッド 設定変位100mm

減衰力 変位 シャットオフ弁

開 → 閉

(a) 150mm/s 加振時(伸側)

(b) 150mm/s 加振(縮側)

-300 -250 -200 -150 -100 -50 0 50

-800 -600 -400 -200 0 200 400 600 800

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

変位(mm) 減衰力(kN)

時間 (s) 0.176s

変位検出ロッド

設定変位100mm 減衰力

変位 シャットオフ弁

開 → 閉

縮み伸び 伸び縮み

-50 0 50 100 150 200 250 300

-800 -600 -400 -200 0 200 400 600 800

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

変位(mm) 減衰力(kN)

時間 (s)

縮み伸び

0.143s 減衰力

シャットオフ弁 変位 開 → 閉

伸び縮み

(c) 500mm/s 加振(伸側)

(d) 500mm/s 加振(縮側)

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図 4.8 加振速度と切替時間遅れの関係

4.3.3 地震応答波加振試験

免震建物モデルの地震応答解析で得られた免震層変位波形を用いて,パッシブ可変オイ ルダンパーの地震応答波加振試験を実施し,ランダム波に対する減衰力の切替性能を検証 する。ここでは,南海トラフ 4 連動地震の津島波(AIC003)の応答波形を用いた。図 4.9

に,CL(低減衰)固定時,CH(高減衰)固定時および減衰係数切替時の変位,速度および

減衰力の時刻歴波形を示す。

減衰係数切替時では,ダンパー変位が切替変位の 100mm に達するまではCL(低減衰)固 定時と同じ減衰力が生じ,100mm を超えると約 0.2 秒間のタイムラグの後に減衰係数の切り 替わりが生じ,その後はCH(高減衰)固定時の減衰力と一致している。減衰係数切替時に おけるダンパー速度は 150mm/s~340mm/s である。地震応答波加振においても,三角波加振 で評価した時間遅れと同等の切替特性が得られている。

0 0.1 0.2 0.3 0.4

0 200 400 600 800 1000

圧縮 引張

切替時間遅れ(s)

速度 (mm/s)

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(a)ダンパー変位

(b)ダンパー速度

(c)ダンパー減衰力

図 4.9 減衰係数切替時の変位と制御力の時刻歴波形(地震応答波加振時)

-300 -200 -100 0 100 200 300

10 10.5 11 11.5 12 12.5 13 ダンパー変位

変位 (mm)

時間 (s)

縮み伸び

変位検出ロッド 設定変位100mm

-1000 -500 0 500 1000

10 10.5 11 11.5 12 12.5 13 ダンパー減衰力

CH固定 CL固定 切替

減衰力 (kN)

時間 (s)

縮み伸び

シャットオフ弁 開 → 閉 -600

-400 -200 0 200 400 600

10 10.5 11 11.5 12 12.5 13 ダンパー速度

速度(mm/s)

時間 (s)

縮み伸び

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4.4 ユニフロー型パッシブ可変オイルダンパーの基本原理