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バイフロー型パッシブ可変オイルダンパーの基本原理

第 4 章 免震建物を対象としたパッシブ可変オイルダンパーの開発

4.2 バイフロー型パッシブ可変オイルダンパーの基本原理

図 4.1 にパッシブ可変オイルダンパーの作動原理を示す。本ダンパーは,伸側と縮側の 性能差が少ないバイフロー型6)のオイルダンパーである。高減衰用の比例弁を有するシリン ダー内部のピストン流路に加えて,シリンダーの外側部分にシリンダー内部の伸側室と縮 側室とを繋ぐバイパス流路を新たに設け,その流路の途中に低減衰用の比例弁と流路を塞 ぐシャットオフ弁を配置している。

常時はバイパス流路をオイルが流れて低減衰の特性が得られるが,ダンパー変位が設定 変位(切替変位)を超えた際に,バイパス流路のオイルの流れがシャットオフ弁によって 閉鎖され,シリンダー内部のピストン流路のみが機能して高減衰の特性を得られる。バイ パス流路内のシャットオフ弁は,オイルダンパーのロッドと一体で伸縮する変位検出ロッ ドにより,機械式のスイッチ弁を作動させてパイロット回路を閉鎖し,パイロット回路の 圧力を利用して動作させる。

図 4.1 (a)に示すように,ダンパー変位が切替変位以下の場合は,パイロット回路の圧力 が低く,シャットオフ弁が開いた状態となる。図 4.1 (b)に示すように,地震時にダンパー 変位が切替変位に達すると,変位検出ロッドの溝に押されてスイッチ弁が作動し,パイロ ット回路の圧力が上昇してシャットオフ弁が閉じ,減衰係数が切り替わる。

一度,スイッチ弁がパイロット回路を閉鎖すると,ディテントによってスイッチ弁が固 定され,ダンパーの伸側・縮側共にシャットオフ弁が作動した状態が保持されるため,ダ ンパーは高減衰の特性に固定される。大地震後は,手動レバーでスイッチ弁を解除して,

低減衰の特性に復帰させる。従来の可変オイルダンパーでは,シャットオフ弁の開閉を電 磁アクチュエータなどで行っていたのに対し,本ダンパーは機械式の作動スイッチとパイ ロット回路の圧力を用いて行うため,地震時における動作信頼性が非常に高い。

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(a) 切替作動前(低減衰時)

(b)切替作動後(高減衰時)

図 4.1 バイフロー型パッシブ可変オイルダンパーの作動原理

ロッド 縮側室

伸側室

ピストン 比例弁(高減衰用)

比例弁

(低減衰用)

シャットオフ弁

シリンダー リザーバータンク

パイロット回路 バイパス流路

変位検出ロッド

スイッチ弁

パイロット回路の圧力が低く,シャットオ フ弁が開いた状態。バイパス流路をオ イルが流れる。

伸び

設定変位

変位検出ロッドによりスイッチ弁が作動し パイロット回路の圧力が上昇して伸側用 のシャットオフ弁を閉じる。バイパス流路 が閉鎖される。

シャットオフ弁(伸)

パイロット回路

変位検出ロッド スイッチ弁

一度,スイッチ弁が作動すると,パイロッ ト回路の閉鎖が保持されるため,縮側用 のシャットオフ弁も閉じる。

伸び

縮み

シャットオフ弁(縮)

パイロット回路

スイッチ弁

比例弁(高減衰用)

設定変位

設定変位

58 4.2.2 試験体概要

図 4.2 に最大減衰力 750kN のパッシブ可変オイルダンパーの減衰特性を示す。パッシブ 可変オイルダンパーは 2 段階の減衰係数を有する減衰係数切替型のオイルダンパーであり,

初期減衰係数は C1L=0.9kN・s/mm(低減衰),C1H=2.8kN・s/mm(高減衰),リリーフ荷重は 600kN である。また,リリーフ後の 2 次減衰係数は C2=0.19kN ・s/mm である。試験体の限 界ストロークは±400mm,限界速度は±1,000mm/s である。ダンパーの減衰力 F(t)は式 4.1 で表現される。また,図 4.3 に試験体の外観写真を示す。また,図 4.4 に変位検出ロッド とスイッチ弁の外観を示す。



    

   

 

      

   

Vr t x Fr t x C t F

Vr t x t

x C t F

) ( )

( 2 ) (

) ( )

( 1 ) (

 ……… (4.1)

ここに,

C1:初期減衰係数( 低減衰時はC1L,高減衰時はC1H ) C2:2次減衰係数

Fr:リリーフ荷重

Vr:リリーフ速度 ( 低減衰時はVrL,高減衰時はVrH ) x(t):ダンパー速度

図 4.2 パッシブ可変オイルダンパーの減衰力計画線図

214 666

600 750

減衰力 (kN)

速度 (mm/s) C1H=2.8 kN・s/mm

C1L=0.9 kN・s/cm

C2H=0.19 KN・s/mm

(低減衰)

(高減衰)

1000 C2L=0.19 kN・s/mm

VrL= VrH=

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図 4.3 バイフロー型パッシブ可変オイルダンパーの外観

図 4.4 変位検出ロッドの溝とスイッチ弁の外観

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