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SSR0

4.2 解析手法

Ve[V]Vt[V]

図4.4: 第3データでの光検出器の読み出し電圧の変化。他の2データと異なり磁場は印加されて いない。上段がIe用光検出器の出力、下段がIe用光検出器の出力である。この測定で得られる データは磁場起因の擾乱と無縁のため、共振器自身の安定性や磁場に関わらず生じている擾乱の 影響を知ることができる。

相対強度揺らぎ1/Hz1/2

図4.5: 第3データでの光検出器の読み出し電圧相対強度スペクトル、磁場が印加されていないた め共振器自身の安定性を評価できる。黄緑がVe、青がVtの相対強度揺らぎである。

66 第4章 データ取得と解析 光検出器のゲインを用いて検出器の読み出し電圧VeとVtをそれぞれの光強度に変換できる。Ie とItの比から楕円度を求めることができ、理論の導出の議論を踏まえると楕円度は理想的には以 下のような式に従う。

Ie

It = Γ2+ 2ΓΨ(t)

≡Γ2+p1B2(t)

(4.1) ただし、真空複屈折の磁場の2乗の比例係数をp1とした。しかし、実際にはこれらの項に加え、

磁場に比例する項が現れる可能性がある。磁場に比例する項としてはファラデー回転が代表的で あり、これは平行な磁場成分に比例して楕円度を生む効果で、残留ガスやミラー表面がこの効果 を生むことが知られている。磁石管内を通るレーザーと磁場が完全に直交していないこの実験の セットアップではファラデー回転による楕円度が現れてしまう可能性がある。同様に電気的なノ イズが検出器に届いてしまった場合は、磁場の微分に比例する項が現れることがある。もしこれ らの効果が現れてしまった場合、真空複屈折のシグナルとこれらの効果を正しく分離する必要が 有る。上記したような効果を踏まえると測定される楕円度は以下のような式で記述できる。

Ie

It = Γ2+ 2ΓΨ(t) +θ(t) +η(t) (4.2) 右辺第3項が磁場に比例するファラデー効果を表している。、第4項が磁場の微分に比例するノイ ズの効果を表している。

真空複屈折の効果と合わせて合計3つの磁場に依存する効果から真空複屈折起因の効果だけを 分離よく抜き出すため第1データと第2データを用いて演算を行う。正磁場を印加した際の楕円 度を(Ie/It)+、負磁場を印加した際の楕円度を(Ie/It)と定義し、正磁場の大きさをB+、負磁 場の絶対値の大きさをBとする。本実験においてはB+= 9 [T]、B=−4.5 [T]である。ここ で正磁場と負磁場の大きさの比 BB+ を用いて以下の量を定義する。

H(t)≡(Ie/It)++ B+

B ×(Ie/It) (4.3)

ファラデー効果が磁場に比例することを踏まえるとファラデー効果に起因する項は (Ie/It)+と (Ie/It)の足し算によってキャンセルできる。同様に磁場の微分に比例するような電磁ノイズも キャンセルされる。最終的に上式で定義したH(t)は以下のように計算できる。

H(t) = (Ie/It)++B+

B ×(Ie/It)

= (1 + B+

B2+p1(B+2 +B+ BB2)

≡(1 + B+

B2+p1Be2f f

(4.4)

このようにして定義したH(t)を用いて議論することでファラデー効果や電磁ノイズの影響を無視 して解析を行うことができる。

図4.7に実際に取得したデータのうち、共振が連続して維持された400サイクルのデータを用い て計算したH(t)の平均、図4.7に(Ie/It)+の平均と(Ie/It)の平均の、それぞれ磁場印加2 [ms]

前から4 [ms]後に渡っての相対強度変化の時間変化を示している。演算をする前のデータではそ れぞれ時刻0 [ms]から1 [ms]に渡って互いに逆符号に磁場の微分波形と思われる強度変化が現れ ているがH(t)ではその効果がキャンセルされており演算が正しく機能していると考えられる。こ の磁場の微分は単発では確認できなかった電磁誘導起因のノイズが400サイクルの平均を行った ため現れたと考えられる。

ms

2 1 0 1 2 3 4

V/V

1 1.0005 1.001 1.0015 1.002 1.0025 1.003

Time [ms]

図4.6: 400サイクル分のデータを用いて計算したH(t)の平均値の相対強度変化。時刻0 [ms]か

ら1 [ms]に渡って磁場が印加されている。

ms

2 1 0 1 2 3 4

0.999 0.9995 1 1.0005 1.001 1.0015 1.002

ms

2 1 0 1 2 3 4

1.002 1.0025 1.003 1.0035 1.004 1.0045 1.005

time [ms] time [ms]

図4.7: 400サイクル分のデータを用いて計算した(Ie/It)+と(Ie/It)の平均値の相対強度変化。

それぞれ磁場が印加される時刻0 [ms]から1 [ms]に渡って互いに逆符号に磁場の微分波形が現 れている。これは光検出器やPDH回路が磁場を拾っていると考えられるが原因は現在調査中で ある。

実際に解析する場合には共振器の光子寿命と検出器のローパス特性を考慮する必要がある。共 振器はそのフィネスと共振器長に応じて定まるτF Pの光子寿命もしくはカットオフ周波数fF P

68 第4章 データ取得と解析 もち、Ie用光検出器はその帯域で定まるカットオフ周波数fP Dを持つ。これらの効果を踏まえる と実際に観測する波形はfF P、fP Dそれぞれのフィルタを介した後の磁場波形に従って時間発展 する。カットオフ周波数f [Hz]のローパスフィルタを通した後の磁場波形を(B)f のように書く ことにするとH(t)は最終的に以下のようにかける。

H(t) = (1 + B+

B2+p1(((B+2)fF P)fP D) +B+

B((B2)f F P)fP D)

≡p0+p1((Be2f f)fF P)fP D

(4.5)

ここで光子寿命によるローパスフィルターの時定数はフィネスF と共振器長Lcavを用いて fF P = c

4F Lcav

(4.6) であるため代表値として用いたフィネス320,000においては170 [Hz]となる。またfP Dは3章の 測定結果から950 [Hz]である。参考のために正磁場における(B2)F P 、((B2)fF P)fP D それぞれの 波形を図4.8に示す。検出器のカットオフ周波数に比べて共振器のカットオフ周波数が圧倒的に 小さいため、磁場波形は、ほとんど共振器の光子寿命起因のローパスフィルタで形が決まる。ま たここから9 [T]で磁場を印加した際の実効的な磁場の2乗の大きさのピークは23 [T2]である こともわかる。

図 4.8: 共振器の光子寿命と検出器のローパス特性を考慮した後の磁場の2乗の波形。黒:共振器 の光子寿命のみを考慮した場合。赤:検出器の時定数も考慮した場合。

実際にkCMの値を得るために以下のような手順で解析を行う。まず第1データと第2データを 用いてH(t)を計算する。観測された磁場波形からB2ef fを計算し、各サイクル毎に得られたH(t) をp0+p1×Be2f f の関数形でフィッティングする。p1が真空複屈折の比例係数kCM を含んでい

る。こうして各サイクル毎にkCM の値を空いているすることで全サイクルでのkCMの分布が得 られる。この分布から全測定結果から得られるkCMの中心値とその誤差を推定する。

理想的には上述の解析方法を全てのサイクルのデータについて行えばよいが、実際には以下の ような過程を経てからフィッティングに移る必要がある。

シグナル領域の決定

共振器は磁場印加後の擾乱を拾っている。解析に使用する時間領域が長く、その擾乱が含ま れている場合は正しい推定ができない。しかし時間領域を短しすぎると磁場領域を含まなく なってしまい感度が悪くなる。そのためシグナル領域を適切に選ぶ必要がある。

イベント選別

共振器の安定性や強度揺らぎの大きさはデータ取得中全く同じとは限らない。安定性や強度 揺らぎの大きさが悪い共振状態のデータを解析に用いることを避けるためにイベント選別 を行う。

フィルタ操作

実際には共振器が完璧にホワイトノイズに従ってはいない。そのため共振器自信の持つ特定 周波数の強度揺らぎが偽シグナルとなり正しいフィット結果を得られない場合がある。その ため適切なフィルタ操作を行う。

以下に続く3節でこれらの要素を議論する。