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B.1 パルス磁石
B.1.1 概要
図D.2にパルス磁石の模式図を示す。パルス磁石のコイルは1 [mm]×3 [mm]の銅線をレース トラック状に15周巻いたものである。レーストラックに対して2.75度の角度でレーザー光を通 すことで、レーザーに対して87.75度傾いた磁場を印加することが可能である。コイルは自身の 電磁応力に耐えるためにステンレスで補強される。繰り返し運転時には、抵抗率を下げ効率よく 冷却を行うために液体窒素に浸された状態で運転される。実際のコイル並びにステンレス補強後 のパルス磁石の全体図を図D.4に示す。また、磁石の各種パラメーターを表B.1にまとめる。
図B.1: パルス磁石の模式図。銅線のレーストラックコイルの中心にたいして2.75度でレーザー 光が通る。レーザー光とほとんど垂直にパルス磁場(青)を印加できる。
B.1.2 磁場波形
パルス磁石はコンデンサに溜まった電荷を磁石のコイルに瞬間的に放電することで短いパルス 幅ながら瞬間的に強い磁場を生むための磁石である。駆動電源を含めたパルス磁石の等価回路は
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図B.2: 上図:シングルレーストラックコイルの写真。磁場発生領域は軸方向に20 [mm]伸び、コ イルを交差するようにレーザー光用のステンレス管が通る。下図:補強後のパルス磁石の写真。
20分割されたステンレスにより補強される。最終的な軸方向の長さは350 [mm]となる。
表B.1: パルス磁石の種々のパラメータ一覧 パラメータ名 値
線材 平角銅線(1 [mm]×3 [mm])
コイル形状 シングルレーストラック 磁場発生領域の長さ 200 [mm]
巻き数 15
パイプ径 ϕ1/4 inch (=6.35 [mm]),厚さ0.5 [mm]
光の入射角 2.75◦
全長 ∼350 [mm]
重量 16 [kg]
抵抗 9 [mΩ] @ DC
23 [mΩ] @ 750 Hz コイルインダクタンス 40 [µH] @ 750 Hz
112 付録Bパルス磁石 図B.3に示される。磁石の持つ抵抗成分Rはインダクタンスに比べて十分小さいため抵抗成分を 無視する。コンデンサ間に初期電位差V0があるという条件で図B.3のコイルに流れる電流の時間 発展I(t)を計算すると以下のような式で書き表すことができる。実際には放電部にサイリスタが 挿入されているため電流は順方向にしか流れないため三角波の半周期分のみが流れる。
コンデンサバンク
+CV
0-CV
0Capacitor C
Magnet R
L
V(t) I(t)
図B.3: 駆動電源と磁石の等価回路。
B.1.3 磁場分布と磁場発生効率
実際に発生する磁場の大きさはピックアップコイルを用いて測定する。ピックアップコイルを レーザー用のステンレス管に挿入し様々な位置で発生する磁場の大きさを測定した。発生する磁 場の大きさはコイルに流れる電流の大きさに比例する。この比例係数を磁場発生効率と呼び、以 降この磁場発生効率B/I [T/kA]を用いて議論する。図B.5に実測した磁場発生効率とANSYS によるシミュレーションの結果を示す。両者はよく一致しており、磁場発生効率はコイル内で一 様ではなく、レーストラックの端では磁場発生効率が下がっていることもわかる。
time [ms]
ĶŁĩ=ĎE
mÔ[ms]
= [ ]
,ĶŁĩ=~X
F,ĉ Đĉ0¯
Ãl5 čėUø=ěîqEÝĉď ∫ "
#$% ĉ)ø
ėÅýÌÂē°ñí Ćĉ Ü*
ZsĎĶŁĩĎôĕā ĎėÅýłŇı
−150 − −
−2 0 2 4 6 8 10 12
= [ T ]
図B.4: 磁場マップ。赤線がANSYSによるシミュレーション結果。黒線が11.4 [T]実測値。
B.1.4 冷却効率
パルス電流が磁石を流れると磁石の抵抗成分によりジュール熱が発生する。過度に早く磁石を 駆動してしまうと発生したジュール熱がコイルの温度を上昇させさらに多くのジュール熱が発生 し、繰り返し運転時のコイルの平衡温度が上昇してしまう。後述するように駆動用電源は磁石で 消費しなかったエネルギーを再充電するので、磁石で発生するジュール熱の大きさは磁場発生の 前後でコンデンサに蓄えられているエネルギーの差を測定することで測定できる。C=1.5 [ms]、 V = 4.0 [kV]、繰り返し0.12 [Hz]で駆動した際の測定結果を図に示す。
Time [s]
0 10 20 30 40 50 60
Heat loss [kJ]
8.4 8.6 8.8 9 9.2 9.4 9.6 9.8
/ ndf
!2 6.275e-05 / 1 p0 9.549 ! 0.00876 p1 -29.55 ! 0.7305 p2 13.99 ! 0.3636
/ ndf
!2 6.275e-05 / 1 p0 9.549 ! 0.00876 p1 -29.55 ! 0.7305 p2 13.99 ! 0.3636 0.002348 / 2
0.02585 2.125 1.133 0.002348 / 2 0.02585 2.125 1.133
図B.5: コイルで発生するジュール熱の実測値。コンデンサバンクを駆動して14秒ほどで熱平衡 に至っていることがわかる。
B.1.5 漏れ磁場
漏れ磁場の大きさは本実験においてはミラーのCotton-Mouton効果を議論するためにも重要で ある。ダイポール輻射型の磁場分布であるため距離の3乗に比例して減衰する。図B.6に漏れ磁 場の大きさのANSYSによるシミュレーションと実測の結果を示す。予想通り距離の3乗に比例 して減衰していることが確認できる。