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SSR0

4.7 系統誤差

78 第4章 データ取得と解析

Finesse

260 280 300 320 340 360 380

103

× [V]tV

5 5.5 6 6.5 7 7.5 8 8.5 9

図4.20: 異なるVtにおいて測定されたフィネスの値。

t [V]

5 5.5 6 6.5 7 7.5 8 8.5V 9

Entries

50 100 150 200 250 300 350 400 450

図4.21: 解析に使用したデータにおけるVtの大きさの分布。

静的複屈折に占めるミラーの複屈折の割合

この解析では静的複屈折を全てミラーの複屈折起因であるとして解析を行った。実際には2 章で議論したように磁場に依存しない静的複屈折成分は十分小さい消光比を無視しても

Ie/It(B = 0) = Γ22 (4.12) となるため、静的複屈折成分にはミラーの偏光回転の影響が現れている。真空複屈折の測定 のみではこの大きさを決定することができないため、窒素ガスのファラデー回転の大きさ を測定することでその大きさを測定した。窒素ガスのファラデー回転の測定、解析は付録A に譲る。

80 第4章 データ取得と解析 この測定の結果、Ie/It(B = 0) = 6×105のときに静的複屈折に占めるミラーの複屈折の 割合が95%であった。真空複屈折の測定時の静的複屈折の大きさはアライメントの違いに 起因して、典型的にIe/It(B= 0) = 7×106程度と窒素ガスの測定時より小さい。ミラー の複屈折とミラーの偏光回転の表式からわかるように、静的複屈折が小さいほど静的複屈折 に占めるミラーの複屈折の割合は小さい、もしくは静的複屈折の大きさに依存せず一定であ ると考えられる。そのため、窒素ガスの測定結果より、静的複屈折のうちミラーの偏光回転 の占める大きさは5%以下であると考えられる。これをミラーの複屈折の系統誤差とする。

偏光子と磁場の成す角度

入射光の偏光面は入射光学系のポラライザの角度で決定される。このポラライザが45度か ら∆θだけずれると、複屈折のシグナルの大きさはcos(∆θ)倍だけ小さくなる。

本測定においてはポラライザの設置角度偏光子に刻線された偏光子の偏光軸線を斜辺が45 度に加工されたアルミブロックに目視で合わせることで決定した。設置角度の制度は人間の 目視の角度精度で決まる。この大きさを5度とするとポラライザ設置角度による系統誤差は sin(2∆θ)×∆θ= 3%となる。よって

∆kCMθ

kCM = 3% (4.13)

を計上する。

4.7.2 磁石に関わる系統誤差

磁場分布

真空複屈折においては磁石管内部の磁場2乗の積分値が感度に効く。磁石管内部の磁場の分 布は非一様であるため、磁石が管内部のどのパスを通ったのかに依存して系統誤差を生む。

フィネスが300,000程度あるため光は磁石管の中心±1 [mm]の範囲を通っていると考える。

この条件のもとでANSYSによる有限要素法のシミュレーションで光の通る経路上の磁場の 2乗の積分値が最も大きくなるような場合と最も小さくなるような場合の2種類の経路を求 め、その2つの場合の実効磁場長の差を系統誤差として計上する。図4.22にシミュレーショ ンによって計算した2通りの経路上での磁場分布を示す。

光路上の磁場が最大になる時、図の磁場の2乗の積分値をピーク磁場で割ることで得られる 実効磁場長の最大値は

LBBest= 0.17 [m] (4.14)

同様に計算した実効磁場長の最小値は

LWBorst= 0.16 [m] (4.15)

この両者の場合に計算した実効磁場長の差から系統誤差として6%を計上する。

電流から磁場への変換係数

磁石にI [kA]流した際に、磁石の中心部で発生する磁場の大きさB [T]の関係は事前に、校

position z [m]

0.15 0.1 0.05 0 0.05 0.1 0.15

B [T]

2 0 2 4 6 8 10

Best B

Worst B

図 4.22: 垂直磁場の磁場の積分値が最も大きくなる磁場分布と最も小さくなる磁場分布。この2

種類の磁場分布の違いを系統誤差として計上する

正済みのピックアップコイルを用いて測定されており、磁場発生効率と呼ぶ。カレントトラ ンスから出力される電圧値は最終的に磁場発生効率を用いて磁場に変換している。そのため 磁場発生効率の誤差は統計誤差となる。測定結果によると磁場発生効率の誤差は1.2%であ る。真空複屈折は磁場の2乗に比例するため系統誤差として2%を計上する[25]。

電流読み出し値

磁場の大きさはカレントトランスからの出力電圧を読み取って変換している。カレントト ランスの読み出しの精度は、カレントトランスの規格値から1%である。出力電圧は20dB の減衰器を用いてオシロスコープのマスクテスト、ADCで記録可能な電圧範囲内に減衰さ せて使用している。この減衰器の減衰係数を実測するとϵ= 0.0102(4)という結果が得られ た。真空複屈折は磁場の2乗に比例するため、系統誤差として8%を計上する。

4.7.3 その他の系統誤差

磁場波形に与えるローパスのカットオフ周波数fF P

今回の解析ではフィネスの代表値を320,000に定めそれに応じて定まるカットオフ周波数 fF P を用いた解析を行ったが、実際にはフィネスの値は25%ほど変化している。カットオ フ周波数が正確でないことに起因する解析結果への影響を評価するため、いくつかの異な るフィネスを代表値として用いた解析を行った。その結果を図4.23に示す。図4.23のkCM の推定の中心値の変化からfF P の値による系統誤差を15%とする。

真空の測定において系統誤差も考慮した結果は

kCM = (1.3±2.5)×1020 [T2] (4.16)

82 第4章 データ取得と解析

表4.3: 真空の複屈折測定における系統誤差一覧。

系統誤差名 複屈折への寄与

フィネスF 25%

パルス磁石管内の磁場分布 6%

PDeのゲインGe 4%

PDtのゲインGt 2%

レーザーの波長 λ 0.0003%

偏光子の傾き θP 3%

減衰器の減衰係数ϵatt 4%

ミラーでの静的複屈折Γ 5%

合計 27%

Finesse

280 290 300 310 320 330 340 350 360

103

× ]-2 [TCMk

40

20 0 20 40 60

21

×10

図4.23: 実測された範囲のいくつかの異なるフィネスを代表値として用いて解析を行った。フィ

ネスが変わったことに応じて光子寿命によるカットオフ周波数fF P を変えて解析を行っている。

となる。

第 章 結果と展望

本章では、本実験で得た結果をまとめ、真空複屈折の観測に至るまでの今後の展望を述べる。