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SSR0

4.3 フィルタ操作

る。こうして各サイクル毎にkCM の値を空いているすることで全サイクルでのkCMの分布が得 られる。この分布から全測定結果から得られるkCMの中心値とその誤差を推定する。

理想的には上述の解析方法を全てのサイクルのデータについて行えばよいが、実際には以下の ような過程を経てからフィッティングに移る必要がある。

シグナル領域の決定

共振器は磁場印加後の擾乱を拾っている。解析に使用する時間領域が長く、その擾乱が含ま れている場合は正しい推定ができない。しかし時間領域を短しすぎると磁場領域を含まなく なってしまい感度が悪くなる。そのためシグナル領域を適切に選ぶ必要がある。

イベント選別

共振器の安定性や強度揺らぎの大きさはデータ取得中全く同じとは限らない。安定性や強度 揺らぎの大きさが悪い共振状態のデータを解析に用いることを避けるためにイベント選別 を行う。

フィルタ操作

実際には共振器が完璧にホワイトノイズに従ってはいない。そのため共振器自信の持つ特定 周波数の強度揺らぎが偽シグナルとなり正しいフィット結果を得られない場合がある。その ため適切なフィルタ操作を行う。

以下に続く3節でこれらの要素を議論する。

70 第4章 データ取得と解析

図4.9: Ie/Itと磁場の強度スペクトルを示す。両者のスケールが同じになるように規格化してい るため絶対値に意味はない。

• 磁場駆動時に取得したカレントトランスの出力電圧の第1データ、第2データの時刻-3 [ms]

から5 [ms]までから抽出した磁場の磁場波形を用いて、予備測定データの時刻-3 [ms]から

5 [ms]までから計算したH(t)をp0+p1×((B(t))F P)P D)2の関数形でフィッティングを行 う。この際、予備測定データと磁場波形それぞれに特定の周波数fcut [Hz]でのハイパスフィ ルタをかけてフィッティングを行う。

• このようなフィッティングを予備測定の全200サイクルのデータについて行い、200サイク ルから得られたp1の分布からp1の推定の誤差と中心値を求める。

• 磁場を印加していないデータを使用しているため、バイアスがかかっていない限りは、p1 の推定値は誤差の範囲内で0になるはずである。様々な周波数のfcutで同様の操作を行い、

p1を正しく誤差の範囲内で0に推定でき、推定の誤差が小さくなるようなfcutを選ぶ。

• 実データの持つ強度揺らぎによって推定結果にバイアスがかかっていないことを確認するた めに、理想的なホワイトノイズを再現したシミュレーションデータでも同様の解析を行い、

実データの持つ強度揺らぎがバイアスを与えていないことを確認する。

• また、シグナルが存在していた場合にも正しくp1を推定できることを確認する。予備測定 データに、磁場波形を使って作成した小さなkCMを持つことに相当するシグナル波形を加 えた偽シグナルデータを作成し、そのデータも同様の解析を行い、与えたkCMを正しく推 定できることを確認する。

図4.10に結果を示す。実データ、シミュレーションデータ共にfcutによらず、p1の結果は誤差 の範囲内で0である。実データの場合は低周波揺らぎのためカットオフ周波数を大きくすると誤 差が小さくなっているが、シミュレーションデータの場合は強度揺らぎは全周波数で一定のため ハイパスフィルタをかけて磁場の大きさ自体が小さくなったことで誤差が大きくなっており、理 想的に到達可能な感度が悪くなっていくこともわかる。図4.10を参考にカットオフ周波数を変え

ても誤差の大きさが変わらなくなる300 [Hz]で磁場とH(t)に対してハイパスフィルタをかけて 解析を行った。

[Hz]

fcut

0 100 200 300 400 500 600

]-2 p1 [T

0.3

0.2

0.1 0 0.1 0.2 0.3

9

×10

[Hz]

fcut

0 100 200 300 400 500 600

]-2p1 [T

0.1

0.05 0 0.05 0.1

9

×10

図4.10: fcutの大きさを変えながら解析を行った際のp1の推定結果と誤差。左:磁場を印加してい ない予備測定データを用いた場合の結果。右:同じ統計量を持つシミュレーションデータを用いた 場合の結果。両図の赤線が推定されるべきp1の大きさを示しており、誤差の範囲内で赤線を含ん でいれば正しく推定できていると考えられる。

[Hz]

fcut

0 100 200 300 400 500 600

]-2p1 [T

0 0.05 0.1 0.15 0.2

9

10

×

[Hz]

fcut

0 100 200 300 400 500 600

]-2p1 [T

0.2

0.1 0 0.1 0.2 0.3 0.4

9

10

×

図 4.11: 偽シグナルを与えて解析した際のp1の推定値とその誤差。左:予備測定データを用いた

解析。右:シミュレーションデータを用いた解析。図中赤線が与えたシグナルの大きさに相当して おり、どちらの場合でも誤差の範囲内で正しく推定が行われていることがわかる。

またフィルタをかけて低周波雑音を落として解析を行っても正しくシグナルの大きさを推定で きることは窒素ガス起因のFaraday回転の効果の測定によって確認している。詳しくは付録Aを 参考にしていただきたい。

72 第4章 データ取得と解析