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1秒 共振器透過光強度

3.3 磁石系

図3.20: パルス磁石周りのセットアップの概略図。磁石系は光学定盤と非接触なステンレス土台

上に形成される。系全体が磁気シールドで覆われその内部にパルス磁石が設置されている。駆動 電源からの電流はクリーンブース外から同軸ケーブルで運搬され磁石上部の電極へと伝わり磁石 へ流れる。

この節では磁石系について述べる。まず磁石系全体のセットアップを図3.20に示す。

クリーンブース外に設置された駆動電源から流れる電流は高電圧用の同軸ケーブルを介して磁 石直上の電極まで運ばれる。電極と磁石は自作した同軸ロッドを用いて接続されており電 極まで 流れた電流は磁石に伝えられる。この際、電極の低圧側はカレントトランス内を通しているため、

電極に流れた電流は電圧に変換されてカレントトランスから読み出すことができる。磁石は抵抗 を小さい値に保って運転するために液体窒素用の断熱容器内部に固定されている。漏れ磁場に起 因する回路や検出器へのノイズを低減するために磁石、電極、液体窒素容器はそれぞれ鉄製の磁 器シールドに覆われている。この節で磁石本体、駆動用電源、カレントトランスについて述べる。

防振機構ならびに鉄製シールドを用いたノイズの低減については3.4節以降に譲る。

3.3.1 パルス磁石

2章で述べたように本実験ではパルス磁石を用いて共振器内部に磁場を印加する。図3.22がパ ルス磁石本体の外形である。外部のステンレス補強の内側にはレーストラック型と呼ばれる形状 をした銅線で巻かれたコイルがあり、コイルに対して2.75度の角度で1/4インチステンレス管が 挿入されている。このステンレス管内部が磁場発生領域となりレーザーもこのステンレス管内部

38 第3章 実験セットアップ を通る。磁石を運転する際は銅線の抵抗値を下げるため液体窒素に浸された状態で運転される。

本実験では最大9Tまでの磁場を印加した。図3.21に実際に9.0 [T]と-4.5 [T]で磁場を発生させ た時のステンレス管中心での磁場波形を示す。後述するように本実験では正磁場とおよそその半 分の大きさの負磁場が交互にステンレス管内部へと印加される。ここでは代表値として磁石中心 部での磁場の値を用いたが、実際には図3.23に示すように発生する磁場の大きさは磁石内の位置 によって異なっており、おおよそ20cmに渡って磁場を印加している。磁場領域中での磁場の大 きさが非一様であるため、実効的な磁場長として磁石中心のB2 に対する磁石管全体での磁場の 積分値の比を用いる。具体的には図3.23を用いて

Lef f =

B2(z)dz/B2(0) (3.3)

で実効磁場長を定める。実際に計算を行うとLef f = 0.168 [m]となる。

磁石の詳細は付録Bに譲る。

図 3.21: 発生したパルス磁場の波形。カレントトランスに生じた電圧を読み出すことで測定し

た。左が充電電圧2000[V]でのパルス磁場、右が充電電圧-1000[V]でのパルス磁場。それぞれ 9.0 [T]、-4.5[T]程度の磁場が1[ms]に渡って発生している。

3.3.2 駆動電源

図3.24に駆動電源の写真を示す。合計3.0 [mF]のコンデンサがコンデンサバンク内に設置され

ており、20 [kVA]の電源部から充電を行う。本実験では最大で2.0 [kV]まで充電をしてパルス磁

石を駆動した。コンデンサと磁石は同軸ケーブルを用いて接続されており、この同軸ケーブルを 用いて電流を磁石まで運ぶ。

time [ms]

4 4.5 5 5.5 6 6.5 7

Magnetic Field [Tesla]

10

8

6

4

2

0 2 4 6 8 10

time [ms]

4 4.5 5 5.5 6 6.5 7

Magnetic Field [Tesla]

10

8

6

4

2

0 2 4 6 8 10

図 3.22: 発生したパルス磁場の波形。カレントトランスに生じた電圧を読み出すことで測定し

た。左が充電電圧2000 [V]でのパルス磁場、右が充電電圧-1000 [V]でのパルス磁場。それぞれ 9[T]、-4.5[T]程度の磁場が1 [ms]に渡って発生している。

time [ms]

ĶŁĩš=ĎEƒ

mÔ [ms]

š= [ ]

,ĶŁĩš=~X F

‹‰,ĉ Đĉ0¯

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ZsĎĶŁĩš˜Ďôĕā Ď­ėÅýłŇı

150

2 0 2 4 6 8 10 12

š= [ T ]

図3.23: 磁場マップ。横軸が磁石管内の位置。縦軸は磁場の大きさを示す。黒:実際に11.4 [T]の 磁場を印加した際の実測値。赤:ANSYSを用いて有限要素法でシミュレーションを行った計算値。

この駆動電源の特徴の一つに、正磁場と負磁場を交互に印加できるというものがある。これは 放電時に消費されなかった電流をコンデンサに逆充電するために可能になっており、2 [kV]で充電 した場合-1 [kV]が逆充電され、往路9.0 [T]、復路-4.5 [T]での磁場の印加が可能となる。符号の 違う磁場を交互に印加できるという特徴を用いて、磁場の符号に依存する残留ガスのファラデー 効果の影響や電磁誘導によって生じた電圧変化起因のノイズなどといった真空複屈折のバックグ ラウンド信号から正しく真空複屈折の信号を取り出す。

40 第3章 実験セットアップ

1"0

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<QVURVN

図 3.24: 駆動用電源と光学系が配置されているクリーンブース。

3.3.3 電極

電極は磁石の直上に配置されている。この電極によって駆動電源から伸びている高圧用同軸ケー ブルとパルス磁石が接続される。電極は2枚の銅板で形成されており、一方に高圧用同軸ケーブ ルが接続され、他方に高圧用同軸ケーブルの被覆線が接続される。同軸ケーブルの被覆線が接続 された低電圧側銅板は後述するカレントトランスのホール部に通されている。極板間は真鍮性の ボルトブロックで固定されている。実際の電極の配置を図3.25に示す。

3.3.4 カレントトランス

パルス磁石に流れるパルス電流の読み出しには、カレントトランス(Pearson社 モデル1423) を用いた。図3.26にその写真を、表3.3にその主な性能を示す。

表3.3: Pearson社カレントトランス、モデル1423の性能

パラメータ 性能

変換効率 1 [V/kA]

出力インピーダンス 50 [Ω]

最大読み出し電流 500 [kA]

低周波3dBカットオフ 1.0 [Hz]

高周波3dBカットオフ 1.2 [MHz]

カレントトランスは電磁誘導による起電力を利用した非接触電流読み出し計である。中央のホー ルに電極の低圧側を通すことで電極を流れる電流波形が電圧に変換されて出力される。カレント トランスからの出力電圧はAnalog to Digital Convertorで記録される。カレントトランスの出力

図3.25: 磁石用の電極。磁石直上に配置されている。電極の低圧側はカレントトランスに通して あり、磁石に流れた電流を測定する。

図3.26: Pearson社カレントトランス、モデル1423の写真

42 第3章 実験セットアップ 電圧と実際に印加されている磁場の大きさの関係は事前に校正しており記録された電圧値から印 加された磁場の大きさを知ることが可能である。