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3. プロジェクトの具体的協力可能性及びその実現に必要なファイナンス、 その他の環境整備のあり方

3.2. 解析ソフトとして QGIS を用い、衛星画像は LANDSAT をベースとしつつ、日本の衛星リモー

星リモートセンシングデータを組み合わせて効果的、効率的なモニタリングができる よう、GPSを活用した住民参加による地上調査の方法も含めて現地での適用可能性の 確認、現地関係者への技術指導の実施

3.2.1 モニタリング方法・モニタリングシステムの検討

ゴロンタロ州、ボアレモ県における森林の減少・劣化の原因として、森林での焼き畑に よるトウモロコシ畑の拡大が挙げられており、本 REDD+プロジェクトはこれにかわり、

非林地での収益性の高いカカオ栽培を促進する活動を通じて森林の減少・劣化を抑えよ うという狙いがある。こうした取り組みの成果を可視化するためには、トウモロコシ畑 やカカオ圃場、そして森林の面積の推移を正確に測定する必要があり、そのためには衛 星データを用いた判読が有効である。しかし、カカオ圃場に関しては、面積が小さいう えに日陰用の樹木(シェードツリー)に覆われているため、衛星画像からの判読が困難 である。

そこで本提案では、GPSを使った現地調査による関心エリアの抽出を行い、取得したGPS データをQGIS上で操作し、既存の土地被覆図を編集する方法を検討した。また、測定時 の土地被覆の様子を記録できるようにGPSカメラの導入も検討した。さらに、農業局や 林業局などの職員だけを対象に技術移転を行っても現地調査の回数や調査密度を高める ことは困難と考え、可能な限り現地の農民の協力が得られるようなシステムづくりを目 指した。

ここでQGISとは、上記2.4.1節で述べた通りオープンソースのGISソフトウェアの一つ である。オープンソースソフトウェアの特徴は、ライセンスの制約なく環境を構築でき るメリットがあり、かつ、費用がかからないため安価に環境構築できる点が挙げられる。

QGISは使いやすいグラフィカルインターフェイス(GUI)を持ち、Windows, Linux, Mac と様々な環境で動作することが特徴の一つである。また、ベクタ形式(shape、KML、GPX など)、ラスタ形式(GeoTiffなど)のファイルの読み書きが可能であり、多くの測地系に 対応したソフトウェアである。また、QGISでは効率的に作業を行うために独自アプリケ ーションを作成することも可能である。

QGISをベースとし、有償システムのArcGISをバックアップとして利用したシステムで は一般的なシステムと比べ、2.4.1節で述べた通り、約3分の1と大幅な費用低減が可能 である。また、無償のシステムのみで構成した場合は、約200 分の1 ものコスト低減に

3.2.2 プロジェクト対象地でのQGISベースのモニタリングシステムの実現可能性

本提案手法の実現可能性を確認するため、実際にGPSを使って森林の中にあるトウモロ コシ圃場の外周を記録し、QGIS上でLandsat8画像に重ね合わせる作業を行った。その結 果、衛星画像上で森林の中にあるトウモロコシ圃場と思われるエリアがきれいに抽出で きていた(図3.2-1)。図3.2-1の衛星画像で赤いエリアは森林を表し、うすい緑のエリア はトウモロコシ圃場を表していると考えられる。画像だけでも土地被覆が異なることは 判読できるが、実際にうすい緑の場所に何があるのかは現場に行って確認する必要があ り、かつ、確認した土地被覆を記録として写真で残してことも重要である。また、GPS データを使うことで、Landsat8画像の空間分解能30m(図3.2-1の1画素)では正確に読 み取ることができない、圃場と森林の境界線を抽出できることも分かった。このことか ら、本提案手法を用いることで、より正確な土地被覆の状況を把握出来る事が分かった。

GPS を使った調査の際には、圃場を所有する村の住人にも参加してもらい、一緒に測定 を行った。また、林業局の職員から調査の趣旨の説明を行うとともに今後の調査の協力 を依頼した。

図3.2-1:森林の奥にあるトウモロコシ圃場外周をGPSで記録し、QGIS上でLandsat8画 像と重ね合わせた結果。画像の1画素のサイズは30m。赤色系は概ね植生、緑色系は裸 地を示す。1ヘクタール以下の小規模トウモロコシ圃場が抽出できている事がわかる。

3.2.3 現地における技術指導

本提案手法を、ボアレモ県の農業局および林業局の職員に技術移転することを目的に、

2014年9月8日(月)から12日(金)の5日間、現地概況調査、GPSを使った現地調査 による関心エリアの抽出、およびQGISによるGPSデータを用いた既存の土地被覆図の 編集方法の講習を行った。本研修の様子は地元ボアレモ県の新聞に掲載さた(図3.2-2)。

研修への参加者は、農業局と林業局からそれぞれ3名の合計6名が参加した。

研修前日は、午前中に林業局と農業局と打合せを行い(図3.2-3)、午後から林業局の案内 で、カカオ圃場、チークプランテーション、トウモロコシ畑等、研修のための現地現況 調査を行った。大規模なカカオ圃場はなく、Landsatの30m地上分解能でとらえるには限 界の広さであった。また、遮蔽木の存在も確認できた。トウモロコシ畑については、山 の斜面まで利用した大規模な栽培を行っており、森林減少の要因になっていることが確 認できた。

研修初日は、はじめに県知事から開会の挨拶があり(図3.2-4)、本研修の位置づけの説明 も行われ、その後本プロジェクトの概要、リモートセンシングと GIS の基礎について説 明を行った(図3.2-5)。午後から、QGISの基本的な操作方法について説明を行い、地元 の農家や現地NGO関係者もオブザーバーとして参加した。

研修2日目は、トウモロコシ畑とチークプランテーションをGPSで抽出するため現地調 査実習を行い、取得したGPSデータを使って QGIS上で既存の土地被覆分類図を編集す る作業を行った。作業は、林業局と農業局からそれぞれ3名の研修生が行った。

研修3日目は、カカオ圃場をGPSで抽出するための現地調査実習(図3.2-6)、及びGPS データを使った土地被覆分類図の編集作業を行った(図3.2-7)。

最終日は、本研修のまとめとして、研修で得られた成果について農業局と林業局それぞ れから発表を行い(図3.2-8、図3.2-9)、BAPPEDA(Badan Perencanaan Pembangunan Daerah: 地方開発企画庁)の副長官による修了授与式を行った(図3.2-10)。

本研修の成果報告によって、GPS を使った現地調査の手順とベクタ形式の土地被覆図の 編集方法が習得できたことを確認した。また、現地調査には地元の農家の人たちも参加 し、現地職員と地元の農家が協力しながらデータの収集を行うための道筋をつけること ができた。本研修後に、林業局職員が自主的に土地被覆図の編集作業を進めることとな った。

図3.2-2:地元新聞に研修の事が掲載 図3.2-3:林業局を訪問の様子

図3.2-4:県知事による研修開会の挨拶 図3.2-5:リモセンGISの基礎講義

図3.2-6:カカオ圃場での現地研修 図3.2-7:現地データを使った解析

図3.2-8:農業局による成果プレゼン 図3.2-9:林業局による成果プレゼン

図3.2-10:修了授与式の様子

3.3. 資金型(非市場型)、市場型その組み合わせによるファイナンスの検討

現状の国連気候変動枠組条約の下での国際会議や、日本国内における専門家による

REDD+制度の検討状況を考えると、事業者がREDD+事業を開発するという経済的なイン

センティブは民間企業の社会的責任(CSR)を目的とした資金を除いては現段階では考え にくい状況である。そもそも REDDの考え方は、森林減少・劣化を抑制するプログラム に対して、CO2 削減量クレジットの売却益や環境保全への貢献に対する見返りの資金等 により実施費用をまかなう考え方であった。しかし、国連に参加する各国の森林保全に 対する考え方が、各国の事情により異なる事もあり、REDD+制度の資金をクレジット市 場型で調達するのか、或いは資金型により確保するのか意見が分かれている状況である。

また日本においては民間企業による CO2 削減義務を法制化できない事情もあり、REDD 元来の考え方による資金調達の方法がない状況にあるのが現実である。現段階において 日本の民間企業がREDD+プロジェクトの開発に取り組む可能性としては、日本政府との 協力により将来のREDD+事業化を目指した実証レベルの試験的な取り組みを開始しつつ、

予算的に可能な範囲で実証事業を実施する事にとどまると言わざるを得ないだろう。こ の時、将来CO2削減の義務を負う可能性がある企業、また或いは自社製品の環境負荷低 減をアピールしたい企業などと協力して、実証事業のCO2削減量を算定してクレジット 化し、試験的なクレジット取引を試みる事は有効な手段だと思われる。勿論、個別の REDD+プロジェクトの事業性を精査し各企業の判断として最終的な取り組み可否を検討 する事にはなるが、少なくとも現在取り組みに当たっている各FS事業者によるプロジェ クト実施計画にもとづいてREDD+制度の大目標である森林保全を目指すプロジェクト実 現の可能性を残し、COP21以降に定まるであろう、国連加盟各国と共同したREDD+制度 による気候変動対策に日本として貢献できる可能性を追求する事が、本FS事業を通じて 各専門家と議論した我々の当面の方針である。

中南米各国では具体的にVCS基準のMRV方法論を活用したREDD+プロジェクトが欧米企業 により開発され、大手企業のCSR目的のREDD+の排出権クレジットの買い取りも行われてい る事から、日本の民間企業としてはJCM制度の下で対応可能な範囲でMRV方法論の承認を