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平成 26 年度非エネルギー起源温暖化対策海外貢献事業 ( 途上国における森林の減少 劣化の防止等への我が国企業の貢献可視化に向けた実現可能性調査事業 ) ( スラウェシ島北部における二国間クレジット制度 REDD+プロジェクト実現可能性調査 ) 平成 27 年 3 月 経済産業省 委託先 兼松株式

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平成26年度非エネルギー起源温暖化対策海外貢献事業

(途上国における森林の減少・劣化の防止等への我が国企業の貢献可

視化に向けた実現可能性調査事業)

(スラウェシ島北部における二国間クレジット制度REDD+プロジ

ェクト実現可能性調査)

平成

27 年 3 月

経済産業省

委託先

兼松株式会社

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目次

1. 調査概要 ...1 1.1. 調査目的 ... 1 1.2. 調査内容 ... 1 1.3. 調査実施体制 ... 2 2. インドネシア及びゴロンタロ州・北スラウェシ州の気候変動を巡る情勢・政策等の概況 ...3 2.1. インドネシア政府の気候変動に関する施策、実施体制等の動向の調査 ... 3 2.2. ゴロンタロ州及び北スラウェシ州の気候変動に関する施策、実施体制の調査 ... 12 2.3. RAD-GRKで用いられている排出係数作成の調査 ... 19 2.4. 持続可能なモニタリング体制の検討 ... 20 3. プロジェクトの具体的協力可能性及びその実現に必要なファイナンス、その他の環境整備のあり方 に関する検討 ... 30 3.1. 兼松、ゴーベルグループ、地方政府の3 者によるモニタリング時の体制作りの検討 ... 30 3.2. 解析ソフトとしてQGISを用い、衛星画像はLANDSATをベースとしつつ、日本の衛星リモー トセンシングデータを組み合わせて効果的、効率的なモニタリングができるよう、GPSを活用した住 民参加による地上調査の方法も含めて現地での適用可能性の確認、現地関係者への技術指導の実施32 3.3. 資金型(非市場型)、市場型その組み合わせによるファイナンスの検討 ... 36 4. プロジェクトに適用可能な排出削減方法論の検討と同方法論を用いた削減見込量の試算 ... 39 4.1. JCMのJCへの登録のための方法論のブラッシュアップの実施 ... 39 4.2. 土地被覆面積データ、ゴロンタロ州政府による排出係数を用いた削減量の計算 ... 44 4.2.2 結果 ... 47 5. プロジェクトを通じて得られる経済的効果とその他の効果に関する検討... 59 5.1 排出削減見込量とモニタリングコスト低減効果を踏まえたビジネスプランの作成 ... 59 5.2 アフリカ、中南米諸国等への横展開の可能性の検討 ... 62 5.3 対象地での生物多様性保全や地方政府による土地利用管理改善への貢献可能性 ... 67 6. 総括 ... 70 資料編 添付資料1 MRV 方法論

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1. 調査概要 1.1. 調査目的 インドネシア・スラウェシ島北部においては、トウモロコシ移動農業が森林減少の大きな要 因となっている。平成24 年度の調査からゴロンタロ州全域では年平均 1.17%の割合で森林 減少が進行しており、ゴロンタロ州政府のRAD-GRK(州別 GHG 排出削減計画)によると、 2010 年におけるゴロンタロ州内の 1 年間の森林減少面積は 4,576ha である。隣接する北ス ラウェシ州においてもONF インターナショナルによると、地域住民による農業生産活動が 森林減少のドライバーとなっており、ONF の REDD+プロジェクト対象地では年平均 2% で森林減少が進んでいる。 そこで本調査は、昨年度の調査結果を踏まえ、ゴロンタロ州及び北スラウェシ州におけるト ウモロコシ栽培のカカオ栽培への転換や森林モニタリング等の対策を行う REDD+プロジ ェクトの実現可能性について、プロジェクトの実施に必要となる方法論の構築や実施体制の 確立等に向けた以下1.2 に示す項目について調査・検討を実施した。 1.2. 調査内容 (1) インドネシア及びゴロンタロ州・北スラウェシ州の気候変動を巡る情勢・政策等の概 況の把握 REDD+庁の動向や、インドネシア国内及びゴロンタロ州・北スラウェシ州における RAD-GRK のモニタリング実施状況等を調査し、それに対応するモニタリング体制及 び方法を検討する。  インドネシア政府の気候変動に関する施策、実施体制等の動向の調査  ゴロンタロ州及び北スラウェシ州の気候変動に関する施策、実施体制の調査  RAD-GRK で用いられている排出係数の調査  持続可能なモニタリング体制の検討 (2) プロジェクトの具体的協力可能性及びその実現に必要なファイナンス、その他の環境 整備のあり方に関する検討 安価で精度の高いモニタリングシステムを構築するため、LANDSAT の衛星データを ベースとしてオープンソースソフトウェアのQGIS (Quantum GIS)を用いる解析方 法を検討するとともに、具体的なモニタリング体制の構築を計る。また、プロジェク ト実現に必要なファイナンス等について検討する。  兼松、ゴーベルグループ、地方政府の三者によるモニタリング時の体制作りの検 討  解析ソフトとして QGIS を用い、衛星画像は LANDSAT をベースとしつつ、日 本の衛星リモートセンシングデータを組み合わせて効果的、効率的なモニタリン グができるよう、GPS を活用した住民参加による地上調査の方法も含めて現地で

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の適用可能性の確認、現地関係者への技術指導の実施  資金型(非市場型)、市場型、その組み合わせを含めたファイナンスの検討 (3) プロジェクトに適用可能な排出削減方法論の検討と同方法論を用いた削減見込み量 の試算 類似のドライバーで森林減少が発生しているインドネシア国内をはじめ、他国への横 展開可能性を考慮し、また、実効性を高めて JCM の JC への登録を目指すため方法 論をブラッシュアップする。さらにブラッシュアップした方法論に基づいて排出削減 見込み量を試算する。  JCM の JC への登録のための方法論のブラッシュアップの実施  土地被覆面積データ、ゴロンタロ州政府による排出係数を用いた削減量の試算 (4) プロジェクトを通じて得られる経済的効果とその他の効果に関する検討 ブラッシュアップした方法論に基づく削減量を勘案してビジネスプランを作成し、モ ニタリング費用低減による事業性向上の効果を検討する。  排出削減見込量とモニタリングコスト低減効果を踏まえたビジネスプランを作 成  アフリカ、中南米諸国等への横展開の可能性の検討  対象地での生物多様性保全や地方政府による土地利用管理改善への貢献可能性 について検討 1.3. 調査実施体制 本調査の実施体制を下図に示す。 宇宙システム開発利用推進機構 委託業務: ・ 衛星リモセンによるモニタリングアプローチ及び体制の検討 とキャパシティビルディング ・ ブラッシュアップした方法論に基づく削減見込み量の計算 ゴーベルグループ DKM 社 委託業務: ・ 現地調査支援業務(現地政府、コミュニティ等との調 整、協力アレンジ等) ゴロンタロ州政府 ゴロンタロ州開発計画庁(BAPPEDA) ボアレモ県政府:県知事、林業局、農業局 コミュニティ 協力 外注 三菱 UFJ リサーチ&コンサルティング 委託業務:MRV ブラッシュアップ 経済産業省 委託 日本大学大学院客員教授・小林紀之 REDD+専門家としての助言・指導 兼松株式会社 調査項目: ・事業取りまとめ ・現地調査 ・対象国関係者との交渉 ・JCM 登録作業 イー・アール・エム日本 調査項目: ・報告書取りまとめ、調査計画作成支援、調査データの分析

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2. インドネシア及びゴロンタロ州・北スラウェシ州の気候変動を巡る情勢・政策等の概況

2.1. インドネシア政府の気候変動に関する施策、実施体制等の動向の調査

2.1.1. インドネシアの REDD+実施に関する組織体制の動向

インドネシア政府は、2013 年 12 月に大統領令No.62/2013 によりREDD+実施に関わる省レ ベルの組織としてREDD+庁を設立し、その長官として Heru Prasetyo氏を任命した。これに 引き続き、2014 年には 大統領令No.71/M2014 により、REDD+庁の運営において長官を支 援する 4 名の副長官を任命した。Dr. Ir. William Palitondok Sabandarが運営副長官、Dr. Ir. Agus Pratama Sariが計画・資金担当副長官、Nurdiana Bariyah Darusが技術システム・モニタリン グ担当副長官、Dr. Ir. Nur Masripatinがガバナンス・組織間関係担当副長官として就任した1

それぞれの主な役割は以下の通り。  運営副長官は、国レベル、準国レベルでのREDD+を実施するための、同庁での日々の 運営、プログラム間の相乗効果、ステークホルダー及びその他のパートナー間の調整 に責任を負う。  計画・資金担当副長官は、全てのREDD+プログラムが良い計画となるようにし、政府 や民間企業、行政といった様々なセクターからのREDD+への支援を拡大するREDD+ 資金メカニズム(FREDDI)の運営をリードする。  技術・システム・モニタリング担当副長官はREDD+の技術的支援の提供に責任を負う。  ガバナンス及び組織間関係担当副長官は、森林・泥炭セクターのガバナンスを強化す る重要な任務を担っている。ガバナンスとステークホルダーの協働はREDD+の重要な 成功要因であり、同副長官は、法令の適用、持続可能な森林経営、政策やプログラム 間のシナジーの創出、各セクター間のREDD+への関与の改善に責任を負う。 REDD+庁の役割は中央から地方までの全てのレベルでのREDD+に関する政策とプログラ ムを統合し、調整を図ることであるが、REDD+の実施は準国レベルとなるとしている。 このため、REDD+庁と地方政府との間でREDD+に係る協力に関する覚書(MOU)を締結 している。REDD+庁はこれまでに以下の 7 つの州とREDD+の実施に関する覚書(MOU) を締結した。2015 年には全ての州に拡大することを予定していた2 表 2.1-1:REDD+庁と覚書を締結している州

1 Indonesia’s REDD+ Agency Inaugurated Four Deputies,

http://www.norway.or.id/Norway_in_Indonesia/Environment/Indonesias-REDD-Agency-Inaugurated-Four-Deputies/#.VI FLOndcXIV

2

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州 対象県 締結年月日

1 Jambi 1. Merangin

2. Muara Jambi 3. Tebo

2013 年 6 月 21 日

2 Central Kalimantan 1. Barito Selatan 2. Gunung Mas 3. Kapuas 4. Katingan 5. Kotawaringan Timur 6. Murung Raya 7. Pulang Pisau 2012 年 10 月 11 日

3 East Kalimantan 1. Berau

2. Kutai Kartanegara

2013 年 6 月 21 日

4 West Sumatra 1. Solok Selatan 2. Solok 3. Sijunjung 4. Padang Pariaman 5. Pasaman Barat 6. Pasaman 7. Pesisir Selatan 8. Padang (Kota) 2014 年 3 月 12 日

5 Central Sulawesi 1. Donggala 2. Tolitoli 3. Sigi 4. Tojo Una-Una 5. Parigi Moutong 2014 年 4 月 13 日 6 South Sumatra - 2014 年 8 月 20 日 7 Riau - 2014 年 10 月 29 日 (出所:インドネシアREDD+庁 http://www.reddplus.go.id/mou-provinsi) しかしながら、2014 年 10 月 20 日にインドネシア政府の政権が交代し、ジョコ・ウィドド (通称ジョコウィ)政権が発足後、行政組織の改編が行われ、REDD+の実施体制にも影響 が及ぶことが考えられる。10 月の新政権の組閣では省が再編され、環境省と林業省が統合 して環境・林業省(Ministry of Environment and Forestry)となり、環境に関わる事項は林業 政策と併せて環境・林業省が所轄することとなった3。また、2015 年 1 月 21 日にジョコウ ィ大統領は、環境・林業省の組織体制に関する大統領令No.16/2015 に署名し、REDD+庁を 解散し、その役割と機能を環境・林業省に統合することを決定している。同大統領令には 国家気候変動評議会(DNPI)の同省への統合についても含まれている。他方、具体的な 統合方法などついては定められておらず。今後具体的に検討が進められると思われる4 3 インドネシア・ジョコウィ政権の基本政策(2), IDE-JETRO, 地域研究センター, 佐藤百合, 2014, http://www.ide.go.jp/Japanese/Research/Region/Asia/Radar/201412_sato_2.html 4 Jakarta Post, 2015 年 1 月 29 日,

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2.1.2 RAD-GRK のモニタリングガイドラインの運用

森林セクター含めRAD-GRK5Provincial action plan for GHG emission reduction:州別

GHG排出削減計画)実施時のGHG排出量及び排出削減量のモニタリング方法のガイドラ インが国家開発企画庁(BAPPENAS)により策定されており、その概要は以下の通りであ る。本FSではこれを参照しつつ、モニタリング方法を検討した。 1) モニタリングの対象セクター 2013 年に国家開発企画庁(BAPPENAS)は「RAD-GRK実施時のモニタリング、評価、報 告(MER)の技術ガイドライン(以下、MERガイドライン)」を作成しており6、各州にお けるセクターごとのGHG排出量のモニタリングに関わる技術的方法を示している。同 MERガイドラインでは以下のセクターをカバーしている(表 2.1-2)。 表 2.1-2:RAD-GRK の MER ガイドラインが対象としているセクター 1 土地利用部門  農業セクター  森林・泥炭セクター 2 エネルギー関連部門  エネルギーセクター  交通セクター 3 廃棄物管理部門  固形廃棄物セクター  液体廃棄物セクター 2) モニタリングの対象とする活動と排出量の計算

RAD-GRK の MER は、緩和活動の達成度合いと RAD-GRK のもとでの GHG 排出削減量の モニタリング、評価、報告を行うことと定義されている。具体的には以下のコア活動とサ ポート活動をモニタリングすることとしている。

ガイドラインでは、排出量の計算は次の式によることとされている。

(GHG 排出量)=(活動データ)×(排出係数)活動データは、GHG 排出・吸収につな がる開発に関連した活動、あるいは人間による活動のデータであり、主要パフォーマンス 指標(main/specific performance indicators)を用いてモニタリング・評価を行うことになっ ている。これらの指標は各州の RAD-GRK の緩和活動により異なる。 3) 排出係数の取扱い方針 GHG の排出係数・吸収係数は活動の単位あたり排出量・吸収量を示すものである。当該 地域独自の排出係数・吸収係数が利用できる場合は、これを利用するべきとしている。地 5

RAD-GRK: Rencana Aksi Daerah Penurunan Emisi Gas Rumah Kaca

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Technical Guideline for Monitoring, Evaluation, and Reporting (MER) of RAD-GRK Implementation, BAPPENAS, 2013

 コア活動:GHG の排出や吸収に直接的な影響を及ぼす活動

 サポート活動:GHG の排出削減に間接的に影響を及ぼす活動、コア活動の実施促 進をする活動、コア活動の実施を可能にする活動

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域独自の排出係数・吸収係数が利用できない場合は、他の地域あるいは、国、州の排出係 数を用いることが推奨されている。また、報告を簡便にするため、MER ガイドラインの セクター別の章に排出係数・吸収係数が記載されている。これらにない排出係数・吸収係 数については、PPN/BAPPENAS の大臣が気候変動調整チーム(Climate Change Coordination Team)とともに決定することとなっている。 4) モニタリング・評価・報告(MER)の実施ステップ 森林・泥炭セクターを含む土地利用部門の MER の実施手順は次のようになっている。 【①モニタリングフェーズ】 a) 報告年で実施された地方開発での排出削減活動のリストアップを行う。活動 データは、活動実施報告書や地方政府の報告書、その他のステークホルダー の報告書から入手する。 b) 上記でリストアップした活動をコア活動とサポート活動に分類する。 c) コア活動をさらに、炭素蓄積量の減少防止(PPCK)及び炭素蓄積量増加(PCK) の観点で、森林分野のコア活動と農業分野のコア活動に分類する。 d) キーパフォーマンス指標に活動実施達成度を含める。 e) 土地被覆タイプごとの面積変化により表された活動データに、活動実施達成 度を含める。 【②評価フェーズ】 評価フェーズでは、地方政府と中央政府が共同で RAD-GRK の活動を以下の目的で 評価する。  GHG 排出削減行動計画を排出削減量・活動データにより評価する。  州での土地被覆ごとの活動データの変化を評価する。  実施された RAD-GRK の活動を評価し、次年度の排出削減活動への提言を行 う。 地方政府は評価を行う際、実施した活動及び投じたコストに対する GHG 削減を評価 するが、投じたコスト(投資)とは政府予算だけでなく、その他のステークホルダ ーの投資も含む。また、排出係数は中央政府が推奨する値を提示しているが、各地 方独自の排出係数を使用しても構わない。 【③報告フェーズ】 RAD-GRK の活動の報告フェーズは、RAD-GRK の活動の報告、検証、報告書の修正、 報告書の承認の段階からなる。

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5) 森林・泥炭セクターの MER の概略

森林・泥炭セクターの MER では、RAD-GRK の BAU ベースラインで算定された排出源に ついて、排出削減活動のモニタリング評価を行う。このセクターでのコア活動は、排出削 減及び排出削減計算に直接的に影響を与える活動であり、次のデータをモニタリングする。  BAU シナリオと比較した活動データの変化  BAU シナリオと比較した排出係数の変化 森林・泥炭セクターでの活動データは、GHG 排出あるいは炭素固定をもたらすような土 地利用変化が生じたときの森林、土地の面積である。MER ガイドラインではモニタリン グ用に下表のようなモニタリングフォームが作成されている。 表 2.1-3:MER ガイドラインに示されている森林・泥炭セクターのモニタリングフォーム 種類 モニタリングフォーム 活動のモニタリング用フォーム  コア活動のモニタリングフォーム  サポート活動のモニタリングフォーム 排出削減計算用サポートフォーム  鉱山用地での森林・土地利用変化の計算フォーム  泥炭地での森林・土地利用変化の計算フォーム (出所:Technical Guideline for Monitoring, Evaluation, and Reporting (MER) of RAD-GRK Implementation, BAPPENAS, 2013) MER ガイドラインにおける森林・泥炭セクターでのコア活動、サポート活動のモニタリ ング項目は表 2.1-4 に示した項目が挙げられている。 表 2.1-4:コア活動・サポート活動のモニタリング項目 活動のタイプ モニタリング項目 コア活動 a) 炭素蓄積量減少の防止(PPCK): 高い炭素蓄積量の土地被覆から低 い土地被覆への変化の予防、防止、 軽減を意図する活動(例:違法伐 採 や 違法 占拠 の防 止の ため の警 備、土地利用改変に係る規制、森 林火災からの保護、森林管理シス テムの改善など) b) 炭素蓄積量の増加(PCK):炭素吸 収源の改善を意図するような活動 であり、森林区域やその他の利用 利用区域での植林、森林や土地回 復など  コア活動の内容  実施場所  目標  実施期間  予算配分(計画、執行)  キーパフォーマンス指標  活動実施率(%)  BAU 排出  緩和活動による排出量  排出削減量  コベナフィット

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活動のタイプ モニタリング項目 サポート 活動 a) GHG 排出削減目標の達成に間接的 に貢献する活動 b) こ れ を 可 能 に す る 条 件 か ら な る RAD-GRK の森林・泥炭セクターの 活動  報告年までに実施された RAD-GRK での 緩和活動  活動実施場所(行政区域、GPS データ、 GIS データなど)  関連するコア活動  サポート活動の分類(例:組織能力の強化、 品質改善、インフラや技術の提供、規制、 政策の策定など)  緩和活動の実施期間  排出削減活動の目標値  報告年における緩和活動の達成度合い(開 始年からの累積達成度)  報告年における緩和活動への予算配分計 画  報告年における緩和活動の予算執行額  緩和活動の財源  緩和活動の実施機関 2.1.3 国レベルの森林参照排出レベル(FREL)の策定 UNFCCC 下で途上国が REDD+を実施する場合、決定 1/CP.16 のパラ 71 により以下の4つ を策定、構築することが必要とされている。  REDD+国家戦略  森林参照排出レベル(FREL)・森林参照レベル(FRL)  国家森林モニタリングシステム  セーフガード情報システム インドネシア政府はこれを踏まえ、FRELの構築を進めてきており、2014 年 12 月付けで REDD庁(Badan Pengelola REDD+:BP REDD+)がインドネシアのFRELを公開している7。 FRELはインドネシアがREDD+を実施する際の同国の実績を評価するベンチマークとなる ものであり、技術的な定義は、「将来のある時点における実際の排出量に対して比較する 参照として用いられるCO2の総排出量の予測」としている。 FRELにおける森林の定義・範囲:林業省では、森林の定義は、「成熟時の樹高が 5m以上 で樹冠被覆が 30%を超える最低面積 0.25haの土地」としている。この定義は、林業省が A/R-CDMに関する省令No.14/2004 で定めたものであり、林業省が衛星画像による分類のグ ランドトゥルースのためにも用いられている。2010 年にFAOに提出した森林資源アセスメ ントでは異なる定義が用いられているが、FREL構築ではその定義は用いていない。なお、 FREL構築に際しては、「実用的な森林の定義(working definition of forest)」を用いて土地 被覆図が作成された。この土地被覆図は、ポリゴンの最小単位が 5 万分の1の地図上で

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Submission By Indonesia National Forest Reference Emission Level For Deforestation And Forest Degradation (FREL) In The Context Of The Activities Referred To In Decision 1/CP.16, Paragraph 70 (REDD+) Under The UNFCCC,

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0.25cm2(6.25haに相当)である衛星画像を解析して作成されたものである。「実用的な森 林の定義」とはインドネシア国家規格SNI8033:2014「光学衛星リモートセンシング画像の 解析結果に基づく森林被覆変化の算出方法」において用いられているものである。同規格 では、森林は、色、特性、明度等を含む衛星画像データの特徴に基づき定義されている。 森林は、森林の種類、劣化や遷移レベルに基づき 7 つの区分に分類されている。この 7 区 分のうち 6 区分が自然林として区分されている(表 2.1-5)。 表 2.1-5:森林参照排出レベルで用いられた土地被覆区分 No. 土地被覆区分 カテゴリー IPCC の分類

1 Primary dryland forest Natural forest Forest 2 Secondary dryland forest Natural forest Forest 3 Primary mangrove forest Natural forest Forest 4 Secondary mangrove forest Natural forest Forest 5 Primary swamp forest Natural forest Forest 6 Secondary swamp forest Natural forest Forest 7 Plantation forest Plantation forest Forest 8 Estate crop Non-forest Crop land 9 Pure dry agriculture Non-forest Crop land 10 Mixed dry agriculture Non-forest Crop land 11 Dry shrub Non-forest Grassland 12 Wet shrub Non-forest Grassland 13 Savanna and Grasses Non-forest Grassland 14 Paddy Field Non-forest Crop land 15 Open swamp Non-forest Wetland 16 Fish pond /aquaculture Non-forest Wetland 17 Transmigration areas Non-forest Settlement 18 Settlement areas Non-forest Settlement 19 Port and harbor Non-forest Other land 20 Mining areas Non-forest Other land 21 Bare ground Non-forest Other land 22 Open water Non-forest Wetland 23 Clouds and no-data Non-forest No data

(出所:Submission by Indonesia, National Forest Reference Emission Level for Deforestation and Forest Degradation in the context of the Activities Referred to in decision 1/CP.16, Paragraph 70 (REDD+) under UNFCCC, December, 2014) FREL の算出にあたって、森林減少、森林劣化、泥炭を以下のように定義している。  森林減少(deforestation):特定の場所において、一度のみ発生した自然林カテゴリー の被覆区分からその他の土地被覆区分への変化を指す。この定義は FAO が用いてい る森林減少の定義とは異なる。  森林劣化(forest degradation):一次林区分から二次林区分への変化を指す。  泥炭(peat land):部分的に分解した有機物(炭素含有量が 12%以上)が蓄積した場 所を指し、炭素を豊富に含む層の厚さが最低 50cm 以上である場所と定義されている。

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FREL 算出の対象範囲は、インドネシアの国土のうち 2000 年の時点で自然林(表 2.1-5 の 区分 1 から 6)であった場所であり、国土の 52%に相当する 9930 万 ha である。これは林 業省が定義する国の森林地域の森林ステータスに関わらず、一次林、二次林を含むものと している。泥炭地については、インドネシアには 1490 万 ha の泥炭地があるが、2000 年時 点でこのうち 850 万 ha が自然林で覆われており、FREL の算出にはこの 850 万 ha を対象 に含めている。その他の泥炭地は FREL の算出から除外している。 また、FREL の算出の活動の対象範囲としては森林減少と森林劣化を含めている。ただし、 炭素隔離に関する信頼性のあるデータは限られていることから、より詳細のレベルでの森 林劣化のうち、森林炭素ストックの保全、森林の持続的管理、森林炭素蓄積の強化などは FREL の算出から除外している。 FREL の算出は林業省が作成した土地被覆データをもとに行われている。このデータは国 家森林モニタリングシステム(NFMS)のデータでもあり、1990 年代から定期的に更新さ れている。FREL の算出には、このうち 2000 年、2003 年、2006 年、2009 年、2011 年、2012 年のデータが参照期間のデータとして用いられた。 土地被覆図は、Landsat の衛星画像の解析により作成されたものである。画像解析の最小 ポリゴン単位は、5 万分の 1 の縮尺で 0.25cm2(6.25ha)であるため、土地被覆図の最小マ ッピング単位は 6.25ha といえる。Landsat のデータは 23 区分の土地被覆区分に分類され、 地上調査と高解像度画像でさらにその分類について確認がなされている。 以上を踏まえ算出された FREL は次のようになっている。インドネシア全体での 2000 年 から 2012 年までの年間の森林減少・森林劣化及びそれに伴う泥炭の分解による CO2排出 量は図 2.1-1 に示す通りである。2000 年から 2012 年の参照期間を用いた場合、森林減少 と森林劣化による森林参照排出レベルは 0.269 GtCO2e/year となる。さらにこの値に泥炭 の分解による 0.136 GtCO2e/year(年間の増加率は 2.87%)が加わる。この FREL は 2013 年から 2020 年までの実際の排出に対するベンチマークとして用いられるものである。こ れに基づくと、2013 年の森林減少・森林劣化及びそれに伴う泥炭の分解により排出量は 0.41GtCO2e と推測され、2020 年には、0.441GtCO2e に増加することが見込まれる。2013 年から 2020 年までの各年の排出削減活動の評価のベンチマークとしての森林参照排出レ ベルは表 2.1-6 のようになっている。

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図 2.1-1:2000 年から 2012 年までの森林減少・森林劣化及びそれに伴う泥炭の分解による 各年の年間及び全期間の平均の CO2 排出量(MtCO2e)

(出所:Submission by Indonesia, National Forest Reference Emission Level for Deforestation and Forest Degradation in the context of the Activities Referred to in decision 1/CP.16, Paragraph 70 (REDD+) under UNFCCC, December, 2014) 表 2.1-6:森林減少・森林劣化及びそれに伴う泥炭の分解による年間の REL(tCO2e) 年 森林減少 森林劣化 泥炭分解 年間総排出量 2013 213,129,100 56,405,744 140,866,421 410,401,265 2014 213,129,100 56,405,744 144,909,287 414,444,131 2015 213,129,100 56,405,744 149,068,184 418,603,028 2016 213,129,100 56,405,744 153,346,440 422,881,285 2017 213,129,100 56,405,744 157,747,483 427,282,328 2018 213,129,100 56,405,744 162,274,836 431,809,680 2019 213,129,100 56,405,744 166,932,124 436,466,968 2020 213,129,100 56,405,744 171,723,076 441,257,920

(出所:Submission by Indonesia, National Forest Reference Emission Level for Deforestation and Forest Degradation in the context of the Activities Referred to in decision 1/CP.16, Paragraph 70 (REDD+) under UNFCCC, December, 2014) BAPPENAS によると、インドネシアの人口増加率は 1.19%(2010 年の総人口は 2.38 億人、 2030 年には 2.96 億人)に達すると予測している。この人口増加により農産物の需要や居 住地、インフラ開発の需要が増加することが見込まれる。農産物の需要増加はグローバル での農産物の需要増加とも関連している。FREL 構築の報告書によると、改良された優良 な品種や持続可能な農業の実践などの取り組みが行われなければ、農産物の需要増加は農 業用地の需要増加をもたらし、森林への圧力が高まりうるとしている。

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2.2. ゴロンタロ州及び北スラウェシ州の気候変動に関する施策、実施体制の調査 2.2.1 ゴロンタロ州における州別温室効果ガス排出削減計画(RAD-GRK)の実施 1) ゴロンタロ州の RAD-GRK の実施関わる組織 ゴロンタロ州の RAD-GRK の実施については、RAD-GRK によると行政、民間企業、コミ ュニティの三者により実施することとしている。この場合の行政とは、中央政府、地方政 府(州、県、市)の両者を含む。行政がカバーする 31 の行政分野のうち、RAD-GRK の GHG 排出削減に関連するのは、①公共事業、②住宅、③空間計画、④開発計画、⑤交通、 ⑥環境、⑦農業・食糧安全保障、⑧林業、⑨エネルギー・鉱業、⑩産業、⑪畜産の 11 分 野が関わるとしている。これに関連して、ゴロンタロ州政府には次のような部門がある。 農業・安全保障局、漁業・海洋局、森林・鉱山局、教育・青少年・スポーツ局、交通・観 光局、社会福祉局、保健局、労働・移住局、公共事業局、産業・商業・協同組合局、プラ ンテーション・畜産局の 11 部門である。 上記の州政府部門以外に RAD-GRK の実施関わる機関としては、BAPPEDA(州開発企画 庁)、州の技術機関である環境・研究情報技術機関、州投資庁、農村エンパワーメント・ 貧困削減庁がある。 また、政府関連機関以外では、石油ガス公社の PT. Pertamina (Persero)、国営電力公社の PT. Perusahaan Listrik Negara も RAD-GRK の実施関連事業者として挙げられている。高等教育 機関では、ゴロンタロ州立大学環境研究センターが挙げられており、民間セクターでは、 インドネシア陸運協会(Organda)などが挙げられている。 2) ゴロンタロ州の森林セクターの RAD-GRK の実施 ゴロンタロ州の法定林の面積は 2010 年時点で 824,668ha(州の面積は 12,435km2)であり、 2010 年における 1 年間の森林減少の総面積は 4,576ha となっている。また、RAD-GRK の 中でゴロンタロ州の森林分野での GHG 排出量の算定が行われており、2000 年から 2010 年までのゴロンタロ州の森林分野の累積 GHG 排出量は 10,783,470[tCO2e]であり、2020 年 には 21,566,940[tCO2e/year]となると試算されている。BAU シナリオでは年間平均排出量 を 1,078,347[tCO2e/year]としている。これらの試算をもとに、ゴロンタロ州の森林分野で の 排 出 削 減 目 標 は 、 2020 年 ま で の 累 積 排 出 量 を BAU 比 で 25 % 削 減 と な る 16,175,205[tCO2e]とすることを掲げている。 ゴロンタロ州の RAD-GRK の森林セクターの活動と関係機関の概要は表 2.2-1 の通りであ り、減少する土地被覆を回復させることが活動に挙げられているが、土地の開発制限は土 地の所有権の問題もあり困難としている。

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表 2.2-1:RAD-GRK の森林セクターに関連する機関と活動 セクターの関係機関 GHG 排出源 GHG 排出削減活動 備考  林業省  州森林・鉱山局  林 業 公 社 ( Perum Perhutani)  BAPPEDA(州開発企 画庁)  セクターの政策によ る増加  農業バイオマス  土地被覆の減少  森林政策の評価  森林、土地の回復計 画  土地被覆の増加  緑 の イ ン ド ネ シ ア (MIH)に向けた実 施支援  土地の開発制限も代 替 手 段 と し て あ る が、土地の所有権に より困難がある。  森林回復に加え、植 林、都市の緑地帯の 整備なども考えられ る。 (出所:ゴロンタロ州 RAD-GRK、p.103) ゴロンタロ州では、2013 年から 2020 年までの RAD-GRK での森林セクターの活動プログ ラムとして次の5つを挙げている。本 FS で検討している REDD プロジェクトは、これら のプログラムに整合性があり、流域の森林回復と非木材林産物の生産増加に資するものと 考えられる。  マングローブ林の回復促進  優先度の高い流域(watershed)の森林回復  優先度の高い流域の劣化した土地の回復  非木材林産物の生産増加、環境サービスの増加  違法伐採への対処 3) ゴロンタロ州での RAD-GRK のモニタリングと評価の実施 GHG 排出のモニタリング計画は毎年実施するものとして、ゴロンタロ州では次のような 活動を行うこととしている。 <モニタリングのコンポーネント> ① RAD-GRK のモニタリングは、行政、大学、民間企業により実施される。 ② ゴロンタロ州の GHG 排出量の算出はゴロンタロ州環境局(BLH)のチームが関 連部局、県、市の行政府、民間企業と協力して毎年行う。 ③ GHG 排出量のベースラインデータはゴロンタロ州 BLH のチームにより算出され る。 ④ ゴロンタロ州の GHG 排出源について、ベースラインデータを決め、一連のベー スラインデータとそれぞれの年の関係付けを行うことで各年の進捗を計算する。 ⑤ ゴロンタロ州の中期開発計画(RPJMD)2017 年~2021 年において、GHG 排出削 減の目標値を定める。 ⑥ RPJMD に含まれる緩和行動の指標は、他のセクターの政策に統合され、地方部 門別戦略計画(Renstra-SKPD)、地方部門別行動計画(Renja-SKPD)の項目とな る。

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<評価のコンポーネント> ① ゴロンタロ州における様々な GHG 排出源と排出量のベースラインデータが作成され、 比較、検証により最適なベースラインデータを得る。 ② GHG 排出源と排出量の算定結果は、マスメディアや電子媒体にて公表される。また、 ゴロンタロ州の行政や民間企業、コミュニティが実施した活動をレビューする。 ③ GHG 排出削減の行動計画の結果を評価するため、GHG 排出削減の担当責任者が配置 される。GHG 排出削減行動計画は、3~5 年ごとに各種計画、政策との関連で評価さ れる。RAD-GRK の統合のメカニズムは図 2.2-1 に示すとおり。 ④ RAD-GRK の評価に続いて、開発計画や空間計画、他のセクターの政策の評価を実施。 ⑤ ゴロンタロ州の RAD-GRK に関して、内務省規定 No.54 of 2010 に沿って計画と予算 について評価する。 RAD-GRK における GHG 排出削減の業績目標に係る指標は、地方中期開発計画(RPJMD)、 地方部門別戦略計画及び同実施計画(Renstra/Remja-SKPD)や他のセクターの政策に包含 され、定量化される。最終的にモニタリング評価は、政府機関の事業評価報告書(LAKIP) にまとめられる。報告結果は、中央政府、地方政府(州、県、市)の毎年の開発政策の形 RPJPN 国家長期開発計画 RPJMN 国家中期開発計画 RKP 政府行動計画 RAN-GRK 国家 GHG 削減計画 RAD-GRK 州 GHG 削減計画 RPJPD 地方長期開発計画 RPJMD 地方中期開発 計画 RKPD 地方政府実施 計画 Renstra-SKPD 地方部門別 戦略計画 Remja-SKPD 地方部門別 実施計画 APBN 国家予算 APBD 地方政府予算 Renstra K/L 省庁戦略計画 RenjaK/L 省庁行動計画

図 2.2-1:RAD-GRK と国レベル、地方レベルの各種政策・計画フレームワークとの関連 (出所:ゴロンタロ州 RAD-GRK, p.110)

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2.2.2 北スラウェシ州における州別温室効果ガス排出削減計画(RAD-GRK)の実施 本 FS では将来的にゴロンタロ州から周辺地域に展開することを想定し、ゴロンタロ州の 東に隣接する北スラウェシ州(図 2.2-2)の森林セクターの GHG 排出状況や同州の GHG 排出削減計画についてレビューを行った。北スラウェシ州においても、ゴロンタロ州と同 様に州別 GHG 排出削減計画(RAD-GRK)が 2012 年に策定されており、森林セクターに ついてもこれに含まれている。 図 2.2-2:北スラウェシ州の位置 北スラウェシ州はスラウェシ島北部に位置し、面積 15,273km2、人口 226 万人(2010 年) を有する州である。北スラウェシ州の RAD-GRK の計画期間は 2010 年から 2020 年までの 10 年間であり、対象地域は州内の 11 県と 4 市である。同州 RAD-GRK において、森林減 少の要因として森林エリア内での人々の不法居住や土地利用などが挙げられている。北ス ラウェシ州の人口推移は表 2.2-2 の通りであり、人口増加率は年率約 1%程度となってい る。 表 2.2-2:北スラウェシ州の人口推移 年 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 州総人口 2,154,234 2,121,017 2,160,641 2,186,810 2,208,012 2,228,856 2,265,937 (出所:北スラウェシ州 RAD-GRK、2012 年、p.23) 北スラウェシ州の RAD-GRK では、GHG 排出源として、廃棄物セクター、交通セクター、 エネルギーセクター、農業セクター、産業セクター、森林セクターを挙げている。このう ち森林セクターの排出量と削減活動、関連する実施機関については次の通り。 北スラウェシ州 ゴロンタロ州 中部スラウェシ州 インドネシア東部 スラウェシ島 西スラウェシ州 南スラウェシ州 南東スラウェシ州

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1) 北スラウェシ州の森林セクターの GHG 排出量と土地被覆変化 北スラウェシ州では、森林セクターの分析に世界アグロフォレストリーセンター(ICRAF) が開発した Abacus SP(土地利用、土地被覆変化をもとに排出量を算出するソフトの一つ) を用いて GHG 排出量を算出している。Abacus ソフトウェアで処理した 2006 年から 2011 年の土地利用変化のデータに基づき、北スラウェシ州での森林セクターの年間 GHG 純排 出量は 902,889.21 tCO2e と算出されている。年間排出量が 909,567.18 tCO2e である一方、 年間の炭素蓄積量は 6,667.97 tCO2e であることから、年間の純排出量が 902,889.21 tCO2e となっている。 また、北スラウェシ州における 2006 年と 2011 年の土地利用変化は表 2.2-3 に示した通り であり、天然林、二次林が減少している一方、農地、農地と潅木の混合地、水田が大きく 増加している。このことから農業用地の拡大が森林減少の圧力になっている可能性があり、 ゴロンタロ州と森林減少のドライバーに共通性があるものと思われる。 表 2.2-3:北スラウェシ州の土地利用変化 土地被覆区分 面積(ha) 増減(ha) 2006 年 2011 年 天然林 273,365.5 271,419.4 -1,946.1 二次林 294,425.6 290,246.1 -4,179.5 マングローブ一次林 10,830.3 10,673.7 -156.6 マングローブ二次林 2,056.5 1,954.3 -102.2 プランテーション 2,164.0 2,162.9 -1.1 湿地林 524.4 423.3 -101.1 潅木・低木 87,172.8 53,792.4 -33,380.3 農地 269,485.6 272,258.5 2,772.9 農地・潅木の混合地 432,477.4 468,129.7 35,652.3 水田 45,825.8 46,933.7 1,107.9 湿地 178.0 39.3 -138.7 居住地・住宅 22,823.9 22,934.3 110.4 空港・港 269.1 269.1 0.0 鉱山 208.6 357.0 148.4 水域 8,553.3 8,553.3 0.0 裸地 8,259.6 7,989.8 -269.8 (出所:北スラウェシ州 RAD-GRK, 2012, p.183) RAD-GRK によると、北スラウェシ州では森林エリア内での不法な土地の占拠や不法居住、 違法伐採、菜園・農地への転換などにより森林減少、森林劣化が生じているとしている。 森林エリア内で非常に危機的な状況にある土壌の面積は 7,655ha、危機的状況にある土壌 の面積が 76,815ha、若干危機的な状況にある土壌の面積が 131,533ha で、合計 216,003ha の面積の森林内の土壌が何らかの危機的状況にある。こうした状況が森林エリアでの炭素 蓄積量の変化をもたらすとしている。

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2) 北スラウェシ州 RAD-GRK における森林セクターの活動概要 RAD-GRK における森林セクターに関連する緩和活動には次のようなものが挙げられてい る。また、概要は表 2.2-4 のとおり。  土地被覆の増加:土地セクターからの排出削減行動としては、単位面積あたりの土地 被覆を増加させること、また、二次林を二次林のまま残存させることなど既存被覆を 維持することが挙げられており、これは州及び県レベルでの空間利用計画に関連する ものとしている。  居住用の土地利用の制限:北スラウェシ州では人の居住に伴う土地利用変化が生じて いる。特にコミュニティ林から居住地や住宅用地に変化しており、こうした森林エリ アを減少させないために森林エリア外での住宅の高層化や住宅地の整備などが挙げ られている。  劣化した土地の回復:北スラウェシ州での危機的状況にある劣化した土地や劣化しう る土地を保全する。 表 2.2-4:RAD-GRK の森林セクターに関連する機関と活動 セクターの関係機関 GHG 排出源 GHG 排出削減活動 備考  林業省  森林・農園局  林 業 公 社 ( Perum Perhutani)  BAPPEDA(州開発企画 庁)  セクターの政策によ る増加  農業バイオマス  土地被覆の減少・劣化  火山の噴火による森 林の劣化  森林政策の評価  森林、土地の回復計画  土地被覆の増加  緑 の イ ン ド ネ シ ア (MIH)に向けた実施 支援  火山の噴火に伴う土地 の劣化に関する調査が 必要である。  土地の開発制限も代替 手段としてあるが、土 地の所有権により困難 がある。  森林回復に加え、植林、 都市の緑地帯の整備な ども考えられる。 (出所:北スラウェシ州 RAD-GRK、p.218) 3) 北スラウェシ州の RAD-GRK の実施体制 RAD-GRK の実施には、様々な行政機関やその他の機関が関わるため、各機関の間での調 整メカニズムが必要になる。地方自治法(Law No.32 of 2004)に基づき、RAD-GRK の実 施体制が表 2.2-5 のように整理されている。北スラウェシ州では、RAD-GRK で対象とし た 6 つのセクターに関して、15 の部局、機関が関わる。また、森林・泥炭セクターについ ての GHG 排出の BAU の設定と緩和活動に関する役割分担についても整理されており、表 2.2-6 に示した通りである。 同セクターでの BAU の設定に関わるのは、農業局、林業局、園芸作物局(プランテーシ ョン作物局)に加え、状況に応じて、鉱山・エネルギー局の 4 つの部局である。各部局の 担当責任者がデータの提供と計算に関わるが、作業には水資源管理局、開発企画庁、環境 局(BLH)、食糧安全保障局、統計局(BPS)、林業局、農業局、園芸作物局、鉱山・エネ ルギー局の 9 機関が状況に応じて関わる。また、緩和活動の策定後、その実施に責任を負 うのは、水資源管理局、開発企画庁、環境局、林業局、農業局、園芸作物局、鉱山・エネ

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ルギー局の 7 つの部局である。なお、活動のモニタリング評価の実施については、上記で 述べたゴロンタロ州でのモニタリング評価と同様のステップで行うこととなっている。 表 2.2-5:RAD-GRK の各セクターと北スラウェシ州の関係部局 関係部局 必 ず 関 わ る 部 局 局 部 る す 与 関 に 的 択 選 州水資源管理 局 州空間計画・住宅局 州開発企画庁 交通局 環境局( BL H ) 食料安全保障局 公衆衛生局 統計局( BP S ) 農業局 林業局 畜産・家畜衛生局 海洋・漁業局 園芸作物局 産業・貿易局 鉱山・エネルギー局 農業セクター

○ ○

○ ○ ○ ○

森林・泥炭セクター

○ ○

○ ○ ○

エネルギーセクター

○ ○ ○

○ ○

○ ○ ○

交通セクター

○ ○ ○ ○

産業セクター

○ ○

○ ○

○ ○ ○

廃棄物管理セクター

○ ○

○ ○ ○

○ ○

(出所:北スラウェシ州 RAD-GRK、2012 年、p.92) 表 2.2-6:RAD-GRK の森林・泥炭セクターの BAU 設定と緩和活動実施の責任部局 関係部局 必ず関わる部局 選択的に関与する 部局 州水資源管理 局 州空間計画・住宅局 州開発企画庁 交通局 環境局( BL H ) 食料安全保障局 公衆衛生局 統計局( BP S ) 農業局 林業局 園芸作物局 畜産・家畜衛生局 海洋・漁業局 産業・貿易局 鉱山・エネルギー局 BAU の設定

○ ○ ○

緩和活動の実施

○ ○ ○

(出所:北スラウェシ州 RAD-GRK、2012 年、p.103)

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2.3. RAD-GRK で用いられている排出係数作成の調査

上記 2.1.2 で述べた BAPPENAS が作成した RAD-GRK の MER ガイドラインでは、表 2.3-1 に示す森林・泥炭セクターの排出係数が示されている。MER ガイドラインでは地方政府 により各地域の排出係数が公表されている場合はこれを用いても構わないとされている。 本事業の対象地であるゴロンタロ州では RAD-GRK の中で土地被覆区分別の排出係数が表 2.3-2 のとおり示されている。 表 2.3-1:RAD-GRK の MER ガイドライン及びゴロンタロ州の土地被覆区分別排出係数 林業省土 地被覆区 分コード 区分記号 区分名 (和文) 区分名 (英文) 排出係数(t-C/ha) RAD-GRK MER ガイドライン ゴロンタロ州 RAD-GRK 1 2001 Hp 天然林 Primary Dry land Forest 195.4 271.456 2 2002 Hs 二次林 Secondary Dry land Forest 169.7 258.652 3 2004 Hmp マングローブ天然林 Primary Mangrove Forests 170 -

4 2005 Hrp 湿地天然林 Primary Swamp Forest 196 -

5 2006 Ht 植林 Plantation Forest 64 -

6 2007 B ブッシュ Bush 30 -

7 2010 Pk プランテーション Plantations (Estate crops) 63 8.958

8 2012 P 居住地 Settlement 5 -

9 2014 T 裸地 Open Land 2.5 -

10 3000 S 草地 Grassland 4.5 -

11 20041 Hms マングローブ二次林 Secondary Mangrove Forests 120 - 12 20051 Hrs 湿地林二次林 Secondary Swamp Forest 155 -

13 20071 Br 湿地ブッシュ Swamp Bush 30 -

14 20091 Pt 農地 Dry land Farming 10 2.001

15 20092 Pc 農地と潅木の混合 Mixed Dry Land Farming Garden

30 66.226

16 20093 Sw 水田 Rice Field 2 -

17 5001 A 池・水域 Ponds / Open water 0 -

18 20121 Bdr/Plb 空港・港 Airport / Port 0 -

19 20122 Tr 移住地 Transmigration 10 -

20 20141 Tb 鉱山 Mining 0 -

21 50011 Rw 湿地 Swamp 0 -

(出所:Technical Guideline for Monitoring, Evaluation, and Reporting (MER) of RAD-GRK Implementation, BAPPENAS, 2013, p.52)

また、ゴロンタロ州の RAD-GRK では、被覆区分ごとに地上部バイオマスと地下部バイオ マス別の炭素蓄積量をも示されている。一次林、二次林では地上部バイオマスに炭素蓄積 量の約 9 割が含まれている。

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表 2.3-2:ゴロンタロ州 RAD-GRK の土地被覆区分別排出係数 区分 記号 区分名 地下部バイオマス 地上部バイオマス 排出係数 (t-C/ha) t-C/ha % t-C/ha % Hp 天然林 25.0012 9.21 246.255 90.79 271.456 Hs 二次林 30.543 11.81 228.109 88.19 258.652 Pk プランテーション 0.0 0.00 8.958 100.00 8.958 Pt 農地 0.0 0.00 2.001 100.00 2.001 Pc 農地と潅木の混合 28.510 43.05 37.716 56.95 66.226 (出所:ゴロンタロ州 RAD-GRK, 2012) なお、2.1.3 で述べた FREL の算出に使用された排出係数のうちスラウェシ島の係数は表 2.3-3 の通りであり、RAD-GRK の MER ガイドラインの値よりもゴロンタロ州 RAD-GRK の値に若干近い値となっている。

表 2.3-3:FREL 算出用の各森林区分の地上部バイオマス(AGB)の炭素蓄積量の推測値

森林区分 適用地域 平均 AGB (t/ha) 計測プロット数

Primary Dryland Forest スラウェシ島 275.2 221

インドネシア全体 266.0 874

Secondary Dryland Forest スラウェシ島 206.5 197

インドネシア全体 197.7 1299

Primary Swamp Forest スラウェシ島 214.4 3

インドネシア全体 192.7 95

Secondary Swamp Forest スラウェシ島 128.3 12

インドネシア全体 159.3 354

Primary Mangrove Forest カリマンタン島のみ 263.9 8

Secondary Mangrove Forest スラウェシ島及びカ

リマンタン島 201.7 12

(出所:Submission by Indonesia, National Forest Reference Emission Level for Deforestation and Forest Degradation in the context of the Activities Referred to in decision 1/CP.16, Paragraph 70 (REDD+) under UNFCCC, December, 2014) 2.4. 持続可能なモニタリング体制の検討 森林の炭素蓄積量の推定は、国際的基準(IPCC ガイドラインなど)に準拠すること、ま た、COP15 の決定 4/CP15 ではリモートセンシングと地上調査の組み合わせによって推定 することと明記されている(FCCC/CP/2009/11/Add.1)。 従って、一般的に REDD+プロジェクトにおけるモニタリングも、(1)リモートセンシ ングと(2)地上調査の組み合わせが必要条件となる。ただし、現状ではリモートセン シングで用いる衛星画像及び解析ソフトが高額であることや、開発途上国及び地方政府 では解析技術者が不足しているなど、コストと人的リソースの課題がある。また、地上 調査の人材確保が十分にできないため、画像解析の検証に課題を抱えている場合もある。 2.4.1 QGIS を活用した持続可能な低コスト型モニタリング体制 インドネシアでは、林業省が LANDSAT を用いた画像解析を実施し、年ごとの全土土地被

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覆図を作成している。さらに、そのデータに基づき、州ごとの森林炭素蓄積量変化を各州 が GHG 削減計画(RAD-GRK)として報告している。しかしながら、前述のとおり地方政 府では、コスト及び人的リソースの課題を抱えており、モニタリングデータの管理、編集、 レポーティング、検証を限られた組織体制の中で実施せざるを得ないという状況にある。 このような課題に対処するため、本プロジェクトでは、オープンソース GIS ソフトウェア の代表的なソフトである Quantum GIS (QGIS)を解析ソフトとして導入し、無償で利用可能 な LANDSAT 及び必要に応じて比較的安価な日本の衛星画像(PALSAR-2/ASTER)を組み 合わせ、コスト低減を図るモニタリング体制を検討する。また、画像解析の検証作業及び 地上モニタリング作業では、地元住民の協力を得ることで人的リソースの課題にも対処す る。 QGISを活用した場合のモニタリングシステム概算費用 QGIS をベースとし、有償システムの ArcGIS をバックアップとして利用したシステムで は一般的なシステムと比べ、表 2.4-1 の通り、約 3 分の 1 と大幅な費用低減が可能であ る。また、無償のシステムのみで構成した場合は、約 200 分の 1 ものコスト低減になり、 予算制約がある途上国でのモニタリングに効果を発揮すると思われる。 表 2.4-1:ゴロンタロ州全体の法定林の衛星リモセンでのモニタリングシステム概算費用 システムのタイプ 構成 概算費用 現在一般的なシステム(有償システムのみ で構成するシステム) (ArcGIS ベース) <ソフト> ArcGIS: 1,476 万円(3 ライセンス) ENVI: 495 万円(3 ライセンス) <衛星データ> SPOT: 357 万円 2,328 万円 無償のオープンソースシステムと有償シ ステムによるバックアップを組み合わせ たシステム (QGIS ベース+ArcGIS のバックアップ) <ソフト> ArcGIS: 492 万円(1 ライセンス) ENVI: 165 万円(1 ライセンス) QGIS: 0 円 Multispec: 0 円 TNTmips/Light: 0 円 <衛星データ> LANDSAT: 0 円 ASTER: 6 万円 PALSAR: 4 万円 667 万円 無償のオープンソースシステムで構成す るシステム (QGIS ベース) <ソフト> QGIS: 0 円 Multispec: 0 円 TNTmips/Light: 0 円 10 万円 QGIS について: QGIS は、オープンソースソフトウェアの GIS ソフト一つである。オープンソースソフト ウェアの特徴は、ライセンスの制約なく環境を構築できるメリットがあり、かつ、費用 がかからないため安価に環境構築できる点が挙げられる。QGIS は使いやすいグラフィカ ルインターフェイス(GUI)を持ち、Windows, Linux, Mac と様々な環境で動作すること が特徴の一つである。また、ベクタ形式(shape や KML など)、ラスタ形式(GeoTiff な ど)のファイルの読み書きが可能であり、多くの測地系に対応したソフトウェアである。 また、QGIS では効率的に作業を行うために独自アプリケーションを作成することも可能 である。(http://www2.qgis.org/ja/site/)

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システムのタイプ 構成 概算費用 <衛星データ> LANDSAT: 0 円 ASTER: 6 万円 PALSAR: 4 万円 注)ゴロンタロ州内の法定林は 824,668 ha (8,246 km2)、金額は初年度コスト 各ソフトの概略は以下の通り。  ArcGIS:米国 Esri 社の地理情報システムソフトウェア

 ENVI:米国 Exelis VIS 社のリモートセンシング用の画像解析ソフトウェア

 QGIS:オープンソースの地理情報システムソフトウェア。FOSS4G (Free Open Source Software For Geoinformatics:空間情報科学のためのフリーオープンソースソフトウ ェア)の代表的な GIS。  Multispec:米国 Purdue 大学で開発された、フリーソフトウェアの衛星画像データ解 析ソフトウェア。NASA やアメリカ国立科学財団(NSF)の援助のもと、一般のユ ーザが自由に利用できるソフトウェアとして開発されたもの。  TNTmips/Lite:ラスタ・ベクタ一体型の地理情報システムのフリーソフトウェア。 QGISの活用事例  REDD+におけるQGISの活用は、UN-REDDでも進められている。UN-REDDは、2008 年に国連が途上国のREDDプロジェクト支援として始めたものであり、現在プロジ ェクト実施国は 51 カ国にのぼる。同プロジェクトは途上国向けのキャパシティビ ルディングを目的としているが、QGISが多くの国で用いられている。このように UN-REDDではQGISを標準としており、各国の林業省ではすでにQGISを活用しつつ ある状況と考えられる8  タンザニアのナショナルレベルのモニタリングでは、UN-REDD により QGIS を活 用し、紙ベースのマップをどのように QGIS にのせるかについてのマニュアルを作 成している。メキシコでも同様の例がみられるほか、スリランカ、コンゴ民主共和 国など多くの国々で活用されている。 以上から、地方政府レベルにおいて持続可能なモニタリングが容易になる体制として、 QGIS を活用した持続可能な低コスト型モニタリング体制を以下のように提案する。す なわち、 (ア) オープンソース GIS ソフトウェアの QGIS を基本的な解析ソフトとして用いる (イ) 衛星画像はフリーで利用可能な Landsat をベースとしつつ、必要に応じて比較的安 価かつ精度確保ができる日本の衛星画像(PALSAR-2、ASTER 等)を組み合わせ る (ウ) Landsat-PALSAR2/ASTER をベースとした QGIS 及び GPS 活用による地元住民との 協働による地上モニタリングを行う(参加型モニタリング) http://www.un-redd.org/AboutUN-REDDProgramme/tabid/102613/Default.aspx

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モニタリング体制の特徴  QGIS は、ArcGIS で作成された標準的なデータフォーマットと互換性を持つため、 既存の膨大なデータベースを利用できることが大きなメリット。  PALSAR-2 は雲を透過し、かつ夜間も観測できることから被雲率の高い熱帯地域の 観測には有効である。さらに、高解像度モードにより 3m の空間解像度を持つ。 ASTER は空間解像度が 15m であるものの、15 年分の画像が蓄積され、LANDSAT 及び PALSAR-2 の補完データとして利用できる。  現在インドネシア林業省が用いる衛星データは LANDSAT をスタンダードとしてい ることから、LANDSAT をベースとして、同一軌道で運用されている ASTER を組 み合わせて活用する方法は、インドネシアに適したものと考えられる。また、中解 像度の 30m 解像度を標準とすることで他のアジア、アフリカ、中南米への展開を図 りやすくすることができる。  なお、メインマシン1台のみ商用ソフトの ArcGIS を入れておき、それ以外の PC には QGIS を入れることでシステムのリスクマネジメントを図ることとする。QGIS はスタンドアローンで動作するため、フィールドでもデータ確認ができ、費用が嵩 むライセンス料金等の課金を気にすることなく、各スタッフが解析しモニタリング に携わることができる。  衛星データの解析結果の検証のために用いる地上データは、住民が GPS 機能搭載の デジタルカメラ/スマートフォンなどの携帯電話、あるいは GPS ロガーを用いて現 場で撮影・取得したデータを活用する。  地上モニタリング調査では、QGIS をインストールしたタブレット PC とポータブル GPS を接続し、QGIS に表示される衛星画像上の位置をリアルタイムで確認しなが ら調査を実施する。  インドネシア宇宙局(LAPAN)は、SPOT-6 及び SPO-7(空間解像度 1.5m)を無償 で国内政府機関に配布し始める予定。これら高解像度画像を組み合わせることで、 さらに高精度なモニタリングが実施可能となる。  このような簡便かつ地元住民参加型のモニタリング体制は、コストや人的リソース に課題を抱える地方政府や小規模 REDD+プロジェクトに適しており、インドネシ ア国内の他地域のみならず、アジア各国、アフリカ、中南米への横展開も可能とな る(図 2.4-1)。

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図 2.4-1:持続可能なモニタリング体制の横展開の実現 2.4.2 モニタリングコスト 前述の通り、モニタリングコストの低減は事業性向上に不可欠である。これまでの一 般的な衛星画像解析システム(ArcGIS ベースのシステム+高解像度衛星データ)に替 わり、オープンソース GIS ソフトウェア(QGIS)をベースとしたシステムを用い、衛 星データは LANDSAT をベースとしつつ、精度を確保するため必要に応じて日本の衛 星データや LAPAN より無償で提供される予定の SPOT-6/-7 も活用する。また、このシ ステムに住民による農地や森林等の GPS 付写真データを統合し、衛星画像の解析結果 を検証できるようにする。これにより初年度年間約 1700 万円のモニタリングコスト低 減が見込まれる。 2.4.3 ゴロンタロ州における持続可能なモニタリング体制 本プロジェクトで提案する持続可能なモニタリング体制は、プロジェクト実施者である 兼松、ゴーベルグループ、そして地方政府の3者を主体とする。ただし、RAD-GRK 活 動の取り組みにおけるモニタリング活動と連携を図り、地方政府、事業者の双方にコス トの低減効果を見込む。すなわち、本プロジェクトの活動主体の一つである地方政府(林 業局、農業局、開発局)は、本プロジェクトで必要となる基礎情報(活動データ及び排 出係数)の整備を RAD-GRK 活動の中で実施することから、本プロジェクトの事業者側 で新たにそれらの基礎情報を作成する必要はない。 一方、本プロジェクトで対象とするトウモロコシ圃場及びカカオ圃場の分布は、 RAD-GRK で整備される土地被覆図では区分されていないため、本プロジェクトの活動 として新規に作成する。ただし、トウモロコシ圃場及びカカオ圃場の小規模な土地被覆 変化は、LANDSAT 画像では抽出することが困難であることから、地元住民の協力によ ってトウモロコシ圃場及びカカオ圃場の分布を把握する。具体的には、以下のとおり、 ハンディ GPS と GPS 付きデジタルカメラを用いた位置・現場情報の取得、パソコンへ

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の情報取り込み、解析、管理の 5 つの作業からなる。 ① 作業1:調査対象地選定 林業局・農業局・開発局職員が調査対象地の検討を行う。 ② 作業2:ハンディGPSによる位置情報記録 調査対象地の村落からグループリーダーを選定し、ハンディ GPS と GPS 付きデジタル カメラを貸与する。グループリーダーまたは調査メンバーは、各圃場境界に沿ってハン ディ GPS にて位置情報を記録する。この際、必要となる作業は GPS の電源オン/オフの みとし、複雑な作業(地点名を入力など)は伴わない。 ③ 作業3:GPS付きデジタルカメラによる写真撮影 グループリーダーまたは調査メンバーは、各圃場の主要ポイント(コーナーなどの特徴 的な曲がり角など)にて、GPS 付きデジタルカメラで圃場の様子を撮影し、②で得られ た位置情報の精度向上と視覚化に役立てる。この場合の作業も、デジタルカメラの電源 オン/オフのみとし、誰でも行える作業とする。

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④ 作業4:林業局/農業局担当者のパソコンへの記録情報の取り込み 上記②及び③の作業を調査対象地内の各圃場を対象に、一定期間実施したのち、ハンデ ィ GPS と GPS 付きデジタルカメラに記録された位置情報と写真を林業局及び農業局担 当者がパソコンに取り込む。 ⑤ 作業5:既存土地被覆情報の編集 パソコンに取り込んだ位置情報を QGIS 上に表示させ、既存土地被覆図に情報を加える とともに土地被覆境界線の編集を行い、プロジェクト活動の基礎情報とする。 以上の作業は今回の研修で実際に林業局/農業局職員及び地元住民が行い、トウモロコシ 圃場、カカオ圃場にて位置情報を取得した。図 2.4-2 には農業局職員が QGIS に取り込 んだカカオ圃場の踏査結果を示す。

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図 2.4-2:QGIS を用いたカカオ圃場モニタリング結果(2014 年 9 月 12 日に実施した成 果発表資料より) 以上のような小規模な圃場を対象とする住民参加型モニタリングシステムは、低コスト かつ地元住民でも容易に実施することが可能である。また、QGIS に取り込んだ基礎情 報 は RAD-GRK の モニタリング活 動へフィードバックす ることができるため 、 RAD-GRK における基礎情報の精度向上に貢献することができる。従って、本プロジェ クトで提案する低コスト地上モニタリングシステムは、プロジェクト活動のみならず RAD-GRK モニタリングシステムとの相互補完も測れることから、持続可能なモニタリ ングシステムとも言える。図 2.4-3 にゴロンタロ州ボアレモ県における持続可能なモニ タリング体制を示す。

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図 2.4-3:ゴロンタロ州ボアレモ県における持続可能なモニタリング体制 ボアレモ県林業局GIS/画像処理室の現状 1)業務内容 ボアレモ県林業局 GIS/画像処理室の業務は、森林及び鉱業全般に関わる GIS/画像解析、管 理業務である。また、成果物としては、以下の図面の整備を行っている。  森林/地下資源ポテンシャル図  森林劣化モニタリング図  土地被覆図  流域管理図  その他、各種主題図のためのポリゴン作成、コンター図作成 2)林業局 GIS/画像処理室スタッフ(3 名) 林業局 GIS/画像処理室のスタッフは 3 名体制で、1 名のみ ArcGIS の操作が可能である。 以上の通り 3 名の技術者が配置されているが、ArcGIS を用いた GIS/画像処理は、1 名のみ が実施している。そのほかの 2 名は GIS/画像処理ソフトを所有しておらず、土地被覆図の 改訂など、作業を分担して行うなど効率化を図ることが難しい状況にある。以下に、GIS/ 画像処理室所有の既存ソフトウェア、ハードウェアを示す。 Local Community-A

Agriculture

Department

Department

Forest

Kanematsu

Cooperation

Gobel

Group

Local

Community-B Community-CLocal Local

Community-D Community-FLocal Community-GLocal

Technical Guidance Ground Monitoring & Reporting Managing Advising Advising Cacao farming

Regency

Governor

Advising

Land Cover Map

prepared by RAD-GRK

Land Sector (POKJA-II)

:RAD-GRK

:REDD+ project

Legend

Data Analysis & Management

BAPPEDA

[Data Sharing]

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■ 既存 GIS/画像処理ソフトウェア 1) ArcGIS ver.9.2 ■ 既存 GIS/画像処理ハードウェア 1) 大型プリンター:HP Designjet T1300 2) 大型スキャナー:Cortex XD2490 3) 小型プリンター/スキャナー:Canon MP287 図 図 2.4-4:大型プリンター(HP Designjet T1300)及び大型スキャナー(Cortex XD2490) 図 2.4-5:小型プリンター/スキャナー(Canon MP287) なお、本プロジェクトで提案する低コストモニタリングシステムは、簡易なシステムで あることから、基本的に地方政府職員が所有するパソコンのみで画像解析・管理を行う ことが可能である。また、ライセンス料も発生しないため、持続的なシステムといえる。

図 2.1-1:2000 年から 2012 年までの森林減少・森林劣化及びそれに伴う泥炭の分解による 各年の年間及び全期間の平均の CO2 排出量(MtCO2e)
表 2.2-1:RAD-GRK の森林セクターに関連する機関と活動  セクターの関係機関  GHG 排出源  GHG 排出削減活動  備考    林業省    州森林・鉱山局    林 業 公 社 ( Perum  Perhutani)    BAPPEDA(州開発企 画庁)   セクターの政策による増加  農業バイオマス  土地被覆の減少    森林政策の評価    森林、土地の回復計画   土地被覆の増加   緑 の イ ン ド ネ シ ア (MIH)に向けた実 施支援    土
表 2.3-2:ゴロンタロ州 RAD-GRK の土地被覆区分別排出係数  区分 記号  区分名  地下部バイオマス  地上部バイオマス  排出係数  (t-C/ha) t-C/ha % t-C/ha %  Hp  天然林  25.0012  9.21  246.255  90.79  271.456  Hs  二次林  30.543  11.81  228.109  88.19  258.652  Pk  プランテーション  0.0  0.00  8.958  100.00  8.958  Pt  農地
図 2.4-1:持続可能なモニタリング体制の横展開の実現  2.4.2  モニタリングコスト  前述の通り、モニタリングコストの低減は事業性向上に不可欠である。これまでの一 般的な衛星画像解析システム(ArcGIS ベースのシステム+高解像度衛星データ)に替 わり、オープンソース GIS ソフトウェア(QGIS)をベースとしたシステムを用い、衛 星データは LANDSAT をベースとしつつ、精度を確保するため必要に応じて日本の衛 星データや LAPAN より無償で提供される予定の SPOT-6/-7 も活用
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参照

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