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5. プロジェクトを通じて得られる経済的効果とその他の効果に関する検討

5.1 排出削減見込量とモニタリングコスト低減効果を踏まえたビジネスプランの作成

ニティの生活改善を図るプログラムとして、カカオ栽培のキャパシティビルディングと マイクロファイナンス、更に兼松の得意分野であるバリューチェーン構築を行うセーフ

ガード事業案を計画し、この事業から得られる収入をREDD+事業に必要な資金として活 用するプログラムの検討を行った。

 バリューチェーンの構築により農家のマーケットへのアクセスを支援

兼松とゴーベルグループDKM社の持つネットワークを活かし、物流網等を含めた 販路を構築することで、小規模農家によるカカオ市場へのアクセスを確保する。

兼松は従量制の買い取り価格設定ではなく、発酵やトレーサビリティ確保による カカオ品質に基づく買い取り価格と、それに応じた商流構築を実現することを新 たなビジネスモデルとしていく。本計画は大規模プランテーションによるビジネ スモデルとは異なり、分散した個々の小規模農家を県政府やコミュニティの協力 を得て組織化し、多数の農家から品質管理された高品質のカカオを生産し、最終 的には国内スラウェシ島マカッサル市などで加工し、国内外への販売まで行える ようにする、小規模農家を事業パートナーとするビジネスモデルである。

図5.1-1:バリューチェーンの構築の概略図

 商材・サービスの提供方法

農家で栽培されたカカオ豆は、兼松とDKM社を通じて日本のチョコレート会社や 大手穀物商社に各々配送される。日本のチョコレート会社は既にインドネシアで 実施しているカカオの加工ルートを利用して自社のチョコレート製品の原料とし てカカオを加工、使用する予定である。こうしたバリューチェーンを構築するた めには品質管理が重要であり、REDD+プロジェクトチームが実施する技術支援(キ ャパシティビルディング)を通じて教育・啓蒙を行う。また、本事業のカカオ豆

が REDD+による CO2 削減やコミュニティの生活改善に貢献する点でフェアトレ

ードに類似するような付加価値をもたせることも考えられ、それを活かしたバリ ューチェーンも検討する。兼松はゴーベルグループと協力してネットワークを最 大限に活かしてボアレモ県の農家が生産する高品質のカカオ豆が活かされるよう にする。

 セーフガードプログラムの骨子

ゴロンタロ州のカカオ栽培専門家やカカオ農業専門家から得る現地情報をもとに、

本事業での参加農家による高品質カカオ(発酵済みのカカオ豆)の生産計画の概 略を以下のように検討した。

【工夫】生産体制構築には、既存の村の組織体制を活用。カカオ栽培の技術普及 は村にある既存のカカオグループをエントリーポイントとして、カカオグループ の中に篤農家を育成し、篤農家の成功事例がグループ内に広がる仕組みとし、カ カオ栽培を始めるトウモロコシ農家はカカオグループにも加わることで、カカオ 栽培のノウハウをカカオグループから共有してもらえるようにする。トウモロコ シ農家がカカオ栽培をはじめやすいよう、トウモロコシとカカオをすでに両方栽 培している農場を普及啓発に活用し、トウモロコシ農家にカカオ栽培の開始方法

(トウモロコシとの混植、バナナ、赤唐辛子との混植例)をトレーニング農場で 実例を見せて効果を体験できるようにする。

【設定条件】最初の篤農(リーダー農家)を 120 農家養成、各トレーニング農場 で毎年 20農家(既存カカオ農家5件、トウモロコシ農家15件)を育成。トレー ニング農場3箇所で60農家が毎年育成され、事業に参加。2015年に栽培開始した 農家は、2017年から収穫期に入り、事業を開始。既存カカオ農家:1農家1.5ha、

現状平均0.5t/haとし、トレーニング後3年目から0.8t/haに改善、トウモロコシ農 家:1農家0.2ha、収穫は3年目から2年間収穫なし、3年目0.4t/ha、4年目0.8t/ha とした。

【計画】本プログラムを通じてトレーニングを受けた3郡の 120 農家(既存カカ オ農家30件、トウモロコシ農家90件)に加え、事業開始年の2015年にトレーニ ングする60 農家を加え、1年目は180農家の生産者が事業に参加することを想定。

その後毎年、トレーニングを受けた農家が60農家ずつ加わり、5年目には420農 家となる見込みである。生産量は上記設定条件のもと栽培面積と生産量を予測し た結果は以下の通り。

準備 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 生産者数 開始時120農家 180 240 300 360 420 栽培面積 94.5 126 157.5 189 220.5 生産量(トン) 44.1 69.3 94.5 119.7 144.9

【排出権売却益】JCM制度の下ではクレジットの取引は当面想定されていないが、

試験的に実証事業の中で組成される排出権クレジットを民間企業のCSR予算等で 買い取ってもらう事を検討する。本 REDD+事業では、例えば 1,000 円/tCO2 の価 格レベルを想定し、販売収益を試算し、その内 30%を営業外利益として組み入れ て事業計画に記載した。これにより現地政府やカカオを生産する農家のインセン

ティブの一部として実証事業を進め、REDD+事業がスムースに開始される事を期 待する。